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日本経済の見えない真実 低成長・低金利の「出口」はあるか
 [経済・ビジネス]

日本経済の見えない真実 低成長・低金利の「出口」はあるか
 
門間一夫/著
出版社名:日経BP
出版年月:2022年9月
ISBNコード:978-4-296-00121-7
税込価格:2,640円
頁数・縦:305p・20cm
 
 2%物価目標未達のアベノミクスは失敗だったのか? さまざまな観点からアベノミクス後の日本経済を概観する。
 日本経済の現状を整理できる。
 
【目次】
第1章 アベノミクス景気の日本経済
 金融政策の大転換
 成長率が最低の景気回復
  ほか
第2章 正しい「成長戦略」の難しさ
 日本の生産性は低いという通説
 生産性上昇率は米欧も低い
  ほか
第3章 2%物価目標と異次元緩和
 「日銀は変わった」というメッセージ
 本当は異次元ではなかった異次元緩和
  ほか
第4章 強まる金融政策の限界
 自然利子率の低下
 金利の実効下限とリバーサルレート
  ほか
第5章 重要性を増す財政の役割(日本の財政は破綻するのか
 金利が上昇する「何らかの理由」とは
  ほか
 
【著者】
門間 一夫 (モンマ カズオ) 
 みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト。1957年生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、日本銀行入行。1988年ペンシルバニア大学ウォートン校経営大学院MBA取得。日銀では、調査統計局長、企画局長を経て2012年5月金融政策担当理事に就任し、白川方明総裁の下で「2%物価安定目標」の採択に至る局面を担当。2013年3月から国際担当理事として、G7やG20などの国際会議で黒田東彦総裁を補佐。2016年6月から現職。
 
【抜書】
●合成の誤謬(p56)
 個々の企業は合理的な経営判断のもとに、必要でない人件費を抑制してきた。しかし、個々の企業は合理的でも、全体として「人件費抑制⇒個人消費の停滞⇒国内市場の低迷」という連鎖が働く。市場が冷え込めば、企業にとって国内の投資や人件費を抑制することがますます合理的になる。
 ミクロの合理的な判断がマクロでは国内市場の縮小スパイラルを生む、という「合成の誤謬」が働いてきた。
 
●貧富の格差(p65)
〔 逃げられないのは労働者・消費者である。経済と金融のグローバル化は、国境を容易に越えられる者とそうでない者を分け、後者に負担を寄せていく力として作用してきた可能性がある。国境を容易に越えられる企業にとっては、グローバル化によって企業価値を最大化する選択肢が広がったのであり、合法的な租税回避行動もそのひとつである。〕
 
●サービス産業の生み出す価値(p89)
〔 しかし、サービス産業が生み出す価値は、それぞれの国やライフスタイルと密接不可分である。「品質もそろえた同じ価値サービス」など、国が違えば存在しない場合が多い。米欧諸国間の比較はまだよいとしても、日本のように米欧と生活習慣が異なる国は比較が難しい。たとえば日本の温泉旅館や寿司屋の生産性を、米国の何とどう比べたらよいのだろうか。日本の医療体制はコロナ禍では様々な課題に直面したが、少なくとも平時の医療サービスが日本ほど便利な国はない。町の交番を含めた日本の治安サービスは世界に冠たる質を誇るとされる。「便利」「安全」「正確」「清潔」がもたらす価値は、生産性の国際比較には反映されにくい。〕
 
●やりきった(p156)
〔 ところが、異次元緩和の開始から数年経過した時点で、二つの重要な事実が明らかになった。それは、①「全部盛り」の異次元緩和でも2%物価目標の達成は難しい、②2%物価目標が未達でも人手不足が深刻化するほど経済は改善する、の二つである。つまり、2%物価目標は「できもしないし、要りもしない」ことが明らかになった。もし、日銀が中途半端な緩和しか行っていなければ、「もっと大胆な緩和を行っていれば2%物価目標は達成できたはずであり、それによって日本経済はもっと良くなっていたはずだ」という誤った認識が、今も残っていた可能性が高い。〕
 
●ニュメレール(p219)
 価値尺度材。相対価格の基準となる財のこと。
 現実の世界では、金利が常にゼロとなる貨幣(=現金)が基準財(ニュメレール)の役割を果たしている。
 現金をなくしてデジタル通貨に完全に置き換える時代が来たら、デジタル通貨に決して金利を付けてはいけない。どんな未来が来ても、相対価格、相対金利の基準となる絶対座標軸は、何か一つ必要である。現金が消えるのであれば、その役割を引き継ぐデジタル通貨の金利は、永遠に「ゼロ」に固定しなければならない。
 「現金をなくせば金融緩和の地平が広がる」のではなく、「現金をなくしたらデジタル通貨に金利はつけられない」のである。
 
(2024/3/22)NM
 
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中二階の原理 日本を支える社会システム
 [経済・ビジネス]

中二階の原理 日本を支える社会システム
 
伊丹敬之/著
出版社名:日経BP 日本経済新聞出版
出版年月:2022年8月
ISBNコード:978-4-296-11495-5
税込価格:1,980円
頁数・縦:292p・20cm
 
 二階の「原理原則」だけだと、一階の「現場」にはねじれが生じ、思うように成果が上がらないし、社会が不安定になる。そこで必要になってくるのが、二階と一階をつなぐ「中二階の原理」である……。
 
【目次】
序章 空間を豊かにする中二階
第1章 日本という国の中二階
第2章 革命と変動を受容する社会構造の中二階
第3章 現場の情報と感情へ配慮―経営戦略の中二階
第4章 タテ・ヨコともに距離を短く―組織マネジメントの中二階
第5章 現場のエネルギーを引き出す―企業統治の中二階
第6章 ヒトのネットワークの重視―市場経済システムの中二階
終章 中二階発想のすすめ
 
【著者】
伊丹 敬之 (イタミ ヒロユキ)
 国際大学学長、一橋大学名誉教授。1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、72年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(Ph.D.)、その後一橋大学商学部で教鞭をとり、85年教授。東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て、2017年9月より現職。この間スタンフォード大学客員准教授等を務める。
 
【抜書】
●天皇の在位年数(p42)
 江戸幕府が天皇家に与えた経済的待遇は、2万石の大名相当の予算だった。
 戦国時代には在位期間が長い天皇が何人もいて、20年を超すのも珍しくなかった。譲位したくても次の天皇が即位の儀式を行う費用を出す人がいなかったため。そのため、先代の死によっていやおうなしに新しい天皇が皇位につくことになった。
 後柏原天皇(在位1500-1526年)の場合、後土御門天皇が崩御して即位したものの、将軍などの寄付によって即位の儀式をあげられたのは、即位の21年後だった。
 
●マクロとミクロの中二階の原理(p95)
 ・廃藩置県
  マクロの共同体の中二階:国家近代化への危機感
  ミクロ共同体の中二階:藩共同体の維持
 ・農地改革
  マクロ共同体の中二階:農業民主主義への理念
  ミクロ共同体の中二階:村落共同体の平和
 ・コロナ自粛
  マクロ共同体の中二階:国全体の感染拡大への危機感
  ミクロ共同体の中二階:周囲への一配慮・一手間
 
●神の隠す手(p112)
 アルバート・ハーシュマンの「神の隠す手の原理」、『development Projects Observed』(1967年)。普通の人間の困難予測能力と、自分たちが実は秘めている問題解決能力の間にはギャップがある。
〔 そのギャップとは、挑戦的な企てから「どんな困難が生まれるか」を予想する能力については多くの人がかなりすぐれているが、いったん困難に遭遇してしまった後の自分たちの問題解決能力をきちんと予測する能力は意外に小さい。つまり、困難だけは予測できるが、それを解決する知恵と努力が事後的に出てくることを事前には予測できない人が多い、というギャップである。〕
 「神の隠す手」とは、「想定外の困難の発生の可能性」と「その困難に対応する人間の解決能力の可能性」の二つをともに人間の目から隠している神の手。しかし、想定内の困難の発生の可能性については、人間の目から隠されないことが多いので、多くの人が挑戦的な企てがもたらす困難をあれこれと指摘できる。そのため、「危険なことが多いからそんな企てはやめよう」という結論になる。
 しかし、ハーシュマンが世界銀行が援助した経済発展プロジェクトを1960年代に現地調査。成功したプロジェクトの多くが、「想定外の困難にプロジェクト開始後にぶつかり、しかしそれを克服して事前の想定とは少し違う形で成功する」という共通のパターンを持っていた。
 
●シェアリングの平等(p142)
 デロイトトーマツが公表した2018年度のCEOの報酬の国際比較。中央値。
 米国15.7億円、日本1.4億円、英独仏8.8億円。
 日本企業のシェアリングは、「平等性」が米国よりかなり大きい。典型的な米国企業では、階層上位の人間にカネだけでなく権力も情報も集中することが多い。
 
●産業民主主義(p201)
 戦後の経済的混乱の中で必死に生き残りと復興を目指していた日本企業にとって、労使対立などしている余裕はなかった。労使協調路線が自然に生まれてきた。「現場の従業員の声を重視する経営」を実現させ、当時の時代の潮流であった「産業民主主義」の具体化でもあった。現場の声を民主的に経営に反映させる、ということ。
 
●三井組(p201)
 江戸末期の代表的商家であった三井組(越後屋呉服店を源流とする三井財閥の原点企業)が、明治初期に日本で2番目の株式会社として法人化された。
 その会社の株式の4分の1を番頭・手代が持つこととなった。かなりの比重の従業員持ち株会社が、日本の株式会社の出発点だった。
 〔従業員中二階は、日本企業の共同体意識の自然の発露ともいえそうである。〕
 
●ドイツの労働共同決定法(p196)
 1976年制定。
 株式会社で従業員2000人以上の企業は、監査役会と執行役会を設け、執行役会がマネジメントを担当し、その執行役の任免権と企業の基本方針の決定権を監査役会がもつ。監査役会のメンバー構成は、株主代表と従業員代表を同数にしなければならない。
 従業員2000人未満の企業では、従業委代表の比重は三分の一。
 
●参加と所属(p2127)
 日本の雇用は「組織への所属」。正確には、「組織への参加から始まり、多くの場合に所属に移行する」。
 米国の雇用は「仕事への参加」。
 参加……意図をもって(その意味で限定された目的を達成するために)起きる。関係の期間は長期になる必然性は小さく(目的を達成すれば参加をやめてもいい)、関係も浅い。
 所属……長い期間にわたる関係。目的は明確に意識された単一のものというわけではなく、関係は深くなり、組織に属する他の人びととの付き合いも深くなる。その結果、しがらみも生まれるが、その一方で人間的な居心地の良さも生まれやすい。
 日本の演劇は、「劇団に所属」。
米国の演劇は、「公演に参加」。プロデューサー方式。プロデューサー・演出家・作家というトップを構成する少数のメンバーが一つの演劇公演のために俳優やスタッフを採用する。
 
●人本主義(p234)
 日本の市場経済システムでは、三つの基礎概念で共同体的側面が色濃く存在する。
 1.企業の概念
 2.市場取引の概念
 3.企業内組織編成の概念
〔 共同体原理のエッセンスは、おそらく二つある。一つは、その共同体に属するヒトのネットワークの安定性が高いということ。そして第二に、そこでのヒトとヒトとの関係性のあり方がたんに個々の利害追求だけでなく、互恵的・利他的色彩がかなりあること。
 こうした日本の市場経済システムの原理を、私はあえて「人本主義」と呼んできた。資本主義に対比する意味の私の造語である。それは、ヒトのネットワークの関係性の安定という側面に注目して、ヒトのネットワークを共同体的につくるようにする、「人が本」という原理を大切にしてきた日本の市場経済システム、という意味での造語である。〕
 
●経営者(p239)
 二階のカネの原理と、中二階のヒトの原理、その二重がさねが人本主義市場経済の原理的特徴。
 そこには、「人間の顔をした資本主義」というメリットがある一方、「人間の弱さを秘める資本主義」になってしまうという危険性もある。
 副作用として、⓵ヒトのネットワークの安定がぬるま湯をもたらす、②二階の原理と中二階の原理の衝突、といった危険がある。
 人本主義の弱さを退治するための鍵は、「経営者の強さ」が握っている。人間関係のしがらみ、安住への願望、思考停止、決断の空白、後ろめたさ、などを断ち切る強さをトップが持たなければ、システム全体はきちんと動かない。
 
●人本主義市場経済の世界的意義(p247)
〔 人本主義の中二階をなぜ維持した方が望ましいかについての基本の論理は、すでに説明した経済合理性の論理であるが、もう少し視野を広げると、さらに二つの「世界的意義」が日本の人本主義市場経済にはあると私は思う。
 一つの世界的意義は、日本の人本主義市場経済モデルが「純粋な市場経済」の崩壊の危機への防波堤となりうる、という意義である。第二の世界的意義は、アメリカ型市場経済と中国型市場経済の間の第三の道を日本の人本主義経済モデルが提供できる、つまり世界的に市場経済の多様なありかたの候補の一つを日本が提供できる、という意義である。〕
 
(2023/11/30)NM
 
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敵対的買収とアクティビスト
 [経済・ビジネス]

敵対的買収とアクティビスト (岩波新書)
 
太田洋/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1973)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-00-431973-3
税込価格:1,100円
頁数・縦:259p・18cm
 
 敵対的買収について、直近の実例を豊富に取り入れて論じる。日本と欧米との違いについても幅広く言及。
 ちなみにアクティビストとは、「その潜在的資産価値に比較して株価が割安な対象会社の株式の数%~数十%を取得して、対象会社に経営の効率化や株主還元の強化等の要求を行ってその株価を引き上げる等したうえで、数か月から数年後に保有株式を売却してリターンを上げる投資家」(p.50)とのことである。俗に、「物言う株主」とも。
 
【目次】
第1章 敵対的買収とは
第2章 アクティビストとは
第3章 敵対的買収の歴史―アクティビストの登場から隆盛まで
第4章 買収防衛策とはどのようなものか
第5章 各国は敵対的買収をどのように規制しようとしているか―法的規制と判例の動向
第6章 敵対的買収と株主アクティビズムの将来
 
【著者】
太田 洋 (オオタ ヨウ)
 弁護士・NY州弁護士(西村あさひ法律事務所パートナー)。1991年東京大学法学部第二類卒業、1993年弁護士登録、2000年米国ハーバード・ロースクールLL. M.(法学修士号)取得、2001年米国NY州弁護士登録。法務省民事局付(任期付任用公務員)、京都大学法科大学院非常勤講師、東京大学大学院法学政治学研究科教授などを歴任。金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」委員、経済産業省「最低税率課税制度及び外国子会社合算税制のあり方に関する研究会」委員、同「対日M&A課題と活用事例に関する研究会」委員、同「公正な買収の在り方に関する研究会」委員などもつとめる。日本経済新聞「2022年に活躍した弁護士ランキング」企業法務全般(会社法)分野第1位など受賞多数。
 
【抜書】
●閉鎖会社(p2)
 株式会社であっても、その株式全部について、その譲渡に会社の承認が必要とされている会社。全部譲渡制限会社ともいう。
 
●エージェンシー問題(p7)
 買収対象会社の取締役(株主からすれば会社の経営を委託している代理人=エージェント)が、株主とは異なる独自の利害(典型的には、取締役の職にとどまり続けたいという利益。このような利益を「保身の利益」という)を有しているため、株主の意思に反した行動をとる可能性があるという問題。
 
●グリーンメイリング(p28)
 真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず、ただ株価を釣り上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行うこと。ライブドア対ニッポン放送事件に関して東京高裁が示した、対象会社の中長期的な企業価値ないし株主共同の利益を毀損する四つの類型の一。
 恐喝を意味する「blackmail」のblackを、ドル札が緑色をしていることからgreenに入れ替えて作った造語。
 
●パブリック・ベネフィット・コーポレーション(p234)
 基本定款または付属定款に、通常の株式会社にみられる事業目的とともに、社会問題や環境問題への取り組みなどの公益的目的を記載した会社。
 取締役会は、そのような公益的目的の実現に取り組むべき信認義務を負っているものとされる。株主は、取締役がかかる公益的目的の実現に反する行動などをとった場合には、差し止め命令による救済を求めることができる。
 2010年のメリーランド州を皮切りに、米国各州の会社法において導入されている。2022年4月時点で全米40州およびコロンビア特別区。全米の上場会社の半数以上が設立準拠法として選択しているデラウェア州の会社法でも、13年7月に法制化されている。
 
(2023/10/31)NM
 
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データにのまれる経済学 薄れゆく理論信仰
 [経済・ビジネス]

データにのまれる経済学 薄れゆく理論信仰
 
前田裕之/著
出版社名:日本評論社
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-535-54038-5
税込価格:2,420円
頁数・縦:328, 14p・19cm
 
 経済学における理論と実証の相克を検証する。
 
【目次】
序章 データの波にのまれる経済学界
第1章 ノーベル経済学賞と計量経済学、つかず離れずの歴史
第2章 主役に躍り出た実証分析
第3章 因果推論の死角
第4章 RCTは「黄金律」なのか
第5章 EBPMの可能性と限界
第6章 消えゆくユートピア
 
【著者】
前田 裕之 (マエダ ヒロユキ)
 学習院大学客員研究員、川村学園女子大学非常勤講師、NIRA総合研究開発機構「政策共創の場」プロジェクト・パートナー。1986年東京大学経済学部卒、日本経済新聞社入社。東京経済部記者、経済解説部編集委員などを経て2021年に独立し、研究・教育や執筆活動に取り組む。
 
【抜書】
●150人(p16)
 アマゾンは、150人以上の経済学博士を雇用している(2019年)。チーフエコノミストはパトリック・バジャリ(1969年~)、ワシントン大学の経済学教授。
 IT企業で働く経済学の専門家集団を「デジタル経済学者」、「テック経済学者」と呼ぶ向きもある。
 
(2023/10/29)NM
 
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ビジネスと空想 空想からとんでもないアイデアを生みだす思考法
 [経済・ビジネス]

ビジネスと空想 空想からとんでもないアイデアを生みだす思考法
 
田丸雅智/著
出版社名:クロスメディア・パブリッシング
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-295-40805-5
税込価格:1,738円
頁数・縦:260p・19cm
 
 著者は、ショートショート作家でありながら、妄想・空想力を鍛えるワークショップを開催している。そのワークショップの手法を公開し、空想力の育て方とそれをビジネスの発想力に変える方法を説く。
 妄想したことをショートショートにまで仕上げる意義は、言語化だという。何事も言語化し、意識にのぼらせて客観視できるようにすることが次のステップにつながる。
 また、面白かったのが入山章栄氏との対談。入山氏も「田丸めっそっど」によってショートショートを作ってみせる。豚大学という妄想なのだが、二人のやり取りがテンポよく展開し、トントン拍子で話が進んでいく
 
【目次】
第1章 誰にでも空想する力がある
第2章 プロの小説家は、いかにして空想やアイデアを生みだしているのか?
第3章 “ワークショップ”「ショートショート発想法」―執筆パート
第4章 “ワークショップ”「ショートショート発想法」―読み解きパート
第5章 ショートショートをさらに活用するために
第6章 “特別対談”全員に反対されるアイデアから、イノベーションは生まれる 田丸雅智×入山章栄
 
【著者】
田丸 雅智 (タマル マサトモ)
 1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。
 
【抜書】
●入山章栄(p220)
 早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授。慶應義塾大学経済学部卒業。三菱総合研究所などを経て、2008年に米国ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.Dを取得。同年より、ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。主な著書に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)。
 
●妄想の時代(p254)
 入山「大事なのは、自分の妄想力に自信を持つことです。少し前ですが、『最もクリエイティブな国はどこか?』という意識調査をアドビシステムズ社が行ったところ、1位はなんと、日本だったんですよ。逆に『自分の国、自分の国の国民はクリエイティブだと思いますか?』という質問では、日本は最下位だったんです。
 つまり、日本は本当は世界からクリエイティブと評価されているのに、自分たちに自信がないだけなのです。日本のどの部分が世界からクリエイティブだと評価されているかというと、マンガやアニメがメイン。だから、そういう心理的安全性があるところでは、日本人はすでに妄想を表現しているわけです。問題は、それ以外の、『妄想してはいけない』と勝手に思いこまれているテリトリーが多すぎることなのでしょう」
 田丸「ぼくも、講座やワークショップで、「日本人は空想ネイティブだ』と強く伝えています。ですから、いま入山さんがおっしゃったように、空想・妄想をしてはいけないという思いこみがなくなるといいなと思います」
 入山「はい、あとは自信を持って、のびのび妄想を習慣化しましょうよ。やはり、これからは妄想の時代です」
 
(2023/10/14)NM
 
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人新世の経済思想史 生・自然・環境をめぐるポリティカル・エコノミー
 [経済・ビジネス]

人新世の経済思想史: 生・自然・環境をめぐるポリティカル・エコノミー
 
桑田学/著
出版社名:青土社
出版年月:2023年2月
ISBNコード:978-4-7917-7534-7
税込価格:3,080円
頁数・縦:327, 25p・19cm
 
 「エコノミー」という学が、元来、人間の活動のみを対象とするものではなく、もっと広い概念であったことを歴史的にひもとく。しかし、結局のところそれらの研究は、現代の経済学において主流とはならなかったようだ。
 
【目次】
序章 エコノミーの脱自然化、人新世の起源
第1章 化石経済と熱力学の黙示録
第2章 生命と富のオイコノミア
第3章 植物学者が見た生命都市のエコノミー
第4章 富のエコノミー/負債の反エコノミー
終章 人間以上のエコノミーに向けて
 
【著者】
桑田 学 (クワタ マナブ)
 1982年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科特任研究員などを経て、福山市立大学都市経営学部准教授。
 
【抜書】
●オイコノミア(p20)
〔 エコノミーという語は、古代ギリシャの「オイコノミアOikonomia」に由来し、それはクセノフォンやアリストテレスのテクストに典型的に現れるように、家長による家oikos(奴隷、家畜、農作業用具を含む生存の場)の秩序ある管理運営、すなわち「家政」を意味した。ただし、クセノフォンにおいてオイコノミアはすでに、家と財産の善き管理にとどまらない意味――神による宇宙の万物の管理運営――をもっており、その後、中世にはストア派の哲学やキリスト教の思想、弁論術・修辞学において固有の意味づけがなされ、さらに初期近代の博物学や生理学など自然哲学の領域における「アニマル・エコノミー」(動物の身体組織の秩序)や「ネイチャーズ・エコノミー」(自然の秩序・摂理)への拡張を経て、ようやく一八世紀後半以降、「ポリティカル・エコノミー」(政治経済学)へいたりついた、といわれる。麻生博之はこうした歴史的に複雑な経緯をエコノミー概念に通底する意味を、(その難しさを踏まえつつ)次のように要約している。「エコノミーとは、いわば、「家長」(家父であれ、神であれ、統治者であれ、個々人が有するとみなされるある種の「合理性」であれ)による、「家」の境界内のものごと、そして時間的な、あるいは有限なものごとに対する秩序だった「統治」を、またそれらのものごとを無駄なく巧妙に配置する調和した「秩序」そのものを、さらにはそうした統治が可能であり、そうした秩序が存在すると見なしたうえで、そのありようを探ろうとする実践的/理論的な「学」の形態を、意味するものといえる」。ここからもわかるように、歴史的に見れば、エコノミーは、①対象に内在する原理にそくした統御・統治、②統御・統治の対象となる秩序ないし配置、③統御する学ないし実践的な術、という複合的な意味をもつ概念であることをまず押さえておく必要がある。〕
 麻生博之編『エコノミー概念の倫理思想史的研究』二〇〇七年度-二〇〇九年度科学研究費補助金研究成果報告書・補足論集、2010年、p.ⅰ。
 
(2023/5/16)NM
 
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脱「中国依存」は可能か 中国経済の虚実
 [経済・ビジネス]

脱「中国依存」は可能か-中国経済の虚実 (中公選書 132)
 
三浦有史/著
出版社名:中央公論新社(中公選書 132)
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-12-110133-4
税込価格:1,980円
頁数・縦:282p・20cm
 
 経済において「中国依存」からの脱却がいかに難しいかを、中立的に論じる。
 そんな中、日本はASEANとの関係を深めるべきであると提案する。
 
【目次】
序章 中国依存から出発する中国経済の見方
第1章 米中通商摩擦―脱「中国依存」の行方
第2章 貿易依存度の低下が示す内製化の進展
第3章 中国はなぜ米国との対立を厭わないのか
第4章 米中対立の行方
第5章 不動産バブル崩壊を防げるか
第6章 過剰債務体質を改善できるか
第7章 共同富裕は格差を是正するか
第8章 対外融資と債権国としての責任
終章 付加価値貿易からみた日本の製造業
 
【著者】
三浦 有史 (ミウラ ユウジ)
 日本総合研究所調査部上席主任研究員。1964年、島根県に生まれる。早稲田大学社会科学部卒業。日本貿易振興会(JETRO)入会、初代ハノイ事務所所長などを経て、現職。著書に『ODA(政府開発援助)―日本に何ができるか』(中公新書、渡辺利夫氏との共著)、『不安定化する中国―成長の持続性を揺るがす格差の構造』(東洋経済新報社、第6回樫山純三賞受賞)などがある。
 
【抜書】
●ロックイン効果(p35)
 集積が新たな集積を呼ぶこと。正のフィードバック。
 脱「中国依存」が進まない理由のひとつ。
 
●貿易大崩壊(p43)
 2009年の金融危機時に、世界の貿易の依存度が大幅に低下した。GDPに対する財・サービス貿易(輸出入額の合計)の比率が、前年の61.6%から52.5%に落ちた。
 同依存度はその後回復したが、2011年から再び緩やかに低下し、2020年には新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、51.6%となった。
 
●双循環(p57)
 2020年5月の共産党中央政治局常務委員会で提議された概念。
 米国との通商摩擦激化や新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、輸出に依存した成長パターンが続かないことに対する不安から、海外市場だけでなく国内市場にも目を向けようという政策。
 
●中国模式(p64)
 中国の経済発展の経験を積極的に評価すること。経済発展の持続可能性と第三国への移植可能性を肯定する概念。
 2000年代後半に米国だけでなく、中国においても盛んに議論された。
 
●私営企業(p108)
 民営企業の一形態で、国有資本の割合が最も少ない小規模企業群。
 
●集団所有(p112)
 中国では、土地は全人民すなわち国家の所有である。
 住宅の所有者は、期限付きの土地使用権を持っているに過ぎない。都市の住宅は、新築、中古ともに需要と供給に基づく市場価値で取引される。
 農地は集団所有。農民に期限付きの耕作権が与えられているに過ぎないため、市場化の対象外。政府は食糧の安定供給を確保するため、農地の宅地転用を厳しく制限している。
 
●横たわり、内巻(p137)
 横たわり……物欲が乏しく、競争、勤労、結婚、出産に消極的な人たち。
 内巻……皆が競争を勝ち抜く努力をしているため、努力の価値が下がり、皆が疲弊するだけという「社会現象」。
 
●超大都市(p140)
 都市部の人口が1000万人を超える都市。
 北京、上海、長慶、広州、深圳、天津。
 さらに、2022年の「第7次全国人口普査」を受け、成都が加わった。
 
●ブラックスワン、灰色のサイ(p152)
 ブラックスワン……滅多に起こらないが、起これば壊滅的被害をもたらす問題。
 灰色のサイ……高い確率で起こり、甚大な被害をもたらすにもかかわらず、軽視されがちな問題。
 
【ツッコミ処】
・人口知能(p95)
〔 最新の通信規格5Gや人口知能(AI)など、中国の科学技術力に目をみはるものがあるのは確かだ。しかし、中国は容易に克服できないいくつかの弱点を抱えている。〕
  ↓
 「人口」知能!
 中国は科学技術以外にも、「人口」においても目をみはるものがあるのは事実。しかしながら最近の報道では、いよいよインドに抜かれるようだ。
 
(2023/4/21)NM
 
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民主主義の経済学 社会変革のための思考法
 [経済・ビジネス]

民主主義の経済学 社会変革のための思考法
 
北村周平/著
出版社名:日経BP
出版年月:2022年12月
ISBNコード:978-4-296-00134-7
税込価格:2,640円
頁数・縦:356p・20cm
 
 「新しい政治経済学の助けを借りて、民主主義の仕組みについての理解を深め」(p.11)るために書かれた書……とのことであるが、どうであろうか。
 経済学が得意とする「合理的に行動する個人」というテーゼに基づいて政治を理解しようという試みなのであろうが、まず、そういう観点から政治を分析しても成功しないだろう。机上の空論になるだけだ。理想的な世界を描写しよういう意図は分かるが、政治において、何のためにそんな世界を描く必要があるのだろう。
 また、数式を多用しているが、実体のない数式に意味があるのか? そもそもxにもyにも、代入できる実体がないし、解となる数字も出てこない。数式で物事を複雑にしておきながら、言いたいことはごく常識的な内容だったりもする。そこんところは、数式を衒学的に扱うのではなく、「言葉」を尽くしてシンプルに解説してほしいと思うのである。
 と、つまり、私は経済学という社会科学になじまない体質なのかもしれない。
 
【目次】
第1章 民主主義と経済の発展
第2章 大きな政府と小さな政府
第3章 選挙で最も影響力があるのは「真ん中の人たち」?
第4章 民主主義は政府を大きくする?
第5章 選挙で最も影響力があるのは「偏りのない人たち」?
第6章 誰が政治家になるのか?
第7章 政治家を働かせるための選挙?
第8章 政治家は選挙前に見栄を張る?
第9章 政治家たちの駆け引き
第10章 民主主義におけるメディア報道
 
【著者】
北村 周平(キタムラ シュウヘイ)
 1984年千葉県生まれ。大阪大学感染症総合教育研究拠点特任准教授(常勤)。 ストックホルム大学国際経済研究所Ph.D.(経済学)。専門は政治経済学、経済発展論。ストックホルム大学在学中に、ハーバード大学、イェール大学、LSEに留学。卒業後、ロチェスター大学ワリス政治経済研究所ポスドク、大阪大学大学院国際公共政策研究科講師、准教授を経て現職。
 
(2023/4/10)NM
 
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「文章起業」で月100万円稼ぐ! 副業・在宅OK、未経験からはじめられる
 [経済・ビジネス]

副業・在宅OK、未経験からはじめられる 「文章起業」で月100万円稼ぐ!
 
藤原将/著
出版社名:大和出版
出版年月:2021年3月
ISBNコード:978-4-8047-1877-4
税込価格:1,650円
頁数・縦:277p・19cm
 
 Webライターを目指す人の指南書。
 Webライター、すなわち他人から依頼を受けてWebページに文章を投稿・掲載してお金を稼ぐライター稼業で、最も多い仕事は、SEO記事の制作らしい。「ネット上に公開する集客用の記事」のことである。全体の9割に当たるという。その他の仕事には、製品紹介ページ、YouTubeの演者が読み上げる台本、電子書籍、SNS投稿(アカウント運用者の代筆)などがあるらしい(pp.32-34)。
 これらの仕事を、主に「ランサーズ」や「クラウドワークス」などのクラウドソーシングに登録して獲得するのである。
 
【目次】
序章 Webライターで稼ぐ人になる
 稼げるWebライターは、こうしてスタートしている
第1章 月収5万円を稼ぐ―副業レベル
 Webライターの仕事のメリット
 Webライターの主な仕事内容
  ほか
第2章 月収15万円を稼ぐ―副業・専業レベル
 専業Webライターで月収15万円を稼ぐ
 副業Webライターで月収15万円を稼ぐ
  ほか
 
【著者】
藤原 将 (フジハラ ショウ)
 合同会社ユートミー代表。高校卒業後、専門学校を経て美容師となる。経済的な苦難を解消するため、美容師1年目から副業としてWebライターの仕事を開始。その後、Webライターの仕事に集中するため美容師を退職し、4カ月後に月収50万円、9カ月後に月収100万円を達成。独立2年目に法人を設立する。現在は、ライティング全般やサイト構築、ディレクション業を行う。また、自身と同じように在宅ワークで稼ぐことが必要な人、本気で書くことを仕事にしたい人へ、自らの経験を元にした「稼げるWebライターになる方法」を指導している。
 
【抜書】
●2円(p254)
 〔専業Webライターとして活躍している知人は、おおよそ文字単価2円前後のライティング案件を獲得できた段階で独立しているケースが多いように思います。
 副業Webライターからキャリアをスタートし、やがて独立を目指しているなら、文字単価2円を1つの指標としてみてください。〕
 
(2023/3/14)NM
 
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人の心に働きかける経済政策
 [経済・ビジネス]

人の心に働きかける経済政策 (岩波新書 新赤版 1908)
 
翁邦雄/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1908)
出版年月:2022年1月
ISBNコード:978-4-00-431908-5
税込価格:946円
頁数・縦:191, 35p・18cm
 
 行動経済学が「メインストリーム」の経済学に及ぼした影響を論じ、現在の経済政策の問題点をあぶり出す。さらに、現在の日銀の「異次元緩和」政策を批判する。
 
【目次】
第1章 自己実現的予言
第2章 ヒトはどのように判断・行動しているのか
第3章 マクロ的な社会現象へのフレーミングやナッジ
第4章 メインストリームの経済学の「期待への働きかけ」
第5章 「期待に働きかける金融政策」としての異次元緩和
第6章 物価安定と無関心
付録:金融政策に関するノート
 
【著者】
翁 邦雄 (オキナ クニオ)
 1951年東京生まれ。1974年東京大学経済学部を卒業し日本銀行入行。1983年シカゴ大学Ph. D.取得(経済学)、筑波大学社会工学系助教授、日本銀行金融研究所長、京都大学公共政策大学院教授などを経て、大妻女子大学特任教授、京都大学公共政策大学院名誉フェロー。専攻‐国際経済学、金融論。著書‐『期待と投機の経済分析―「バブル」現象と為替レート』(東洋経済新報社、日経・経済図書文化賞受賞)など。
 
【抜書】
●現在バイアス(p26)
 「今の満足」の価値と、「明日の満足」の価値、「明後日の満足」の価値を比較した場合、「今の満足」の価値が突出して高いこと。
 例えば、ダイエットの失敗。「明日の満足」と「明後日以降の満足」の価値の差は小さい。だから、現在バイアスが強い人は、今日はたっぷり食事をし、明日から我慢を始めることで明後日以降の体系改善を目指す。そして、「明日」になっても……。
 
●プライミング効果(p51)
 あらかじめ受けた刺激(先行刺激、先行情報)によって、人の行動が影響されること。プライムとは、「前もって教え込む」という意味。
 例えば、選挙の投票率を上げるために、選挙の前日に、投票するつもりかどうかのアンケートを実施すると、投票する確率を25%高めることができる、という研究結果がある。
 
●ナッジ(p52)
 罰金や補助金など金銭的なインセンティブ以外にも、行動経済学的知見を用いて人の心に働きかけることでその行動に影響を及ぼすことができる。そうした手法をナッジと呼ぶ。リチャード・セイラーによる。
 ナッジ……(注意をひくため、あるいは何かをさせるために)人をそっと押す、という意味。
 ナッジによる介入は、「個人の選択の自由を侵害しないで行動に影響を与えること」を目的としている。アムステルダム・スキポール空港の男性用便器の例。中心にハエが描かれており、使用者は思わずそれを目標にしてしまう。強制手段を用いずに飛散防止を実現。
 
●自然利子率(p96)
 「完全雇用が過不足なく実現できる需要」を引き出す実質金利水準。
 19世紀スウェーデンの経済学者クヌート・ヴィクセルの命名。
 
●2%インフレ(p177)
〔 ここまでの議論を総括したい。人々が希求する物価安定の本質は、グリーンスパンが定義するように、インフレ率に関心を持たなくてよい状態だ。二%というインフレ目標には、そうした本質的な意味はない。
 もし、別途、何らかの理由で二%のインフレ率達成が日本経済にとって不可欠なら(その理由は黒田総裁の三点セットにはないが)、そのための手段は、物価安定の正常性バイアスを壊さないこと、国民にとっても望ましいインフレであるというポジティブなフレーミングが説得力を持って作れること、の二点が必要であるはずだ。換言すれば、①正常性バイアスを壊さない方法で物価のアンカーをゼロ近辺から二%近辺に押し上げる、②物価上昇に対する忌避感を緩和するため物価上昇が実質所得の減少につながらないことが目に見えるフレーミングを作る、ということになるだろう。〕
 
(2023/2/24)NM
 
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