SSブログ

動物園から未来を変える ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン
 [自然科学]

動物園から未来を変える―ニューヨーク・ブロンクス動物園の展示デザイン
 
川端裕人/著 本田公夫/著
出版社名:亜紀書房
出版年月:2019年3月
ISBNコード:978-4-7505-1567-0
税込価格:2,160円
頁数・縦:278p・21cm
 
 
 世界最先端の動物園、ブロンクス動物園をEGADのマネージャーと巡りながら、動物園について、自然保護について、広く、深く考える。
 
【目次】
序章 20年後のブロンクスから
第1章 21世紀の動物園を考えるために知っておくべきこと
第2章 「コンゴの森」に分け入る
第3章 動物園ボランティアから動物園プロフェッショナルへ!
第4章 マダガスカル!
第5章 その門口を超えて~愛と行動について
終章 日本の動物園から創る未来
 
【著者】
川端 裕人 (カワバタ ヒロト)
 1964年生まれ。ふだんは小説書き。ニューヨークのコロンビア大学ジャーナリズムスクールに籍を置いていた1997年から98年にかけて、アメリカの動物園を取材してノンフィクション『動物園にできること』を書いた。
 
本田 公夫 (ホンダ キミオ)
 1958年生まれ。子どもの頃から大の動物園好き。絵画やグラフィックデザイン、写真にも強い興味を持ち、イラストも描いている。現在、ニューヨークの野生生物保全協会(WCS: Wildlife Conservation Society)展示グラフィックアーツ部門スタジオマネジャー。
 
【抜書】
●メナジェリー(p48)
 見世物小屋的な施設。
 
●ブロンクス動物園(p48)
 1899年開園。
 運営母体は、野生生物保全協会(WCS)。1993年に、「ニューヨーク動物学協会」から名称変更。20世紀の「今の時代の動物園は野生生物保護のために存在する」と自らを再定義した。配下のブロンクス動物園は「国際野生生物保全公園」に、セントラルパーク動物園は「野生生物保全センター」に、ニューヨーク水族館は「野生生物保全のための水族館」へと名称変更したが、定着しなかった。
 もともと、ブロンクス動物園の正式名称はNew York Zoological Parkだった。Bronx Zooは通称だったが、2004年にInternational Wildlife Conservation Parkをやめるとき、正式名称になった。
 当時の会長はウィリアム・コンウェイ。1999年に引退するまで、30年以上にわたってブロンクス動物園の園長からWCSの会長というトップの座に君臨。
 
●ハーゲンベック(p55)
 ドイツのカール・ハーゲンベック(1844-1913)は、1907年、ハーゲンベック動物園で「無柵放養式」「パノラマ展示」を実現した。
 手前の池に水鳥、次に草食獣、肉食獣と続き、奥にある険しい丘にバーバーリーシープを配置した。
 ハーゲンベックは、動物商が本業だった。集めた動物が売れるまでの間の経費を稼ぐため、サーカスを始め、さらに動物見世物の巡回展としてパノラマを作り、それを恒久施設とした。園内にはいまでもサーカスのリングがある。
 
●EGAD(p130)
 Exhibition and Graphic Arts Department。WCSの展示グラフィックス部門。
 半世紀以上前に、コンウェイが、ニューヨーク動物学協会の時代に作った部署。
 以下の三つのグループに分かれている。
 (1) 展示デベロッパー、環境グラフィック・デザイナー、サイン工房
 (2) ランドスケープ・デザイナーと建築家(かつて、ここに園芸部門もあった)
 (3) 展示工房(擬木や擬岩などを作る)
 
●ビッグ・アイディア(p154)
 ビヴァリー・セレル『展示ラベル 解説的アプローチ』(Exhibit Labels: An Interpretive Approach、1996年)。
 展示を作るにあたって、まずは「ビッグ・アイディア」を掲げる。ビッグ・アイディアは、
 ・きちんと主語と述語、結論をともなった「一文」であること。
 ・曖昧であったり、複合的であったりするべきではない。
 ・ビッグ・アイディアは一つ。複数ではない。
 ・その展示が意図しないことについても含意するべき。
 ・ビッグ・アイディアは、人間の本性にとって重要な根源的意義を持つがゆえに「ビッグ」なのである。決して、些細なものではない。
 ・展示開発のチームが最初に、一緒になって書くべきものがビッグ・アイディアだ。
 「マダガスカル!」のビッグ・アイディアは、〈美しく驚きに満ちた土地であるマダガスカルをモデルとして見た時、そこでの自然環境保全のあり方は世界中で応用可能であり、また実際に使われてもいる。〉
 WCSにとって、現地で行われている活動は、「保全への門口」。
 
●ババ・ディオウム(p202)
 セネガルの森林・水資源担当行政官。1968年のIUCN(国際自然保護連合)総会で語った伝説的な言葉。
 〈私たちが守ろうとするのは、自分たちが愛するものだけだ。私たちが愛するのは、自分が理解するものだけだ。私たちが理解するのは、教えられたことだけだ。〉
 ブロンクス動物園の「ジャングルワールド」の出口にある黒いオブジェの三つ目に記されている。
 一つ目のオブジェは黄色い数字で「世界の熱帯雨林の面積」、二つ目のオブジェは「世界の人口」が記されている。数字は常に変化している。
 
●定時退勤(p262)
 自治体の運営が多い日本の動物園では、飼育員は「指示を受けて行う実作業の担当者」という水準での給与体系になりがち。それでも、やりがいを求める人にとってはどこまでも深い探求の場でもある。「日本の動物園は、やりがい搾取で成り立っている」。
 〔北米の動物園の飼育員は、単純な作業員であることが多く、その分、定時出勤、定時退勤が普通だと言われても、それをうらやましがる日本の飼育員を見たことがない。〕
 
●社会革命(p275、本田)
〔 落ち着て考えればすぐにわかりますが、ヒトと野生生物が共存できる世界、持続可能な世界の実現には、ちょっとした社会革命が必要です。今の社会の原則、特に経済原則をいじらない限り、世界の流れを変えることはできません。これは社会の根幹を揺るがしかねない、少しばかり空恐ろしい議論になるので、誰も怖がって言い出さないのです。WCSが自然保護の機関であると標榜し、実際に活動している内容を少しだけご紹介しましたが、野生生物と生息環境を守るだけでは対症療法に終始するばかりです。本気で野生生物と共存できる社会を目指すなら、問題の本質、ヒトという生き物に向き合う必要があると僕は考えています。そして、動物園という施設はその機能の一端を果たすポテンシャルを持っているとも考えています。〕
 
(2019/5/18)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(1) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 1

Wake up from the public brainwashing!


In a world full of lies, deceitful tricks and tricks and full of brainwashing information by the stupid media, TV, newspapers, publishers, magazines, radio, etc., mankind, which has stopped thinking, check your own brain, that is, your thinking itself! Don't be seduced by the deceit and trickery of the world! We must realize, no, wait! If we are careful, vigilant, alert, and suspicious, we will not be deceived. We must question all common sense, all things, all stereotypes! To awaken from the brainwashing, read Fulford's book on the world's most powerful people!

https://benjaminfulford.net/

by Wake up from the public brainwashing! (2023-10-05 08:53) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。