SSブログ

夢見る帝国図書館
 [文芸]

夢見る帝国図書館 (文春e-book)
 
中島京子/著
出版社名:文藝春秋
出版年月:2019年5月
ISBNコード:978-4-16-391020-8
税込価格:2,035円
頁数・縦:404p・20cm
 
 帝国図書館、つまり国立国会図書館の前身であり、建物としては、上野にある現・国際子ども図書館の歴史をストーリーに織り込んだ小説である。
 帝国図書館に興味があって読み始めたのだが、次第に喜和子さんの生い立ちに関する謎解きに引き込まれ、そちらのほうに興味は引きずられていった。作者のストーリー・てリングの冴えである。レファレンスが現代の図書館の重要な業務になっているが、急逝した喜和子さんの過去をたどる旅は、まさにそのレファレンス調査の極みでもある。「帝国図書館」というタイトルにふさわしい重層性を感じる。
 
【登場人物】
 わたし……この物語の筆者。名前は出てこない。
 喜和子……「夢見る図書館」という小説の執筆を夢見る高齢の婦人。本当の名前は、吉田貴和子。幼時はいしいきわこ。
 谷永雄之助(たにながゆうのすけ)……谷中にあった喜和子さんの家の2階に間借りしていた藝大の学生。卒業後は、広告制作会社勤務。
 古尾谷放哉(ふるおやほうさい)……元大学教授。仕事場と称して無縁坂にワンルームマンションを借り、愛人の喜和子さんをかこっていた。
 マティラム・スミス……コラム「夢見る帝国図書館・10」に登場するインド人。「実際に出会った人物」として、谷崎潤一郎『ハッサン・カンの妖術』、芥川龍之介『魔術』に登場するらしい。実在した人物なのかは不明。
 吉田祐子(ゆうこ)……喜和子さんの娘。宮崎在住。
 椚田(くぬぎだ)……古書店のどんぐり書房店主。
 城内良平(きうちりょうへい)……絵本『図書館の孤児』の作者。本名瓜生平吉(うりゅうへいきち)。喜和子さんのバラック時代の「お兄さん」か?
 五十森(いそもり)……喜和子さんの恋人「ホームレス彼氏」。ゴミ出しされた古本を漁って古書店に売っていた。
 フユミ……喜和子さんが東京に出てきて初めて勤めた小料理屋の女将。
 吉田紗都(さと)……喜和子さんの孫娘。東北の全寮制の高校に進学、その後、仙台で就職。
 伊藤弘和(いとうひろかず)、マカカズ……喜和子さんの義理の兄、弟。
 
【著者】
中島 京子 (ナカジマ キョウコ)
 1964年東京都生まれ。東京女子大学卒業。出版社勤務を経て、2003年『FUTON』で小説家デビュー。10年『小さいおうち』で直木賞受賞。14年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞受賞。15年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、柴田錬三郎賞を受賞。同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞受賞。16年、同作で日本医療小説大賞受賞。
 
(2020/9/30)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。