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メタゾアの心身問題 動物の生活と心の誕生
 [自然科学]

メタゾアの心身問題――動物の生活と心の誕生
 
ピーター・ゴドフリー=スミス/〔著〕 塩崎香織/訳
出版社名:みすず書房
出版年月:2023年12月
ISBNコード 978-4-622-09662-7
税込価格:3,520円
頁数・縦:291, 60p・20cm
 
 動物(多細胞動物:メタゾア)の意識がどのように生まれ、形成されていったかを、進化の系統樹をさかのぼって考察。
 
【目次】
1 原生動物
2 ガラスカイメン
3 サンゴの新たな一手
4 一本腕のエビ
5 主観の起源
6 タコたち
7 キングフィッシュ
8 陸上の生活
9 鰭、脚、翼
10 徐々にかたちに
 
【著者】
ゴドフリー=スミス,ピーター (Godfrey-Smith, Peter)
 1965年、シドニー生まれ。シドニー大学教授、およびニューヨーク市立大学大学院センター兼任教授。専門は哲学(科学哲学/生物哲学、プラグマティズム/ジョン・デューイ)。練達のスキューバ・ダイバーでもある。スタンフォード大学助教授(1991-1998)、同・准教授(1998-2003)、オーストラリア国立大学およびハーバード大学兼任教授(2003-2005)、ハーバード大学教授(2006-2011)、ニューヨーク市立大学大学院センター教授(2011-2017)などを経て、現職。
 
塩﨑 香織 (シオザキ カオリ)
 翻訳者。オランダ語からの翻訳・通訳を中心に活動。英日翻訳も手掛ける。
 
【抜書】
●メタゾア(p36)
 Metazoa。後生生物。多細胞の動物。19世紀末、ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルによって導入された。
 Protozoa(単細胞の原生動物)との対比によって生まれた言葉。metaは「あとに」「そばに」の意味、zoaは「動物」を意味する。
 
●右脳、左脳(p133)
 さまざまな脊椎動物において、同じ種の仲間との社会的交流には右脳(左眼)を、食物に関係することには左脳(右眼)を好んで用いる。
 タコと同じ頭足類に属するコウイカは、視交叉がないので、餌を摂取することに関しては右眼を、捕食者に対処する場合は左眼を優先的に使う。
 
●WADAテスト(p155)
 日本出身でカナダに移住した医師の和田淳が発明したテスト。左右どちら側の脳が言語を司っているかを同定するテスト。
 麻酔薬を注入して左右いずれかの脳を眠らせ、言語機能の課題を与えられる。脳の半分が眠った状態で何ができるかを確認。
 左右どちらに脳にも別個に意識があると考えられる結果が得られた。
 
●ヒヨコ、ヒキガエル(p242)
 ジョルジオ・ヴァロルティガラとルカ・トマシは、孵化直後のヒヨコに一時的に眼帯を付け、脳の左右いずれかの側で課題の処理をさせた。
 まず、眼帯を付けない状態で餌場の位置を学習する。この場所は、空間中の位置関係に加えて目印を付けた。次に、一方の眼を眼帯で覆い、同じ空間に戻す。この時、目印の位置が変わっている。左眼(右脳)が使えたヒヨコは目印を無視して空間の位置関係から餌場を探したが、右眼(左脳)が使えたヒヨコは目印が新たに置かれた場所に向かった。
 眼帯を付けていないヒヨコも目印を無視した。つまり、右脳が優位に働いた。左脳が適切な情報を持っていたとしても、右脳が機能しない状態にならなければ処理には割り込めない。
 ヒキガエルは、獲物が視野の外から左視野に入ってきても、ふつう、その獲物が右視野(左脳に関わる側)に移動するまで襲いかかろうとしない。ライバルのヒキガエルが視野に入る時は、逆のことが起こる。
 
(2024/2/27)NM
 
〈この本の詳細〉


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