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言語の七番目の機能
 [文芸]

言語の七番目の機能 (海外文学セレクション) 
ローラン・ビネ/著 高橋啓/訳
出版社名:東京創元社(海外文学セレクション)
出版年月:2020年9月
ISBNコード:978-4-488-01676-0
税込価格:3,300円
頁数・縦:478p・20cm
 
 ジャック・バイヤール警部と若き記号学者シモン・エルゾグ以外の主な登場人物のほとんどが実在の人物という、知的興奮に満ちた難解な謎解きミステリー。というのも、登場人物たちがロラン・バルト、ミッシェル・フーコー、フィリップ・ソレルス、デリダ、ジュリア・クリステヴァ、フンベルト・エーコといった、現代思想、現代文学の巨匠たちなのである。記号学的な言説、独白、会話などの部分が、当人たちの口から本当に出てきたのではないかと思わせるような、意味不明である。まさにバルト的な、小説。
 それにしても、巨匠たちの破廉恥な行動も随所に描かれており、名誉棄損で訴えられなかったのか心配になる。巻末の解説によると、大丈夫だったようであるが。
 また、二人の日本人の素性が気になる。その謎は解き明かされなかったような……。それとも、見落としか?? その点を確認するために読み返す気力はもはや残っていない。
 
【著者】
ビネ,ローラン (Binet, Laurent)
 1972年パリ生まれ。パリ大学で現代文学を修め、兵役でフランス語教師としてスロヴァキアに赴任、その後、パリ第三大学、第八大学で教鞭を執る。『HHhH―プラハ、1942年』でゴンクール賞最優秀新人賞、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞を受賞。わが国においても、本屋大賞・翻訳小説部門第1位、Twitter文学賞海外部門第1位となるなど話題を呼んだ。『言語の七番目の機能』は、アンテラリエ賞、Fnac小説大賞を受賞。次作のCivilizationsはアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。
 
高橋 啓 (タカハシ ケイ)
 1953年北海道生まれ。翻訳家。早稲田大学文学部卒業。
 
【抜書】
●ラ・ロシュフーコー(p89)
 ロラン・バルト最期の瞬間の描写。
〔 ラ・ロシュフーコーはいい、なんといっても。いずれにしろ、バルトは『箴言集〈マキシム〉』に多くを負っている。ラ・ロシュフーコーは早すぎた記号学者だった。われわれの行動の徴候〈シーニュ〉のなかに人間の魂を読み解くことができたという意味で……。フランス文学における大貴族、それ以外の何物でもない……。バルトは、テュレンヌ元帥の砲火に追われ、サン=タントワーヌ街の堀をコンデ公とともに馬で進む誇らしげなマルシヤック公(ラ・ロシュフーコー)の姿を思い描いている(フロンドの乱)。もちろん、ついにその日が来たかなどとつぶやきながら……。〕
 
(2024/1/28)NM
 
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海色の壜
 [文芸]

海色の壜 (双葉文庫)
 
田丸雅智/著
出版社名:出版芸術社
出版年月:2014年10月
ISBNコード:978-4-88293-471-4
税込価格:1,430円
頁数・縦:237p・19cm
 
 海を題材にした作品を主に集めたショートショート集。SFというか、独特の妄想的な内容が特徴。
 
【目次】
ふぐの恩返し
魚屋とぼく
ほくろ
月工場
年波
O型免許
壁画の人々
修正駅
部屋釣り
似豆
たまご顔
砂童子
アドネコ
夕暮れコレクター
ジンベノット
カーライフ
コンロ
海酒
 
【著者】
田丸 雅智 (タマル マサトモ)
 1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒。11年12月、光文社文庫『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年3月には、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。
 
(2024/1/9)NM
 
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青春をクビになって
 [文芸]

青春をクビになって (文春e-book) 
額賀澪/著
出版社名:文藝春秋
出版年月:2023年9月
ISBNコード:978-4-16-391746-7
税込価格:1,760円
頁数・縦:218p・19cm
 
 35歳で大学の非常勤講師を「雇い止め」になった瀬川朝彦(あさひこ)の心の葛藤を描く。大学時代からの友人栗山侑介、10歳年上の先輩研究者小柳博士(ひろし)、そして3人の指導教官だった貫地谷先生との交流を通じて、青春=研究生活からの離脱(クビ)を決断。
 
【目次】
 
【著者】
額賀 澪 (ヌカガ ミオ)
 1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、広告代理店に勤務。2015年『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞を、『ウインドノーツ』(単行本改題『屋上のウインドノーツ』)で松本清張賞を受賞。
 
(2023/11/27)NM
 
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リーガルーキーズ! 半熟法律家の事件簿
 [文芸]

リーガルーキーズ! (新潮文庫 お 114-1)
 
織守きょうや/著
出版社名:新潮社(新潮文庫 お-114-1)
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-10-104581-8
税込価格:825円
頁数・縦:429p・16cm
 
 裁判官、検事、弁護士を目指す司法修習生たちの修習生活を描いたちょっとしたミステリー小説。
 彼らは、裁判所刑事部、裁判所民事部、検察庁、弁護士事務所でそれぞれ2か月ずつの実務研修を受ける。その後、本人の希望による選択型実務研修期間がある。そして、和光市の司法研修所における集合修習を受け、1年間の修習の締めくくりとして「二回試験」を受け、合格すると晴れて法律家となれる……。
 司法修習という、一般にはあまり知られていない世界を元弁護士(休業中!)がリアルに描く。
 
【目次】
第1章 人は見かけによらない
第2章 ガールズトーク
第3章 うつくしい名前
第4章 朝焼けにファンファーレ
 
【著者】
織守 きょうや (オリガミ キョウヤ)
 1980(昭和55)年、ロンドン生れ。早稲田大学法科大学院卒。元弁護士(休業中)。2013(平成25)年『霊感検定』でデビュー。’15年「記憶屋」で日本ホラー小説大賞読者賞を受賞。
 
(2023/9/30)NM
 
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失踪願望。 コロナふらふら格闘編
 [文芸]

失踪願望。 コロナふらふら格闘編
 
椎名誠/著
出版社名:集英社
出版年月:2022年11月
ISBNコード:978-4-08-781724-9
税込価格:1,760円
頁数・縦:285p・19cm
 
 椎名誠の「日記ブンガク」+エッセー2本。日記のほう(「失踪願望。」)は、集英社学芸編集部ウェブサイト(現「ウェブマガジン集英社学芸の森」)に掲載されたもので、2012年4月から2022年6月まで(2021年7月7日~2022年10月12日更新分)。シーナが新型コロナに感染したのは2021年6月で、その前後の奮闘(格闘?)が主な題材。
 仙台文学館で開催された「椎名誠 旅をする文学館in仙台 2022」でのトークショーに参加した際、「どこかで旅を億劫に感じている自分に気づく」(p.273「新型コロナ感染記」)。新型コロナ感染の影響だろうか。むしろこちらは、本書を読んで、旅に行きたい、キャンプをしたい、と思ってしまったのだが……。
 
【目次】
失踪願望。
 カニカマ、骨折、コルセット 二〇二一年四月と五月
 海苔弁、コロナ、Xデー 二〇二一年六月
 禁酒、漂流、金メダル 二〇二一年七月
 相棒、オアシス、後遺症 二〇二一年八月
 返納、お帰り、おとなり座 二〇二一年九月
  ほか
三人の兄たち
新型コロナ感染記
 
【著者】
椎名 誠 (シイナ マコト)
 1944年東京生まれ、千葉育ち。1980年頃より執筆活動開始。89年『犬の系譜』で第一〇回吉川英治文学新人賞、90年『アド・バード』で第一一回日本SF大賞を受賞。
 
(2023/8/14)NM
 
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まくらの森の満開の下
 [文芸]

まくらの森の満開の下
 
春風亭一之輔/著
出版社名:朝日新聞出版
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-02-332276-9
税込価格:1,750円
頁数・縦:284p・19cm
 
 『週刊朝日』の連載をまとめた単行本第3弾。編集者から出された「お題」をもとに、ゆるく語る。三題噺感溢れるこじつけエッセー満載。
 笑点のレギュラーになってから知った噺家だけど、落語は聞いたことがない。噺のまくらも面白いんだろうな、きっと。
 
【目次】
第1章 落語のまくら
第2章 時事のまくら
第3章 五輪とスポーツのまくら
第4章 風物詩のまくら
第5章 芸能界のまくら
第6章 日常生活のまくら
 
【著者】
春風亭 一之輔 (シュンプウテイ イチノスケ)
 1978年、千葉県生まれ。落語家。日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。2012年、二十一人抜きの抜擢で真打昇進。2010年、NHK新人演芸大賞、文化庁芸術祭新人賞を受賞。2012年、2013年に二年連続して国立演芸場花形演芸大賞の大賞を受賞。寄席を中心にテレビ、ラジオなどでも活躍。現在も、年間九百席の高座をこなしている。
 
(2023/8/10)NM
 
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文明交錯
 [文芸]

文明交錯 (海外文学セレクション)
 
ローラン・ビネ/著 橘明美/訳
出版社名:東京創元社(海外文学セレクション)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-488-01685-2
税込価格:3,300円
頁数・縦:409p/20cm
 
 「インカ皇帝アタワルパが大西洋を渡ってスペインを征服する」という歴史改編小説。実在の人物がさまざまな役割を負わされて登場する。史実と同様であったり、史実と逆であったり、史実と何の関係もなかったり。
 
【目次】
第1部 エイリークの娘フレイディースのサガ
第2部 コロンブスの日記(断片)
第3部 アタワルパ年代記
第4部 セルバンテスの冒険
 
【著者】
ビネ,ローラン (Binet, Laurent)
 1972年パリ生まれ。パリ大学で現代文学を修め、兵役でフランス語教師としてスロヴァキアに赴任。その後、パリ第三大学、第八大学で教鞭を執る。『HHhH―プラハ、1942年』でゴンクール賞最優秀新人賞、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞を受賞。わが国においても、本屋大賞・翻訳小説部門第1位、Twitter文学賞・海外編第1位となるなど話題を呼び、第二作の『言語の七番目の機能』は、アンテラリエ賞、Fnac小説大賞を受賞。本書はアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。
 
橘 明美 (タチバナ アケミ)
 仏語・英語翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。訳書にC・アルレー『わらの女』、P・ルメートル『その女アレックス』、S・ピンカー『人はどこまで合理的か』他多数。
  
(2023/7/30)NM
 
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文豪、社長になる
 [文芸]

文豪、社長になる (文春e-book)
 
門井慶喜/著
出版社名:文藝春秋
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-16-391667-5
税込価格:1,980円
頁数・縦:349p・20cm
 
 文豪にして文芸春秋社社長であった菊池寛の半生記、史実に基づくフィクション。
 菊池寛と言えば芥川賞および直木賞の創設者、『文藝春秋』の創刊者という事績、文壇への貢献が大きく感じられらるが、流行作家としても生涯作品を書き続けていたんだということを改めて知った。読んだことないものなぁ。
 『オール讀物』2021年9月号~2023年1月号に断続的に発表されたものを1冊にまとめたようである。
 
【目次】
寛〈ひろし〉と寛〈かん〉
貧乏神
会社のカネ
ペン部隊
文藝春秋
 
【著者】
門井 慶喜 (カドイ ヨシノブ)
 1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。
 
(2023/6/13)NM
 
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開墾地
 [文芸]

開墾地
 
グレゴリー・ケズナジャット/著
出版社名:講談社
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-06-531168-4
税込価格:1,430円
頁数・縦:90p・20cm
 
 米国出身の著者によって日本語で書かれた小説。自伝的要素の強い内容なのだろうか。主人公の日本への留学と、父親(血はつながっていない)の米国移住が重ねあわされている。荒れ地で蔦を伸ばす葛が象徴的である。日本から移入された「葛」は、英語でkudzu(カッヅー)というらしい。
 
【目次】
 
【著者】
ケズナジャット,グレゴリー (Khezrnejat, Gregory)
 1984年、アメリカ合衆国サウスカロライナ州グリーンビル市生まれ。2007年、クレムソン大学を卒業後、外国語指導助手として来日。17年、同志社大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程修了。現在は法政大学グローバル教養学部准教授。21年、「鴨川ランナー」で第2回京都文学賞を受賞し、デビュー。同年、受賞作を収録した『鴨川ランナー』(講談社)を刊行。
 
(2023/4/8)NM
 
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青空に飛ぶ
 [文芸]

青空に飛ぶ (講談社文庫)
 
鴻上尚史/〔著〕
出版社名:講談社(講談社文庫 こ65-5)
出版年月:2019年8月
ISBNコード:978-4-06-516580-5
税込価格:814円
頁数・縦:349p・15cm
 
 陸軍特別攻撃隊の万朶隊〈ばんだたい〉のパイロットとして、9回特攻に出撃し、9回生還した佐々木友次元伍長と、学校でいじめにさらされる中学2年生の萩原友人。架空の人物の物語に実在の人物の伝記を織りこんだ小説である。
 伝記の部分は事実に基づいている。
 なお、出撃命令は9回出たが、実際に艦船を爆撃できたのは2回。敵の空襲に遭って離陸できなかったのが1回、爆撃機の整備不良で出撃できなかったのが2回、直掩隊の隊長の配慮で途中で引き返してきたのが1回あった。
 
【目次】
 
【著者】
鴻上 尚史 (コウカミ ショウジ)
 1958年8月2日、愛媛県生まれ。早稲田大学法学部卒業。作家・演出家・映画監督。大学在学中の’81年、劇団「第三舞台」を旗揚げする。’87年『朝日のような夕日をつれて’87』で紀伊國屋演劇賞団体賞、’94年『スナフキンの手紙』で岸田國士戯曲賞を受賞。2008年に旗揚げした「虚構の劇団」の旗揚げ三部作戯曲集「グローブ・ジャングル」では、第61回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞した。現在は「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に幅広く活動中。
 
【抜書】
●九九式双発軽爆撃機(p70)
 略称九九双軽。長さ約13m、翼を含めた幅約17.5m。爆弾を入れる腹の部分が膨らんでおり、「金魚」「おたまじゃくし」とも称された、陸軍の爆撃機。定員4名。
 
(2023/4/1)NM
 
〈この本の詳細〉

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