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ビジネス教養としての最新科学トピックス
 [自然科学]

ビジネス教養としての最新科学トピックス(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)
 
茜灯里/著
出版社名:集英社インターナショナル(インターナショナル新書 130)
出版年月:2023年10月
ISBNコード:978-4-7976-8130-7
税込価格:968円
頁数・縦:221p・18cm
 
 目次で紹介した以外の主なトピックは……。
《第1章》
 太陽フレア対策/アポロ計画・アルテミス計画/中国が月の新鉱物を発見/確認された太陽系外惑星が5000個超に
《第2]章》
 日本人の睡眠傾向とリスク/がん細胞だけ攻撃する免疫細胞/世界で進む「糞便移植」/ブタからヒトへの心臓移植《第3章》
 世界最大「謎」のカットダイヤモンド/飽和潜水法とはなにか/花見に迫る危機/国内唯一の地質時代名「チバニアン」
《第4章》
 生魚の寄生虫アニサキスの対策法/サイボーグ・ゴキブリが災害救助?/イルカの知られざる一面/『鬼滅の刃』に登場する「青い彼岸花」の秘密
《第5章》
 AI鑑定とルーベンス作品の真贋論争/音楽と科学の深い関係/核融合エネルギーの開発状況/未来予想図の答え合わせ
 
【目次】
第1章 宇宙
 スペシャル・インタビュー 宇宙飛行士・若田光一さんに聞く宇宙視点のSDGs「宇宙船地球号は大きくて、我々は楽観視してきた」
 「最悪シナリオ」を検討
 太陽フレア対策に日本政府も本腰
  ほか
第2章 医療
 5類引き下げになった新型コロナウイルス感染症のこれまでとこれから
 コロナワクチンと同じmRNA技術を用いたインフルエンザワクチンが開発される
  ほか
第3章 地球・環境
 「ガイア理論」のラブロック博士が死去―改めて功績を振り返る
 地球内核の回転スピードが落ちている?自転と「うるう秒」の謎にも関連
  ほか
第4章 生物
 両親がオスの赤ちゃんマウス誕生 幅広い応用と研究の意義、問題点を整理する
 オスだけ殺すタンパク質「Oscar(オス狩る)」のメカニズムが解明される
  ほか
第5章 アートとテクノロジー
 誤情報も流暢に作成する対話型AI「ChatGPT」の科学への応用と危険性
 人類滅亡まであと90秒!「世界終末時計」の歴史と問題点
  ほか
 
【著者】
茜 灯里 (アカネ アカリ)
 作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。東京大学農学部獣医学課程卒業。朝日新聞記者を経て、東京大学、立命館大学などで教鞭をとる。著書に第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作『馬疫』(2021年、光文社)など。
 
【抜書】
●鉱物(p39)
 鉱物とは、大雑把に言えば「1種類だけでできている石」。自然界に存在する物質のうち地質作用で作られるもので、ほぼ一定の化学組成と結晶構造を持つ無生物の均一物質。国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会(CNMNC)に申請を行い、審査を通過したもの。申請の内容は、世界各地から選ばれた約40名の鉱物学者が2カ月ほどかけて厳しい審査を行う。最終的に、過半数の委員が参加した投票で三分の二以上の賛成を得られると新鉱物として認定される。
 現在、5,000種以上が知られている。「石ころ」は、通常は複数の種類の鉱物でできていて、「岩石」と呼ばれる。
 新鉱物の名前は、多くの場合、過去の著名な鉱物学者や申請者の恩師、最初に見つかった場所の地名に由来する。1974年に新鉱物として認定された「杉石(Sugilite)」は、分析した山口大学名誉教授の村上允英博士らの恩師の杉健一博士に由来。
 「鉱物学者の夢の一つは、優秀な弟子を育てて新鉱物に自分の名前を付けてもらうこと」。
 
●FMT(p84)
 糞便微生物移植(Fecal Microbiota Transplantation)。腸内細菌叢移植とも。
 2022年11月、オーストラリアの医薬品・医療機器の管轄機関である保健省薬品・医薬品行政局が承認。
 日本でも、保険適用外(自由診療)で臨床応用が始まっている。「便バンク」の整備も進んでいる。
 
●UTC(p107)
 うるう秒は、1972年第1回から2017年の第27回までは、1月1日か7月1日の午前9時(日本時間)の前に午前8時60秒を特別に設けて、1秒足して行われた。
 うるう秒……地球の回転速度にはムラがあり、1日の長さは一定ではない。「地球が1回転するのにかかる時間(1日)」について、原子時計を基準とする高精度な測定時間(協定世界時:UTC)と、天体観測による従来の24時間(世界時、UT1)の差が、0.9秒を上回ったり下回ったりした際に、協定世界時にプラス/マイナス1秒して補正する。
 
●大気圧潜水服(p122)
 飽和潜水より安全と考えられる「次世代潜水」。
 身体を1気圧に保てる金属製の装甲服で覆い、推進装置のついた「コンパクトな一人用潜水艦」。最大700mまでの深さに何時間も潜れる。
 減圧する必要もなく、飽和潜水で用いる呼吸用の混合ガスも使用しないため、窒素中毒、酸素中毒、減圧症、高圧神経症候群などの危険性はほとんどない。
 飽和潜水……体内への気体の溶け込みは、ある一定量(飽和)を超えるとそれ以上は行われない。あらかじめ体内にヘリウムなどの不活性ガスを飽和状態になるまで吸収させておく。水深100m以深でも安全に潜水できる(スクーバダイビングの潜水限界は50~60m)。潜水前に船上にある加圧タンクに入り、深海の高い圧力をかけた状態で一定時間を過ごす。次に潜水用のカプセル(水中エレベータ)で加圧したまま降下し、目的の深さで外に出る。作業後は再び加圧タンクに入り、水深120mなら1週間ほどかけて少しずつ圧力を減らして身体をもとの状態に戻す。(p120)
 
●染井吉野(p126)
 染井吉野は、日本全国に接ぎ木で広がった特定の栽培品種の名前。成長が速いため、年輪が疎になりがちで、樹木の強度が低い。
 染井吉野60年説……樹齢30~40年が樹勢のピークで、50年を超えると幹の内側が腐り、約60年で寿命を迎える、という説。もともと病気に弱い品種。
 ソメイヨシノは、オオシマザクラとエドヒガンの種間雑種全体の名称。花とともに赤色の葉をつけるヤマザクラとは異なり、花の時期には葉を付けない。花は大きく、成長スピードは速く、枝が横に広がる。明治以降に急速に広まる。
 
●休眠打破(p128)
 桜の花芽(蕾)は、前年の夏に作られ、冬の前に成長を止めて休眠状態になる。その後、冬に一定期間の低温(概ね3~10℃)にさらされると休眠から目覚め(休眠打破)、そこからは気温の上昇とともに成長する。
 休眠打破のために必要な低温期間が足りないと、開花は遅れる。そのため、2020年以降、九州では4年連続で北部から南部に桜前線が進む逆転現象が起きている。
 2100年には、東北地方では染井吉野の開花が2~3週間早まり、九州などでは1~2週間遅くなる。すなわち、3月末ごろに九州から東北まで、「染井吉野」が一斉に開花する? さらに種子島や鹿児島の一部では開花しない。
 
●別府湾(p133)
 地質年代表に、「アキタニアン」がある。新生代新第三紀中新世、2303~2044万年前。秋田県ではなく、フランスのアキテーヌ地方にちなむ命名。
 国際地質科学連合は、20世紀半ば以降を「人新世」とすることを検討中。別府湾(ベップワニアン)がGSSP(国際標準模式地)の候補になっていたが、2023年7月、落選。
 
●黄色い花(p173)
 ミツバチは、紫外線からオレンジ色まで見ることができるが、赤は見えない。最も見やすい色は黄色。
 赤い花にはアゲハチョウが集まりやすく、白い花は多くの昆虫に見えやすい。
 植物の花の色は、3種類の色素の組み合わせ。
 フラボン類……無色から薄い黄色。
 カロチン類……黄色やオレンジ色。
 アントシアニン類……赤色や青色、紫色。
 白い花は本来無色。花びらのなかに空気の小さな泡をたくさん含んでいて、光が当たると散乱してビールの泡のように白く見える。
 
(2024/2/26)NM
 
〈この本の詳細〉


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