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「幕府」とは何か 武家政権の正当性
 [歴史・地理・民俗]

「幕府」とは何か 武家政権の正当性 NHKブックス
 
東島誠/著
出版社名:NHK出版(NHKブックス 1277)
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-14-091277-5
税込価格:1,980円
頁数・縦366p・19cm
 
 鎌倉以前から江戸まで、幕府の正当性と正統性について考察する。
 しかしながら、他の研究者の学説に対する批判が随所に見られ、ちょっと興ざめ。そんな研究、知らんわ。
 一般向けというより、専門家あるいは歴史マニアに向けて書かれた書、と言うべきか。
 
【目次】
第1章 平家政権といくつもの幕府
 幕府をめぐる基礎知識
 平家政権をどう捉えるか
第2章 鎌倉幕府、正しくは東関幕府―正統性なき北条氏の正当性
 都市王権と武力―一一八六年、鎌倉幕府誕生の前提1
 義経の結婚―一一八六年、鎌倉幕府誕生の前提2
 正当性の更新と「幕府」呼称の誕生
第3章 足利将軍家の時代―二つの変動期と正当性の変容
 鎌倉末期~南北朝期の転換
 統治権的支配とは何か―足利将軍家の正当性
 足利将軍家の正当性の推移
 足利政権中期の正当性の変化
 物流構造の変動と転換期としての十五世紀後半
 戦国大名と「公儀」の行方
第4章 織豊政権―近世の始動と中世の終焉
 近世の始動と中世の終焉
 中世の黄昏としての織田政権
 豊臣政権と中世の否定
第5章 江戸幕府は完成形なのか―生存の近世化
 生存の近世化という視点
 正当性から正統性―家康の神格化と近代天皇制の創出
 曲がり角としての一六八〇年代
 幕府と「被災者」救済―正当性の行方
 
【著者】
東島 誠 (ヒガシジマ マコト)
 1967年、大阪府生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻博士課程修了、博士(文学)。現在、立命館大学教授。
 
【抜書】
●花洛・柳営(p150)
 モンゴル襲来を機として、鎌倉時代中末期に「天下泰平・国家安寧」の祈禱が盛んに行われるようになった。「花洛・柳営の安全」「花洛・柳営の安寧」を祈願する定型文言が登場し、この時期から鎌倉幕府を「幕府」「柳営」の語で呼ぶようになった。
 花洛=京都、柳営=鎌倉。
 
●応永の外寇(p215)
 応永26年(1519年)6月、朝鮮王朝の世宗元年、上王太宗が軍事行動を起こし、兵船227艘、1万7285名からなる軍勢をもって対馬島を攻撃した。己亥東征。
 前年、日朝関係の潤滑油の役割を果たしていた宗貞茂の死を機に、倭寇問題が再燃したため。
 
●蓋天説(p277)
 中国古代、天下は、天円地方の蓋天説の世界観に基づいて、ドーム状の天に覆われた正方形の大地として観念された。
 
●銀の大行進(p282)
 16世紀後半、中国の奢侈品が世界に流れ出て、大量の銀が中国に流れ込む。南米のポトシ銀山と日本の石見銀山が主な出所。
 硫黄を制したサルファー大名(大友、島津)から、銀を制したジルヴァー大名(毛利、豊臣、徳川)への覇権の移行。
 
●移動させる(p283)
 信長の「権力の志向」(性癖)とは、「権威あるものを否定せずに膝下に集め、それを上から眺める」こと。
 秀吉の「権力の志向」は、「人を意のままに移動させたり、別の道に誘導する」こと。
 信長政権から秀吉政権への移行とは、《集める権力から移動させる権力》への転換だった。
 
●読売(p300)
 「ニュース」の誕生というべき最初の「かわら版」、江戸時代の呼称でいえば「読売〈よみうり〉」、あるいは辻売りの「絵草子〈えぞうし〉」の黎明は、大坂冬の陣(1614年)を描く「大坂城の画面」、それに夏の陣(1615年)を描く「大坂卯年〈うのとし〉図」「大坂安部之合戦之図」であるとされる。北原糸子の説。
 1683年の江戸駒込の八百屋お七の付け火一件の「読売」が大流行。1680年代が「かわら版」隆盛の契機となった。
 1680年代は、一つの情報革命と呼ぶべき時代。出版物が人々の間に流布し、個人が、「まだ見ぬ他者」とつながりをもつ契機となった。新しいネットワーク形成の可能性が大きく花開いた。
 
●都市下層民(p346)
 百万都市江戸の人口の半数が町人。
 さらのその過半が都市下層民衆で、町会所〈まちかいしょ〉臨時救済(御救米)の対象となった。
 
(2023/7/19)NM
 
〈この本の詳細〉


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