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悲劇的なデザイン あなたのデザインが誰かを傷つけたかもしれないと考えたことはありますか?
 [コンピュータ・情報科学]

悲劇的なデザイン あなたのデザインが誰かを傷つけたかもしれないと考えたことはありますか?  
ジョナサン・シャリアート/著 シンシア・サヴァール・ソシエ/著 高崎拓哉/訳
出版社名:ビー・エヌ・エヌ新社
出版年月:2017年12月
ISBNコード:978-4-8025-1078-3
税込価格:2,808円
頁数・縦:239p・21cm
 
 
 Webサイトにおける悪いデザインについて論じる。
 
【目次】
第1章 イントロダクション
第2章 デザインは人を殺す
第3章 デザインは怒りをあおる
第4章 デザインは悲しみを呼ぶ
第5章 デザインは疎外感を与える
第6章 ツールとテクニック
第7章 私たちにできること
第8章 手本になる組織
 
【著者】
シャリアート,ジョナサン (Shariat, Jonathan)
 Intuit社のシニア・インタラクション・デザイナーにして、デザイン・レビュー・ポッドキャストの共同司会者。ひどいデザインが人の生活に与える悪影響に積極的に光を当て、エシカル(公正で倫理的な)デザインの考え方を広める仕事に取り組んでいる。
 
ソシエ,シンシア・サヴァール (Saucier, Cynthia Savard)
 Shopify社のデザイン・ディレクターで、行動心理学とアクセシビリティに関心をもって取り組むユーザー・エクスペリエンス・デザイナー。世界中のイベントに招かれてスピーチを行い、クリエイティブなアプローチで聴衆を驚かせつつも魅了している。
 
【抜書】
●鉄のリング(p10)
 カナダと米国の一部には、学校の課程を終えたエンジニアに、卒業式で鉄のリングを贈る伝統がある。
 1900年代、ケベックで「ケベック橋」が建設中に崩落し、75人が犠牲になった。崩落は、設計技術者の判断ミスが原因だった。最初に作られたリングは、崩落した橋の鉄骨から鋳出したものだったと伝えられている。
 目的は、リングを謙虚さの象徴にし、人々に対する義務感と倫理観、責任感を忘れないようにすることだった。
 
●スイス・チーズ・モデル(p17)
 医療の分野には、事故の原因に対する「スイス・チーズ・モデル」という考え方がある。
 人間のかかわるシステムを、穴の開いたチーズを何枚も重ねたものに例えて考える。システムにはいくつかの層があり、ミスがシステムの穴をすべて通過してしまったとき、患者に直接の悪影響が及ぶ。
 医療システムの層……医師の書く処方箋、調剤した薬剤師、薬の保存方法、準備して投与した看護師、投与の手順、など。
 各層にはそれぞれ穴(予防策の欠陥)があるが、重ね合わせればミスの影響が患者に及ぶ確率を減らせる。
 
●IDIOT(p34)
 米国海軍では、使用者のミスをばかにする隠語に、「アイ・ディー・テン・タンゴ(Eye-Dee-Ten-Tang」というのがある。ID10T=IDIOT。
 米国陸軍では、同様に「ワン・デルタ・テン・タンゴ(One-Delta-Ten-Tang)」。1D10T。
 技術屋の世界では、ユーザーのミスを示す隠語として、PEBKAC=Problem Exisists Between Keyboard and Chairがある。
 また、「Type 16」とも。間違っているのはコンピュータではなく、画面から16インチ(約40cm)離れたもののほう(すなわちユーザー)である、という意味。
 
●フォード・ピント(p50)
 フォードは、総重量900kg、2,000ドル以下の準小型車の開発を目指し、1970年、ピントを発売した。
 しかし、ピントは、ガソリン・タンクがリアバンパーのすぐ下、車輪の後ろに取り付けられていたので、時速30~45kmで追突されただけで炎上した。そのため、少なくとも180人が事故で死亡した。
《改修のための費用》
  1250万台×1台当たり11ドル=1億3750万ドル
《改修しなかった場合の損害賠償の見積》
  (死者180人×20万ドル)+(火傷した人180人×6万7000ドル)+(炎上した車2100台×1台当たり700ドル)=4950万ドル
 よって、フォードは改修しない(問題を放置する)ことに決めた。
 
●クオシモード(p59)
 ジェフ・ラスキン……『ヒューメイン・インターフェース――人に優しいシステムへの新たな指針』(村上雅章訳、ピアソンエデュケーション、2001年)の著者。クオシモード(quasimodes)を提唱。
 クオシモード……ユーザーがある物理的な操作をし続けないと現状を維持できない仕組み。そのため、今、そのモードが選択されていることを忘れようにも忘れられない状態となる。キーボードのShiftキーなど。
 
●セルフレジ(p81)
 米国、欧州でのセルフレジ機能による経済的損失は約4%。Beck, Adrian, and Matt Hopkins, "Developments in Retail Mobile Scanning Technologies: Understanding the Potential on Shrinkage & Loss Prevention." University of Leicester, 2015。
 〔5人に1人が商品をくすねたことを認めたが、調査の結果わかったのは、常習化するのは持ち去っても大丈夫だと気づいたあとで、そして多くの人が、最初は機械がうまく動かないから盗んだと話していた。〕
 
●ダークパターン(p92)
 意図的に複雑にデザインされたプロダクト。ハリー・ブリグナルによる命名。
 〔ダークパターンとは、ユーザー・インターフェイスを使って普段ならやらないようなことをユーザーがやってしまうよう誘導することを言う。たとえば、定額サービスの支払いや署名と抱き合わせで保険を買わせるといった行為がそうだ。「ひどいデザイン」のつくり手と言われて普通思い浮かべるのは、いい加減でだらしないが、悪意はない人物だろう。一方でダークパターンはミスではない。作り手は人間の心理をしっかり理解した上で巧妙なデザインを行う。ユーザーのことなど彼らの頭にはない。〕Brignull, Harry. "Dark Patterns: Inside the Interfaces Designed to Trick You." The Verge, August 29, 2013。
 (1)撒き餌と切り替え……安売り広告を見て買いに行くと、実際にはその商品は手に入らないか、もっと質の悪いものを買わされる。
 (2)偽装コンテンツ……はっきりとそれと分かる表示をせずに、コンテンツの形でページに広告を紛れ込ませる。広告であることを隠した偽のボタンを置くパターン。「ネイティブ広告」。
 (3)継続の強制……試用期間が終わると適切な警告もなしにサービスを継続使用することが決まり、定期的な請求が自動的に発生する。
 (4)フレンドスパム……何らかの方法でユーザーの交友関係に関する情報を入手し、知り合いをサービスに招待する。ワンクリックさせてアドレス帳に載っている人にメールを送る許可をアプリに与えるよう仕向ける。
 (5)ミスディレクション……マジシャンの最高の武器。特定のデザインを使ってユーザーの注意が別のものに向かないようにする。
 (6)ごきぶりホイホイ……登録するのは簡単だが、解除は難しいサービス。
 (おまけ)質問のトリック……二重否定を使ったり、インターフェイスに普通とは逆の振る舞いをさせたりして、ユーザーを混乱させる。「説得無理なら混乱させろ」。
 
●ハートマーク(p125)
 Airbnbは、レビューに使っていたシンボルを星からハートに変えたところ、コンバージョン率が急増した。
 
●小学5年生(p157)
 米国人の読解力は驚くほど低い。
 できる限りインクルーシブなコンテンツにしたいなら、目標は小学5年生以下のレベル。
 Hemingway Editorというツールにより、文章の学年レベルをチェックすることができる。
 
●人権(p161)
 国連は、インターネットへのアクセス権は人権だと宣言している。
 インターネットの構築は、街の都市計画と同じくらい大切なものになっている。体に障害がある人が暮らしにくい街を作らないのと同じで、一部の人しか入れないウェブも作ってはいけない。
 有害な建物(hostile architecture)=一部の人のアクセスが制限される建物。
 「有害なウェブ」も作らないようにする。
 
●雪かき(p165)
 スウェーデンのカールスクーガでは、街の公務員たちが、大雪の後にまず大通りの雪かきをし、次に歩道、自転車道という順番で進めていた。
 ところが、この順番で恩恵を受けているのは、車を使うことの多い男性。氷が原因で病院にかかる人の大半は女性。歩いたり、公共交通機関を利用しているから。
 雪かきの順番を変えたところ、街は歩行者が移動しやすい場所になり、結果として公共交通機関の利用が増え、渋滞が緩和され、ドライバーにも恩恵をもたらした。
 
●ブルチックの感情の輪
 ロバート・ブルチック。
 気持ちの強さには段階があり、基本の感情が組み合わさって別の状態を生み出すということが、レーダー・チャートによって視覚的に表されている。
 例えば、「受け入れ」と「危惧」が組み合わさって「服従」を作り出す。
 
(2018/4/27)KG
 
〈この本の詳細〉


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