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知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと
 [文芸]

知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと (文春新書)  
立花隆/著
出版社名:文藝春秋(文春新書 1247)
出版年月:2020年1月
ISBNコード:978-4-16-661247-5
税込価格:1,045円
頁数・縦:415p・18cm
 
 「知の巨人」立花隆の自伝。本書のどこにも説明がないが、書下ろしではなく、聞き書きのようである。文体が語り口調のなっているし、随所に(笑)などの表記が見える。
 さてこの人、実はあまり読んだことがないし、よく知らなかったのだが、文理両面に通じる「知」の人であるばかりでなく、文武両道の人でもあったのだ。水戸での中学時代(茨城大学附属中学校)では、ハイジャンプと三段跳びの選手で、中学三年の時にはハイジャンプで1m64cmを跳び、全国2位の記録だったとか。三段跳びも13m33cmで、水戸ではトップ。
 「文」の面では、高校時代に、家族の引っ越しに伴って水戸一校から都立上野高校に転校したが、旺文社の「大学入試模擬試験」で全国1位になっているという。ところが色弱のために興味のあった理系に進めず、教員の勧めを断って東大の文Ⅱ(当時は、文学・教育分野)に進学する。立花の成績なら、十分に文Ⅰ(法学・経済)が狙えたのである。それなりに気骨の人だったようだ。「僕は昔から権力をかさにきて威張りくさる尊大な人間と、権力の前にひれ伏す卑屈な人間が大嫌いでした。」(p.197)
 さらに、学生時代にロンドンの「国際学生青年核軍縮会議」に参加し、ヨーロッパ各地を巡ったり、文藝春秋を辞めて東大の哲学科に学士編入したり、東大闘争の影響で大学が封鎖されて中退したり、中東に大旅行をしたり、破天荒な生き方をしている人だった。
 
【目次】
北京時代と引き揚げ体験
幼少時代から高校まで
安保闘争と渡欧前夜
はじめてのヨーロッパ
文藝春秋時代からプロの物書きへ
二つの大旅行
「田中角栄研究」と青春の終わり
ロッキード裁判批判との闘い
宇宙、サル学、脳死、生命科学
立花ゼミ、田中真紀子、言論の自由
香月泰男、エーゲ、天皇と東大
がん罹患、武満徹、死ぬこと
 
【著者】
立花 隆 (タチバナ タカシ)
 1940年長崎県生まれ。64年東京大学文学部仏文科卒業後、文藝春秋新社入社。66年退社し、翌年東京大学文学部哲学科に学士入学。在学中から文筆活動を始める。74年『文藝春秋』に発表した「田中角栄研―その金脈と人脈」は時の総理大臣を退陣に追い込み、社会に大きな衝撃を与えた。著書多数。
 
【抜書】
●質問力(p142)
 井尻正二(1913-1999)という、地質学者に取材に行った時のこと。『潮』1970年10月号「人間としてのあなたの限界と可能性」という記事の原稿を100枚以上書く仕事。準備不足だったために叱られた。
〔 取材で何がいちばん必要かといえば、「質問力」です。サイエンス系の取材の場合、質問力はどれだけ準備したかに比例します。ところが僕はそのころまで、ほぼ一〇〇パーセント文科系カルチャーの中で生きてきた人間ですから、質問をするためにも準備が必要だという感覚がまるでなかったんです(笑)。文学、芸術、社会科学などの文科系マターの話題なら、出たとこ勝負で話を聞きに行っても、それまで何の問題もなかったからです。〕
 サイエンスものの取材では、準備さえしっかりやればうまくいく。
 
●権力(p197)
〔 僕は昔から権力をかさにきて威張りくさる尊大な人間と、権力の前にひれ伏す卑屈な人間が大嫌いでした。〕
 
●アトスの雌ネコ(p336)
 聖山アトス……ギリシャ北部のアトス半島にある「修道院共和国」。20の修道院があり、その修道院の共同体が半島全体を所有し、管理している。ギリシャ政府の国家権力も及ばない完全自治区。1000年以上も前に、東ローマ帝国の皇帝が勅許状を与えて以来、ギリシャ正教の聖地として、歴代の世俗権力がその特別の地位を認めたまま今日に至っている。
 聖山アトスには、ギリシャ系以外に、ロシア系、ブルガリア系、セルビア系など、いろいろな巨大修道院がある。ビザンチン時代の宗教文化がそのままに保存され、残っている。生ける博物館。
 アトス当局から独自の入国許可、滞在許可を得たうえで、独自の税関検査を受けなければならない。
 女性は、入ることが全体に禁じられている。動物も、雌の入国は禁じられている。かなりのロバがいるが、すべて雄ロバ。
 唯一の例外が、雌ネコ。ネコ好きの修道士が多いため、ネコに関してはいつの間にか禁忌が緩んでしまった。
 
(2020/4/4)KG
 
〈この本の詳細〉


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