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リベラリズムの終わり その限界と未来
 [社会・政治・時事]

リベラリズムの終わり その限界と未来 (幻冬舎新書)
 
萱野稔人/著
出版社名:幻冬舎(幻冬舎新書 か-27-1)
出版年月:2019年11月
ISBNコード:978-4-344-98575-9
税込価格:924円
頁数・縦:238p・18cm
 
 社会的弱者を救うべきだというリベラル派の主張が説得力を失いつつある。それは、社会が右傾化したためではない。前提として、分配すべきパイが縮小し、福祉に手が回らなくなった現実がある。
 そういった点を踏まえて、リベラル派の原理とその主張の矛盾点などについて分析する。
 
【目次】
第1章 私たちはリベラリズムをどこまで徹底できるのか?―古典的リベラリズムの限界について
 同性婚を認めた判決が引き起こした小さな波紋
 一夫多妻は違法なのか?
 個人の自由とリベラリズム
 本人たちの自由な意思にもとづく結婚ならリベラリズムは反対できない
 パターナリズムに反対するリベラリズム
  ほか
第2章 リベラリズムはなぜ「弱者救済」でつまずいてしまうのか?―現代リベラリズムの限界について
 リベラル派への批判の高まりは社会の右傾化のせいなのか?
 リベラリズムは「パイの分配」をどこまで正当化できるのか?
 
【著者】
萱野 稔人 (カヤノ トシヒト)
 哲学者、津田塾大学教授。1970年生まれ。パリ第十大学大学院哲学科博士課程修了。博士(哲学)。著書多数。
 
【抜書】
●リベラリズムの原理(p74)
〔 リベラリズムとは、各人の自由意思にもとづいて選択された行為については、それが他人に具体的な危害や損害をもたらさないかぎり――たとえそれがどれほど自分の価値観に合わないものであっても――尊重すべきである、という思想原理のことである。〕
 
●パイの縮小(p148)
〔 リベラル派への批判が高まっているのは、人びとが右傾化したからではない。そうではなく、パイの縮小への危機意識が人びとのあいだに広がったからである。「右傾化」と言われる現象もまた、その危機意識の広がりによってもたらされた現象にほかならない。〕
 
●社会的弱者(p149)
〔 たとえばリベラル派は生活保護の捕捉率が低いことをとりあげて、もっと多くの人の生活保護をいきわたらせるべきだと主張する。
 生活保護だけではない。リベラル派は貧困層をはじめとする社会的弱者に政府が積極的に手をさし伸べるべきだと主張する。〕
 
●正義の二原理(p165)
 アメリカの哲学者ジョン・ロールズ『正義論』(1971年)。
 【第一原理】 各人は、すべての人の同様な自由の体系と両立しうる、平等な基本的諸自由のもっとも広範な全体系に対する対等な権利をもつべきである。
 【第二原理】 社会的・経済的不平等は、次の二条件を充たすように編成されなければならない。
  (a)そうした不平等が、正義にかなった貯蓄原理に相反することなく、もっとも不遇な人びとの最大の便益に資するように。
  (b)公正な機会均等の諸条件のもとで、すべての人に開かれている職務と地位に付帯するように。
 
●マキシミン・ルール(p170)
 数ある選択肢の中から、最悪な状態になった時のその状態がもっともましなものを選ぶ、という戦略。例えば、「もっとも恵まれない人たちにとって最善の状態となる社会を選ぶ」ということ。
 
●無知のヴェール(p197)
 ロールズ『正義論』より。
 「この状況の本質的特徴のひとつに、誰も社会における自分の境遇、階級上の地位や社会的身分について知らないばかりでなく、もって生まれた資産や能力、知性、体力その他の分配・分布においてどれほどの運・不運をこうむっているかについても知っていないというものがある。さらに、当事者たちは各人の善の構想やおのおのに特有の心理的な性向も知らない、という前提も加えよう。正義の諸原理は〈無知のヴェール〉に覆われた状態のままで選択される。諸原理を選択するにあたって、自然本性的な偶然性や社会情況による偶発性に違いが結果的にある人を有利にしたり不利にしたりすることがなくなる、という条件がこれによって確保される。全員が同じような状況におかれており、特定個人の状態を優遇する諸原理を誰も策定できないがゆえに、正義の諸原理が公正な合意もしくは交渉の結果もたらされる。」
 自分にとって全く無知な状態に置かれた時、人びとは最善となる社会正義の原理を選択すると考えられる。
 
(2020/4/5)KG
 
〈この本の詳細〉


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