キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ
[スポーツ]
キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ
エドワード・ブルック=ヒッチング/著 片山美佳子/訳
出版社名:日経ナショナルジオグラフィック
出版年月:2022年8月
ISBNコード:978-4-86313-551-2
税込価格:2,200円
頁数・縦:318p・19cm
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現在ではすっかり忘れ去られ、ほとんど行われていない「残酷」、「危険」、「ばかばかしい」スポーツの数々を資料に基づいて紹介する。その数なんと100あまり。絵画や写真、古書からとってきた挿絵など、図版も豊富である。よくぞ発掘してきたと感心する。
中でも目を引くのは、「キツネ潰し」や「猫焼き」、「ライオンいじめ」、「カワウソ狩り」といった、動物を虐待する「残酷」なスポーツ群である。食料や毛皮などを得るための狩猟とは異なり、娯楽や賭けのために人々が夢中になっている姿が恐ろしい。
【目次】
空中ゴルフ
水上三脚―アメンボ式水鳥狩り
オートポロ
ベビーボクシング
バルーン・ジャンピング
リス落とし
氷上の樽飛び
ピッチングマシン砲
バトルボール
クマいじめ
〔ほか〕
【著者】
ブルック=ヒッチング,エドワード (Brooke-Hitching, Edward)
英国王立地理学協会フェローにして、不治の域に達した地図偏愛家。BBCの人気クイズ番組「QI」にも携わる。古書店の息子として生まれ、現在もロンドンでほこりまみれのアンティーク地図と古本の山に囲まれて暮らしている。
【抜書】
●ベロシペード(p170)
1860年代、ヨーロッパとアメリカ大陸の人々が夢中になった乗り物。現在の自転車の先駆け。
「ダンディホース」(町のおしゃれな男性に人気があったため)、「ホビーホース」、「速足」といった愛称で呼ばれていた。
自転車の黎明期には、ペダル付き二輪車以外にも様々なタイプのベロシペードが登場した。車輪の数を増やしたり減らしたりした。一輪車タイプの代表はモノホイール。
氷上ベロシペードも作られた。前輪についたペダルをこいで、後ろに付いている金属製の鋭いスケート2本を引っ張るタイプ。ほぼすべての部品が金属製だった。車輪には鋲が打たれていた。重すぎて、氷の薄い部分を通ればいつ割れて水の中に落ちてもおかしくなかった。
●モブフットボール(p190)
中世初期のサッカーは、「モブフットボール(群衆のサッカー)」と呼ばれていた。
試合は、多くの人々が集まる祭日「告解の火曜日」に開催されることが多かった。教会の礼拝が終わると、人びとは豚の膀胱を膨らませたボールを手に、町や村の周辺の野原に繰り出した。人数制限はなく、村中が総出で別の村と対戦した。
ゴールだけが決められ、競技場の範囲は決まってなかった。地元教会のバルコニーや庭がゴールとして使われることも多く、聖職者の怒りを買った。
フランスにも「ラ・スール」と呼ばれる同じようなスポーツがあり、人気があったが、同じように危険だった。
イタリアでは、「ジョッコ・デル・カルチョ(サッカーの試合)」もしくは「カルチョ・フィオレンティーノ(フィレンツェのサッカー)」と呼ばれていた。主に冬場、サンタクローチェ広場、サントスピリト広場、サンタマリアノベッラ広場などで柵囲いした競技場を使って開催された。両チーム27人ずつで、審判がボールを近くの家の壁にぶつけ、ゲームが始まる。足やこぶしを使ってボールをゴールへ運ぶ。初期のイングランドのサッカーとは異なり、試合に参加できるのは貴族だけだった。1555年、ベネチアのアントニオ・スカイノが著した最古の球戯の専門書『球戯論』では、ゴールを決めることは「輝かしい行い」として称賛された。
●消滅したオリンピック種目(p222)
ゲーリック・フットボール(1904)
距離飛込(1904年)
ハーリング(1904年)
ローク(アメリカ式クロッケー。チームを派遣したのは米国のみだった。1904年)
サイクルポロ(1908年)
グリーマ(バイキングのレスリング。1912年)
芸術のコンテスト(建築、文学、音楽、絵画、彫刻のうちスポーツに着想を得たもの。1912~48年)
コーフボール(1920年、1928年)
ラ・カン(杖を使うフランスの武道。1924年)
サバット(フランス式キックボクシング。1924年)
フリージアン・ハンドボール(1928年)
アメリカン・フットボール(1932年)
グライダー(1936年)
ペサパッロ(フィンランド式野球。1952年)
オーストラリアン・フットボール(1956年)
武道(剣道、弓道、相撲。1964年)
水上スキー(1972年)
ボウリング(1988年)
ローラーホッケー(1992年)
(2023/5/21)NM
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