ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く
[社会・政治・時事]
エリオット・ヒギンズ/著 安原和見/訳
出版社名:筑摩書房
出版年月:2022年3月
ISBNコード:978-4-480-83722-6
税込価格:2,090円
頁数・縦:366p・19cm
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デジタル探偵、ネット探偵、オープンソース探偵。要は、SNSなどに掲載された画像や動画を丹念に調べ、隠された真実を暴く活動である。その手法を細かく紐解きながら、べリングキャット立ち上げの経緯とその活動を報告する。
【目次】
1 ラップトップ上の革命―ネット調査の可能性に気づく
2 “ベリングキャット”の誕生―探偵チームの形が整う
3 事実のファイアウォール―デジタル・ディストピアへの反撃
4 ネズミが猫をつかまえる―スパイ事件が時代を画する事例に
5 次なるステップ―正義の未来とAIのパワー
補遺 暗殺者と対決―“ベリングキャット”、暗殺団に電話する
【著者】
ヒギンズ,エリオット (Higgins, Eliot)
オープンソース調査集団として何度も表彰された“ベリングキャット”の創設者。カリフォルニア大学バークレー校の“ヒューマン・ライツ・センター”の研究員で、国際刑事裁判所の技術顧問委員会のメンバーでもある。2019年、『プロスペクト』誌によって世界最高の思想家50人のひとりに選ばれた。
安原 和見 (ヤスハラ カズミ)
翻訳家。
【抜書】
●ブラウン・モーゼス(p30)
エリオット・ヒギンズが始めたブログ。2011年頃か?
フランク・ザッパという米国のシンガーソングライター(1940-93)の歌の題名からとった。
●見えてしまうもの(p48)
ネットに公開されている画像、動画には、〔人が見せたいもの以外にも、見えてしまうものがある。〕
●RT(p58)
ロシアの英語ニュース専門局。最初は「ロシア・トゥデアイ」だったが、出自をごまかすために「RT」に改称した。
●グータ(p74)
シリアの首都ダマスカスの郊外。
反政府勢力の支配地域で、2013年8月21日、ロケット弾による化学兵器が使用され、死者1,000人、被害者数千人を出した。
●特定し、検証し、拡散する(p90)
べリングキャットのモットー。
特定……見過ごされている問題、発見されていない問題をネット上で特定する。
検証……あらゆる証拠を検証し、けっして推測に頼らない。
拡散……わかったことを拡散し、同時にこの分野を全体として広く知らしめる。
●べリングキャット(p94)
創設は、2014年7月14日。
マレーシア航空17便の墜落事故の3日前。ウクライナ東部上空6マイルの地点を飛行中、何者かに撃墜された。乗員乗客298人が犠牲になった。
●サンカルク(p104)
写真のなかの影を測定し、時刻を特定するアプリ。
●デツィンフォルマチヤ(p110)
偽情報。ロシア語。
フランス語に聞こえるようにスターリンがつくった造語。
●反・事実コミュニティ(p161)
陰謀論者が言い出した主張が国のプロパガンダに使われ、非主流のメディアで取りあげられ、それがまた陰謀論者に還流する、という生態系。
●フル・ファクト(p210)
英国のファクトチェック組織。
フル・ファクトが発表した評論によると、ネットのファクトチェッカーの第一世代は「発表して放置」という手法をとっており、今も広く用いられている。
第二世代になると、もっと直接的に一般の議論に影響を及ぼそうとし、捏造の発信元と対決し、訂正の発表を求め、倫理基準団体に苦情を訴え、当局の対応を求めるようになる。
さらに第三世代は、インターネットの規模に対応することが必要となる。国境にこだわらず、大規模な協力関係を通じて対処しなければならないだろう。
(2022/12/29)NM
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