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流されて生きる生き物たちの生存戦略 驚きの渓流生態系
 [自然科学]

流されて生きる生き物たちの生存戦略: 驚きの渓流生態系
 
吉村真由美/著
出版社名:築地書館
出版年月:2022年12月
ISBNコード:978-4-8067-1644-0
税込価格:2,640円
頁数・縦:225p, 図版16p・19cm
 
 渓流の仕組みと生態系を詳しく解説。
 
【目次】
第1章 水の循環と河川
 川の流れを追う
 渓流の環境
  ほか
第2章 流水をいなして生きる生き物たち
 撹乱を耐え忍ぶ
 流れからの待避
  ほか
第3章 流水に適応する
 外部環境への適応
 生息環境と生き物の形状
  ほか
第4章 生き物どうしの関係
 さまざまな察知能力
 餌をめぐるやりとり
第5章 渓流域における落葉の重要性
 渓流域のエネルギーの流れ
 落葉と底生動物
付録 渓流に生息している主な生き物
 
【著者】
吉村 真由美 (ヨシムラ マユミ)
 大阪府生まれ。奈良女子大学大学院理学研究科修了、大阪府立大学大学院農学生命科学研究科中途退学、博士(理学)。運輸省にて航空関係の業務に携わったのち、農林水産省入省。森林総合研究所四国支所研究員、国立研究開発法人森林総合研究所企画部研究評価室長を経て、現在は国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所関西支所チーム長。渓流性水生昆虫の生理生態学、森林構造と生物群集との関係解明、放射性セシウム汚染による水生生物への影響、生態系サービスや生物多様性保全に関わる研究などを行っている。
 
【抜書】
●河床間隙水域(p21)
 hyporheic zone。渓流の川床の下に広がっているエリア。伏流水は、このエリアの渓流に近い部分を指すことが多い。
 攪乱などによって多くの土砂が流れ込み、渓流自体に水が流れなくなっても、このエリアに水が存在していることが多く、生き物も生息している。
 
●溶存酸素量(p29)
 水の中にもわずかに酸素が存在している。しかし、利用可能な酸素の量は空気中の約三十分の一。
 水の中の酸素は主に、水面で水と空気が触れ合うことで、水の中に空気が取り込まれることによってもたらされている。
 溶存酸素量は、水温が低いと多くなる。標準の大気圧のもとで、5℃で12.77mg/Lだったものが、25℃では8.26mg/Lにまで減少する。
 また、流れが速いところなど水が攪拌されていると、空気と触れ合う機会が増えるので酸素濃度は高くなる。
 
●酸性度(p50)
 酸性度は、水素イオンの濃度ではかる。川の中の石が赤茶色になっているのは、酸性の河川となっている証拠。
 アルカリ度は、炭酸塩の濃度ではかる。
 硬度は、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの含有量で決まる。
 電気伝導度は、水の中のすべてのイオン量で決まる。
 
●クリプトビオシス(p74)
 生物が、乾燥や極低温などの状況で活動を停止する無代謝状態。
 
●一級河川(p81)
 一級河川……国土を保全する上でまたは国民の経済を豊かにする上で特に重要と判断された水系。国土交通省令により、国土交通大臣が水系ごとに名称・区間を指定する。全国で109水系が指定されている。国土交通大臣の直轄によって管理を行う河川と、政令によって区間を指定して当該都道府県知事に管理の一部を委任する河川に分けられる。
 二級河川……公共の利害に重要な関係性のある河川。一級河川の水系以外の水系の中から、都道府県知事が指定して管理を行う。
 準用河川……上記以外の河川で、公共性の見地から重要と考えて市町村長が指定する。河川法で指定されていない小川などを、市町村長が準用河川に指定して管理することもある。
 普通河川……どこにも管理されていない場合、河川法の適用を受けない普通河川として扱われる。
 国有林内を流れる渓流の管理は林野庁になるが(町村有林の渓流は町などの管理)、一般的に、渓流は普通河川になる。
 
●シスト形成(p115)
 体の周囲に膜や壁を作り、一時的な休止状態に入ること。乾燥状態の時など、シスト形成を行って環境変化に対応している。
 プラナリアは、シスト形成をするか乾燥耐性のある卵を産むことによって、乾燥状態を生き延びている。
 
●摂食機能群(p155)
 シュレッダー……デトリタス食者や破砕食者ともいう。落葉を細かくして、付着している菌類とともに落葉を食べる。カクツツトビゲラ科、オナシカワゲラ科、など。
 コレクター……上流から流れてきた小型・中型の粒子状有機物を食べる。ユスリカ科、など。
 グレーザー……付着藻類を剥ぎ取って餌とする。ヒラタカゲロウ科、ヤマトビケラ科、ニンギョウトビケラ科、など。
 フィルターラー……石と石の間に網を張って、上流から流れてくる懸濁粒子(小型・中型の粒子状有機物)を捕獲し、濾過して餌にする。ヒゲナガカワトビケラ科、シマトビケラ科、など。
プレデター……動物を捕食するもの。カワゲラ科、ナガレトビケラ科、イワトビケラ科、など。
 
●ブユ(p159)
 ブユは、幼虫の間は小さな有機物を食べている種が多い。
 成虫になると、メスは卵を成熟させるため、栄養価の高い血液を摂取するようになる。
 オスは、飛翔のエネルギー源として花の蜜を吸っている。
 
●放射性物質(p190)
 海水に生息している魚には、体内に受動的に塩分が入ってくるのを阻止し、また入ってきた塩分を排除する機能が備わっている。そのため、入ってくる放射性セシウムを排除し、体内に入ってしまった放射性セシウムをできる限り早く排除しようとする。
 淡水に生息している魚は、体内から塩分が流亡するのを防ぎ、淡水からわずかであっても塩分を取り込もうする機能が備わっている。そのため、放射性セシウムを受動的に取り込みやすく、体内に入った放射性セシウムの流亡を防ごうとする。
 放射線汚染の影響は、淡水に生息している魚で長く続くことになる。
 淡水の魚でも塩分を排除する機能は持ち合わせている。汚染のない環境下で飼育すると、時間はかかるが、放射性セシウムを完全に排除することができる。
 
●亜成虫(p195)
 カゲロウは、不完全変態で、幼虫の間に10~40回の脱皮を繰り返す。
 羽をもつステージが二つある。亜成虫と成虫。幼虫から羽化したものが亜成虫。羽化は捕食される危険性が最も高いので、その危険を減らすため、夕方に一斉に羽化が起こることが多い。その後、羽化した場所から飛び立って、近くの別の場所で再度脱皮を行い、成虫になる。
 亜成虫は成虫とほぼ同じ形をしているが、成虫に比べて毛が多く白っぽい。性的にも未成熟。
 成虫の寿命は短く、数時間から長くても数日程度。摂食しない。
 
(2023/6/30)NM
 
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相棒は秋田犬 現代の縄文犬と共に過ごした3989日
 [歴史・地理・民俗]

相棒は秋田犬 現代の縄文犬と共に過ごした3989日
 
村山二朗/著
出版社名:カンゼン
出版年月:2022年9月
ISBNコード:978-4-86255-662-2
税込価格:1,760円
頁数・縦:238p・19cm
 
 オスの秋田犬「天鵬号」を生後3カ月から育て、最期を看取るまでの11年間を綴ったエッセー。愛情をもって育てることの大切さ、秋田犬の賢さや強さが文章の隅々から伝わってくる。飼ってみたいけど、忍耐力のない者には難しいだろうな。
 
【目次】
秋田犬と暮らすための八か条
決意
教育
待つ犬
意見する犬
空気を読む犬
さびしんぼう
相互理解
判断力
用心棒
相棒
円熟
家族の肖像
感謝
 
【著者】
村山 二朗 (ムラヤマ ジロウ)
 篠笛奏者・ミュージシャン。1968年生まれ。1989年に佐渡ヶ島に本拠を置く「鼓童」のメンバーとしてプロデビュー。1991年に自己篠笛バンド「レブンカムイ」を結成。和洋楽器混成ユニットのパイオニアとして活動。これまでにメジャーレーベルMIDIレコードを含む7枚のCDアルバムを発表。1998年にFIFAワールドカップサッカー・フランス大会の閉会式にて次期開催国の代表として出演したほか世界27か国で演奏を披露する。2012年映画『のぼうの城』に笛吹き役として出演。2016年アニメ映画『君の名は。』の劇中音楽の作曲と篠笛・太鼓の演奏を担当した。ロングセラー篠笛入門書『篠笛ワークショップ』、日本各地の民俗芸能を取材し記録したスコア譜『日本の祭笛・太鼓名曲集』(音楽之友社刊)の著者。現在は和太鼓グループ「東京打撃団」メンバーであり、慶應義塾大学普通部非常勤講師を務めている。
 
【抜書】
●秋田犬と暮らすための八か条(p14)
 (1)覚悟をもって最期まで犬の世話をすること。
 (2)仔犬から育てるならばブリーダーに直接会い譲ってもらう。
 (3)愛情をたっぷり込めて、たくさん可愛がること。
 (4)散歩は毎日欠かさず行い、歩行訓練は仔犬のうちから自分ですること。
 (5)たかが犬だと思って馬鹿にしてはいけない。
 (6)飼い主と周囲の大人が常に知的な振る舞いで犬に接すること。
 (7)犬格を尊重すること。
 (8)事故を未然に防ぐことに努め、事故が起きてしまった場合に備えておくこと。
 
●大館犬(p138)
 昭和6年、大館犬は「秋田犬」として、国の天然記念物に指定される。
 昭和9年に甲斐犬(山梨県)、紀州犬(和歌山県、三重県)、越の犬(新潟県、富山県、石川県。すでに絶滅)、昭和11年に柴犬(長野県、岐阜県、富山県、鳥取県)、昭和12年に土佐犬(高知県。現在では土佐闘犬と区別するために四国犬に改名)、北海道犬(アイヌ犬。北海道)が順次指定された。
 
●秋田犬保存会(p236)
 昭和2年に秋田犬保存会が、昭和3年に日本犬保存会が設立された。
 国の天然記念物に指定されている日本犬は6種。秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬。
 川上犬は長野県天然記念物に指定。琉球犬は沖縄県天然記念物に指定。
 天城犬や薩摩犬など、多くの地犬が滅んでいった。
 
(2023/6/26)NM
 
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敗者としての東京 巨大都市の隠れた地層を読む
 [歴史・地理・民俗]

敗者としての東京 ――巨大都市の隠れた地層を読む (筑摩選書 248)
 
吉見俊哉/著
出版社名:筑摩書房(筑摩選書 0248)
出版年月:2023年2月
ISBNコード:978-4-480-01768-0
税込価格:1,980円
頁数・縦:341p・19cm
 
 1590年、1868年、1945年。三度の占領を経験した東京を、敗者の歴史として捉えなおし、重層的に描く。 
 
【目次】
東京とは何か―勝者と敗者のあいだ
第1部 多島海としての江戸―遠景
 クレオール的在地秩序
 死者の江戸、そして荘厳化する外縁
第2部 薩長の占領と敗者たち―中景
 彰義隊の怨念とメモリー・ランドスケープ
 博徒と流民―周縁で蠢く敗者たち
 占領軍と貧民窟の不穏―流民の近代をめぐる眼差し
 女工たちは語ることができるか
第3部 最後の占領とファミリーヒストリー―近景
 ニューヨーク、ソウル、東京・銀座―母の軌跡
 学生ヤクザと戦後闇市―安藤昇と戦後東京
 「造花」の女学校と水中花の謎―山田興松とアメリカ進出
 原風景の向こう側―「都市のドラマトゥルギー」再考
敗者としての東京とは何か―ポストコロニアル的思考
 
【著者】
吉見 俊哉 (ヨシミ シュンヤ)
 1957年、東京都生まれ。87年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院情報学環教授。社会学、都市論、メディア論を専攻。
 
【抜書】
●堂信仰(p42)
 たんしんこう。
 日本の神社の祖型は古代朝鮮半島、とくに新羅を中心とする祖霊信仰にあったとする説がある。朝鮮半島にあった原-神社は、一般に「堂〈タン〉」と呼ばれ、かつては日本と同じように村ごとに必ずあり、それらの堂で祭りが催さていた。
 堂信仰を支えていたのは、天孫の檀君〈タングン〉が古朝鮮を開いたという「檀君神話」。日本の天孫降臨神話と同型。
 その後朝鮮半島では、李氏朝鮮が500年に及ぶ長い統治を通じて徹底した儒教化政策を推し進め、土着的な堂信仰は、弾圧・排除されるか、儒教的な信仰に転換されてしまった。
 さらに、日本の植民地支配や、朴正熙政権の近代化政策でも土着的なものは排除されるしかなかった。
 〔古代には日韓で当たり前のように存在した文化的共通性が、今日ではすっかり見えにくくなっています。〕
 
●戸(p44)
 朝鮮半島からの渡来人たちは、東京湾内にも入ってくる。
 船を留めるのに適した場所は船着き場となり、やがて湊になった。そのような小さな湊が東京湾一帯にいくつも造られた。それらの場所は、一般的に「戸」呼ばれた。松戸、青砥(青戸)、奥戸、花川戸、高井戸、など。
 これらの一つが、湊としての「江戸」だった。現在の日本橋から銀座にかけて半島状の砂州があり、今の新橋あたりがその突端だった。この砂州が後に江戸前島と呼ばれるようになる。
 
●浅草(p45)
 渡来人文明の本格的拠点となったのは、現在の隅田川を下流とする利根川流域。
 最初に渡来人が関東進出の拠点としたのは浅草寺。浅草観音の創建は628年とされる。この頃から浅草は、海ではなく陸地だった。東上野から田原町辺りまで、また対岸の墨田区は海だったが、浅草付近は岬になっていた。浅草は湊だった。
 渡来人は、隅田川から利根川へと遡上。大宮に氷川神社を建立。埼玉県の「新座」は「新羅」に由来。同県には「高麗郡」もあった。日高市には高麗神社があり、高麗川が流れている。「荒川」の「荒」は、古代朝鮮の東南部にあった「安羅国」に由来するという説もある。
 
●熊野(p52)
 中世を通じて熊野水軍と熊野信仰のネットワークが拡大していった。
 代表例が、中世の説教節の一つ「小栗判官」。もともと二条大納言藤原兼家の子だった小栗は、大蛇と交わった罪で常陸に流罪となるが、相模の豪族である横山氏の美しい一人娘、照手に強引に婿入りするも、怒りを買って一門の者に毒殺される。死んだ小栗は閻魔に許され、餓鬼身としてこの世に蘇り、土車に乗せられて熊野に運ばれ、当地の湯を浴びて元の姿に戻り、横山の館を追い出されて下女奉公をしていた照手とも再開する。この物語を支えていたのは、熊野はすべてを治癒するという、聖地としての熊野の信仰。
 「聖地としての熊野」という物語を全国に広めたのは、御師〈おし、おんし〉と呼ばれる神職たち。御師たちは熊野水軍に支えられながら全国を旅し、熊野神社のお札など、さまざまな文物を広めていった。中世を通じて御師たちの数は膨らんでいった。各地に「旦那」と呼ばれる豪族がいて、御師を受け入れて歓待した。彼らは、熊野権現の宗教的権威を受け入れ、その地に神社を建立した。
 熊野神社が新たに生まれると、その境内に市が立つことになる。市で売られる品々は、熊野のネットワークを通じて運び込まれたもので、関西からのものも少なくなかった。逆に、列島各地の産品が関西へと流通していた。
 〔中世の日本列島には、各地で熊野権現を保護する地元勢力が存在し、境内に立つ市での物流を可能とするネットワークがあり、それら市を権威づける熊野信仰のネットワークが存在していたのです。〕
 
●矢野弾左衛門(p54)
 源頼朝は、鎌倉幕府を開き、新秩序を打ち立てていった。それは、江戸氏の「大福長者」としての役割を解体することにあった。荒川流域に展開された秩父平氏の根絶やし、江戸氏に代わる通運業者の導入。
 摂津国池田(尼崎の後背地)にいた矢野氏一族を浅草と江戸湊の中間の江戸前島に配置。以来700年、鎌倉時代はもちろん、江戸時代になっても徳川幕府から大きな特権を認められ、明治維新まで連綿と「八ヶ国の大福長者」を超す「東国三十三カ国」の物資および情報を含めた流通業者兼職人および芸能の元締めを兼ねた存在として続いた。
 矢野弾左衛門と言われている家系で、江戸前島から浅草へ移り、巨大な屋敷を構える。やがて彼らは浅草弾左衛門とも呼ばれ、皮革業者や芸能民などの被差別民の総元締めみたいになっていく。
 鈴木理生〈まさお〉『江戸の川 東京の川』による。
 
●出張所(p65)
 1970年代の東京の寺院数は約3,000。
 18世紀初頭の段階ですでに約1,800。曹洞宗207、真言宗193、臨済宗154、天台宗173。これらの寺院は、僧侶を養成する場であっただけでなく、庶民にとっての学習の場でもあった。
 江戸には、諸大名、旗本、御家人それぞれが利用できる墓地や寺院が生まれていった。
 これらの寺院は、国許にある寺院の出張所のようなものだった。こうした寺院が建てられるようになったことで、江戸に1,800もの寺院が所在することになった。
 
●被差別民(p74)
 江戸時代、農本主義的な社会になってしまうと、農民を統制する諸制度が整えられていく。その過程で、雑業などに従事して、新たな制度の枠組みに収まらなかった人々が「制外民」となっていった。
 これらの人々は、中世までは商人や農民よりも身分が下ということはなかった。近世に入って身分秩序が確立していく中で、制度の枠に収まらず統制しにくいということで、排除されていったと考えられる。
 こうした動きの中で、それまで雑業や水運業を束ねてきた人々が既得権益を失うまいとした結果、制外民となった穢多・非人を統括する位置に就くことになったと考えられる。矢野弾左衛門。
 矢野弾左衛門は、江戸幕府に提出した由来書に、自らに特権が与えられた職種を挙げている。穢多・長吏支配、猿引、灯心細工、太鼓、皮細工、厩の世話、刑吏。芸人系、職人系、運送業。
 
●人口半減(p120)
 幕末、江戸の人口は約120万人。武士や奉公人50万人、町人60万人、僧侶や被差別民十数万人。
 維新後、幕府が消え、参勤交代がなくなって武士や奉公人の大半が国許へ戻った。人口は約67万人に激減。
 江戸市街地の7割を占めた武家地の大半が空き家化したので、治安が悪化し、犯罪が横行する。最大の消費者であった武士が消えたので、商人や職人の経済的なダメージも大きかった。
 
●賤民廃止令(p125)
 1871年、人民を一元的に管理するため、統一戸籍法が制定された。同時に、賤民廃止令も布告。
 江戸時代は、職能別に人民を管理する体制が前提だった。
 この時、弾左衛門は、新政府に呼び出され、皮革や灯心などの専売権を取り上げられる。皮革加工に将来性があると目を付け、米国から皮革技師を招いて先端技術を導入。
 
●バレーボール(p169)
 紡績企業では、労働争議が頻繁に起こるようになっていた。それを緩和するため、1930年代以降、紡績工場の女子行員たちのリクリエーションとして、バレーボールが重視されるようになった。
 大正中期以降、社内スポーツへの関心が高まり、繊維産業でバレーボールのチーム作りが全国的に行われる。その結果、30年代後半には、繊維産業の現場から多くの強豪チームが出てくる。全国大会で、高等女学校の強豪チームを次々に打ち負かしていく。
 1964年、東京オリンピックで大日本紡績貝塚工場の代表チームが、金メダルを獲得。
 
●占領の歴史(p186)
〔 都市の歴史は占領と征服の歴史です。民族Aが形成した都市を民族Bが征服して領土を拡大し、その都市を民族Cがさらに征服する。一般に、新たな征服者はそれまでの都市の記憶を徹底的に抹消します。たとえば、一六世紀にコルテス率いるスペイン人たちがアステカ帝国の首都を占領したとき、彼らはこの「都」を徹底的に破壊し、その瓦礫の上にキリスト教会を中心とするスペイン帝国の植民都市を建設していきました。〕
〔 他方、日本の都市では、征服された者たちの痕跡が様々な仕方で残ってもいます。なかでも東京は、一五九〇年の徳川による占領、一八六八年の薩長による占領、一九四五年の米軍による占領という三度の占領を経ながらも、その凹凸をなす地形と結びついて過去の敗者たちの記憶が地層をなし、それがこの都市の最大の魅力なってきました。〕
 
●体制の崩壊(p238)
〔 そもそもカブキ者としての原ヤクザが誕生したのも戦国から徳川にかけての最初の江戸占領期であったわけですが、都市占領は文字通りの暴力行為であり、そのような占領が生じる周辺では無数の暴力が渦巻いてきたと考えられます。それらの渦巻く暴力は、占領者の到来とともにすぐに鎮まるようなものではなかったはずです。体制の崩壊は、それまで周縁化されていた草莽たるエネルギーを解放し、その解放は、言葉による以前に草の根の暴力の形態をしばしば纏います。やがて、占領が完成期に差し掛かると、それらの暴力は鎮圧され、管理されていくことになるのです。博徒や愚連隊の盛衰は、この過程を象徴的に示しています。〕
 
(2023/6/25)NM
 
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日本史を暴く 戦国の怪物から幕末の闇まで
 [歴史・地理・民俗]

日本史を暴く-戦国の怪物から幕末の闇まで (中公新書 2729)
 
磯田道史/著
出版社名:中央公論新社(中公新書 2729)
出版年月:2022年11月
ISBNコード:978-4-12-102729-0
税込価格:924円
頁数・縦:237p・18cm
 
 戦国から幕末維新期までの日本史で、あまり公に語られてこなかった逸話、新発見の「史実」を語る。
 読売新聞連載「古今をちこち」2017年9月~2022年9月掲載分を、一部改題し、加筆修正を加えて収録。
 
【目次】
第1章 戦国の怪物たち
 大仏を焼いたのは松永久秀か
 久秀が大悪人にされた理由
  ほか
第2章 江戸の殿様・庶民・猫
 三代・徳川家光の「女装」
 甲賀忍者も勤め人
  ほか
第3章 幕末維新の光と闇
 西郷隆盛、闇も抱えた男
 幕末、公家の花見行
  ほか
第4章 疫病と災害の歴史に学ぶ
 ねやごとにも自粛要請
 感染楽観で繰り返した悲劇
  ほか
 
【著者】
磯田 道史 (イソダ ミチフミ)
 1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年、国際日本文化研究センター准教授、21年より同教授。18年、伊丹十三賞受賞。著書『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)など多数。
 
【抜書】
●名古屋山三郎(p30)
 戦国時代の日本一の美少年で、日本三大美少年の筆頭。他は、不破万作〈ふわばんさく〉、浅香庄次郎。
 歌舞伎にしばしば登場。歌舞伎踊りの創始者である出雲阿国の彼氏との伝説がある。
 豊臣秀吉が朝鮮出兵のため大阪城を留守にしている間に、側室・淀殿と密通をして、秀頼の実父になったとの噂が絶えない。
 先祖は、今の名古屋あたりの領主。元は、「名越」「那古屋」と名乗った。
 父は、秀吉の馬廻(親衛隊)。13歳の時、東山建仁寺の西来院へ稚児に出された。小田原征伐の先鋒の蒲生氏郷が深草の河原で軍勢を勢ぞろいさせたとき、僧侶とともに見物していた山三郎を見初め、小姓とした。氏郷病死後、京に戻って「氏郷の遺言にて、金銀おびただしく賜り、富貴栄耀の浪人」となって、都で千石取りの武士の暮らしをした。評判の美男子だったため、秀吉が愛した絶世の美女の側室「京極松の丸様も」山三郎に近寄ってきた。以上、「武辺雑談〈ぶへんぞうだん〉」による。
 
●松前、五島(p46)
 徳川家康は、「堅固な城を作ればよい」とは考えていなかった。「城は敵に取られるもの」と考えていたふしがある。
 遠方に堅固な城を築くと、敵に取られた時に困る。蝦夷地の松前氏と、五島列島の五島氏は、お城を持たせてもらえなかった。公式には居所が「館」のままで、異国船の脅威が深刻になる幕末期まで、本格的な築城は許されなかった。
 
●譲位(p132)
 日本の皇位継承の特徴は、譲位。世界的に珍しい。
 中国の皇帝も、琉球の王も、譲位が通常ではない。朝鮮王朝も原則は終身在位で、譲位は3割。政権が安定している場合は終身在位が多い。
 江戸期の天皇の譲位には無言のルールがあった。
 (1)十代後半の跡継ぎが得られると譲位する。
 (2)跡継ぎが十代後半に達しないと譲位しにくい。
 天皇は歌会始など歌会を催す。跡継ぎには立派に和歌が詠める年齢が求められた。近世天皇は、天皇としての務めが果たせる皇嗣を育てて譲位するのが理想とされた。
 江戸末期は皇子の死亡率が高かったので、仁孝天皇(にんこうてんのう、在位1817-46年)、孝明天皇(在位1846-67年)も譲位できず、譲位した天皇は光格天皇(在位1780-1817年)までさかのぼる。平成天皇譲位の202年前。明治・大正・昭和の天皇は終身在位制を取った。
 
(2023/6/23)NM
 
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成長戦略は台湾に学べ 日本人が知らない隣人の実力
 [社会・政治・時事]

成長戦略は台湾に学べ
 
御堂裕実子/著
出版社名:かんき出版
出版年月:2023年1月
ISBNコード:978-4-7612-7650-8
税込価格:1,760円
頁数・縦:223p・19cm
 
 台湾の良さ、今こそ日本・日本人が見習うべき点を力説した、台湾愛に満ちた書。
 改めて台湾に行ってみたいと思った。マンゴーが美味しい。
 
【目次】
第1章 台湾ってどんなところ?
 日本人が抱くイメージに収まりきらない台湾の素顔
 日本人よりも幸せな人生を送る台湾人!?
  ほか
第2章 日本人がまだまだ知らない台湾人の考え方
 似ているようで似ていない日本と台湾―台湾人は金銭にまつわる話題に開放的
 会社とプライベートの間の壁が低いアットホームな台湾企業―社内イベントを通じて距離を縮める
  ほか
第3章 日本とはまるっきり異なる台湾式ビジネスの進め方
 臨機応変がきく台湾人のメンタリティ―業種にこだわらず互いに手を組める適応力
 日本で売れないものは台湾でも売れない―親日だからと言って、何にでも日本流は通用しない
  ほか
第4章 台湾人の私生活
 値段にシビアな台湾人―「団体購入」や「代理購入」が発達
 台湾が誇る多彩な食文化―古くから根付く素食文化とは
  ほか
第5章 台湾はどうやって新型コロナ禍を乗り切ったのか(コロナ対策の初動に見事成功した台湾―政府による素早い対策の導入と国民に安心を与える丁寧な説明
コロナ期間中の景気刺激策 ほか
 
【著者】
御堂 裕実子 (ミドウ ユミコ)
 1979年東京生まれ。明治学院大学卒業後、日本での広告代理店勤務を経て、台湾国立政治大学へ留学。帰国後2008年に台湾と日本の事業の架け橋となるべく、合同会社ファブリッジを立ち上げる。2017年には台湾Fabridgeを設立。台湾企業とのマッチングや現地デパート、スーパーでの販売プロモーション、EC販売企画運営、日台輸出入物流サポート、マーケットリサーチなどの事業を行っている。日本の地方自治体のアウトバウンド支援や、食品会社、不動産企業、教育事業など様々な業界の台湾進出を手がけ、支援企業は200社を超える。本書は初めての著書となる。
 
【抜書】
●オードリー・タン(p35)
 唐鳳。鳳を日本語の「オオトリ」という読みに寄せて「オードリー」という英語名を付けた?
 2016年、35歳で蔡英文政権のデジタル担当大臣に任命された。
 きっかけとなったのは、2012年に立ち上がったシビックハッカー・コミュニティ「g0v(零時政府)」での活動。
 シビックハッカー……インターネットなどに公開されたデータを活用し、市民が利用しやすいアプリやサービスを開発することで、社会問題を解決しようとするエンジニア。
 
●萌典(p37)
 g0vが開発したスマホ対応の辞書アプリ。
 繁体字の中国語の他に、客家語、原住民の言語、さらに台湾独特の言葉を加えたものがベースになっており、各言語間、さらに英語、フランス語、ドイツ語の対訳が付いている。
 原住民の言葉も幅広く網羅。アミ族のアミ語に関しては8万語以上を登録。
 台湾の教育部(文部科学省)が開発したオンライン辞書が存在していたが、使い勝手が悪かった。スマホでの検索ができない、IDがないと使えない、など。この辞書を改良しようと、g0vのオードリー・タンが中心となって開発がスタートした。
 教育部の英語名称は「Ministry of Education」、略称「MoE」。MoEと日本語の「萌え」が同じ発音だったので、「萌典〈マァンディエン〉」と命名。
 
●損しないように(p48)
 日本では、「他人に迷惑をかけないように」と親に言われながら子どもが育つ。
 韓国では、「人に負けるな」。
 中国では、「他人に騙されるな」。
 台湾では、「損しないように」「後れないように先んじて」。
 
●妻名義(p85)
 住宅購入の際、台湾では妻名義にすることが圧倒的に多い。住宅以外の不動産も同様。住宅は男が妻に残すものという感覚がある。
 台湾では、女性や妻の意見を尊重される文化が根付いている。母の地位も高い。
 
●Gogoro(p138)
 2011年設立。香港生まれ、アメリカ育ちの陸学森が率いる。
 2015年7月に電動スクーター「Gogoro」の出荷を開始。16年8月に1万台を突破。
 17年5月、最新モデルGogoro2が登場。1ヵ月で1万5,000台のセールスを記録。台湾シェアの4分の1を占めるまでに成長。
 台湾全土にバッテリー交換ステーションを設置、2022年現在、2,215か所。93万8,045個のバッテリーが流通、バッテリーユーザーは45万3,300人。
 台湾のオートバイ市場は、ヤマハと光陽、三陽が不動の御三家だった。
 台湾はスクーター社会で、市民の二人に一人がスクーターを所有。
 
●素食(p161)
 スシー。菜食主義者用の料理。
 台湾には菜食主義の人が多く、全人口2,360万人のうちの約14%。インドに次ぐ菜食主義者大国。
 素食食品の成分の表記方法は法律で規定されている。肉や魚が含まれていてはいけない。さらに、卵、牛乳、五葷〈ウーフェン〉(ニンニク、玉ネギ、ネギ、ニラ、ラッキョウ)が使われているかどうか、細かく表記しなくてはならない。
 上記のすべてを含まないものを全素〈チュェンス〉という。
 
●産後保養センター(p171)
 かつての台湾には、「産後一か月間、母親は水に触れてはいけない」という風習があった。この期間は「坐月子〈ツォユエズ〉」と呼ばれ、妊産婦はなるべく体を動かさないようにし、栄養補給に徹する。
 坐月子の間は、洗髪や入浴も禁じられていた。
 今では、病院に併設された「産後保養センター」での静養が普及している。約1ヵ月、母体を休ませ、体調の回復に努める。
 センターに助産師が常駐し、食事も毎食用意してくれる。家族が同室で寝泊まりできる施設もある。
 料金は1泊1万5,000~5万円。
 産後保養センターに入れない人は、坐月子の期間、母親や義母が身の回りの世話をしてくれる。産後ケアシッターの派遣サービスもある。
 
●慈済基金会(p180)
 世界的に有名な慈善団体。仏教系の団体で、世界54か国・地域に組織を有し、様々なボランティア活動を行っている。台湾内では、大学や病院、テレビ局を運営している。
 ビジネスで財を成した人がしばしば寄付先として選ぶのも慈済基金会である。
 2011年の東日本大震災の際にも、震災翌日に現地入りしたのが慈済基金会のメンバーたちだった。3万円の現金が入った封筒を被災者たちに配って回った。
 
●ピンクマスク運動(p204)
 2020年4月、台湾では市民全員に向けてマスクを配布した。性別に関係なく、白やブルー、ピンクのマスクを配布。
 ピンクのマスクを受けとり、「学校に行きたくない」と訴える小学生の男子が続出。
 これを受けた定例記者会見で、CECC(中央流行疫情指揮センター)の陳時中センター長をはじめ、同席した関係者たちが皆ピンクのマスクを着用して登場。「ピンクはいい色だよ。マスクは色より、ウィルスから身を守る機能が大切ですよ」と訴える。その後、総英文総統もインスタグラムにて「ピンクは女性だけの色ではない」というメッセージを投稿。
 政府の姿勢に共鳴した企業各社は、自社のロゴをピンクにして「ピンクマスク運動」に賛同を示す。
 大人たちが率先して「身につけているものの色で人を差別してはいけない」という姿勢を見せることで、社会全体にジェンダーフリーの意識が広まっていった。
 
(2023/6/22)NM
 
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江戸のキャリアウーマン 奥女中の仕事・出世・老後
 [歴史・地理・民俗]

江戸のキャリアウーマン: 奥女中の仕事・出世・老後 (568) (歴史文化ライブラリー 568)
 
柳谷慶子/著
出版社名:吉川弘文館(歴史文化ライブラリー 568)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-642-05968-8
税込価格:1,980円
頁数・縦:260p・19cm
 
 江戸時代の大名家の奥女中の仕事・生活・老後などを、主に仙台藩伊達家の資料を基にひも解く。
 
【目次】
奥女中と出会う―プロローグ
伊達家歴代の「奥向奥方」
 伊達家の相続と奥女中
 初代政宗から四代綱村まで
 五代吉村から七代重村まで
 八代斉村から一三代慶邦まで
奥女中の就業規則
 職務と役割分掌
 出仕・役替・昇進・懲罰
 給与と待遇
行事と交際を支える
 行事と作法
 文通を担う
御城使―江戸城大奥へ使者となる
 御城使の任務と権威
 「大奥勤め」での登城
 非公式ルートの交渉
 御城使と男性家臣との協業
老後と名跡立て
 老いても働く
 家を興した奥女中
奥女中として生きる―エピローグ
 
【著者】
柳谷 慶子 (ヤナギヤ ケイコ)
 1955年、秋田県に生まれる。現在、東北学院大学文学部教授。主要編著書『近世の女性相続と介護』(吉川弘文館、2007年、第二二回女性史青山なを賞受賞)ほか。
 
【抜書】
●奥向奥方(p7)
  ―――――――――――――――――――
  表向|  奥向
    |――――――――――――――――
    |  | 奥方
    |表方|―――――――――――――
    |  |広敷向|長局向|御殿向
  ―――――――――――――――――――
  表御殿  |  奥御殿
  ―――――――――――――――――――
 江戸城本丸御殿では、以下のような呼び方になる。
  表向=表
  奥向表方=奥
  奥方=大奥
 
●老衰(p208)
 史料の記載から年齢を知る目安。男女共通。
 老年、老体……50代~60代
 老衰……70代
 極老(ごくろう)……80代以上
 
(2023/6/22)NM
 
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悪党たちの中華帝国
 [歴史・地理・民俗]

悪党たちの中華帝国(新潮選書)
 
岡本隆司/著
出版社名:新潮社(新潮選書)
出版年月:2022年8月
ISBNコード:978-4-10-603888-4
税込価格:1,870円
頁数・縦:351p・20cm
 
 中華帝国に燦然と輝く(?)悪党12傑を俎上に載せ、隋唐から近代までの中国の歴史を通観する。
 中国と言えば儒教に縛られた体制と考えがちだが、李卓吾は南京で『蔵書』を刊行した。孔子を儒教の集大成とみなすのではなく、改革者と捉える異端の書だというのだが、そんな書を公刊できる自由な文化・風潮が明の時代にはあった。もっともそのせいで卓吾は迫害を受けるのであるが。それにしても「李卓吾の信奉者は、実に少なくなかった」(p.273)のである。
 
【目次】
はじめに―「中華帝国」と「悪党たち」
第1章 「中華帝国」のあけぼの―大唐帝国……唐の太宗、安禄山
第2章 カオスの帝国―五代……馮道、後周の世宗(柴栄)
第3章 最強の最小帝国―宋……王安石、朱子
第4章 再生した帝国・変貌する帝国―明……永楽帝、万暦帝
第5章 挫折する近代―明……王陽明、李卓吾
第6章 甦る近代の変革―清末民国……康有為、梁啓超
おわりに―あらためて「中華帝国」と「悪党たち」
 
【著者】
岡本 隆司 (オカモト タカシ)
 1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。宮崎大学助教授を経て、京都府立大学教授。専攻は東洋史・近代アジア史。著書に『近代中国と海関』(大平正芳記念賞受賞)、『属国と自主のあいだ』(サントリー学芸賞受賞)、『中国の誕生』(樫山純三賞、アジア・太平洋賞特別賞受賞)など多数。
 
(2023/6/13)NM
 
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文豪、社長になる
 [文芸]

文豪、社長になる (文春e-book)
 
門井慶喜/著
出版社名:文藝春秋
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-16-391667-5
税込価格:1,980円
頁数・縦:349p・20cm
 
 文豪にして文芸春秋社社長であった菊池寛の半生記、史実に基づくフィクション。
 菊池寛と言えば芥川賞および直木賞の創設者、『文藝春秋』の創刊者という事績、文壇への貢献が大きく感じられらるが、流行作家としても生涯作品を書き続けていたんだということを改めて知った。読んだことないものなぁ。
 『オール讀物』2021年9月号~2023年1月号に断続的に発表されたものを1冊にまとめたようである。
 
【目次】
寛〈ひろし〉と寛〈かん〉
貧乏神
会社のカネ
ペン部隊
文藝春秋
 
【著者】
門井 慶喜 (カドイ ヨシノブ)
 1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞。
 
(2023/6/13)NM
 
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