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犬であるとはどういうことか その鼻が教える匂いの世界
 [自然科学]

犬であるとはどういうことか―その鼻が教える匂いの世界
 
アレクサンドラ・ホロウィッツ/著 竹内和世/訳
出版社名:白揚社
出版年月:2018年12月
ISBNコード:978-4-8269-0206-9
税込価格:2,700円
頁数・縦:346p・20cm
 
 
 学術的な研究に基礎をおく、匂いに関するエッセー。犬をめぐる話が大半を占めるが、テーマは匂いや嗅覚全般に関することである。
 
【目次】
犬の鼻
匂いを嗅ぐ者
風を嗅ぐ
嗅ぎながら歩く
顔の真ん中の鼻のように明白
犬がわたしにそれを嗅がせた
働く鼻
ノーズワイズ=鋭い嗅覚をもつ
悪臭の波
トリュフ犬とジャコウネコ
ノーズワーク―嗅いで探す
セカイノニオイ
 
【著者】
ホロウィッツ,アレクサンドラ (Horowitz, Alexandra)
 ニューヨークタイムズ・ベストセラー第一位の『犬から見た世界―その目で耳で鼻で感じていること』の著者。ペンシルベニア大学で哲学の学士号を取得、カリフォルニア大学サンディエゴ校では、犬の認知行動学の研究で認知科学の博士号を取得した。現在、コロンビア大学バーナード・カレッジで教鞭をとるかたわら、犬の認知研究室を主宰し研究を行っている。ニューヨークシティで家族とともに暮らす。
 
竹内 和世 (タケウチ カズヨ)
 翻訳家。東京外国語大学スペイン科卒業。
 
【抜書】
●左右の鼻孔(p53)
 犬は、左右の鼻孔を使い分けている。
 新しい「嫌ではない」匂いをかぐとき、右の鼻孔から嗅ぎ、次に左の鼻孔へと移る。レモン、食べ物、雌犬の分泌物、など。
 好ましくない匂いを嗅いだ場合、右の鼻孔でしか嗅がなかった。アドレナリン、獣医師の汗のにおい、など。
 左の鼻孔は脳の左半球につながっており、日常的な刺激を処理する。
 右の鼻孔は右半球につながっており、恐怖もしくは攻撃的行動に関わることが多い。
 
●フレーメン(p75)
 鋤鼻器に分子を到達させるため、犬は「フレーメン」と呼ばれる愚かしい顔をする。典型的なフレーメンは、鼻に皺を寄せてしかめ面を作り、歯をカチカチさせる。
 ウマ……上唇をめくりあげ、顔をしかめ、少し震える。
 ブタ……口を大きく広げる。
 ネコ……口を少しだけ開けて、面食らったような表情をする。
 ヘビ……二股の舌がちらちら動き、匂いをつまみ上げて鋤鼻器のそれぞれの側に送る。
 
●鋤鼻器(p75)
 鋤鼻器がフェロモンを検知できるのは、フェロモンが水溶性の化学物質で、不揮発性で、低分子量の分子だから。
 犬は物を舐めて水溶性の分子を捕え、鋤鼻器に運ぶ。
 鋤鼻器のレセプターは、特定の対象のみを受け入れ、また、感受性が高い。
 
●くしゃみ(p79)
 犬のくしゃみは、鼻のみで行う。
 鼻を刺激する異物を排出する。
 望ましくない匂いを鼻から追い出す。
 
●スメルスケープ(p90)
 地理学者のJ・ダグラス・ポーティアスの命名。
 都市が持つ、匂いの景観(ランドスケープ)。
 日本では、2001年に環境省が全国の町から「かおり100選」を定め、その維持に努めている。
 「金華山に生息する鹿の匂い」「張り子の人形の彩色に使われた膠の匂いのする家」「一望できる10万本の桃の花盛り」「神田の古本屋街」など。
 
●嗅覚ニューロン(p119)
 嗅覚ニューロンは、すべての動物で、だいたい30日ごとに再生する。
 鼻は常にピカピカの新しい細胞を作り続けている。
 
●ヘレン・ケラー(p131)
 ヘレン・ケラーは、誰かが吐いた息を嗅げば、「その人がやっている仕事」が分かった。
 「なぜなら木の匂い、鉄の匂い、ペンキの、そして薬の匂いが、そこで働く人の服についているからだ。わたしは大工と鉄工所の作業員の違いがわかるし、画家、石工、薬屋の区別ができる。ある人がある場所から別の場所へとさっと通り過ぎるとき、わたしは彼がそれまでどこにいたか、匂いの刻印を手に入れる――台所か、庭か、あるいは病室か」。
 
●癌探知犬(p199)
 1980年代末、イギリスの44歳の女性の飼い犬が、彼女の左腿に突然できたほくろにひどく注意を寄せ始めた。ショートパンツをはいてほくろが露出しているときには、噛み切ろうとさえした。それはメラノーマだった。
 アメリカでは、ダックスフントの子犬が、飼い主である44歳の女性の左の脇の下に異常な興味を示し始めた。テレビの前のカウチに座っている間中、しつこく嗅ぎ続けていた。犬をどかして触ってみると、脇の下にしこりがあった。乳癌だった。乳房切除術のあともその犬は彼女の左の脇の下に興味を寄せ続けた。女性は放射線と化学療法を受けたが、一年後、癌で亡くなった。
 メラノーマのような悪性腫瘍は、異常なたんぱく質が合成されるため、独特の匂いを放出するらしい。
 
●糖尿病アラート犬(p216)
 2013年、糖尿病アラート犬の成功を示す最初の実験報告がイギリスで発表された。
 
●嗅覚学(p219)
 18世紀に、匂いに関する医学上の専門領域が発達した。皮膚や体から放たれる匂い――吐瀉物、尿、汗、大便など。
 天然痘……玉ねぎの甘い匂い。
 腸チフス……焼きたてのパンの匂い。
 黄熱病……肉屋の匂い。
 糖尿病性ケトアシドーシス……熟したバナナもしくは甘ったるい「フェイクフルーツ」の匂い。
 タムシ……猫の匂い。
 
(2019/5/18)KG
 
〈この本の詳細〉


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