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考える日本史
 [歴史・地理・民俗]

考える日本史(河出新書)
 
本郷和人/著
出版社名:河出書房新社
出版年月:2018年11月
ISBNコード:978-4-309-63102-8
税込価格:907円
頁数・縦:253p・18cm
 
 
 日本史を学ぶとは、暗記することではなく考えること。十のお題にまつわる日本の歴史を考察する。
 
【目次】
第1章 「信」
第2章 「血」
第3章 「恨」
第4章 「法」
第5章 「貧」
第6章 「戦」
第7章 「拠」
第8章 「三」
第9章 「知」
第10章 「異」
 
【著者】
本郷 和人 (ホンゴウ カズト)
 1960年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。博士(文学)。専攻は日本中世政治史、古文書学。
 
【抜書】
●鎌倉裁判(p92)
 鎌倉幕府の裁判では、雑掌が原告と被告の弁護士のような役目を果たしていた。
 雑掌(ざっしょう)……荘園の経営、税金の徴収など、いろいろな分野で活躍していた。
 雑掌は法律を根拠に正当性を主張するが、その法律が「実際に幕府が作った法律かどうか」ということで闘われていた。
 幕府は、法律を作ったらそのまま放置。きちんと保存する、整理する、ということをしていなかった。
 
●雑訴の興行(p96)
 朝廷による一般の裁判。
 承久の乱以降、鎌倉幕府に敗れた朝廷では、税が思うように集まらなくなった。朝廷の権威が落ちたため。
 「朝廷もサービスを行うから、つまりいろいろと下々の便宜を図るから、だから税金を払いなさい」という形をとっていくことになる。そのひとつが「雑訴の興行」。
 しかし、この時代の朝廷は、成文法がなかったので、言い分に筋が通っているかどうか、「道理」で判断した。
 
●四学問(p212)
 律令制の学制で大学寮に置かれた四つの課程、学問。
 文章道(もんじょうどう)……紀伝道ともいう。中国の歴史や漢文の文章について学ぶ学問。主に文学や歴史。最も格が高い。
 明経道(みょうぎょうどう)……中国の文章を読んだり書いたりする。また儒教を学ぶ。
 明法道(みょうぼうどう)……日本の律令、法律のあり方を学ぶ。
 算道(さんどう)……足し算、引き算、掛け算を学ぶ。
 
●非理法権天(p104)
 楠木正成が旗印にしていたといわれる言葉。
 理は非に勝ち、法は理に勝ち、権は法に勝ち、天は権に勝つ。
 つまり、法よりも権力が上であり、さらにその上に天がある。
 
●公事方御定書(p108)
 徳川幕府は、1615年に「禁中並公家諸法度」と「武家諸法度」を出している。朝廷および大名のみが対象。
 「幕府はこのような法を根拠として政治を行います」という一般的な法律は、吉宗の時代の「公事方御定書(くじかたおさだめがき)」までなかった。
 しかし、広く社会に公開されてはいなかった。見ることができたのは、町奉行など、一部の人だけ。
 
●百石三人(p135)
 豊臣秀吉の朝鮮出兵において、一般的な国の大名に「百石あたり三人の兵を出せ」と命じた。中国や四国の大名は4人、九州は5人。
 この数字を割り出したのは、児玉源太郎率いる陸軍参謀本部。歴史部門のような部署を作り、「日本戦史」を編纂している。
 
●薙刀(p144)
 日本の戦で集団戦が行われるようになったのは南北朝あたり。
 この頃から槍が登場してくる。
 それまで、薙刀と弓が一般的な武器だった。
 集団戦においては、味方を切ってしまう恐れのある薙刀は使えない。
 
●千早城(p147)
 楠木正成による「千早城の籠城戦」(1333年)は、藁人形を使って敵を攪乱したり、火を使って撃退するなど、さまざまな戦術を駆使して幕府の大軍を千早城にくぎ付けにし、翻弄した。
 「城という軍事的な拠点を築いて、敵の兵を疲れさせるという戦術を、日本で初めて実行した例」。
 それまでの城は、「攻められたらそれでおしまい」という感じの、防御拠点しては頼りないものだった。
 
●物量戦(p148)
 長篠の戦いで、織田信長は三千丁の鉄炮によって武田騎馬軍団を撃破した。
 敵に勝つためには相手より多い軍勢を用意し、はるかに勝る装備を備えること。
 
●土木工事(p151)
 羽柴秀吉は、〔城攻めを土木工事に変えてしまった。〕
 鳥取城の攻撃では土塁を築いた。備中高松城の水攻めでは、土塁を築いてさらにその中に川の水を注ぎこんだ。
 
●コジェーヴ(p243)
 哲学者のコジェーヴ(1902-1968)は、「人間の歴史は日本の歴史を見ればわかる」ということを言っていた。
 日本は異民族、異国に侵略されたことがほとんどない。だから、「人間が侵略されずに、自然状態のまま進化していくとどうなるか」ということを知るためには、日本の歴史が貴重な例になる。
 「世界が学ぶべき日本史の価値はそこにある」。
 
(2019/5/13)KG
 
〈この本の詳細〉


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