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編集者の読書論 面白い本の見つけ方、教えます
 [ 読書・出版・書店]

編集者の読書論~面白い本の見つけ方、教えます (光文社新書)
 
駒井稔/著
出版社名:光文社(光文社新書 1256)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-334-04663-7
税込価格:1,034円
頁数・縦:339p・18cm
 
 「読書論」というより、編集者による「読書案内」。海外の名物編集者の自伝や読書論が多く乗っているのが特徴であり、本書の表題の由来とも言える。
 しかしながら全体を通して「光文社古典新訳文庫」の宣伝となっている点が、本書を特徴づける最大の要素であろう。
 
【目次】
1 世界の“編集者の”読書論
2 世界の魅力的な読書論
3 世界の書店と図書館を巡る旅
4 「短編小説」から始める世界の古典文学
5 自伝文学の読書論
6 児童文学のすすめ
 
【著者】
駒井 稔 (コマイ ミノル)
 1956年神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部卒。’79年光文社入社。広告部勤務を経て、’81年『週刊宝石』創刊に参加。ニュースから連載物まで、さまざまなジャンルの記事を担当する。’97年に翻訳編集部に異動。2004年に編集長。2年の準備期間を経て、’06年9月に光文社古典新訳文庫を創刊。10年にわたり編集長を務めた。現在、ひとり出版社「合同会社駒井組」代表。
 
【抜書】
●アンドレ・シフリン(p128)
 「 出版の仕事に起こった変化は、その他のリベラルな職業にもみられる変化とさして変わるものではない。しかし出版の変化には、それらとは比較にならない決定的な意味がある。問題を徹底して論じ、考察する手段は、書籍にしか求めることができないのだ。従来、書籍というものは、著者と編集者という二人の人間が主張すべき大切な意見があることに合意し、比較的少ない資金でそれを大衆に伝え広める手段だったのである。書籍はほかのメディアとは、はっきり異なる性格を持つ。」
 アンドレ・シフリン『理想なき出版』(2000年。日本語訳は2002年)の最後に書かれた文章。
 米国。1962年、ランダムハウスに吸収合併された後のパンセオン・ブックスに就職。1990年、パンセオンを集団退職、「ニュープレス」を立ち上げる。
 
●ヘイ・オン・ワイ(p205)
 ウェールズの田舎町。
 リチャード・ブース(1938年生まれ)という人物が、「本の王国」として1977年4月1日に独立宣言を行った。
 消防署だった建物を買い取り、1662年に古書店を開いた。古書の保管場所確保のためにお城も買う。さらに食糧倉庫を購入し、2店目を開く。やがて映画館だった建物も買い取り、シネマ書店とする。
 観光名所とするために、「古書の町」計画を立て、ウェールズ観光局長の応援を取り付けた。サンデーミラーの記者の取材に応じ、突然、ヘイのイギリスからの独立を発表する。
 リチャードは、世界で最も多くの本を持つ「リチャード書籍王」となる。
 『本の国の王様』より。
 兼高かおるの取材を受けたこともある。リチャードから公爵の称号を授与された。1979年には、兼高の番組に招待されて来日、古書街神保町を歩き、丸善にも足を運んだ。
 
●千部振舞(p332)
 せんぶふるまい。ベストセラーのこと。
 江戸時代には、発行部数が千部になると、書店主と従業員がうち揃って氏神様にお詣りに行った。そしてお祝いの宴を開いた。
 武田勝彦『アメリカのベストセラー』より。
 ちなみに「ベストセラー」という言葉が生まれたのは1903年。1895年2月に「ブックマン(The Bookman)」が創刊された時、「求められている本(Books in Demand)』というリストを載せることにした。その後、1903年に表題が「6冊のベストセラー」と改題された。「タイム」誌、「ニューヨーク・タイムズ」紙などの今週のベストセラーの原形。
 
【ツッコミ処】
・古典新訳文庫(p174)
〔 別に古典新訳文庫の宣伝をしたいわけではありませんが、ヘッセの主張は古典を読むことに向かいます。〕
  ↓
 いやいや、本書は間違いなく全編「光文社古典新訳文庫」の宣伝です!
 
(2023/7/25)NM
 
〈この本の詳細〉

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中国人が日本を買う理由
 [社会・政治・時事]

中国人が日本を買う理由 (日経プレミアシリーズ)
 
中島恵/著
出版社名:日経BP日本経済新聞出版(日経プレミアシリーズ 497)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-296-11806-9
税込価格:990円
頁数・縦:220p・18cm
 
 多くの中国人が日本に移住してきたり、日本の不動産などを買い漁るのはなぜなのか。この傾向は、コロナ禍以降、加速しているという。その裏にある中国の住みづらさ、将来への不安を、反中・嫌中に偏らずに在日中国人などへの取材をもとにレポートする。
 
【目次】
プロローグ 富裕層が日本に移住する理由
第1章 安心できる国、不安になる国
第2章 留学、起業、そして…彼らが日本を選ぶ理由
第3章 日本のビルは、上海のマンション1室の価格
第4章 中国人を悩ます母国のモーレツ主義
第5章 「日本式おもてなし」の危機
第6章 日本人が知らない、日本文化の底力
エピローグ 豊かになった中国人は幸せか
 
【著者】
中島 恵 (ナカジマ ケイ)
 ジャーナリスト。1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。
 
【抜書】
●経営管理ビザ(p10)
 2015年4月に「投資経営ビザ」から名称変更。日本において貿易、その他の事業の経営を行い、または当該事業の管理に従事する活動のための在留資格。在留できる期間は5年、3年、1年、6か月、4か月(または3か月)の5種類。
 出入国在留管理庁によると、
 21年に同ビザを取得した中国人は1万3,748人、
 22年は6月までの半年ですでに1万4,615人。
 12年は4,423人、15年は8,690人(「爆買いブーム」が話題になった)、17年は1万2,447人、19年は1万4,442人。
 10年で約3倍に増えた。日本で事業をしようとする中国人が増えている証。
 在日中国人が経営する不動産会社の多くは、特定の行政書士と業務提携し、顧客に対してビザの取得に関するサポートを行っている。来日を希望する人は、ビザの取得と不動産取得を同時進行で行うから。
 
●まじめにやる(p49)
 東京都内でエンジニアとして働く40代男性の弁。
 「留学先の京都は四条の街並みがとてもきれいで、日本に来ただけで自分の生活水準まで一気に上がったような気がしてうれしかった。とくに衛生環境で、日本のトイレは本当に清潔。感動したことを覚えています。それはいまでも変わりません。
 日本は社会が安定しているので、自分の人生設計をしっかりと立てられる。当たり前のことが当たり前にできる。これは中国人から見ると、すごいことなんです。
 何歳になったらこうしようとか、あと何年経つと、どのくらいの収入を得られるとか、日本では計画を立てたら、たいていのことは実行できます。とくに会社員にとって日本は最高の国。まじめにやっていればクビになりませんから、それなりに安定した生活を送れます。
 中国では、まじめにやっているだけだと、逆に負け組になる可能性がある。だから、まじめにやらなくてもうまくいく方法を考えたりする。この違いは大きいです」
 
●中国系大学の日本キャンパス(p63)
 中国の大学の経営多角化により、いくつかの大学が日本にキャンパスを設置、日本人学生を募っている。
 北京語言大学、曁南(じなん) 大学日本学院、など。
 曁南大学日本学院は、千代田教育グループが運営。会長は栗田秀子。福建省生まれ。87年に留学生として来日。
 千代田国際語学院、千葉日建工科専門学校なども運営。千代田国際語学院では、日本語学校運営のほか、中国人向けに日本の大学受験指導も行っている。
 
●儀式感(p196)
 イーシーガン。新しい中国語。
 「節目の行事を行う」「きちんと感」といった意味合い。
 あるサイトの説明。「日本人の生活の中にある儀式めいた部分。こだわり。日本人は春の花見や秋の紅葉狩りなど、日々の暮らしでの儀式感を大切にしている」とある。
 
(2023/7/25)NM
 
〈この本の詳細〉


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