居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書
[医学]
東畑開人/著
出版社名:医学書院(シリーズケアをひらく)
出版年月:2019年2月
ISBNコード:978-4-260-03885-0
税込価格:2,200円
頁数・縦:347p・21cm
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臨床心理学で学位を取得した「ハカセさま」が、まずは現場でカウンセリング(セラピー)を実践することを優先し、精神科デイケアで働きはじめた。その4年間の奮戦記。
しかしデイケアとは、何もしないで「ただ、いる、だけ」の世界だった。「居る」ことのつらさを味わいつつ、その意義を、ケアとセラピーのはざまで深く考察する。
「精神科デイケア」という、一般人には「非日常」(?)の世界を生き生きと描いていて興味深い。
【目次】
プロローグ それでいいのか?
第1章 ケアとセラピー――ウサギ穴に落っこちる
第2章 「いる」と「する」――とりあえず座っといてくれ
第3章 心と体――「こらだ」に触る
第4章 専門家と素人――博士の異常な送迎
幕間口上 時間についての覚書
第5章 円と線――暇と退屈未満のデイケア
第6章 シロクマとクジラ――恋に弱い男
第7章 治療者と患者――金曜日は内輪ネタで笑う
第8章 人と構造――二人の辞め方
幕間口上、ふたたび ケアとセラピーについての覚書
最終章 アジールとアサイラムーー居るのはつらいよ
【著者】
東畑 開人 (トウハタ カイト)
1983年生まれ。2005年京都大学教育学部卒業。2010年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。2013年日本心理臨床学会奨励賞受賞。沖縄の精神科クリニックを経て、現在、十文字学園女子大学専任講師。博士(教育学)、臨床心理士。白金高輪カウンセリングルーム開業。
【抜書】
●居場所型デイケア(p42)
デイケアには、「通過型デイケア」と「居場所型デイケア」がある。
通過型……何らかの理由で社会生活が送れなくなったメンバーさんが、デイケアのさまざまなプログラムに参加することで、回復し、社会復帰していくのを助ける施設。
居場所型は、〔「いる」ことを目的として「いる」。居場所型デイケアにはそういうトートロジー(同語反復)がある。ふしぎの国みたいだ。「いるためにいるためにいるためにいるためにいる」みたいに、混乱した帽子屋が歌いだしそうではないか。
ここにデイケアの秘密があったと思うのだけど、僕にはそれがよくわかっていなかった。「いる」とは何か? とか、居場所とは何か? とか、そもそもそれでいいのか? という問いを深く考えないままに、働きはじめていたからだ。〕
●パックス・デイケアーナ(p166)
デイケアの平和。
●アサイラム(p304)
アサイラム(Asylum)は、アジール(Asyl)というドイツ語を英語に訳したもの。
アジールは、罪人が逃げ込み、保護される場所。
アサイラムは、罪人を閉じ込めて管理しておく場所。
〔 精神科病院は過去にアサイラムだった。そこでは苛烈な管理がなされ、人権が侵害された。そのことが批判されたことで、患者さんの退院が奨励され、地域で生きていくことが目指された。だけど、地域で生きるのはつらい。そのときに避難所として出現したのがデイケアだった。デイケアは地域で生きる患者さんの居場所になり、アジールとなった。だけど、それがふたたびアサイラムに頽落してしまうことがある。それがブラックデイケアだ。〕
(2021/5/12)KG
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