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動作でわかる筋肉のしくみ事典 カラー図解
 [スポーツ]

カラー図解 動作でわかる筋肉のしくみ事典
 
山口典孝/著 川原田進/監修 佐藤眞一/CGイラスト
出版社名:秀和システム
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-7980-6795-7
税込価格:1,870円
頁数・縦:191p・21cm
 
 全身の筋肉のしくみと、それらを強化するためのトレーニング法、ストレッチ法をカラー図解で解説する。
 
【目次】
序章 筋学の基礎知識
第1章 上肢体・肩関節に働く筋
第2章 肘関節・手関節・手指に働く筋
第3章 股関節・膝関節に働く筋
第4章 足関節・足指に働く筋
第5章 体幹に働く筋
資料
 
【著者】
山口 典孝 (ヤマグチ ノリタカ)
 兵庫県西宮市生まれ。大阪医療福祉専門学校講師。日本体育学会、日本陸上競技連盟医事委員会等所属。関西学院大学卒業、放送大学大学院文化科学研究科修了(学術修士)、大阪体育学会第50回大会学会奨励賞受賞。
 
川原田 進 (カワハラダ ススム)
 兵庫県神戸市生まれ。大阪医療福祉専門学校理学療法士学科専任教員。平成23年理学療法士免許取得。令和1年関西大学人間健康研究科博士前期課程修了、健康学修士。
 
【抜書】
●カフェイン(p24)
 2011年、欧州食品安全機関(EFSA)が、カフェインについて以下の機能性表示を認めている。
 ・カフェインは、持久運動を行う成人が運動1時間前に摂取した場合、持久運動パフォーマンスや持久力の向上(3㎎/kg体重)、運動中の疲労感の軽減(4㎎/kg)に貢献する。
 ・カフェインは注意力、集中力の改善に寄与する(1食あたり75㎎)。
 3㎎/kg体重というカフェインの量は、体重60㎏の人なら180㎎、つまりコーヒー2杯分に相当する。
 
(2023/12/31)NM
 
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図説日本人の源流をたどる! 伊勢神宮と出雲大社
 [歴史・地理・民俗]

図説 日本人の源流をたどる!伊勢神宮と出雲大社 (青春新書)
 
滝音能之/監修
出版社名:青春出版社(青春新書 Intelligence PI-267)
出版年月:2010年3月
ISBNコード:978-4-413-04267-3
税込価格:1,210円
頁数・縦:220p・18cm
 
 日本の「二大神宮」とも言うべき伊勢神宮と出雲大社について、図説を豊富に用いて紹介する(記・紀では両神社と石上神宮にのみ「神宮」の文字を使っているという《P.220 》)。
 著者が「島根県古代文化センター客員教授」だけあって、比重は出雲大社に置かれている。「全国区」「天孫」である伊勢神宮に対して、「地方区」「国津神」出雲大社の意義を強調する狙いがあるか?
 
【目次】
序章 伊勢と出雲
1章 伊勢神宮と出雲大社の原像
2章 日本の創世と祭祀
3章 ヤマト政権と出雲の興亡
4章 日本神話と出雲神話
5章 大和と出雲の文化の伝播
6章 信仰を育んだその風土
7章 ヤマト政権から見た伊勢神宮と出雲大社
 
【著者】
瀧音 能之 (タキオト ヨシユキ)
 1953年生まれ。現在、駒澤大学教授、島根県古代文化センター客員研究員。日本古代史、特に『風土記』を基本史料とした地域史の研究を進めている。
 
【抜書】
●国津神(p40)
〔 本来の国譲り神話は、各地の王がヤマト政権に服従し、屯倉を差し出す。その代わりに自治権を認めるという国造体制を投影したものだった。つまり国土は高天原の神に献上するが、自分たちが政治と国津神の奉斎をするという形だったのだろう。
 ところが中央集権体制への移行に伴い、地方の政務も祭祀も国家が統括することになった。つまり、国津神はお隠れになり、代わって天孫である大王が国を治めていくのである。それゆえ国津神に隠れて(鎮まって)もらう場所として設けられたのが出雲大社だったのだ。これまで信仰を集めてきた国津神の象徴オオクニヌシが自らの宮殿建築を条件に国譲りを承認したという神話に反映され、出雲大社は国津神すべての祭祀の象徴となった。〕
  ↓
 10月に全国の神が集まるのはそのためか。
 
●2000年以上(p60)
 伊勢神宮の神嘗祭の一年の流れ。
〔 四月上旬には神嘗祭などの神事にお供えするお米の稲をまく「神田下種祭〈しんでんげしゅさい〉」が行なわれる。神田は伊勢市楠部〈くすべ〉町と志摩市磯部町恵利原〈いそべちょうえりはら〉の二箇所にあり、主となる楠部の「おみた」は三万平方メートルの作付面積を誇る。由来は倭姫がこの地でアマテラスにお供えする米を作るよう定めた「大御刀代〈おおみとしろ〉」であり、二〇〇〇年以上前から作られてきた。〕
 
●アワビ真珠(p189)
 出雲のアワビは、御埼(現・日御碕)の海人が獲るものが一番だとされた。古代は貢上品、神饌として珍重された。
 アワビの体内で作られる真珠を海人が採取して貢納していたことが知られる。
 
(2023/12/28)NM
 
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サピエンス減少 縮減する未来の課題を探る
 [社会・政治・時事]

サピエンス減少 縮減する未来の課題を探る (岩波新書)
 
原俊彦/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1965)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-00-431965-8
税込価格:968円
頁数・縦:167p・18cm
 
 これまで、人口転換は、高動揺期(多産多死)→初期膨張期(多産中死)→後期膨張期(中産少死)→低動揺期(少産少死)という推移をたどり、最終的に世界の人口は安定する、と考えられてきた(p.59)。しかし、ここにきて第二の人口転換ともいうべき状況が生まれ、出生率と死亡率が逆転し、世界全体の人口減少が始まろうとしている。すでに日本や先進諸国では経験中の現象である。
 将来の人口縮減に備え、人類はどうするべきなのか。
 本書では、人口学の基礎的な知見を披露しつつ、将来のあるべき姿を模索する。
 
【目次】
序 世界人口の増加と日本の人口減少をどう考えるべきか?
第1章 縮減に向かう世界人口
第2章 持続可能な人口の原理
第3章 多産多死から少産少死へ
第4章 人口が減ると何が問題なのか?
第5章 サピエンス減少の未来
 
【著者】
原 俊彦 (ハラ トシヒコ)
 1953年東京都生まれ。人口学者。早稲田大学政治経済学部卒、フライブルク大学博士(Ph.D.)。(財)エネルギー総合工学研究所、北海道東海大学、札幌市立大学を経て札幌市立大学名誉教授。日本人口学会理事、国立社会保障・人口問題研究所研究評価委員などを歴任。
 
【抜書】
●平均寿命(p12)
 世界全体の平均寿命。
 1950年46.5歳、2022年71.7歳、2100年82.1歳?
日本は、
 1950年59.2歳、2022年84.8歳、2100年94.2歳?
 
●移民(p96)
〔 したがって、日本に代表される人口転換の先発地域が人口の持続可能性を維持し社会システムの崩壊を防ぐには、生産年齢人口の爆発的な増加が期待されるサブサハラ・アフリカなどへの経済支援、投資を積極的に進めるとともに、その旺盛な需要に応えることで経済成長を続け、国際人口移動(移民)の受け入れを通じ、少子高齢・人口減少のスピードを緩和するしかないと考える。〕
 
●生き残りゲーム(p104)
〔 これに対し人口が急激に減少する場合にも様々な問題が発生するが、人口減少では人口の縮減自体が生産年齢人口の減少を通じ、社会資本の蓄積や社会的生産の拡大を困難にする。また人口減少では社会経済システムを縮んでゆく人口規模に合わせ、常に縮減再編し続けなければならないという問題が発生する。パイの縮小、ストロー(吸い上げ)効果(straw effect)などと呼ばれるが、縮減する社会資本や社会的生産のもとでは就業機会が減り、分け前にあずかれる人が減る一方、わずかな余剰も削減され、吸い上げられることになる。また人口減少に合わせ組織の無駄を省きスリム化することが常に求められるため、人口増加時のような、全員参加型の前向きの競争はなくなるが、ギスギスして陰湿な生き残りゲームのような競争が生じる傾向が強い。このような状況が社会全体に浸透していけば社会的不満や不安が鬱積し、集団として組織化することはあまりないとしても、突然、個人的に爆発したり暴走する危険性が強い。〕
 
【ツッコミ処】
・数百万人(p1)
 〔世界人口については、現在までのところ地球外との人の出入りはほとんどないので(航空機で大気圏内を移動中の数百万人は地球にいると見なす)、人口の増減は自然動態(出生と死亡)のみで決まるが、世界の様々な地域や国の間では人の移動があるので、自然動態に加え社会動態(転入と転出)も影響する。〕
  ↓
 数百万人! そんなにたくさんの人が同時に飛行機で空を飛んでいるのか!?
 
(2023/12/26)NM
 
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超遺伝子(スーパージーン)
 [自然科学]

超遺伝子(スーパージーン) (光文社新書)
 
藤原晴彦/著
出版社名光文社(光文社新書 1257)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-334-04664-4
税込価格:924円
頁数・縦:222p・18cm
 
 Y染色体もスーパージーンかもしれない。では、スーパージーンとは何なのだろうか。
 最近、明らかになりつつあるスーパージーン(超遺伝子)について、総合的に解説する。
 
【目次】
第1章 スーパージーン物語のはじまり
第2章 スーパージーンに迫るための基礎知識
第3章 天才たちによるスーパージーンの予測
第4章 加速するスーパージーン研究
第5章 スーパージーンは生き物の不思議の源
第6章 スーパージーンはヒトにもあるか
第7章 アゲハの擬態とスーパージーン
第8章 スーパージーン物語の過去・現在・未来
 
【著者】
藤原 晴彦 (フジワラ ハルヒコ)
 1957年兵庫県生まれ。東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻博士課程修了(理学博士)。その後、国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)研究員、東京大学理学部生物学科動物学教室講師、ワシントン大学(シアトル)動物学部リサーチアソシエートなどを経て、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻助教授、同教授などを歴任。専門は擬態・変態・染色体。
 
【抜書】
●ベイツ型擬態(p24)
 無毒な種(擬態種と呼ぶ)が、系統的に離れた有毒な種(モデル種と呼ぶ)に似せるタイプの擬態。
 アルフレッド・ウォレスの同僚ヘンリー・ベイツ(1825-1892)が発見。
 
●ミューラー型擬態(p24)
 系統的に離れた有毒な蝶の間でも、紋様や形が似ているものがいる。このタイプをミューラー型擬態という。毒のあるハチやカエル、ヘビでも見られる。
 ドイツのフリッツ・ミューラー(1821-1897)が発見。
 
●フィッシャー(p74)
 統計学者のロナルド・エイマー・フィッシャー(1890-1962)が、ダーウィンの進化論と、メンデルの遺伝学の対立を解消。
 〔学術的には、進化は小さな連続的な変化(多数の遺伝子が関与する)と大きな不連続な変化(単一遺伝子が関与する)のどちらで起こるのか、という問題〕。フィッシャーは「どちらも正しい」と考えた。
 〔フィッシャーは、複雑で多様な形質も数多くの要素(遺伝子)の突然変異によって制御され、それらも組み合わせによって作り出される可能性を、統計学的な手法を用いて指摘した。ABO式血液型もヒトの身長も、関与している遺伝子の数は大きく異なるが、メンデルの法則にしたがうことには違いない。つまり、自然選択の対象となる形質は、単一の遺伝子の突然変異でも多数の遺伝子の小さな突然変異の蓄積によっても変化し、場合によっては別の種(新種の創成:種分化)を作り出す可能性を指摘したのだ。〕
 
●スーパージーン仮説(p77)
 ウォレスは、ナガサキアゲハの擬態について観察したところ、オス、擬態型メス、非擬態型メスは全く違う姿形をしているが(種内多型)、中間型のものは見当たらないことを発見した。
〔 フィッシャーは、シロオビアゲハの擬態型メスには、さまざまな毒蝶に似せた(地域によって異なる)いくつかのタイプがあり、色、形、模様などが複雑に組み合わさった形質は、さながら1個の遺伝子のように、染色体の1カ所に集まった複数の遺伝子が関与しているはずだと考えた。また、性染色体と擬態を比較しながら、「ヒトの性染色体X・Yと同じように、相同染色体の間で構造が大きく異なっているため、擬態を制御する領域では組換えが起こらないようになっている」という斬新なアイデアを考えた。実際にフィッシャーは、この著書で「このような多型の形質は、一つもしくは少数のメンデルファクターによって制御されている」と述べ、「複数の遺伝子があたかも一つの遺伝子として挙動し、組換えが抑制されることがベイツ型擬態の多型性の維持には重要なのだ」と説いている。〕
 フィッシャー『自然選択の遺伝学的理論』。
 
●ドブジャンスキー(p81)
 テオドシウス・ドブジャンスキー(1900-1975)が、染色体逆位(染色体の一部がひっくり返った状態)が起きると、相同染色体の対合が抑制されることを発見。
 フィッシャーの組換え抑制のアイデアとドブジャンスキーの逆位の発見が結びついて、スーパージーンはより具体的な仮説になった。
 
●赤の女王仮説(p110)
 『鏡の国のアリス』より。
 赤の女王(チェスの駒の一つ)がいつも走り回っているのを見て、アリスがなぜそんなに走っているのかを尋ねたところ、彼女は「その場にとどまるためには、全力で駆けなければならない(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)」と答えた。
 進化学者たちが、細菌やウイルスに対抗するために、生物が有性生殖を行う理由を説明するための仮説。
 ウィリアム・ドナルド・ハミルトン(1936-2000)。
 
●緑髭効果(p111)
 動物が利他的行動を行う原理を説明するための仮説。
 「同じ遺伝子を持つものは緑色の髭をしている」ということが分かっていれば、そのような個体に利他的行動をとっても、遺伝子にとっては有利になる。つまり、自分と似た形質を持つものに対して利他的行動をとるようになる。
 ハミルトンが提唱し、リチャード・ドーキンス(1941-)が「緑髭効果」と名付けた(『利己的な遺伝子』日本語訳では「緑ひげ利他主義効果」と訳されている)。
 
●ヒアリ(p117)
 ヒアリの女王は数年生きるが、ワーカーは数カ月しか生きない。
 ヒアリのコロニーには、女王が1匹の単女王制コロニーと、2匹以上の多女王制コロニーがある。
 どちらのコロニーになるかは、フェロモンが関係している。フェロモンにより、働きアリは女王を受け入れたり、殺したりして女王の数を調整している。
 フェロモンに結合するたんぱく質Gp-9という遺伝子があり、これが「緑髭遺伝子」。Bとbという2種類の対立遺伝子があり、BBという遺伝子からなるコロニーの女王は、必ず単女王コロニーになる。Bbやbbでは多女王コロニーになる。
 Bとbでは塩基配列に9個の違いがある。逆位が起こった。
 単独の女王は、古い巣から新しい巣を作るために飛行して生息範囲を広げる。
 多数の女王がいるコロニーでは、その一帯を独占して、他系統のコロニーの女王を排除しながら、巣を大きく広げる。
 
●自家不和合性(p125)
 多くの植物では、自分の花粉には受精せず、他者の花粉でのみ受精して種子を作る。
 
●四つの性(p135)
 ノドジロシトドという鳥は、頭に白いストライプのあるタイプ(WS:White-Stripe)と、褐色のストライプがあるタイプ(TS:Tan-Stripe)の2種類が存在する。スーパージーン。逆位が2回起こった。
 WSは、歌はうまいが攻撃的で子育てが下手。TSは歌は下手だが子育てが上手。
 オスとメスという性以外に、WSとTSという性がある。WSのメスはTSのオスとしかつがいにならず、TSのメスはWSのオスとしかつがいにならない。
 
●H2(p143)
 ヒトにおけるスーパージーン。第17染色体の17q21.31という150万塩基対ほどの領域。この領域には、逆位の有無からH1とH2という二つのタイプが見つかった。霊長類のゲノムとの比較から、もともとはH2が祖先型で、現生人類の中で徐々にH1型が広がってきた。逆位が起こったのは200万~300万年前という説と、10万年前という説がある。
 H2タイプはアジア人には見当たらず、アフリカ人ではわずか6%ほど。ヨーロッパ人は20~37%。
 この領域が子供の数に関連しているかもしれない。アイスランドのデータから、H2を持つ母親は子だくさんの傾向が見られた。
 その後、ヨーロッパ人の様々な「現象」と結びついている可能性が報告されている。パーキンソン病や大脳皮質基底核変性症といった神経変性を伴った脳の病気になりにくい傾向、など。
 
●蛹の色(p164)
 アゲハの幼虫は、鳥の糞型から柑橘系型に自動的に切り替わる。
 蛹は、周囲の環境によって緑色か茶色になる。葉や細い枝についている蛹は緑色、太い幹についているのは茶色。ざらざらしたところにいると、蛹の体色を茶色に変えるホルモンが分泌される。
 
●キューティクル(p166)
 昆虫の体色は、たんぱく質やキチンなどの物質からなるクチクラが主に色づく。
 クチクラは、英語で髪の毛のキューティクル(cuticle)と同じ単語。
 
(2023/12/24)NM
 
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インド グローバル・サウスの超大国
 [社会・政治・時事]

インド―グローバル・サウスの超大国 (中公新書)
 
近藤正規/著
出版社名:中央公論新社(中公新書 2770)
出版年月:2023年9月
ISBNコード:978-4-12-102770-2
税込価格:1,078円
頁数・縦:302p・18cm
 
 政治、社会、経済、国際関係など、今のインドの全容を伝える。
 
【目次】
第1章 多様性のインド―世界最大の民主主義国家
第2章 モディ政権下のインド経済
第3章 経済の担い手―主要財閥、注目の産業
第4章 人口大国―若い人口構成、人材の宝庫
第5章 成長の陰に―貧困と格差、環境
第6章 インドの中立外交―中国、パキスタン、ロシア、米国とのはざまで
第7章 日印関係―現状と展望
 
【著者】
近藤 正規 (コンドウ マサノリ)
 1961年生。アジア開発銀行、世界銀行にてインドを担当した後、1998年より国際基督教大学教養学部助教授。現在、国際基督教大学教養学部上級准教授。2006年よりインド経済研究所主任客員研究員を兼務。そのほかに21世紀日印賢人委員会委員、日印共同研究会委員、日印協会理事などを歴任。東京大学学士、ロンドン大学修士、スタンフォード大学博士。インドの全ての州と連邦直轄領を訪れて論文を多数執筆。専門はインド経済、開発経済学。
 
【抜書】
●四つのアイデンティティ(p1)
 多様性の中の統一(Unity in Diversity)と呼ばれるインド、インド人の四つのアイデンティティ。
 出身地、言語、宗教、カースト。
 
●ガンディー家(p19)
 国民会議派を支配するガンディー家。「インド独立の父」マハトマ・ガンディーと直接の血縁関係はない。
 ジャワハルラル・ネルーの娘インディラが、ネルーに批判的な異教徒のジャーナリストと恋愛結婚し、そのジャーナリストがヒンドゥー教徒でなかったことを心配したマハトマ・ガンディーが、インディラ夫妻に「ガンディー」の姓を与えた。
 
●携帯電話(p31)
 製造業が弱いインドで、例外として注目されているのが、携帯電話の生産。
 2017年に、アップルの製造を請け負うEMS(電子機器の受託製造サービス)の世界最大手鴻海〈ホンハイ〉(ファックスコン。台湾)が、チェンナイの郊外でiPhoneの製造を開始。22年には輸出も念頭に置いて最新モデルiPhone14の生産が始まった。
 JPモルガンのアナリストは、2022年にはiPhone14製造全体の5%がインドにシフト、25年には最新モデルを含むiPhoneの25%がインドで製造されるであろうと予測。
 サムスンも、最大拠点ベトナムから一部の生産設備をインドへ移す計画がある。
 
●財閥(p58)
 インドの大半の財閥は、4つのコミュニティに属している。
 マルワリ……ビルラ財閥など。「インドのユダヤ人」とも言われる。マルワリのコミュニティに属する財閥が長らくインドの政財界を牛耳ってきた。〔英国の植民地時代に大英帝国との交易を支え、独立後はインド政府を金銭的に支援することで、ビジネスを保護され、利益率の高いビジネスを手広く営んできた。これは政府との癒着を一層深めることとなり、内外の競争から守られた財閥企業の経営は、きわめて非効率なものとなっていった。〕
 グジャラティ……リライアンス財閥など。
 パンジャビ……
 パールシー……タタ財閥など。イランから移住したゾロアスター教徒。
 
●AGEL(p79)
 アダニ・グリーン・エナジー(AGEL)、2020年に国営のインド太陽光発電公社(SECI)から太陽電池製造を含む太陽光発電事業の契約を獲得。この契約により、AGELが8ギガワットの太陽光発電施設を建設、アダニ・ソーラーが2ギガワットの太陽電池とモジュールの製造能力体制を確立。60億ドルの投資とともに40万人の雇用が創出され、稼働期間中900万トンの二酸化炭素が置き換えられることになる。
 AGELによって稼働中(または建設中・契約中)の太陽光発電量は15ギガワットとなり、2025年までに世界最大の再生可能エネルギー事業者になる予定。
 アダニ・グループ……グジャラート州アーメダバードで1988年創立。
 
●医薬品(p94)
 インドの医薬品産業は、低価格の後発医薬品を低所得国に提供するという点で、国際的な貢献をしてきた。
 2001年にインドの大手医薬品企業シプラは、国境なき医師団に対して、エイズ治療用の3種類の混合薬を一人当たり350ドルで供与。現在、国境なき医師団が30か国以上の国々で治療している人々の9割近くがインド製の後発薬を用いている。
 コロナ禍では、インドのワクチンが世界中に輸出され、多くの命を救った。
 
●ダイヤモンド(p102)
 ダイヤモンドは5000年前、南インドのハイデラバード郊外にあるゴルコンダで発見され、17世紀まではインドが世界最大の産出国だった。
しかし、インドのダイヤモンドの産出は徐々に枯渇。
 1725年にブラジルでダイヤモンドの鉱床が発見され、1866年にはボツワナや南アフリカで大鉱床が発見される。
 15世紀以来、世界のダイヤモンド取引を独占したきたのは、ユダヤ人商人。1930~40年代にグジャラート州パランプールのジャイナ教徒がベルギーのアントワープに送られ、それ以来、インド人商人によるダイヤモンドの取引が増加してきた。戦後、インドのダイヤモンド加工業は急成長。
 
●米、小麦(p147)
 インドの全労働人口の46%が農業だが、GDPに占める農業の比率は16%。生産性が極めて低い。
 農地面積は、国土全体の半分強を占める1億8000万ヘクタール。米国に次ぐ世界第2位の規模。
 作付面積の24%が米、14%が小麦。農産物生産量では、米、小麦、紅茶、サトウキビが世界2位となっている。輸出量は、米が世界第1位、小麦が世界第2位。
 
●佐々井秀嶺(p163)
 ささいしゅうれい。
 アンベードカルは、1956年10月に50万人におよぶダリットとともに仏教に改宗、その2か月後に病死した。その後、仏教復興運動を継いだのは、日本人僧侶の佐々井秀嶺。
 岡山県で生まれ、タイの寺院への留学を経て、1966年にインドの日本寺へ派遣された。その後、ナグプールへ移って布教と社会活動を続け、88年にインド国籍を得る。仏教の聖地ブッダガヤでは、大菩提寺の管理権をヒンドゥー教徒から仏教徒に変換させるための運動を組織。2003~06年には、仏教徒を代表してインド政府の少数派委員会のメンバーに。
 毎年10月頃、ナグプールで佐々井が中心となって開いている大改宗式には、今でも3日間で100万人にも及ぶ群衆が押し寄せる。
 
●テラ・モーターズ(p170)
 インドでは、四輪よりも二輪と三輪でEV化が進んでいる。
 近距離タクシーとして使われる三輪EVの年間生産台数は10万台。三輪車の販売台数のうち6台に1台はEV。インド政府は、2024年までに、三輪車をすべてEV化すると宣言している。
 日本のスタートアップ企業のテラ・モーターズは、インドの三輪EV市場に進出して成功を収めている。
 
●常任理事国(p184)
 初代首相のネルーは、中国共産党の周恩来と親交を深め、中国を「兄弟」とまで呼び、ともに第三世界のリーダーになることを目指した。1954年には、「平和5原則」を結んだ。
 インドがなる可能性もあった国連の常任理事国の座を、ネルーは中国に譲る姿勢を見せた、とも言われている。
 
●752年(p241)
 752年、インド人僧侶の菩提僊那が唐から来日、東大寺大仏殿の開眼供養を行った。日本とインドの交流の嚆矢。
 
●OKY(p262)
 O:お前が、K:ここへ来て、Y:やってみろ。
 日本人現地駐在員の間でよく聞かれる言葉。日本の企業では、トップは号令を下しても自らはビジネスにタッチしない。そんな姿勢を揶揄した言葉。
 大半の日本企業の駐在期間は3年。片道切符でやってくる韓国企業との大きな違い。「事なかれ主義」で過ごし、自分の駐在期間中にリスクを取ってビジネスを行うことはない。
 
【ツッコミ処】
・製造業(p106)
〔 自動車部品産業は、インドが製造業やダイヤモンド加工と並んで、国際競争力を有する数少ない製造業の一つである。〕
  ↓
 「製造業」が2か所に出てくるが、最初のは「製薬業」の間違いか?
 
(2023/12/22)NM
 
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#Z世代的価値観
 [社会・政治・時事]

#Z世代的価値観
 
竹田ダニエル/著
出版社名:講談社
出版年月:2023年9月
ISBNコード:978-4-06-532945-0
税込価格:1,650円
頁数・縦:204p・19cm
 
 Z世代の旗手(?)、竹田ダニエルによる「Z世代論」。ただし、Z世代といっても米国の話。日本は、ひと世代(10~15年スパン)遅れているらしい。
 
【目次】
はじめに 日本とアメリカのZ世代の違いの話
STYLE―「ホットガール」はセルフラブがつくる
HEALTH―セラピーは心の必需品
FOOD―「リアル&楽しい」食に夢中
MOVIES―エブエブ旋風の奇跡
SNS―さよなら「インフルエンサー」消費
BOOKS―つながりが広げる読書
MONEY―ブランド価値より「今」の価値
WORK―「仕事≠人生」的な働き方
対談―#Z世代的価値観を考える
おわりに 自分は「Z世代の代弁者」ではない
 
【著者】
竹田 ダニエル (タケダ ダニエル)
 1997年生まれ、カリフォルニア州出身。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆し、リアルな発言と視点が注目されるZ世代ライター・研究者。「音楽と社会」を結びつける活動を行い、日本と海外のアーティストを繋げるエージェントとしても活躍。著書に『世界と私のA to Z』。「Forbes JAPAN 30 under 30 2023」受賞。カリフォルニア大学バークレー校大学院在学中。
 
【抜書】
●ブーマー世代(p7)
 米国における世代区分。
 ブーマー世代……1946~64年生まれ。
 X世代……1965~79年生まれ。
 ミレニアル世代……1981~95年生まれ。
 Z世代……1990年中頃~2000年代生まれ。
 
●メンタルヘルス(p46)
〔 今まで社会が頑なに維持してきた有害なサイクルを断ち切る鍵を持っているのは、Z世代だ。セラピーに通うことが一般的になり、メンタルヘルスについて発信し、親しい人と強固な信頼関係を築くことでお互いにかつてはタブーだったような対話を行い、セルフケアを優先できるような世界を、Z世代は作っている。
 「毎日を楽しく生きなくても良い。たとえ社会に希望が感じられなくて生きることが辛かったとしても、未来への希望を持ち続ける、ただそれだけのことが必要なのです」。私がセラピストに言われたことで、強く印象に残っている言葉だ。「幸せ」や「完ぺき」を求めなくても、少しでも今より良い未来が来ると希望を持って自分と向き合っていけたら、自分にも、そして周りの人々に対しても優しくなれるかもしれない。〕
 
●10分の1(p90)
 2020年、プリンストン大学の報告書。
 工場の操業や製品の洗浄に使用する水のうち、アパレル産業がその10分の1を占め、廃棄される衣服のうち、57%が埋め立て地へ向かう。
 Nature Reviews Earth & Environmentに掲載された研究では、アパレル産業は毎年9200万トンの廃棄物を出し、79兆リットルもの水を消費している。
 
●dupe(p111)
 いま米国では、Z世代の間で「dupe」の革命が起きている。
 dupe……duplicateを略したスラング。正規品に似せている低価格商品。模倣品(counterfeit)とは意味合いが異なり、化粧品であれば発色が似ているもの、電化製品であれば機能が似ているもの、服であればデザインが似ているもの、を指す。
 〔dupeという語が安価な代替品という意味で一般的に使われるようになったのは、2008年の不況の頃だと言われている。一昔前は「ホンモノ」でないものを買うことに躊躇や羞恥心があったかもしれないが、大手インフルエンサーや一般人がことごとくdupeを買って紹介したり、dupeを見つけたことをポジティブにひけらかすところを見ると、もはやそれは「悪いこと、恥ずかしいこと」ではなく、むしろ「ストリートスマート」であると受け止められるのは当然のことだろう。〕
 
●Dupe Swap(p118)
 2023年5月、人気アスレチックブランドのLululemonが、「コピー商品を持ち込んでくれたら本物と交換する」という「Dupe Swap」をロサンゼルスのセンチュリーシティで開催し、9万8000ドル分の商品を無料で配った。
 〔素晴らしい品質でありながら、高くてなかなか手が出ないというAlignレギンスを実際に客に穿いてもらうことで、dupe商品との質の違いを体感させる、という試みだ。〕
 スワップに来た1000人のうち、50%は新規顧客で、その半数は30歳未満だったという。
 
●矛盾の世代(p135)
〔 いろいろなところで述べているが、Z世代は「矛盾の世代」とも言える。環境問題に配慮したいけれど、ファストファッションブランドで買い物もする。資本主義には反対だけれど、毎日頑張っている自分に「ご褒美」を買ってあげたくもなる。多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっている世代だからこそ、価値観も非常に多様で、一括りにすることは不可能だ。しかしその多様性の中でも、一貫して「もっと生きやすい世界になってほしい」という思いが強く存在しているように、私には感じられる。自分が生きやすい世界にしたいという気持ちは、今の社会が生きづらいことの裏返しでもあるとも捉えられる。Z世代は、自分で簡単にこのトロールできる「身の回りのこと」だけに集中しよう、という「丁寧な暮らし」や「自分のことだけをする」といった試みによって「個人の力で気分良く過ごす」だけではない。
 そこから目を転じて大きなシステムの枠組みにまで疑いを持ち、なぜ自分の生活が豊かにならないのか、前の世代のように恩恵を受けるのが難しいのか、なぜ自分が好きなように生きられないのか、苦労をしなければならないのかを繰り返し問うてきた。だからこそ、その理由をZ世代は若い頃からどこかで悟っている。誰かが大いに得をし、誰かが搾取される格差社会が悪化しており、根幹に後期資本主義の問題があることを。
 「大人に任せておけばいい」という時代は、もうすでに終わっている。自分たちの手で、「昔からそうだったから変わらない」という前提ごと覆してしまう。どんどん「変化の前例」を作っていくことで、自分たちの手で腐った社会を少しずつ変えられることを証明している。我慢していても誰の得にもならない、という「絶望」と「希望」を抱えながら、「生きているという手応え」を感じるために、彼らは行動しているのだ。〕
 
●正解はないけど間違いはある(p191、永井玲衣)
 〔ある哲学対話の際に学生がぽつりと漏らしたひと言が忘れられないんです。「社会に“正解はない”っていうのはわかりました。でも正解はないけど“間違い”はありますよね」と。だから、声を上げると「それは違う」と叩かれたり、誰かを傷つけたりしてしまうんじゃないかと言うんです。正解はないのに間違いだけがある社会って、どれだけ苦しいんだろうと思います。その学生の、怒りをはらんだ悲しげな雰囲気が忘れられないです。〕
 
【ツッコミ処】
・女性らしい男性(p23)
〔 「Bimbo」という言葉は、元々はイタリア語の「bambino」に由来し、1800年代には女性らしい男性を揶揄するために使われたという。〕
  ↓
 女性らしい男性?? 女なのか、男なのか……。
 普通、「男らしい男」という言い方はするが、「女らしい男」とは言わないだろう。「女性っぽい男性」もしくは「女性みたいな男性」か?
 
(2023/12/18)NM
 
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校閲至極
 [ 読書・出版・書店]

校閲至極   
毎日新聞校閲センター/著
出版社名:毎日新聞出版
出版年月:2023年8月
ISBNコード:978-4-620-32787-7
税込価格:1,760円
頁数・縦:253p・19cm
 
 新聞校閲の現場で直面した問題を、校閲記者が解き明かしたエッセー集。『サンデー毎日』連載コラム「校閲至極」(2018年6月10日発行号より)を書籍化した。
 校閲とは、文字の間違いや言葉遣いを正すだけではなく、事実確認も重要な仕事の一つ。映画「男はつらいよ」シリーズの内容までチェックしなければならない! 新潟の駅で寅さんに行き先を聞かれ、「東京」と答えたのは男の子だったのか、女の子だったのか?(p.235)
 
【目次】
第1章 校閲って何?
第2章 同音の語があふれている
第3章 カタカナ語の落とし穴
第4章 「いかにもありそう」が命取り
第5章 問題は言い回しにあり!?
第6章 辞書の中の奥深い世界
第7章 ところ変われば…
第8章 名前は唯一無二のもの
第9章 確認は文字だけ?いえ無限です
 
【著者】
毎日新聞校閲センター
 2023年現在、東京本社に東京グループ、大阪本社に大阪グループと分かれ、新聞校閲作業を分担している。校閲部→編集総センター校閲グループ→校閲センターと名称変更を経たが、その間、紙面やウェブサイト「毎日ことば」(現・毎日ことばplus)、雑誌など多様な媒体で情報を発信。ツイッターのフォロワーは11万を超える(2023年7月現在)。著書に『新聞に見る日本語の大疑問』(東京書籍)、『読めば読むほど』(同)、『校閲記者の目 あらゆるミスを見逃さないプロの技術』(毎日新聞出版)。2023年に始めたオンライン講座「校閲力講座」も好評。
 
【抜書】
●品川駅(p110、新野信)
 「鉄道の日」は10月14日。鉄道の開業日1872年(明治5年)9月12日が新暦の10月14日にあたることから。
 しかし、先に工事が完了していた品川と横浜の間で仮開業して運行を始めたのは1872年5月7日(新暦では6月12日)。
 鉄道が開通した当時、新橋駅は現在の汐留シオサイトあたりにあった。横浜駅は、現在は桜木町駅と名前を変えている。
 品川駅は、当時とほぼ変わらない場所にあり、名前も変わっていない。つまり、品川駅は日本最古の駅と言える。
 品川駅の所在地は、品川区ではなく港区。駅名の由来は東海道の宿場「品川宿」だが、駅の所在地は品川宿より北になる。当初は品川宿に駅を設けることも考えられていたが、駅ができると宿場が廃れるとの反対意見が強く、いまは港区である高輪になった。鉄道開設の計画時には、高輪は「品川県」だった。
 所在地が駅名と異なる自治体になっている駅……目黒駅(品川区)、南新宿駅(渋谷区)、下板橋駅(豊島区)、厚木駅(神奈川県海老名市)、四条畷駅(大阪府大東市)。JR新宿駅は、所在地は新宿だが、駅構内は新宿区と渋谷区にまたがっている。南口側にあるバスタ新宿や新宿高島屋の所在地は渋谷区千駄ヶ谷。
 
●障害(p140、水上由布)
 障がい者、障碍者、障害者などと書かれるが、本来は「障碍」。常用漢字外なので書き替えられた。
 「障害」の真の意味は、動かない足や見えない目ではなく、車椅子では移動できない建物や、見えない目では危険なホームのほう。「障害者」とは、「身の回りに障害の多い人」なのである。
 
●字解き(p215、平山泉)
 類似した文字の違いを言葉で説明すること。
 熊「動物のクマ」、萌「くさかんむりに明るい」、竹「バンブーのたけ」、など。
 
(2023/12/14)NM
 
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ネコはここまで考えている 動物心理学から読み解く心の進化
 [自然科学]

ネコはここまで考えている:動物心理学から読み解く心の進化
 
髙木佐保/著
出版社名:慶應義塾大学出版会
出版年月:2022年9月
ISBNコード:978-4-7664-2843-8
税込価格:2,200円
頁数・縦:116, 60p・20cm
 
 さまざまな動物心理学的実験を通して、猫の知性について分析する。
 
【目次】
第1章 動物はどのように考えるのか
 考えるのに言葉はいらない
 動物の思考研究3つの推論能力
  ほか
第2章 ネコはどこまで物理法則を理解しているのか
 動物はどのように“物理的に考える”のか
 ネコは本当に物理的な推論が苦手なのか
  ほか
第3章 ネコは“声”から“顔”を思い浮かべるのか
 ヒトと動物のクロスモーダルな推論能力
 ネコは“声”からあなたの“顔”を思い浮かべるのか
  ほか
第4章 ネコは“どこに”“何が”を思い出せるのか
 動物はどのように記憶するのか
 動物の“記憶”を探る方法
  ほか
終章 ネコの思考能力はどのように進化したのか
 ネコ研究の最前線
 ネコの思考能力はなぜ進化したのか
  ほか
 
【著者】髙木 佐保 (タカギ サホ)
 ネコ心理学者。日本学術振興会特別研究員(RPD)、麻布大学特別研究員。1991年生。2013年同志社大学心理学部卒業。2018年京都大学大学院文学研究科行動文化学専攻心理学専修博士課程修了。博士(文学)。本書の一部を成す業績により2017年度京都大学総長賞を受賞。
 
【抜書】
●物体の永続性(p44)
 目前にない物体の表象を持ち続けること。言葉を持たない動物の心を解き明かすうえで、重要な指標になる。
 ヒトは、生後4か月から8か月頃に、物体の永続性の能力が芽生える。
 物体の永続性は、いくつかの段階に分かれて発達するが、最終段階では、「見えないところで物体が移動したこと(invisible displacement)」を理解できるようになる。ヒトでは、生後18か月から24か月頃。
 
●ネオフィリア(p102)
 新しいことに興味を示すこと。
 家畜化によって現れる行動特性の変化の一つ。動物が家畜化され、食べ物や住居の安定した供給が保証されることで、生存に必要な情報以外に注意を向ける“余裕”が生まれたこと、成体になっても飼い主に甘えるといった子供のような性質を持ち続けること、などと関連する。
 
(2023/12/14)NM
 
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コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき
 [言語・語学]

コレモ日本語アルカ? 異人のことばが生まれるとき (岩波現代文庫 学術467)
 
金水敏/著
出版社名:岩波書店(岩波現代文庫 学術 467)
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-00-600467-5
税込価格:1,452円
頁数・縦:253, 24p・15cm
 
 中国人に仮託された役割語である「アルヨことば」。現実には存在しない言い回しだが、なぜか中国人特有の話し方として定着し、文学、マンガ、ドラマなど、さまざまな場面で使用されている。
 本書は、そんな「アルヨことば」の出自と展開について論じる。歴史的には、横浜ことば、アルヨことば、満洲ピジン、鬼子〈グイズ〉ピジンの順に出現し、現在まで至っている。
 
【目次】
序章 “アルヨことば”にまつわる疑問
第1章 宮沢賢治は「支那人」を見たか
第2章 横浜ことばとその時代
第3章 “アルヨことば”の完成
第4章 満洲ピジンをめぐって
第5章 戦後の“アルヨことば”
終章 「鬼子」たちのことば
 
【著者】
金水 敏 (キンスイ サトシ)
 放送大学大阪学習センター所長、大阪大学名誉教授。1956年4月大阪生まれ。1982年東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。大阪女子大学助教授、神戸大学助教授、大阪大学教授を経て、2022年より現職。日本語文法の歴史的変化と役割語(言語のステレオタイプ)を研究している。日本学士院会員。著書に『日本語存在表現の歴史』(ひつじ書房、新村出賞受賞)ほか。
 
【抜書】
●「ある」語法、「よろしい」語法(p3)
 「ある」語法……文末に「ある」が付いて断定を表す。
 「よろしい」語法……文末に「よろし(い)」が付いて命令ないし勧誘を表す。
 
●「あります」語法(p39)
 ~あります、~ありますか、~ありません。
 横浜ことば。幕末の横浜開港直後、横浜でうまれたピジン。横浜に滞留した西洋人、その召し使いとして連れてこられた中国人などが使った。
 
●チャイナ少女(p173)
 1980年以降、マンガやアニメの世界で、「アルヨことば」の話者として美少女キャラクターが付け加えられた。
 その起源は、キョンシー映画「幽玄道士」の中で活躍するテンテンという美少女。そのイメージが日本のオタク文化にも強く影響した。
 
(2023/12/11)NM
 
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調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス
 [ 読書・出版・書店]

調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス
 
小林昌樹/著
出版社名:皓星社
出版年月:2022年12月
ISBNコード:978-4-7744-0776-0
税込価格:2,200円
頁数・縦:183p・21cm
 
 今は亡き国立国会図書館主題情報部。元NDL職員が、秘伝のレファレンス術を披露する。
 
【目次】
「ググる」ことで、我々がやっていること―世界総索引でアタリをつける
答えを出す手間ヒマを事前に予測する―日本語ドキュバースの三区分
現に今、使えるネット情報源の置き場―NDL人文リンク集
ネット上で確からしい人物情報を拾うワザ―人物調査は三類型で
見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザ
明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法
その調べ物に最適の雑誌記事索引を選ぶには
索引などの見出し語排列で落とし穴を避ける
Googleブックスの本当の使い方
NDL次世代デジタルライブラリーは「使える」―その注意点とともに
「として法」―目的外利用こそ玄人への道
答えから引く法
パスファインダー(調べ方案内)の見つけ方
レファ協DBの読み方―レファレンス記録を自分に役立つよう読み替える
 
【著者】
小林 昌樹 (コバヤシ マサキ)
 1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒業。同年国立国会図書館入館。2005年からレファレンス業務に従事。2021年退官し慶應義塾大学でレファレンスサービス論を講じる傍ら、近代出版研究所を設立して同所長。2022年同研究所から年刊研究誌『近代出版研究』を創刊。専門は図書館史、近代出版史、読書史。
 
【抜書】
●主題情報部(p32)
 2011年、国立国会図書館(NDL)の国民向けレファレンス部局(最後は「主題情報部」)が廃止された。
 
●次デジ(p127)
 ツギデジ。NDL次世代デジタルライブラリー。2019年から部分公開。
 NDLデジタル・コレクション(デジコレ)全文検索とは異なるOCRシステムを使用。明治期から戦争直後までの本を収録。全文検索できる。
 『日本国語大辞典』の用例がほとんど全部、繰り上がるかもしれない。
 
●として法(p138)
 または、「として使う法」。
 レファ本(レファレンスブック)を、本来の開発意図と違うかたちで使う活用法。
 たとえば、『延喜式』の注釈本つまり古代の六法全書注釈を古代百科事典として引く、など。
 
●パスファインダー(p149)
 2011年に廃止されたNDL主題情報部の「遺産」として、パスファインダーが公開されている。
 米国の図書館では、1960年代末から紙で作られていた。
 日本の図書館では20年位前から流行り始め、現在では大きな図書館は結構作って時間HPで公開している。
 
【ツッコミ処】
・ジャパンナレッジ(p168)
 大明堂に関するレファレンス回答文に載っている、「その他調査済み資料」に関する説明。「レファレンス協同データベース(レファ協)」の一例。
〔 また、いわゆる「人物文献」の索引類は一通り引きましたよ、ということが書かれているように読める。有名な『日本人物文献目録』(平凡社、1993、これはジャパンナレッジでも引ける)をはじめ、人物文献索引なのか、人名事典の改題書誌なのかイマイチ性格付けがはっきりしない「日本人名情報索引(人文分野)データベース」も検索されている。〕
 
(2023/12/9)NM
 
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