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索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明
 [ 読書・出版・書店]

索引 ~の歴史 書物史を変えた大発明
 
デニス・ダンカン/著 小野木明恵/訳
出版社名:光文社
出版年月:2023年8月
ISBNコード:978-4-334-10031-5
税込価格:3,520円
頁数・縦:429p・22㎝
 
 索引についての歴史と薀蓄を語る。
 よくぞこれだけ、索引に関するネタを集められたものだ。博覧強記に脱帽。
 そもそも日本の書籍には索引がついていないものが多い。もともと、索引を作る習慣がないのだろう。
 翻って、翻訳書を読みあさり始めたころ、だいたい索引がついていることに驚いた。それに加えて注釈も詳細だ。西欧の本には他の著者からの引用が多いのも、索引のおかげか? 索引学の成果??
  日本にはプロの索引家がいないのかもしれない。いてもごく少数か。なにしろ、「さくいんか」で日本語変換しても、「索引か」は出てきても、「索引家」が出てこない。
 
【目次】
第1章 順序について―アルファベット順の配列
第2章 索引の誕生―説教と教育
第3章 もしそれがなければ、どうなるのだろうか?―ページ番号の奇跡
第4章 地図もしくは領土―試される索引
第5章 いまいましいトーリー党員にわたしの『歴史』の索引を作らせるな!―巻末での小競り合い
第6章 フィクションに索引をつける―ネーミングはいつだって難しかった
第7章 「すべての知識に通ずる鍵」―普遍的な索引
第8章 ルドミッラとロターリア―検索時代における本の索引
結び 読書のアーカイヴ
 
【著者】
ダンカン,デニス (Duncan, Denis)
 マンチェスター大学で英文学を学ぶ。ロンドン大学バークベック校で博士号を取得。2019年より同校の講師。専門は書物史、翻訳、とくにフランス系のアヴァンギャルド作家の研究。フーコー、ボリス・ヴィアン、アルフレッド・ジャリの翻訳もある。
 
小野木明恵 (オノキ アキエ)
 翻訳家。大阪外国語大学英語学科卒業。
 
【抜書】
●カリマコス(p43)
 詩人として有名なカリマコスは、『ピナケス』をつくった。パピルス文書120巻。アレクサンドリア図書館が所蔵するギリシア語文献の大目録。
 ただし、図書館長ではなかったらしい。
 
●末っ子(p70)
 〔結局のところ索引は、単独で登場したのではなく、一三世紀初頭を挟んで前後二、三〇年のあいだに現れた読書のためのさまざまなツールという一家のなかの末っ子なのだ。そして、それらのツールのすべてにはひとつの共通点がある。読書のプロセスを合理化し、本の使い方に新たな効率性をもたらすために作られたという点である。〕
 
●索引の位置(p149)
 15世紀と16世紀の印刷本の多くは、作品本体の前に索引が置かれていた。
 本の後ろの位置への移動が完了したのは、18世紀初頭。
 索引は一般的に、本のほかの部分とは別の折丁に印刷され、通常のアルファベット順の折記号とは異なる記号(アスタリスクなど)が付けられることも多かった。
 
●索引家協会(p163)
 〔歴史や伝記など、近ごろ主流のノンフィクションの本には、ほぼもれなく索引がついている。そしてきちんとした出版社なら、専門家が索引作りをする可能性がとても高い。アメリカ索引協会や、オランダ索引家ネットワーク、オーストラリアおよびニュージーランド索引家協会、カナダ索引協会などの業界団体のメンバーである場合が多いだろう。これらの団体のうちもっとも長い歴史をもつのが一九五七年にイギリスで創設された索引家協会である。設立後まもなく、協会にハロルド・マクミラン首相から手紙が届いた。そこには、協会の発展を祈念する言葉と、索引にかかわるお気に入りの逸話がいくつか記されていた。〕
 マクミランには出版業者の血が流れている。彼の祖父ダニエルは出版社を興した。家名を冠した同社は今でも健在。ハロルド自身も、国会議員になる前も後も、同社に勤務していた。
 
●『ラテン教父全集』(p236)
 1841~1855年、全217巻。3世紀のテルトゥリアヌスから、13世紀初頭の教皇インノケンティウス3世まで、広範囲にわたる数百名の教父たちの著作を収録。
 司祭で出版者でもあるジャック=ポール・ミーニュが、1865年に索引プロジェクトを開始(完成?)、218~221巻の4巻を加える。「50名以上が10年以上にわたり、ひとり当たり年1000フランという低報酬で作業をした」。
 索引目録は231個。作者、題名、出身国、世紀、階層、ジャンル(教訓、聖書解釈、道徳哲学、教会法)、など。
 
●1320年代(p266)
 カトリック教会の記録によれば、1320年代から索引制作に報酬が支払われている。
 
●無名の索引家(p294)
〔 博識で注意深いプロの索引家はわたしたちの前を行き、ヤマをならし地面をふみ固めて道を作り、道しるべに立つ時間の余裕のないわたしたち学徒が、求める一節――引用句やデータ、すなわち知識――へと混乱せずすみやかに到達できるようにしてくれる。一八九〇年代に秘書斡旋所ができてから二〇世紀をつうじて、女性が索引を作成する例がますます増え、今や圧倒的多数を占めている。そして、その前の何世代もの索引家と同様に、こうした女性たちはたいてい無名で、その業績への正当な評価を受けていない。少なくとも本書が、こうした知られざる読者たちの墓にたむける花輪となることを願う。〕
 
(2024/2/7)NM
 
〈この本の詳細〉


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