SSブログ

公安警察
 [社会・政治・時事]

公安警察 (祥伝社新書)
 
古野まほろ/〔著〕
出版社名:祥伝社(祥伝社新書 673)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-396-11673-6
税込価格:1,078円
頁数・縦:274p・18m
 
 公安警察とは何かについて、組織、機能、実務にわたり、詳細に解説。
 そもそも「公安警察」とは「警備警察」の一部門であり、一機能であり、組織としても待遇としても刑事部門、交通部門、生活安全部門と同等である、という前提で綴られている。もちろん、法律の許す範囲で行動し、違法捜査はない、と強調しているのだが……。
 なお、第4章は、架空の公安警察官(「名探偵コナン」の登場人物らしい)をネタに、公安警察の実態(との齟齬)が語られる。
 
【目次】
第1章 「公安」概論
第2章 公安警察のリアリティライン
第3章 公安警察の組織
第4章 とある公安警察官像のリアリティライン
第5章 公安警察の機能と実務
第6章 とある公安事件のリアリティライン
 
【著者】
古野 まほろ (フルノ マホロ)
 東京大学法学部卒。警察庁旧1種(現・総合職)警察官として交番、警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務の後、警察大学校主任教授にて退官。複数の都府県と、交通部門以外の全部門を経験。主たる専門は、公安警察・地域警察・保安警察。
 
【抜書】
 
(2023/7/31)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

文明交錯
 [文芸]

文明交錯 (海外文学セレクション)
 
ローラン・ビネ/著 橘明美/訳
出版社名:東京創元社(海外文学セレクション)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-488-01685-2
税込価格:3,300円
頁数・縦:409p/20cm
 
 「インカ皇帝アタワルパが大西洋を渡ってスペインを征服する」という歴史改編小説。実在の人物がさまざまな役割を負わされて登場する。史実と同様であったり、史実と逆であったり、史実と何の関係もなかったり。
 
【目次】
第1部 エイリークの娘フレイディースのサガ
第2部 コロンブスの日記(断片)
第3部 アタワルパ年代記
第4部 セルバンテスの冒険
 
【著者】
ビネ,ローラン (Binet, Laurent)
 1972年パリ生まれ。パリ大学で現代文学を修め、兵役でフランス語教師としてスロヴァキアに赴任。その後、パリ第三大学、第八大学で教鞭を執る。『HHhH―プラハ、1942年』でゴンクール賞最優秀新人賞、リーヴル・ド・ポッシュ読者大賞を受賞。わが国においても、本屋大賞・翻訳小説部門第1位、Twitter文学賞・海外編第1位となるなど話題を呼び、第二作の『言語の七番目の機能』は、アンテラリエ賞、Fnac小説大賞を受賞。本書はアカデミー・フランセーズ小説大賞を受賞した。
 
橘 明美 (タチバナ アケミ)
 仏語・英語翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業。訳書にC・アルレー『わらの女』、P・ルメートル『その女アレックス』、S・ピンカー『人はどこまで合理的か』他多数。
  
(2023/7/30)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

宇宙・0・無限大
 [自然科学]

宇宙・0・無限大 (光文社新書)
 
谷口義明/著
出版社名:光文社(光文社新書 1261)
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-334-04668-2
税込価格:902円
頁数・縦:194p・18cm
 
 宇宙には0(ゼロ)はなく、無限大もない、ということを比較的分かりやすく解説。
 
【目次】
第1章 不可思議なゼロと無限大
 厄介なゼロ
 ややこしい無限
第2章 宇宙に無限はあるか
 これまでの宇宙観
 夜空と無限を巡る謎
 オルバースのパラドックスを解く
 大きな世界と小さな世界
第3章 宇宙にゼロはあるか
 宇宙の誕生
 原のその先へ
 遠隔力しかない宇宙
 自然はゼロを嫌う
第4章 宇宙に永遠はあるか
 有限な宇宙で育まれる命
 
【著者】
谷口 義明 (タニグチ ヨシアキ)
 1954年北海道生まれ。東北大学理学部卒業。同大学院理学研究科天文学専攻博士課程修了。理学博士。東京大学東京天文台助手などを経て、放送大学教授。専門は銀河天文学、観測的宇宙論。すばる望遠鏡を用いた深宇宙探査で128億光年彼方にある銀河を発見、当時の世界記録を樹立。ハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラム「宇宙進化サーベイ」では宇宙のダークマター(暗黒物質)の3次元地図を作成し、ダークマターによる銀河形成論を初めて観測的に立証した。
 
【抜書】
●ビッグバン宇宙論(p105)
 宇宙の誕生と進化のシナリオ。
(1)無からの宇宙誕生
 138億年前、「無」からこの宇宙が生まれた。ミクロの世界では、すべての物質が揺らいでいる(正確な値が分からない状態)。位置や速度、時間やエネルギーなども揺らいでいる。「無」そのものも揺らいでおり、粒子やその反対の性質をもつ粒子(反粒子)が生まれたり、消えたりしている。「対生成」と「対消滅」と呼ばれる現象。揺らいだ「無」から、ある有限の確率で、宇宙が誕生することがある。その確率がゼロでないため、宇宙が誕生してもよいと考える。誕生したばかりの宇宙のサイズは10-36メートルだったと考えられている。プランク・スケールと呼ばれる値。
(2)急激な膨張
 誕生した宇宙はエネルギーをもっていたので、急激に膨張し始めた。そのため温度がどんどん下がり、宇宙の状態も大きな変化を経験しながら進化した。「相転移」と呼ばれる。相転移によってインフレーションと呼ばれる指数関数的な宇宙膨張が起こった。宇宙の誕生から10-36後にスタートし、10-34秒に終わってしまう。その間に宇宙の大きさは1043倍に膨れ上がった。
(3)火の玉宇宙
 インフレーションは熱エネルギー(潜熱)を残してあっという間に終わった。その後、この熱エネルギーを使って宇宙はまた膨張しだす。「ビッグバン」。
(4)ビッグバン元素合成
 火の玉宇宙は高温・高圧のため、最初の3分間で元素合成を行うことができた。ビッグバン元素合成。生まれた元素は水素(陽子)とヘリウム(ヘリウム原子核)、9対1。軽元素(リチウム、ベリリウム、ホウ素)もわずかに生成された。それ以外の炭素から鉄までの重い元素は星内部の熱核融合で生成された。鉄より重い元素は超新星爆発や中性子星同士の合体の際に生成されたもの。
(5)ビッグバンの残光
 誕生から38万年後、電離していたプラズマ宇宙は終わり、宇宙は中性化した。その時、電磁波はプラズマによる散乱を受けなくなるので、宇宙を自由に伝播できるようになった。この頃の宇宙の温度は3000K。宇宙はその熱放射(熱によって電磁波を放出する現象)で満たされていた。
 現在の宇宙は、宇宙年齢38万年の頃に比べて約1000倍になっているので、熱放射の波長は1000倍長くなって観測される。波長が1000倍長くなると、電磁波のエネルギーと温度は1000分の1に下がる。したがって、現在、この熱放射を観測すると、3Kの温度の熱放射として、マイクロ波という電波の波長帯で観測される。これが、宇宙マイクロ波背景放射の正体。この熱放射の存在は、ビッグバンが起こった観測的な証拠。TV番組が終わった後の「ザーッ」という雑音の約1割は宇宙マイクロ波背景放射。
(6)銀河の誕生
 宇宙の中では、ダークマター(暗黒物質)の重力に導かれ、普通の元素でできた物質が集められていく。宇宙誕生後1億年から数億年経過したときに(平均して2億年)、宇宙最初の星が生まれ始めた。その前は、一つも星がないので宇宙は真っ暗だった。そのため、宇宙最初の約2億年間は、「宇宙の暗黒時代」と呼ばれている。
(7)銀河の進化
 元素由来の物質を含む暗黒物質の塊(ダークマター・ハロー)は合体を繰り返しながら成長し、銀河を形作っていく。ダークマター・ハローに含まれている普通の元素でできたガス雲の中で星が生まれ、それらが集積されて銀河として育っていく。この考え方は「階層構造的合体モデル」と呼ばれる。
(8)現在
 宇宙の年齢は138歳になった。地球を含む太陽系は現在46億歳。
 ビッグバン……米国の物理学者ジョージ・ガモフ(1904-1968)が提唱した「ファイアーボール・モデル」のこと。「大ウソ」という意味のスラング。ファイアーボール・モデルを認めず、定常宇宙論を提唱したイギリスの天文学者フレッド・ホイル(1915-2001)が、BBCのラジオ番組で語った言葉。ガモフは、皮肉で言われた「ビッグバン」という言葉を気に入り、自分自身でも使い始めた。そのため、そのままビッグバン・モデルとして定着した。
 
●相転移(p140)
 宇宙が誕生した瞬間には力は統一されていて、一つの力しかなかった。
 ところが、相転移が起こるたびに統一されていた力は分化し、現在の自然界にある四つの基本的な力である「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」となった。宇宙誕生から1秒もたたないうちに4回の相転移が起こった。
 10-44秒後に重力相互作用と電磁相互作用に分かれ、10-36秒後に電磁相互作用から強い相互作用が分かれ、10-11秒後に電磁相互作用から弱い相互作用が分かれた。10-4秒後には核子が誕生した。
 現在は電磁気力と弱い力を統一する理論が出来上がっているが、これに強い力が統一されれば大統一理論が完成する。
 さらに重力が統一されれば「すべての力の統一理論(究極の理論)」が完成する。
 
●セルシウス(p156)
 摂氏(℃、セルシウス度)は、1742年にスウェーデンの天文学者アンデルス・セルシウス(1701-1744)が定義した。セルシウスは、水の凝固点を100℃、沸点を0℃としていた。
 
●1080(p160)
 宇宙にある原子(陽子)の個数はだいたい1080個。エディントン数と呼ばれている。
 
●宇宙の未来(p172)
 宇宙の未来はどうなるのか、5通りの説がある。
(1)ビッグ・フリーズ
 宇宙は膨張とともに、どんどん冷えていく。最終的には絶対零度(0K=マイナス273.15℃)に近づいてく。
(2)ビッグ・リップ 
 リップ(rip)とは強く引き裂くこと。ダークエネルギーがある物理状態を取ると、宇宙膨張が急速に進行し、数千億年後には宇宙全体の膨張速度が光速を超える。この時、宇宙は原子レベルまで引き裂かれ、壊れて死に至る。
(3)ビッグ・クランチ
 crunchは潰れること。現在、宇宙は膨張しているが、膨張を止めるほど宇宙の中に物質があると、重力の働きで膨張にブレーキがかかる。その場合、膨張はいずれ止まり、収縮へと転ずる。そして、宇宙はまた一つの点のような小さな領域に集まる。
(4)サイクリック宇宙
 ビッグ・クランチの後、またビッグバンのような出来事が起きて、膨張に転じる可能性がある。膨張 → 収縮 → 膨張 → 収縮を繰り返す。
(5)真空崩壊
 現在私たちが住んでいる宇宙は、「真」の真空ではなく、「偽」の真空である場合に起こる。「真」の真空はエネルギーが最低の状態(最終的な安定状態)で、「偽」の真空はそれよりエネルギーが高い状態にある。「偽」の真空は「真」の真空へ遷移する運命にある。この遷移が起こると宇宙は消える。これがいつ起こるかは不明。
 
(2023/7/26)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

編集者の読書論 面白い本の見つけ方、教えます
 [ 読書・出版・書店]

編集者の読書論~面白い本の見つけ方、教えます (光文社新書)
 
駒井稔/著
出版社名:光文社(光文社新書 1256)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-334-04663-7
税込価格:1,034円
頁数・縦:339p・18cm
 
 「読書論」というより、編集者による「読書案内」。海外の名物編集者の自伝や読書論が多く乗っているのが特徴であり、本書の表題の由来とも言える。
 しかしながら全体を通して「光文社古典新訳文庫」の宣伝となっている点が、本書を特徴づける最大の要素であろう。
 
【目次】
1 世界の“編集者の”読書論
2 世界の魅力的な読書論
3 世界の書店と図書館を巡る旅
4 「短編小説」から始める世界の古典文学
5 自伝文学の読書論
6 児童文学のすすめ
 
【著者】
駒井 稔 (コマイ ミノル)
 1956年神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。’79年光文社入社。広告部勤務を経て、’81年『週刊宝石』創刊に参加。ニュースから連載物まで、さまざまなジャンルの記事を担当する。’97年に翻訳編集部に異動。2004年に編集長。2年の準備期間を経て、’06年9月に光文社古典新訳文庫を創刊。10年にわたり編集長を務めた。現在、ひとり出版社「合同会社駒井組」代表。
 
【抜書】
●アンドレ・シフリン(p128)
 「 出版の仕事に起こった変化は、その他のリベラルな職業にもみられる変化とさして変わるものではない。しかし出版の変化には、それらとは比較にならない決定的な意味がある。問題を徹底して論じ、考察する手段は、書籍にしか求めることができないのだ。従来、書籍というものは、著者と編集者という二人の人間が主張すべき大切な意見があることに合意し、比較的少ない資金でそれを大衆に伝え広める手段だったのである。書籍はほかのメディアとは、はっきり異なる性格を持つ。」
 アンドレ・シフリン『理想なき出版』(2000年。日本語訳は2002年)の最後に書かれた文章。
 米国。1962年、ランダムハウスに吸収合併された後のパンセオン・ブックスに就職。1990年、パンセオンを集団退職、「ニュープレス」を立ち上げる。
 
●ヘイ・オン・ワイ(p205)
 ウェールズの田舎町。
 リチャード・ブース(1938年生まれ)という人物が、「本の王国」として1977年4月1日に独立宣言を行った。
 消防署だった建物を買い取り、1662年に古書店を開いた。古書の保管場所確保のためにお城も買う。さらに食糧倉庫を購入し、2店目を開く。やがて映画館だった建物も買い取り、シネマ書店とする。
 観光名所とするために、「古書の町」計画を立て、ウェールズ観光局長の応援を取り付けた。サンデーミラーの記者の取材に応じ、突然、ヘイのイギリスからの独立を発表する。
 リチャードは、世界で最も多くの本を持つ「リチャード書籍王」となる。
 『本の国の王様』より。
 兼高かおるの取材を受けたこともある。リチャードから公爵の称号を授与された。1979年には、兼高の番組に招待されて来日、古書街神保町を歩き、丸善にも足を運んだ。
 
●千部振舞(p332)
 せんぶふるまい。ベストセラーのこと。
 江戸時代には、発行部数が千部になると、書店主と従業員がうち揃って氏神様にお詣りに行った。そしてお祝いの宴を開いた。
 武田勝彦『アメリカのベストセラー』より。
 ちなみに「ベストセラー」という言葉が生まれたのは1903年。1895年2月に「ブックマン(The Bookman)」が創刊された時、「求められている本(Books in Demand)』というリストを載せることにした。その後、1903年に表題が「6冊のベストセラー」と改題された。「タイム」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙などの今週のベストセラーの原形。
 
【ツッコミ処】
・古典新訳文庫(p174)
〔 別に古典新訳文庫の宣伝をしたいわけではありませんが、ヘッセの主張は古典を読むことに向かいます。〕
  ↓
 いやいや、本書は間違いなく全編「光文社古典新訳文庫」の宣伝です!
 
(2023/7/25)NM
 
〈この本の詳細〉

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

中国人が日本を買う理由
 [社会・政治・時事]

中国人が日本を買う理由 (日経プレミアシリーズ)
 
中島恵/著
出版社名:日経BP日本経済新聞出版(日経プレミアシリーズ 497)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-296-11806-9
税込価格:990円
頁数・縦:220p・18cm
 
 多くの中国人が日本に移住してきたり、日本の不動産などを買い漁るのはなぜなのか。この傾向は、コロナ禍以降、加速しているという。その裏にある中国の住みづらさ、将来への不安を、反中・嫌中に偏らずに在日中国人などへの取材をもとにレポートする。
 
【目次】
プロローグ 富裕層が日本に移住する理由
第1章 安心できる国、不安になる国
第2章 留学、起業、そして…彼らが日本を選ぶ理由
第3章 日本のビルは、上海のマンション1室の価格
第4章 中国人を悩ます母国のモーレツ主義
第5章 「日本式おもてなし」の危機
第6章 日本人が知らない、日本文化の底力
エピローグ 豊かになった中国人は幸せか
 
【著者】
中島 恵 (ナカジマ ケイ)
 ジャーナリスト。1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。
 
【抜書】
●経営管理ビザ(p10)
 2015年4月に「投資経営ビザ」から名称変更。日本において貿易、その他の事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事する活動のための在留資格。在留できる期間は5年、3年、1年、6か月、4か月(または3か月)の5種類。
 出入国在留管理庁によると、
 21年に同ビザを取得した中国人は1万3,748人、
 22年は6月までの半年ですでに1万4,615人。
 12年は4,423人、15年は8,690人(「爆買いブーム」が話題になった)、17年は1万2,447人、19年は1万4,442人。
 10年で約3倍に増えた。日本で事業をしようとする中国人が増えている証。
 在日中国人が経営する不動産会社の多くは、特定の行政書士と業務提携し、顧客に対してビザの取得に関するサポートを行っている。来日を希望する人は、ビザの取得と不動産取得を同時進行で行うから。
 
●まじめにやる(p49)
 東京都内でエンジニアとして働く40代男性の弁。
 「留学先の京都は四条の街並みがとてもきれいで、日本に来ただけで自分の生活水準まで一気に上がったような気がしてうれしかった。とくに衛生環境で、日本のトイレは本当に清潔。感動したことを覚えています。それはいまでも変わりません。
 日本は社会が安定しているので、自分の人生設計をしっかりと立てられる。当たり前のことが当たり前にできる。これは中国人から見ると、すごいことなんです。
 何歳になったらこうしようとか、あと何年経つと、どのくらいの収入を得られるとか、日本では計画を立てたら、たいていのことは実行できます。とくに会社員にとって日本は最高の国。まじめにやっていればクビになりませんから、それなりに安定した生活を送れます。
 中国では、まじめにやっているだけだと、逆に負け組になる可能性がある。だから、まじめにやらなくてもうまくいく方法を考えたりする。この違いは大きいです」
 
●中国系大学の日本キャンパス(p63)
 中国の大学の経営多角化により、いくつかの大学が日本にキャンパスを設置、日本人学生を募っている。
 北京語言大学、曁南(じなん) 大学日本学院、など。
 曁南大学日本学院は、千代田教育グループが運営。会長は栗田秀子。福建省生まれ。87年に留学生として来日。
 千代田国際語学院、千葉日建工科専門学校なども運営。千代田国際語学院では、日本語学校運営のほか、中国人向けに日本の大学受験指導も行っている。
 
●儀式感(p196)
 イーシーガン。新しい中国語。
 「節目の行事を行う」「きちんと感」といった意味合い。
 あるサイトの説明。「日本人の生活の中にある儀式めいた部分。こだわり。日本人は春の花見や秋の紅葉狩りなど、日々の暮らしでの儀式感を大切にしている」とある。
 
(2023/7/25)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか
 [言語・語学]

会話の科学 あなたはなぜ「え?」と言ってしまうのか (文春e-book)
 
ニック・エンフィールド/著 夏目大/訳
出版社名:文藝春秋
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-16-391679-8
税込価格:2,420円
頁数・縦:260p・20cm
 
 言語学において、会話を研究することの重要性を説く。
 
【目次】
第1章 はじめに―そもそも言語とはどういうものか
第2章 会話にはルールがある
第3章 話者交代のタイミング
第4章 その一秒間が重要
第5章 信号を発する言葉
第6章 質問と答えの関連性
第7章 会話の流れを修復する
第8章 修復キーワードは万国共通
第9章 結論―会話の科学が起こす革命
 
【著者】
エンフィールド,ニック (Enfield, Nick J.)
 シドニー大学言語学教授、シドニー社会科学・人文科学高等研究センター長。東南アジア本土、特にラオスでの長期にわたるフィールドワークによって、言語、文化、認知、社会生活を研究している。ラオスの国語で、タイ、カンボジアなどでも話されているラオ語と、ラオスとベトナムの国境付近で300人ほどのコミュニティで使われているクリ語を専門とする。
 
夏目 大 (ナツメ ダイ)
翻訳家。
 
【抜書】
●会話分析(p41)
 ハーヴェイ・サックス、エマニュエル・シェグロフ、ゲイル・ジェファーソンという3人の異端の社会学者が始めた研究手法。人間の自然な対話のミクロ社会学的現象について研究。アメリカ言語学会の機関誌『Language』で1974年に発表された論文「会話における順序交代の秩序に関する簡単な体系学」。
 
●アンティグア島(p67)
 カリブ海のアンティグア島では、人びとの会話は無秩序に感じられる。誰もが相手がまだ話していてもお構いなしに話し始める。
 
●7ミリ秒(p70)
 日本語において、Yes/No質問の終わりから応答の始まりまでに経過した時間は、平均で7.29ミリ秒。調査した中で最短だった。
 著者とタニヤ・スティヴァース、スティーブン・レヴィンソンらの共同研究による。世界各国10の言語での調査。イェレ語(パプアニューギニア)、ツェルタル語(メキシコ高地の言語)、アクホエ・ハイロム語(ナミビアの言語)、ラオ語(ラオスの言語)、韓国語、日本語、イタリア語、デンマーク語、オランダ語、英語。
 10言語の平均は207ミリ秒。英語は236.07ミリ秒、最長はデンマーク語の468.88ミリ秒。
 
●1秒(p79)
 ゲイル・ジェファーソン「1秒は通常、会話における沈黙の最大持続時間である。」
 オランダ語、英語、ドイツ語での電話における調査でも、話者交代のタイミングは200ミリ秒程度が最も多かった。(p44)
 
●収斂進化(p206)
 “Huh?”(なんだって?)に類する語(「弱い修復」を促す語)は、調査した10か国語に共通に存在する。しかも、発音が似ている。
 擬声語は、収斂進化によってどの言語でも似た音になっている。アヒルの鳴き声、鶏の鳴き声、など。
 “Huh?”に類する語も、収斂進化の産物?
〔 “Huh?”に類した言葉が多数の言語に存在しているのは、この種の言葉があらゆる言語に生まれる理由があるからではないか。会話中、相手の言うことが理解できなかった場合には、それを相手に伝える必要がある。本書ですでに見てきた通り、会話中には時間は非常に速く過ぎてしまう。つまり、何か問題が生じても、それを相手に知らせることのできる時間は非常に短いということだ。知らせるには、素早く簡単に発音できる言葉が必要になる。その条件にかなうのが“Huh?”だというわけだ。“Huh?”に類する言葉の母音は、どの言語においても、舌が弛緩した状態から最も発音しやすいものになっている。〕
 
●835ミリ秒(p209)
 英語の調査では、“Huh?”が発音されるまでの遅延時間は平均で835ミリ秒。
 通常の話者交代に要する時間が200ミリ秒、修復を促す「強い」言葉(Who、Whereなど)が発せられるまでの遅延時間は平均728ミリ秒。
 “Huh?”自体の発音は速くできるのに、実際に発音されるまでには時間がかかる。それは、相手の言葉の処理・理解に失敗した後だから。遅延が長くなり過ぎた場合、特に600ミリ秒を超えるほどになった場合には、急いで何らかの対応をしなければならない。“Huh?”は、遅れても何か言わないよりはまし、というときに使われる言葉。
 
●道徳(p210)
 “Huh?”が存在するのは、「話者交代システム」と同様、人間のコミュニケーションに道徳があるから。
 〔相手が常に協力的であるという想定がなければ、この言葉は意味をなさない。直近の言葉が聴き取れなかった、理解できなかったと伝えれば、後戻りして言い直してくれる、会話の流れを元通りにするのに協力してくれると信じているからこそ、発する言葉だ。会話が共同行動であり、参加者はそれを円滑に進める責任を負うという前提があるから成り立つ。〕
 
●人間と動物の違い(p218)
 〔動物の中にも複雑なコミュニケーションをするものはいるが、人間の会話の重要な特徴である、巧妙にタイミングが調整された話者交代や、修復のメカニズム、会話の流れを調整する信号などは人間以外の動物のコミュニケーションには見られない。“Huh?”などの言葉も人間以外の動物は使わない。聴き取りや理解に問題が生じていることを相手に知らせ、注意を喚起するようなシステムは他の動物にはないのだ。また、他の動物は、注意を喚起されたからといって、一度発した言葉を繰り返したり、別の言葉に言い換えたりする義務を感じることもない。〕
 
●会話機械(p228)
 人間は、社会的交流のための装置として、「会話機械」をもっている。この機械は、言語の基本的な特性、人間の社会的認知能力、そして相互交流の文脈などに依存して機能する。
 会話機械に関して特筆すべき三つのこと。
 (1)人間は、他人との社会関係を結ぶことに真剣に取り組む。社会関係を結ぶことに関しては、義務と責任を感じる。この義務感と責任感がなければ会話は成立しない。
 (2)人間の言語には、自分の言葉について語る機能がある。この「再帰的」な機能がなければ、自分の発言への注目を促すこともできず、誰かが会話のルールを破ったときや、会話に修復すべき問題が発生したときに、それを指摘することができない。
 (3)会話中、人は、相手の言動をすべて、直前、直後の出来事に関連するものと解釈する。「関連性の原理」のおかげで、会話中の言動がすべて結びつくことになる。会話中の人は、常に相手の直前の言動とのつながりを意識すべきである。相手の言動に注意を向け、それに応えるような行動をする必要がある。
〔 人間の会話の主要な特徴は、この三つの要素から生じているとも言えるだろう。たとえば、会話中の発言は基本的に一度に一人ずつ、という規則や、話者交代は一秒以内に行われるといった規則は、関連性の原則や、人間の会話に対する義務感、責任感から生まれていると考えられる。また、会話中に何か問題が生じた際に修復を促す場合の規則は、言語の再帰的な機能や、人間の会話への義務感、責任感がなければ生じないものだろう。〕
 
(2023/7/24)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

「幕府」とは何か 武家政権の正当性
 [歴史・地理・民俗]

「幕府」とは何か 武家政権の正当性 NHKブックス
 
東島誠/著
出版社名:NHK出版(NHKブックス 1277)
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-14-091277-5
税込価格:1,980円
頁数・縦366p・19cm
 
 鎌倉以前から江戸まで、幕府の正当性と正統性について考察する。
 しかしながら、他の研究者の学説に対する批判が随所に見られ、ちょっと興ざめ。そんな研究、知らんわ。
 一般向けというより、専門家あるいは歴史マニアに向けて書かれた書、と言うべきか。
 
【目次】
第1章 平家政権といくつもの幕府
 幕府をめぐる基礎知識
 平家政権をどう捉えるか
第2章 鎌倉幕府、正しくは東関幕府―正統性なき北条氏の正当性
 都市王権と武力―一一八六年、鎌倉幕府誕生の前提1
 義経の結婚―一一八六年、鎌倉幕府誕生の前提2
 正当性の更新と「幕府」呼称の誕生
第3章 足利将軍家の時代―二つの変動期と正当性の変容
 鎌倉末期~南北朝期の転換
 統治権的支配とは何か―足利将軍家の正当性
 足利将軍家の正当性の推移
 足利政権中期の正当性の変化
 物流構造の変動と転換期としての十五世紀後半
 戦国大名と「公儀」の行方
第4章 織豊政権―近世の始動と中世の終焉
 近世の始動と中世の終焉
 中世の黄昏としての織田政権
 豊臣政権と中世の否定
第5章 江戸幕府は完成形なのか―生存の近世化
 生存の近世化という視点
 正当性から正統性―家康の神格化と近代天皇制の創出
 曲がり角としての一六八〇年代
 幕府と「被災者」救済―正当性の行方
 
【著者】
東島 誠 (ヒガシジマ マコト)
 1967年、大阪府生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻博士課程修了、博士(文学)。現在、立命館大学教授。
 
【抜書】
●花洛・柳営(p150)
 モンゴル襲来を機として、鎌倉時代中末期に「天下泰平・国家安寧」の祈禱が盛んに行われるようになった。「花洛・柳営の安全」「花洛・柳営の安寧」を祈願する定型文言が登場し、この時期から鎌倉幕府を「幕府」「柳営」の語で呼ぶようになった。
 花洛=京都、柳営=鎌倉。
 
●応永の外寇(p215)
 応永26年(1519年)6月、朝鮮王朝の世宗元年、上王太宗が軍事行動を起こし、兵船227艘、1万7285名からなる軍勢をもって対馬島を攻撃した。己亥東征。
 前年、日朝関係の潤滑油の役割を果たしていた宗貞茂の死を機に、倭寇問題が再燃したため。
 
●蓋天説(p277)
 中国古代、天下は、天円地方の蓋天説の世界観に基づいて、ドーム状の天に覆われた正方形の大地として観念された。
 
●銀の大行進(p282)
 16世紀後半、中国の奢侈品が世界に流れ出て、大量の銀が中国に流れ込む。南米のポトシ銀山と日本の石見銀山が主な出所。
 硫黄を制したサルファー大名(大友、島津)から、銀を制したジルヴァー大名(毛利、豊臣、徳川)への覇権の移行。
 
●移動させる(p283)
 信長の「権力の志向」(性癖)とは、「権威あるものを否定せずに膝下に集め、それを上から眺める」こと。
 秀吉の「権力の志向」は、「人を意のままに移動させたり、別の道に誘導する」こと。
 信長政権から秀吉政権への移行とは、《集める権力から移動させる権力》への転換だった。
 
●読売(p300)
 「ニュース」の誕生というべき最初の「かわら版」、江戸時代の呼称でいえば「読売〈よみうり〉」、あるいは辻売りの「絵草子〈えぞうし〉」の黎明は、大坂冬の陣(1614年)を描く「大坂城の画面」、それに夏の陣(1615年)を描く「大坂卯年〈うのとし〉図」「大坂安部之合戦之図」であるとされる。北原糸子の説。
 1683年の江戸駒込の八百屋お七の付け火一件の「読売」が大流行。1680年代が「かわら版」隆盛の契機となった。
 1680年代は、一つの情報革命と呼ぶべき時代。出版物が人々の間に流布し、個人が、「まだ見ぬ他者」とつながりをもつ契機となった。新しいネットワーク形成の可能性が大きく花開いた。
 
●都市下層民(p346)
 百万都市江戸の人口の半数が町人。
 さらのその過半が都市下層民衆で、町会所〈まちかいしょ〉臨時救済(御救米)の対象となった。
 
(2023/7/19)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

なめらかな社会とその敵 PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論
 [社会・政治・時事]

なめらかな社会とその敵 ――PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論 (ちくま学芸文庫 ス-28-1)
 
鈴木健/著
出版社名:筑摩書房(ちくま学芸文庫 ス28-1 Math & Science)
出版年月:2022年10月
ISBNコード:978-4-480-51120-1
税込価格:1,540円
頁数・縦:443p・15cm
 
【目次】
第1部 なめらかな社会
 生命から社会へ
 なめらかな社会
第2部 伝播投資貨幣PICSY
 価値が伝播する貨幣
 PICSYのモデル
 PICSY、その可能性と射程
第3部 分人民主主義Divicracy
 個人民主主義から分人民主主義へ
 伝播委任投票システム
第4部 自然知性
 計算と知性
 パラレルワールドを生きること
第5部 法と軍事
 構成的社会契約論
 敵
 生態系としての社会へ
 
【著者】
鈴木 健 (スズキ ケン)
 1975年長野県生まれ。1998年慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は複雑系科学、自然哲学。東京財団仮想制度研究所フェローを経て、現在、東京大学特任研究員、スマートニュース株式会社代表取締役会長兼社長。
 
【抜書】
●PICSY(p99)
 Propagational Investment Currency System。伝播投資貨幣システム。
 通常の貨幣である決済貨幣は、SECSY(Settlement Currency System)。
 
●分人(p204)
 dividual。
 ジル・ドゥルーズが「管理社会について」(1990年)という短い論考の中で使った概念。
 現代社会は規律社会から管理社会へ移行している。権力のあり方が、学校、監獄、病院、工場といった閉鎖された空間における規律訓練から、生涯教育、在宅電子監視、デイケアといった時空間に開かれた管理へと変容していく。
 規律社会において、人々が同定されるのはサインと番号のペアであり、それぞれ個人(individual)と大衆(mass)のペアを意味している。
 管理社会では、パスワードというコードが重要。こうした変容はコンピュータという機械によって可能となる。人々を動かすのは、もはや閉鎖された空間での規律を獲得するための合言葉(watchword)ではなく、パスワードによって一人が複数の異なるアクセス権を状況に従って使い分けるようになる。もはや個人/大衆(individual/mass)ではなく、分人(dividual)というべき存在が生まれてくる。
 
●CRISPR-Cas9(p416)
 細菌(バクテリア)は、DNA にCRISPR領域というものをもち、過去感染したファージ(バクテリオファージ。ウイルス)のDNAを時間順に保存していくことができる。過去感染したファージを記録することによる免疫システムの一部と考えられている。新たに細菌内に侵入してきた外来性DNAと照合することにより、もしかつて感染したウイルスであれば、これを切断することで増殖を防ぐ。
 また、これらの記憶、照合、切断を実行する種々のタンパク質をコードする遺伝子群のことをCasと呼ぶ。
 CRISPR領域を使って遺伝子編集ツールを作ったのがCRISPR-Cas9である。
 
(2023/7/13)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

習近平の本当の敵は中国人民だった! 激動する世界を大局で読む
 [社会・政治・時事]

習近平の本当の敵は中国人民だった!
 
渡邉哲也/著
出版社名:ビジネス社
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-8284-2500-9
税込価格:1,650円
頁数・縦:223p・19cm
 
 米国との対立を深める中国。習近平は、世界の覇権を目指しているようだが、その野望は実現しないだろうと著者は見る。その理由を、中国の現状を概観しながら解説する。
 
【目次】
第1章 習近平政権の本当の敵は中国人民
第2章 半導体で過熱する米中対立
第3章 底に落ちていく中国経済
第4章 引き起こされる台湾有事
第5章 中国と付き合う各国の事情
第5章 これからの日本の産業と経済
 
【著者】
渡邉 哲也 (ワタナベ テツヤ)
 作家・経済評論家。1969年生まれ。日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務した後、独立。複数の企業運営などに携わる。大手掲示板での欧米経済、韓国経済などの評論が話題となり、2009年、『本当にヤバイ!欧州経済』(彩図社)を出版、欧州危機を警告し大反響を呼んだ。内外の経済・政治情勢のリサーチや分析に定評があり、さまざまな政策立案の支援から、雑誌の企画・監修まで幅広く活動を行っている。
 
【抜書】
●金盾(p20)
 きんじゅん。中国の情報管理システム(グレート・ファイアウォール)。
 中国国内の通信がすべて管理されている検閲システム。
 金盾をくぐり抜けて情報交換をするため、反政府的な人々はまず、AppleのスマホアプリであるDropboxを使って文章を共有していた。それに気づいた中国当局は、Appleに対してそのサービスを停止するように命じた。
 次に反政府的な人々は、VPNとテレグラム(ロシア製の暗号化ソフト)というソフトを併用して通信しあっていた。反政府的な人々以外にも、多くの国民がこの方式を使い始めた。結果としてゼロコロナ政策に反対するデモの規模も大きくなっていった。
 当局は、VPNそのものを使用禁止にした。発覚すると厳罰に処せられる。VPNとテレグラムがインストールされているかどうかをチェックするためのアプリの搭載をスマホメーカーに義務付けることも検討されている。
 
●ヤマサ醤油(p27)
 ヤマサの醤油がないと、ファイザー、モデルナのメッセンジャーRNAのワクチンを作ることができない。
 ヤマサ醤油は、江戸時代からの醬油屋。東大の医学部創設を支援した。関東大震災の時に医学部の病院を寄進したくらい、医療とのかかわりが深い。醤油もバイオである。
 
●都市戸籍(p106)
 中国には、都市戸籍の都市住民が3億人いる。その他の地域が8億人前後。中国の人口は、実際は11億人前後?
 3億人のうち、1億5000万人くらいがOECDレベル、先進国レベルの生活をしている。年収1000万円以上の富裕層は4000~5000万人と言われている。
 
(2023/7/8)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

ヒトは〈家畜化〉して進化した 私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか
 [哲学・心理・宗教]

ヒトは〈家畜化〉して進化した―私たちはなぜ寛容で残酷な生き物になったのか
 
ブライアン・ヘア/著 ヴァネッサ・ウッズ/著 藤原多伽夫/訳
出版社名:白揚社
出版年月:2022年6月
ISBNコード:978-4-8269-0239-7
税込価格:3,300円
頁数・縦:334p・20cm
 
 ヒトは自らを家畜化し、友好的で協力的コミュニケーションを進化させてきた。家畜化が、がヒトを繫栄させる原動力だった。その証拠を集め、多角的に論じる。
 
【目次】
はじめに 適者生存/最も友好的な人類
第1章 他者の考えについて考える
第2章 友好的であることの力
第3章 人間のいとこ
第4章 家畜化された心
第5章 いつまでも子ども
第6章 人間扱いされない人
第7章 不気味の谷
第8章 最高の自由
第9章 友だちの輪
 
【著者】
ヘア,ブライアン (hare, Brian)
 デューク大学進化人類学教授、同大学の認知神経科学センター教授。同大学にデューク・イヌ認知センターを創設。イヌ、オオカミ、ボノボ、チンパンジー、ヒトを含めた数十種に及ぶ動物の研究で世界各地を訪れ、その研究は米国内外で注目されている。『サイエンス』誌や『ネイチャー』誌などに100本を超える科学論文を発表。
 
ウッズ,ヴァネッサ (Woods, Vanessa)
 デューク大学のデューク・イヌ認知センターのリサーチ・サイエンティスト。受賞歴のあるジャーナリストでもあり、大人向けと子ども向けのノンフィクションの著書多数。
 
藤原 多伽夫 (フジワラ タカオ)  
翻訳家、編集者。静岡大学理学部卒業。自然科学、考古学、探検、環境など幅広い分野の翻訳と編集に携わる。
 
【抜書】
●アリの生物量(p15)
 蟻の生物量は、ほかの陸上動物をすべて足した生物量の五分の一に相当する。
 蟻は最大で5,000万匹もの個体が集まって、ひとつの社会単位として機能する「超個体」を形成することができる。
 
●コルチコステロイド(p62)
 ドミトリ・ベリャーエフがノボシビルスクで始めた、キツネの家畜化の実験。彼の死後、教え子であるリュドミラ・トルートが引き継いで続けている。
 友好的なキツネは、ストレスホルモンと呼ばれるコルチコステロイドの濃度が急上昇する時期が遅くなった。普通は、生後2~4カ月の間に分泌が増え、生後8カ月で大人の濃度に達する。
 12世代を経ると、濃度は半減していた。30世代を経るとさらに半減していた。
 50世代を経ると、友好的なキツネは普通のキツネに比べて、脳内のセロトニン(捕食や防御に関わる攻撃行動の低下に関連する神経伝達物質)の濃度が5倍に増えていた。
 
●友好的なキツネ(p63)
 友好的なキツネは、形質にも変化を起こした。
 垂れ耳、短くなった鼻づら、巻き尾、ぶちのある被毛、小さくなった歯。
〔 ベリャーエフとリュドミラは、通常ならば自然界で何千もの世代を重ねないとできないことを、自分たちの生涯のうちに達成し、成果として一つの原則を残した。人間に対して友好的な動物がより多くの子を残せるようになると、家畜化が起こる、というものだ。〕
 
●自ら家畜化(p73)
〔 オオカミはほかのオオカミの社会的なジェスチャーを理解し、それに応答できているだろうが、人間のジェスチャーに対しては、人間から逃げることにばかり気をとられ、注意を払う余裕はなかっただろう。だが、いったん人間への恐怖心が興味に変わると、オオカミは社会的な能力を新たな形で利用して、人間とコミュニケーションをとれるようになった。人間のジェスチャーや声に反応できる動物は、狩猟の相棒や見張り役として大いに役立っただろう。そうした動物はまた、心温まる親しい仲間としても貴重な存在になり、野営地の外から炉端へ近づくのを徐々に許されることになった。人間がオオカミを家畜化したのではない。最も友好的なオオカミがみずから家畜化したのだ。〕
 
●2D:4D(p94)
 哺乳類では、母親が妊娠中に高濃度のアンドロゲン(テストステロンも含まれる)を分泌すると、その赤ちゃんの第二指(人差し指、2D)は第四指(薬指、4D)よりも短くなる。この比率を2D:4Dと呼ぶ。2D:4D比の値が小さいほど、雄性化し、攻撃性が高くなる。
 チンパンジーとボノボの比較では、チンパンジーのほうが第二指が短い。
 人間でも、更新世中期には現代人よりも2D:4D比が小さかった。男性的だった。比較した中で最も男性的だったのは、4人のネアンデルタール人だった。古生物学者エマ・ネルソンの研究による。(p115)
 
●情動反応(p101)
 人間が「心の理論」を使う際に活性化する脳の領域は、内側前頭前野(mPFC)、側頭頭頂接合部(TPJ)、上側頭溝(STS)、楔前部(けつぜんぶ、PC)。
 これらの領域における活動の強弱は、情動反応によって変わる。脅威に直面した時(情動反応が強まった時)、これらの領域の活動が弱まる。
 ヒトが進化する中で情動反応に淘汰が働き、それによって寛容性や協力的コミュニケーション能力が向上した可能性がある。
 〔他者に対する反応は人によって異なるが、そうした多様な反応に対して自然淘汰が働き、文化的な認知能力を形成するうえで重要な役割を果たしたのかもしれない。これは人間が自己家畜化した可能性があることを示している。〕
 
●友好的(p112)
〔 自己家畜化仮説が正しいとすれば、ヒトは賢くなったから繫栄したのではなく、友好的になったから繁栄したということになる。ベリャーエフがキツネで行なったような実験は人では行なわれていないが、さいわいヒトには、家畜化の証拠が化石として残っている。私たちが述べたように、自己家畜化が五万年ほど前の文化革命を牽引する中心的な役割を果たしたのだとしたら、それより前の時代に証拠が化石として残っているはずだ。そこで私たちは、その直前に当たる八万年前に狙いを定めて、自己家畜化の証拠を探し始めた。〕
 
●白い強膜(p123)
 人間の白い強膜(白眼)は、生涯を通して協力行動を促進している。
 自己家畜化仮説によれば、ヒトは友好的になる淘汰を受けた結果、8万年以上前に強膜が白くなったと考えられる。
 アイコンタクトが増えるにつれて、オキシトシンの作用が発現するようになり、他者とのつながりや協力的コミュニケーションが促進される。また、他者を欺こうとする気が起きにくくなる。
 
●神経堤(p133)
 友好性の副産物として複数の形質が出現するのには、神経堤細胞が関わっている。
 神経堤細胞は、すべての脊椎動物の胚に短期間だけ現れ、神経管の背側に生じる。神経管は最終的に脳と脊髄になる。
 神経堤細胞は幹細胞なので、胚の発生が進むにつれて、さまざまな種類の細胞に分化することができる。また、神経堤細胞は遊走するので、胚の発生が進むにつれて体のあらゆる場所に移動する。
 遊走する神経堤細胞は、家畜化症候群に関連する多くの形質の発生・発達に関与している。
 家畜化にとって重要なのは恐怖心と攻撃性の低下である。神経堤細胞は、アドレナリンを分泌する副腎髄質の発達に関わっている。家畜化された動物の副腎は、野生の近縁種と比べて小さい。ストレスホルモンの分泌が少ないということ。
 また、神経堤細胞尾は尾や耳の軟骨、皮膚の色素、鼻づら(顔)の骨、歯の発達にも関与している。
 頭部の神経堤細胞は、脳の発達に影響を及ぼすと考えられている。脳の大きさを変えるだけでなく、脳のさまざまな部分がセロトニンやオキシトシンといった神経伝達物質やホルモンを受容する度合いの変化を引き起こしている可能性がある。繁殖周期の変化にも関連している可能性が高い。脳が小さくなると、繁殖周期を制御する視床下部-下垂体-性腺(HPG)軸に影響が及ぶ可能性がある。HPG軸の機能が制限されると、性成熟が早まり、繁殖周期が短くなる。
 
●オキシトシン(p147)
 ヒトの新たな社会カテゴリーの変化を引き起こした物質はオキシトシンだと考えられる。
 オキシトシンはセロトニンおよびテストステロンの可用性と密接に関係している。セロトニンの分泌が増えると、オキシトシンが影響を受ける。セロトニンはオキシトシンの効果を高める。
 テストステロンの分泌が減少すると、オキシトシンがニューロンと結合しやすくなり、行動が変わる。
 つまり、セロトニンの分泌が増え、テストステロンが減少したことによって、ヒトの行動におけるオキシトシンの効果が増大し、自分が属する集団を家族のように感じる人の能力が進化した。
 
●集団内の見知らぬ人(p151)
 ヒトは、他の動物にはない新たな社会的カテゴリーを得てきた。「集団内の見知らぬ人」である。
 このカテゴリーはオキシトシンによって生まれ、維持されてきた。
 握手できる距離まで近づいたとき、アイコンタクトをとることで自分にも相手の体にもオキシトシンが分泌され、恐怖心は弱まり、信頼し、協力しようとする気持ちが強まる。
 
●楔前部(p175)
 他者を人間と見なすか、非人間と見なすかを判断するとき、脳の「心の理論」ネットワークの一部が選択的に活性化する。楔前部の活動が強まったり弱まったりする。
 楔前部が急激な成長を遂げたのは、頭部がヒト独特の球状になったのが原因だった。球状の頭部になったのは、ヒトがネアンデルタール人から枝分かれした後のこと。
 
(2023/7/4)NM
 
〈この本の詳細〉


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ: