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海底の支配者底生生物 世界は「巣穴」で満ちている
 [自然科学]

海底の支配者 底生生物-世界は「巣穴」で満ちている (中公新書ラクレ (676))  
清家弘治/著
出版社名:中央公論新社(中公新書ラクレ 676)
出版年月:2020年2月
ISBNコード:978-4-12-150676-4
税込価格:902円
頁数・縦:190p・18cm
 
 「生痕学」の研究者が、海底および底生生物の不思議と魅力を綴る。
 
【目次】
1章 「謎」しかない底生生物―彼らはどこにひそんでいるのか
2章 巣穴はすごい―その驚くべき仕組みについて
3章 砂浜に生きる―生物にとって過酷な環境
4章 愉快な底生生物たち―そのかわいらしい生態について
5章 深海底に挑め!―深海巣穴型どり大作戦
6章 東日本大震災と底生生物―海底生態系にどのような影響をもたらしたか
7章 海底は「穴」と「謎」だらけ―生痕学の知見から
  
【著者】
清家 弘治 (セイケ コウジ)
 1981年生まれ。広島県出身。産業技術総合研究所地質調査総合センター主任研究員。文部科学省平成29年度卓越研究員。潜水士。専門は海洋生物学、海洋地質学。2004年愛媛大学理学部生物地球圏科学科卒業、09年東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修了。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員PD、東京大学大気海洋研究所助教を経て現職。受賞歴に科学技術分野の文部科学大臣表彰・若手科学者賞(2016年)など。
 
【抜書】
●ベントス(p28)
 ベントス(benthos)……底生生物。
 プランクトン(plankton)……浮遊生物。
 ネクトン(nekton)……遊泳生物。
 
●アナジャコ(p42)
 Y字型の巣穴をほる。体長10cm程度。巣穴は2m以上の深さとなる。
 腹肢という、団扇状の器官で巣の中に水流を起こし、流れ込んできた海水中のプランクトンを濾しとって食べる。
 
●シャコ(p48)
 横長のトンネル型の巣穴を作る。深さ20cm、横幅1mにもなる。
 シャコは攻撃的な捕食者で、「スマッシャー」と呼ばれるグループは、ハサミ脚を高速で繰り出し、餌となる貝類などの殻をたたき割り、中身を取り出して食べる。通称「シャコパンチ」。南方に生息するトラフジャコは、体長30cmにもなる。
 
●スナモグリ(p51)
 三叉に分岐した迷路状の巣穴を作る。体長数センチメートル、深さは1mにもなる。
 海底の堆積物に含まれる有機物を餌とする。採餌のために地中を掘り進む。
 掘り出した余分な砂は、巣穴開口部から放出。スナモグリがたくさん生息している干潟では、小山状になった砂が多数みられる。「サンド・ボルケーノ」。
 スナモグリの採食行動によって干潟の砂が攪拌され、干潟の地盤そのものが軟らかくなる。
 
●糞の形(p100)
 アナジャコ、スナモグリ……茶筒のような形。水流を使って巣穴から海底面上に糞を放出する。
 タマシキゴカイ(環形動物)……お菓子のモンブラン状の大型の糞塊。
 ユムシ……海底表面を舐め回して飲み込み、糞は地中に。
 
●ヤハズアナエビ(p109)
 体長5cmほど。熱帯域~亜熱帯域の海草帯の砂底に巣穴を掘って、雄雌のカップルで生活。
 巣穴の入り口に待機し、海底付近を漂う海草の葉など見つけると飛び出し、ハサミで素早くつかんで巣穴に持ち帰る。葉は細切れにされ、巣穴の奥に貯蔵される。その破片が微生物によって適度に分解され、ヤハズアナエビの餌となる。
 巣穴の入り口は一つ。水流がないので海水は停滞し、有機物が分解された結果として低酸素状態になる。
 巣穴の中には、貝類などのたくさんの小型生物が、低酸素に耐えて共生している。
 
●サナダユムシ(p118)
 著者が勝手に「幻の底生生物」と呼ぶ、サナダユムシ(環形動物)。
 本体の長さ65cm、吻の長さ2m以上。
 干潟や海草藻場の海底の下に深くもぐって生活。トラ柄の吻を海底面に出して採餌している。
 体全体が採集されたことは、長い海洋生物研究の歴史の中でもほとんど例がない。吻が切れやすいため。
 
●化学合成生物群(p127)
 海底の熱水噴出孔や湧水付近には、化学合成生物群集が発達している。海洋生物学上の「20世紀最大の発見」。有機物は硫化水素から合成される。
 有機物が豊富に生産されるため、深海としては、例外的にかなり高密度でにぎやかに生物が生息している。
 
●スエヒロキヌタレガイ(p144)
 相模湾の水深1,173mの「初島沖サイト」において、アナガッチンガーによってスエヒロキヌタレガイの巣穴型を採集。
 Y字型。上の二つの穴は呼吸するための水流を作り。下の棒の部分は湧水起源の硫化水素を含んだ水を巣穴の中に引き込むためのもの。
 スエヒロキヌタレガイは、化学合成を行うバクテリアを体内に共生させ、硫化水素を含んだ水から栄養をとっている。
 アナガッチンガー(Anagatchinger)……水圧の高い深海で、ポリエステル樹脂の主剤と硬化剤を混合するために自作した装置。(p134)
  
(2020/3/29)KG
 
〈この本の詳細〉


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