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縄文神社 関東甲信篇
 [歴史・地理・民俗]

縄文神社 関東甲信篇
 
武藤郁子/著
出版社名:双葉社
出版年月:2023年12月
ISBNコード:978-4-575-31836-4
税込価格:1,980円
頁数・縦:259p・21cm
 
 由緒ある神社のそばには、縄文時代の遺跡もある?
 神社適地は、縄文人にとっても神聖な場所であり、集落を形成した場所でもあった、という仮説のもと、神社と縄文との関係を探る探訪記。首都圏篇に続く「関東甲信篇」である。
 
【目次】
プロローグ 縄文神社とは?―縄文神社の基礎知識
1 茨城・栃木・群馬の縄文神社
【茨城県】 12社
  鹿島神宮(鹿嶋市)、跡宮(鹿嶋市)、坂戸神社(鹿嶋市)、沼尾神社(鹿嶋市)、塩釜神社(鹿嶋市)、御岩神社(日立市)、泉神社(日立市)、大甕神社(日立市)、大宝八幡宮(下妻市)、折居神社(水戸市)、野爪鹿嶋神社(八千代町)、若海香取神社(行方市)
 【栃木県】 6社
  藤岡神社(栃木市)、中根八幡神社(栃木市)、祖母井神社(芳賀町)、押原神社(鹿沼市)、鹿島神社〔玉田町〕(鹿沼市)、板倉神社(足利市) 
【群馬県】 10社
  一之宮貫前神社(富岡市)、荒船山神社〔奥宮・里宮〕(下仁田町)、中野谷神社(安中市)、生品神社(太田市)、三島神社(太田市)、赤城神社〔三夜沢〕(前橋市)、赤城神社〔二之宮〕(前橋市)、赤城神社〔大洞〕(前橋市)、近戸神社〔月田〕、木曽三社神社(渋川市)
 
2 東京・埼玉・千葉・神奈川の縄文神社
【東京】 8社
  明治神宮(渋谷区)、渋谷氷川神社(渋谷区)、代々木八幡宮(渋谷区)、上目黒氷川神社(目黒区)、神明山天祖神社(大田区) 熊野神社(大田区)、諏方神社(荒川区)、池袋氷川神社(豊島区)
 【埼玉】 2社
  高負彦根神社(吉見町)、三ヶ尻八幡宮(熊谷市)
 【千葉】 3社
  石神神社(茂原市)、三輪茂呂神社(流山市)、駒木諏訪神社(流山市)
【神奈川県】 3社
 長尾神社(川崎市)、野川神明社(川崎市)、橘樹神社(川崎市)
 
3 長野・山梨の縄文神社
【長野県】 15社
 諏訪大社〔上社前宮〕(茅野市)、御頭御社宮司総社(茅野市)、諏訪大社〔上社本宮〕(諏訪市)、諏訪大社〔下社春宮〕(下諏訪町)、諏訪大社〔下社秋宮〕(下諏訪町)、千鹿頭神社〔有賀〕(諏訪市)、蓼宮神社(諏訪市)、習焼神社(諏訪市)、北方御社宮司社(諏訪市)、南方御社宮司社(諏訪市)、津嶋神社(岡谷市)、洩矢神社(岡谷市)、小野神社(塩尻市)、矢彦神社(辰野町)、池生神社(富士見町)
【山梨県】 5社
 駒ケ岳神社(北斗市)、津金諏訪神社(北斗市)、川口浅間神社(富士河口湖町)、鵜鷀嶋神社(富士河口湖町)、冨士御室浅間神社(富士河口湖町)
 
【著者】
武藤 郁子 (ムトウ イクコ)
 1973年埼玉県生まれ。神仏や歴史を偏愛し、土器の欠片を探すなど、縄文人に憧れる少女時代を送る。立教大学社会学部産業関係学科卒業後、出版社に入社し、単行本編集に従事。独立後、2011年にありをる企画制作所を設立。現在、ベストセラー作家の時代・歴史小説やエッセイなどの編集に携わりつつ、「場」に残された古い記憶や、本質的な美を探し求め、執筆を続けている。WEBサイト「ありをりある.com」と「縄文神社.jp」を運営。
 
【抜書】
●自然石への信仰(p39)
 自然石への信仰は、縄文時代にはほとんど行われていなかったとされる。
 
●一之宮貫前神社(p88)
 ぬきさきじんじゃ。
 上野国は、律令制下で「大国」とされていた。朝廷は、諸国を規模によって4等級に分けていて、最上級の「大国」は13だけ。そのうち親王が太守になる国に定められたのは、常盤国、上総国、上野国の三つのみ。
 一之宮貫前神社は、最重要国の上野国の一宮。
 
●千鹿頭神(p119)
 ちかとがみ。縄文の信仰を継承するとされる「諏訪神」に属する神。狩猟の神として有名。
 「近戸」「親都」等とも表記され、「ちかた(千賀多、智方、血形)」「ちかつ(千勝、近津、智勝、智賀都)」とも表される。
 「ちかとじんじゃ」は、長野、山梨、埼玉、群馬、栃木、茨城の山岳・山麓地帯に分布。現在の祭神は様々だが、本来は八ヶ岳山麓発祥の「千鹿頭神」を祀るお社とする説がある。
 上野国の二宮であり、名神大社である赤城神社(三夜沢、前橋市)は、赤城神を祀る。千鹿頭神が赤城山にやってきて、赤城神の妹神を妻に迎えたと伝わる。
 
●氷川神社(p139)
 埼玉県の大宮に本社のある氷川神社は、「川の近くの高台上にある」という共通点がある。
 
●論社(p155)
 「式内社」として特定されていないが、式内社である可能性のある神社。
 
●石神(p156)
 しゃくじん。「石棒」を指すことが多い。
 
●ミシャクジ(p179)
 諏訪大社上社は、弥生時代末期ごろ、この地に住んでいた人たち(縄文スワの子孫)を核として、縄文に端を発する信仰を伝えていた。彼らは洩矢族〈もりやぞく、もれやぞく〉といい、彼らが奉斎するのが洩矢神、あるいは「ミシャクジ」と呼ばれる神。
 そこに、天竜川を遡上して「出雲族」がやって来た。出雲神(のちに建御名方神とされる)を祀る人々。両者は激しく戦ったが、出雲族の勝利という形で決着。のちに融和して、ともに神祀りを行うようになった。これが上社の始まり。
 上社の頂点の現人神〈あらひとがみ〉である大祝〈おおほうり〉には、出雲族の神〈しん、みわ〉氏の少年が就く。その補佐をする神長官〈じんちょうかん〉に洩矢族の長が就任。
 御室神事には、「ソソウ神」と「ミシャクジ」が登場する。ソソウ神は、おそらく蛇神。出雲族の神?
 
●御神渡り(p202)
 おみわたり。
 冬に諏訪湖の湖水が凍り、氷がせり上がって亀裂となり、氷の筋道となる現象。
 御神渡りの起点は諏訪神社上社近く。終点が諏訪大社下社近くの、砥川〈とがわ〉付近(春宮)と承知川付近(秋宮)。
 
●ソソウ神(p206)
 諏訪大社上社の御室神事に登場するソソウ神には、主祭神とする神社がない?
 神事の祝詞によると、ソソウ神は3カ所に登場する。有賀〈あるが〉と真志野〈まじの〉と、一カ所不明。この地域周辺を「西山」と呼ぶ。
 有賀には千鹿頭〈ちかとう〉神社がある。
 
●駒ケ岳(p224)
 駒ケ岳神社は、江戸時代後半(1816年)、修験道の延命〈えんめい〉行者による開山。
 駒ケ岳山頂では、縄文土器が発見されている。石鏃、石斧なども。
 
●修験道(p226)
 当山派……真言系。聖宝(832-909年)を派祖とする。醍醐寺三宝院を本山とする。
 本山派……天台系。聖護院を本山とする。
 
●津金学校(p232)
 北斗市の津金御所前遺跡周辺には、縄文と平安時代の集落が出土している。戦国時代の古宮〈ふるみや〉城もあった。武田氏に仕えた津金衆の長・津金氏の居城。
 さらには、津金学校がある。明治、大正、昭和の校舎がそのまま保存され、「三代校舎ふれあいの里」として公開されている。津金諏訪神社の隣接地。
 
●丸石神(p234)
 まるいしがみ。
 甲州では、道祖神として丸石を祀る風習がある。縄文まで遡る信仰形態?
 
(2024/4/11)NM
 
〈この本の詳細〉


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