中国に立ち向かう日本、つき従う韓国
[社会・政治・時事]
鈴置高史/著
出版社名 : 日経BP社
出版年月 : 2013年2月
ISBNコード : 978-4-8222-7414-6
税込価格 : 1,470円
頁数・縦 : 279p・19cm
■離米従中に向う韓国
韓国が米国から離れ、中国にすり寄ろうとしている。いわゆる「離米従中」である。その現状と、そうなった背景を解く。韓国を基点に、東アジアの地政学、韓国と日本の関係、中国と日本の関係について解説する。
端的に言えば、韓国が「離米従中」に向うのは、米国の国力が落ち、中国が台頭してきたからだ。両大国の間でうまく立ち回り、生き残ろうとする中で、韓国のDNAとも呼ぶべき性癖が芽生えてきた。もともと中国につき従う形で何世紀も半島で存続してきた国なのである。
【目次】
プロローグ 中国の空母が済州島に寄港する日
第1章 「中国」ににじり寄る「韓国」の本音
第2章 「日本」を見下す「韓国」の誤算
第3章 「米国」と離れる「韓国」の勝算
第4章 『妖怪大陸』を見つめる日本の眼
エピローグ 結局は「中国とどう向き合うか」だ
【著者】
鈴置 高史 (スズオキ タカブミ)
日本経済新聞社編集委員。1954年、愛知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。77年、日本経済新聞社に入社、産業部に配属。大阪経済部、東大阪分室を経てソウル特派員(87~92年)、香港特派員(99~03年と06~08年)。04年から05年まで経済解説部長。95~96年にハーバード大学日米関係プログラム研究員、06年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)ジェファーソン・プログラム・フェロー。「中国の工場現場を歩き中国経済のぼっ興を描いた」として02年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。
【抜書】
●従中卑日(p50)
韓国は、「離米従中」から「従中卑日」へ。
外交上の利点は……
(1)中国と一緒になって日本のイメージを落とすことで、その効果を大きく増せるうえ、日本からの反撃を減らすことができる。竹島・尖閣問題で中国と一緒になって「戦犯国=日本の強欲な領土要求」を世界で宣伝しているのは、まさにこの狙いからだろう。
(2)「従中」が米国の不興を買いそうな時は「卑日」で言い訳できる。典型的な例が、中国が不快感を示す日韓軍事協定を結べと米国から迫られた際に「戦犯国、日本の反省が足りない」という理由を掲げて拒否したケースだ。
(3)中国にとって「韓国は日本よりいい子」になるので、中国から日本より大事にされる。実際、2012年の中国の日本製品ボイコット運動で、韓国人の期待通りに自動車などの韓国製品の売り上げが伸びた。
●時代精神(p55)
(木村幹)〔私が指摘したいのは、「世界には抗い難いトレンドがあり、これに抵抗するのは不可能だ」という考え方が、韓国には伝統的に存在しているということです。興味深いのは「トレンド」は常に韓国の外部で決まることであり、だからこそこのトレンド自身を韓国が左右することができない、という大前提で議論が進むことです。
ここから「世界の新しいトレンドには乗らなければならない。乗り遅れると大変なことになる」という強迫観念が生まれます。ここに「世界全体が中国を中心に回り始めた」という認識が今、加わって「それっ、中国だ」と一斉に飛びついているということになります。その意味では、韓国では「韓国にとって中国とは何なのか」よりも「世界が中国をどう見るか」がより大事だということになります。「世界が中国の時代が来つつあるとみているのだから、我々もそれに従って中国にすり寄るしかないではないか」と韓国人は考えるのです。〕
実用的な従中……冷静な利益の判断と、合理的な議論の結果
時代精神からの従中……合理的な利益計算に先立って、「常識」ができあがってしまった
●バック・キャッチャー(p74)
バック・キャッチャー……負担を引き受けざるを得ない国。
潜在的覇権国家が台頭した際の周辺国の選択肢――
(1)同盟を作って皆で潜在的覇権国家を牽制
(2)自分だけは潜在的覇権国家に敵対せず、その脅威を別の国に向かわせる。“悪い子”つまり「バック・キャッチャー」を作り、自分だけは“いい子”になる。
●明清交代期(p177)
〔 2006年頃から、韓国の知識人が「清の横暴」や「明清交代期の朝鮮朝(李氏朝鮮)の苦しみ」を語るようになった。17世紀初めに女真族が勃興し、後に清となる後金が満洲に建国された時の話だ。「その直前の秀吉の侵略よりもひどかった」と言う人もいる。
朝鮮は最も従順な宗属国として漢民族国家の明に仕える一方、女真族を蛮族として見下しており、覇権を握った「後金-清」に対しても冷淡だった。そのため、服属を要求する「後金-清」から2度にわたり大規模侵略され、屈辱的な降伏を余儀なくされた。
「明清交代」を今、韓国人が語るのは、もちろん「米中交代」を念頭に置いてのことだ。それはアナロジーなどという生易しいものではない。「覇権国家の交代に際して変化を見誤り、国が存亡の危機に陥った」民族のトラウマが今、蘇っているのだ。〕
(2013/5/12)KG
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