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まちがえる脳
 [自然科学]

まちがえる脳 (岩波新書)
 
櫻井芳雄/著
出版社名:岩波書店(岩波新書 新赤版 1972)
出版年月:2023年4月
ISBNコード:978-4-00-431972-6
税込価格:1,034円
頁数・縦:229, 7p・18cm
 
 これまでの研究の成果によって明らかになってきた脳の機能をもとに、脳が間違える仕組みとその意義を解説する。
 とは言え、脳について明らかになってきたことはごくわずかで、人工知能、人工脳などで人間の脳をシミュレーションするのはほぼ不可能である。
 
【目次】
序章 人は必ずまちがえる
 ヒューマンエラーの実態
 対策の限界
 脳の何が問題なのか?
第1章 サイコロを振って伝えている?―いい加減な信号伝達
 働いている脳の信号伝達
 どのように調べればわかるのか?
 ニューロンは協調して働くしかない
第2章 まちがえるから役に立つ―創造、高次機能、機能回復
 脳活動のゆらぎと創造
 記憶はまちがえてこそ有用である
 まちがえる神経回路だから回復できる
第3章 単なる精密機械ではない―変革をもたらす新事実
 ニューロンとシナプスがすべてではない
 心が脳の活動を変える
 「病は気から」は本当か?
 AIは脳になれない
第4章 迷信を超えて―脳の実態に迫るために
 脳は迷信の宝庫
 研究者の責任
 急速に解明されているのか?
 脳は手強い
 
【著者】
櫻井 芳雄 (サクライ ヨシオ)
 1953年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退。広島大学助手、富山医科薬科大学助教授、京都大学霊長類研究所助教授、生命学研究所客員助教授、京都大学大学院文学研究科教授、同志社大学大学院脳科学研究科教授などを経て、京都大学名誉教授、同志社大学嘱託研究員、医学博士。専門は行動神経科学、実験心理学。
 
【抜書】
●医療ミス(p11)
 2016年に医学専門誌に掲載された論文。
 米国での医療ミスによる死者は年間25万人。全死因の第3位。
 年間の死者を5~20万人と見積もっている調査もある。
 
●800億(p26)
 ヒトの脳には約1,000億のニューロンがある。そのうち800憶は小脳にある。
 小脳のニューロンは、シナプスの数が比較的少ない。
 大脳には100~200億のニューロンがあり、そのほとんどは大脳皮質にある。シナプスの数が多く、一つのニューロンが数千以上のシナプスを持っている。
 
●デフォルト脳活動ネットワーク(p67)
 脳内では、ゆらぎを持つリズミカルな脳波が常に現れる。ニューロンの大集団の同期発火と、それを生み出す膜電位の同期的な変動が常に起きている。→ デフォルト脳活動。
 デフォルト脳活動を現す複数の脳部位は、互いに同期して活動することもある。→ デフォルト脳活動ネットワーク。
 
●30秒(p70)
 課題に対して間違った反応を示した場合、fMRIの結果を見ると、前頭前野や補足運動野などの広範な部位の活動が、その30秒以上前から変化していた。脳の活動を見ていれば、ボタンを押すほぼ30秒前からエラーを予測できた。
 そのようなエラーを予期する活動を示す脳部位は、自発的なゆらぎを一緒に示すデフォルト脳活動ネットワークの部位とほぼ重なっていた。
 自発的なゆらぎを含む特定の活動が現れているときに課題を行うと、エラーが起きやすい。
 
●脳トレ(p186)
 海外で実施された大規模調査。
 高齢者が脳トレを実施しても、認知機能や記憶機能が改善するという事実は確認されず、認知症の予防効果もなかった。
 脳トレを実施すると前頭葉の血流量が増えるというデータは事実であるが、脳の血流量の増大(ニューロン集団の活動量の増大)は、必ずしも機能の向上にはつながらない。
 
●アストロサイト(p190)
 血管の壁とニューロンの間には、グリア細胞のアストロサイトがある。これを通った物質だけが血液中からニューロンに届く。血液脳関門。
 この関門を通れる物質は、酸素、ホルモン、ブドウ糖、アミノ酸、アルコール、特殊な薬物、など。
 
(2024/4/28)NM
 
〈この本の詳細〉


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