SSブログ

フットボール風土記 Jクラブが「ある土地」と「ない土地」の物語
 [スポーツ]

フットボール風土記  
宇都宮徹壱/著
出版社名:カンゼン
出版年月:2020年12月
ISBNコード:978-4-86255-574-8
税込価格:1,870円
頁数・縦:285p・19cm
 
 JFLや、全国に9つある地域リーグで活動するサッカーチームを取材したルポルタージュ。地方ならではの魅力がいっぱい詰まった12チームを紹介する。
 しかし、なぜタイトルが「サッカー」ではなく「フットボール」なのか? 前作は「サッカー」と銘打っているのに……。「ふどき(風土記)」との語呂合わせか??
 
【目次】
第1章 かくも厳しき全国リーグへの道―全国地域サッカーチャンピオンズリーグ‐2016年・霜月
第2章 親会社の都合に翻弄されて―三菱水島FC‐2017年・睦月
第3章 県1部からJリーグに「否」を叫ぶ―いわきFC‐2017年・長月
第4章 女川町に     JFLクラブがある理由―コバルトーレ女川‐2018年・睦月
第5章 ワールドカップとJFLをつなぐもの―FC今治‐2018年・文月~霜月
第6章 世界で最も過酷なトーナメント―全国社会人サッカー選手権大会‐2018年・神無月
第7章 サッカーを変える、人を変える、奈良を変える―奈良クラブ‐2018年・師走
第8章 アマチュア最高峰であり続けるために―FCマルヤス岡崎‐2019年・卯月
第9章 最大の「Jクラブ空白県」でのダービーマッチ―ホンダロックSC&テゲバジャーロ宮崎‐2019年・皐月
第10章 なぜ「71番目のクラブ」は注目されるのか?―鈴鹿アンリミテッドFC‐2019年・水無月
第11章 北信越の「Fの悲劇」はなぜ回避されたのか?―福井ユナイテッドFC‐2019年・文月
第12章 クラブ経営の「属人化」をめぐる物語―北海道十勝スカイアース‐2019年・葉月
第13章 令和最初のJFL昇格を懸けた戦い―全国地域サッカーチャンピオンズリーグ‐2019年・霜月
第14章 蝙蝠と薔薇の街で胎動する「令和的戦略」―福山シティフットボールクラブ‐2020年・文月
第15章 多様性の街から「世界一のクラブ」を目指す理由―クリアソン新宿‐2020年・文月~葉月
 
【著者】
宇都宮 徹壱 (ウツノミヤ テツイチ)
 1966年生まれ、東京都出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了。TV制作会社勤務を経て97年より写真家・ノンフィクションライターとしての活動を開始。2010年に『フットボールの犬』(東邦出版)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞、2017年に『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ目指さないクラブ』(カンゼン)で第4回サッカー本大賞受賞。16年より『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信中。
 
【抜書】
●三菱水島FC
 1946年、三菱自動車工業株式会社水島製作所のサッカー部として誕生。
 JFLで5シーズンを戦った後、2009年にJFL退会。退会後も同じ名称で存続し続けたのは、三菱水島のみ(国士舘大学を除く)。
 県リーグ1部からの再スタートとなった。残ったメンバーは7人。必死でかき集めたが、監督の熊代正志もメンバー登録し、55歳で1試合だけ途中出場でピッチに立った。
 1年で中国リーグに復帰。以後、JFLへの昇格は、会社の事情で辞退し続ける。
 
●いわきFC
 クラブのスローガン……日本のフィジカルスタンダードを変える。
 代表取締役社長、大倉智。1969年生まれ。早大卒、日立製作所入社。柏レイソル、ジュビロ磐田、ブランメル仙台、などでプレー。引退後、ヨハン・クライフ国際大学でスポーツ・マネジメントを学び、セレッソ大阪のチーム統括ディレクター、湘南ベルマーレ強化部長、同GM、同代表取締役社長(46歳)を歴任。
 アンダーアーマー日本総代理店の(株)ドーム代表取締役CEOの安田秀一から誘われ、いわきFCに。
 選手たちは、ドームいわきベースで働く。いわき市に、30人の雇用を確保した?
 練習場の「いわきFCフィールド」(人工芝)は、日時限定で一般に無料開放。子供たちの遊び場に。
 クラブハウスの「いわきFCパーク」は、商業複合型。アンダーアーマー直営のアウトレットショップ、アトランティック・カーズ(ロータス、アストンマーティンなどを扱う販売店)のショールーム、英会話のフリーコム、浅草今半、寿司正、矢場とん、などが入る。
〔 いわきFCパークといわきFCフィールド。両施設を訪れてみて、気づいたことが3点ある。第1に、クラブの巧みなイメージ戦略。第2に、スポーツ施設を通してお金が回る仕組み作り。そして第3に、地域コミュニティの場としての機能である。〕
 「いついつまでにJリーグ入り」という考え方はしない。
 
●人工芝(p65)
 スタジアム建設に関する、いわきFC((株)ドーム)安田の発言。
 「スタジアムについては、最初から『ランボルギーニ』を目指します。つまり、日本ではあり得ないような、機能的なスタジアムをドンと作る。ただし、サスティナブル(持続可能)なスタジアムを作るためには、Jリーグが推奨する天然芝がネックになるのです。JFLでも、天然芝でないと試合ができないですよね。ですから、そこまでたどり着いたら『人工芝でもいいじゃん』って説得したいと思っています。いずれにせよ、日本のスタジアム改革の雛形にになるものを、僕らが作らなければならない。それくらいの使命感を持っていますよ」
 
●コバルトーレ女川
 東北大震災後、女川町運動公園が練習場として使えなくなり、石巻の人工芝グラウンドで練習するようになった。フルコートの四分の一しかなく、そこで11対11の練習をしていたので、正確なパスサッカーが身についた。
 創設者は、石巻日日新聞代表取締役社長の近江弘一。原発の補助金により充実したスポーツ施設を生かした「スポーツコミュニティ構想」を提唱。
 創設は2006年。初代監督は、元日本代表の藤島信雄。
 スポンサーの高政は、地元の水産加工業。選手を正社員として雇用。引退後、管理職になる者も。
 
●FC今治
 1976年、旧大西町に設立された「大西サッカークラブ」が源流。
 1991年、越智郡を活動範囲に加え、「今越(いまお)FC」に改名。
 2004年、「愛媛しまなみフットボールクラブ」。
 2009年、「愛媛FCしまなみ」に改称、愛媛FCのセカンドチームとなる。
 2012年、「FC今治」として独自の活動を開始。
 2014年11月、岡田武史がクラブ代表に就任。運営会社(株)ありがとうサービスの代表取締役井本雅之が、岡田の大学時代の先輩だった。
 
●奈良クラブ
 それまでスポンサーだった中川政七商店会長、13代目中川政七が、2018年10月、運営会社の代表取締役社長に就任。(2020年、入場者数水増しが発覚、Jリーグ百年構想クラブの資格を解除条件付き失格となり、社長を辞任。)
 「サッカーを変える、人を変える、奈良を変える」というビジョンを抱え、ブランディング重視で様々な取り組みを行う。たとえば、中川政七商店が手掛けてきた、日本の伝統文様を前面に押し出したユニフォームのデザイン。蔦蔓紋様、霰小紋、大和蹴球吉祥文などを次々と採用。
 昇格請負人の岡山一成が、「奈良劇場総支配人」として2013年より5年間プレー。JKLに昇格。
 
●FCマルヤス岡崎
 2019年、元日本代表の森山泰行が、49歳で、選手兼チームディレクターとして現役復帰。08年にFC岐阜で現役引退後、浦和学院高校サッカー部で5年間、監督を務めていた。他に、茂庭照幸(37歳)も、C大阪から移籍。
 企業チームながら、35名のうち18名がプロ契約選手。
 県営だった竜北総合運動場が岡崎市に移管され、2021年、オープン。その日まで、JFLにいたい。
 
●テゲバジャーロ宮崎
 門川クラブという、人口1万8千人の漁師町の少年サッカーチームがルーツ。1965年誕生。
 2000年、現(?)GMの柳田和洋が地元に戻り、門川クラブのOBチームの選手兼監督に就任。03年に県1部に昇格、08年と09年に連覇。09年に拠点を門川町から宮崎市に移し、クラブをNPO法人化する。
 2010年に九州リーグ昇格。
 2015年、「テバジャゲーロ宮崎」に改称、Jリーグを目指すことに。チームも株式会社に。
 2017年、石崎信弘を監督に迎え、森島康仁や高地系治ら元Jリーガーを補強、18年にJFL昇格。
 
●鈴鹿アンリミテッドFC
 2019年、スペイン人のミラグロス・マルティネス・ドミンゲス、愛称ミラが33歳で監督に就任。UEFAプロライセンスを取得した女性監督。
 2016年から、女性向けの美容エナジードリンク「お嬢様聖水」がメインスポンサー。クラブ社長の山岡竜二が東京メトロの釣り広告で見つけ、調べたら製造元が鈴鹿にあった。
 2020年1月、ポイントサイト「アメフリ」を運営する(株)エムフロムとの間でネーミングスポンサー契約を締結、クラブ名を「鈴鹿ポイントゲッターズ」に変更。
 
●北海道十勝スカイアース
 2015年1月、藤川孝幸がソーシャルビジネス・総合スポーツサービス企業のリーフランス(株)に入社。十勝に総合型スポーツクラブを作ることを提案。2年後、スカイアースの社長に就任。2018年、胃ガンのため56歳で死去。
 2019年から、城彰二がGMに就任。
 
●クリアソン新宿
 2005年設立。立教大学の同好会のOBチームが主体。
 名前の由来は、創造=Creationのポルトガル語。「感動を創造する」から。
 Jを目指すクラブだが、新宿区にはスタジアムがない。「新国立競技場」をホームにすればいい?
 練習は週3回、落合中央公園で。水木の夜、土の朝。
 
(2021/1/16)KG
 
〈この本の詳細〉



nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。