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ペンギンもつらいよ ペンギン神話解体新書
 [自然科学]

ペンギンもつらいよ: ペンギン神話解体新書
 
ロイド・スペンサー・デイヴィス/著 上田一生/訳・解説 沼田美穂子/訳・解説
出版社名:青土社
出版年月:2022年8月
ISBNコード:978-4-7917-7477-7
税込価格:2,640円
頁数・縦:223p・19cm
 
 ペンギン研究の第一人者が、豊富な写真、イラストとともにペンギンの生態を網羅して解説。
  ニュージーランドで児童書の賞を受けているというのだが……。かの国の子供たちは相当にませているようだ。知的にも。
 原題は“The Plight of the Penguin"。
 
【目次】
1 歴史
 ペンギン「あるある」8つの誤解
 鳥類
  ほか
2 水中生活に向けた大変身
 収れん進化
3 性生活
 性淘汰
 親から子への投資
  ほか
4 愛の結晶
 パパが作るミルク
 体内時計
  ほか
5 さまよえる魂?
 世界最大の海鳥救出活動の実情
 地球温暖化とオキアミ
  
【著者】
デイヴィス,ロイド・スペンサー (Davis, Lloyd Spencer)
 生物学者、サイエンスコミュニケーター。現在ニュージーランドのオタゴ大学で教鞭をとる。ペンギンを40年以上にわたり研究し、ペンギンに関する著書多数。
 
上田 一生 (ウエダ カズオキ)
 東京都出身、ペンギン会議(PCJ)研究員、国際自然保護連合(IUCN)・種の保存委員会(SSC)・ペンギンスペシャリストグループ(PSG)メンバー。
 
沼田 美穂子 (ヌマタ ミホコ)
 東京都出身のフリーランス翻訳者(英日・日英)、日本翻訳連盟認定一級翻訳士(日英、医学・薬学分野)。6年間の会社勤めを経てオタゴ大学へ大学院留学し修士・博士課程を修了、ポスドクも同大で経験した。ロイド・デイヴィスは修士課程の指導教官であり、コガタペンギンの繁殖行動について共著論文を発表した経歴を持つ。
 
【抜書】
●オオウミガラス(p63)
 Pinguinus impennis。ウミスズメ科の飛べない鳥。1844年6月4日、最後の2羽が叩き殺されて絶滅。北半球に生息していた。
 南半球でペンギンに遭遇したヨーロッパンの船員たちは、オオウミガラスに似ていることからこの鳥を「ペンギン」と名付けた。
 
●塩類腺(p81、注)
 ペンギンは、非常に大きな塩類腺をもっている。頭部の両眼の上にある一対の器官。体内に採り込んだ塩分を漉しとって排泄する。口から入った海水から塩分を除去する。ドロドロした塩水が鼻孔から垂れ流され、くちばしの先端に流れ着く。塩水はそのまま流れ落ちるか、ペンギンが頭を左右に振ると、大量のつばのごとく前後左右に飛び散る。
 
●エンペラーペンギン(p86)
 キングペンギンとエンペラーペンギンは、卵を1個だけ生む。
 エンペラーペンギンは、海氷の上で繁殖するので、両足の上に卵を載せて抱卵する。
 キングペンギンは、小石も植物も豊富にある亜南極地域で繁殖するが、1個の卵を両足に載せて抱卵する。キングペンギンとエンペラーペンギンは、共通の祖先を有するのかもしれない。
 
●オスの作るミルク(p157)
 エンペラーペンギンは、海氷(パックアイス)の上で繁殖する。小石も草もないので巣作りができず、オスが両足の上に卵を載せて、2カ月間、絶食して抱卵する(求愛期間も含めると3か月間の絶食)。絶食期間中、体重の三分の一を失う。メスは、卵を産むと海に採餌に出かけ、雛が孵化した頃に戻ってくる。
 メスが戻ってくるまでの間、オスは体内組織を分解して一種のミルクを作り出し、雛に与える。
 
●14か月(p146)
 キングペンギンの雛は育つまでに14カ月ほどかかる。
 親鳥は、3年間に2回ずつの頻度でしか子育てができない。
 
●クレイシ(p169)
 3羽以上の雛の集まりこのこと。
 ペンギンの多くの種では、ある程度雛が育ち、自力で体温を維持できるようになると(2週齢ほど)、雛に大量のえさを与えるため、両親とも採餌に出かけて雛だけ取り残される。
 その雛たちが体を寄せ合ってクレイシを形作る。
 親たちは、雛に給餌するために鳴き声を上げて雛に呼び掛け、雛は親の元へと駆け寄る。
 
●マカロニペンギン(p164)
 マカロニペンギン属……マカロニペンギン、フィヨルドランドペンギン、スネアーズペンギン、イワトビペンギン、シュレーターペンギン、ロイヤルペンギン(マカロニペンギンの亜種)。立派な眉毛をもつ。
 卵を2個産むが、雛は1羽だけしか育たない。
 第一卵より第二卵のほうが大きい(最大で2倍にも)。6日ほど後に産み落とされた第二卵のほうが先に孵化する。
 フィヨルドランド、スネアーズ、イワトビでは、通常、2個とも孵化するが、孵化の遅い第一卵の小さいほうの雛は競争に勝つことができず、餓死してしまう。
 シュレーター、マカロニ/ロイヤルは、第二卵の産卵当日もしくはそれ以前に、第一卵をなくしてしまう。
 マカロニペンギン属のこの現象は、一腹卵数を1個に減らそうとしてる進化の最中?
 
(2022/12/21)NM
 
〈この本の詳細〉

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