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昨日までの世界 文明の源流と人類の未来
 [歴史・地理・民俗]

昨日までの世界(上)―文明の源流と人類の未来
ジャレド・ダイアモンド/著 倉骨彰/訳
出版社名 : 日本経済新聞出版社

(上)
出版年月 : 2013年2月
ISBNコード : 978-4-532-16860-5
税込価格 : 1,995円 
頁数・縦 : 414p 図版32p・20cm
 
昨日までの世界(下)―文明の源流と人類の未来
 
(下)
出版年月 : 2013年2月 
ISBNコード : 978-4-532-16861-2
税込価格 : 1,995円 
頁数・縦 : 390p・20cm

 
 
■1万1000年前の世界と現代社会
 ピューリッツァー賞受賞作『銃・病原菌・鉄』の著者が、つい1万1000年前までは地球上のどこにでも存在した「伝統的社会」(昨日までの世界)について、現代社会と比較しながら論じる。
 ここでいう「伝統的社会」とは、エルマン・サービスの分類するところの「小規模血縁集団(バンド)」と「部族社会(トライブ)」を主に指している。所属する社会集団内のほぼすべての人がお互いに見知っているという社会である。そういった社会が現代よりも優れている面もあるし、現代社会のほうが好ましいという点もある。本書では、著者が調査したニューギニアを中心に「伝統的社会」の実態を紹介しつつ、現代社会(西洋を根源とする先進的な工業社会)と比較し、「伝統的社会」から学ぶべき点を提示している。決してどちらかが全面的に優れているという観点ではない。両方の長所・短所を述べつつ、現代社会の短所をふまえて失われた「伝統的社会」の良さについて見直してみよう、という主張が込められている。

【目次】
空港にて
第1部 空間を分割し、舞台を設定する
 第1章 友人、敵、見知らぬ他人、そして商人
第2部 平和と戦争
 第2章 子どもの死に対する賠償
 第3章 小さな戦争についての短い話
 第4章 多くの戦争についての長い話
第3部 子どもと高齢者
 第5章 子育て
 第6章 高齢者への対応―敬うか、遺棄するか、殺すか?
第5部 危険とそれに対する反応
 第7章 有益な妄想
 第8章 ライオンその他の危険
第5部 宗教、言語、健康
 第9章 デンキウナギが教える宗教の発展
 第10章 多くの言語を話す
 第11章 塩、砂糖、脂肪、怠惰
エピローグ 別の空港にて

【著者】
ダイアモンド,ジャレド Diamond, Jared
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部生理学教授を経て、同校地理学教授。1937年ボストン生まれ。ハーバード大学では生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修めるが、やがてその研究領域は進化生物学、鳥類学、人類生態学へと発展していく。アメリカ科学アカデミー、アメリカ芸術科学アカデミー、アメリカ哲学協会会員。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、コスモス国際賞、マッカーサー・フェローシップ、ルイス・トマス賞など受賞多数。200本以上の論文を発表したほか、一般書も数多く出版。世界的大ベストセラーとなった『銃・病原菌・鉄』ではピュリツァー賞を受賞。

倉骨 彰 (クラホネ アキラ)
 早稲田大学卒業。テキサス大学オースチン校大学院言語学研究科博士課程修了。数理言語博士。同校で自然言語処理等を研究。

【抜書】
●人間社会の4つのカテゴリー(上、p31)
 エルマン・サービスの50年以上前の分類。
 人口規模の拡大、政治の中央集権化、社会成層の進度によって分類。
 ・小規模血縁集団(バンド)……数十人だけで構成。ひとつあるいは複数の拡大家族。移動型の狩猟採集民の大半と、畑を持つ農耕民の一部。人類の大半は、1万1000年前まで小規模血縁集団で暮らしていた。比較的、平等主義で民主的な集団。
 ・部族社会(トライブ)……数百人の局地的な集団で構成。数十の家族がいて、氏族(クラン)という血縁集団にわかれる。農耕民または牧畜民、もしくはその両方を兼ねる。生物的生産性が高い環境では狩猟採集民も多少はいる。経済活動の専門化が進んでいない。政治的指導者の存在が希薄(弱いリーダーとして機能する「ビッグマン」が存在する部族社会もある)。官僚がいない。1万3000年前には発生。
 ・首長制社会(チーフダム)……人口数千人。BC5500年ごろまでに局地的に成立。経済活動が専門化。食料生産に携わらない首長とその親族、(専門化してない)官僚などの専門職が登場。余剰作物の貯蔵。人が定住できる村。農耕や牧畜。共通のイデオロギーと、首長の神権的地位から派生した共通の政治的・宗教的アイデンティティ。首長という誰もが認める指導者の存在。食料や他の資源を首長が「再分配」するという、経済的イノベーション。
 ・国家(ステート)……人口1万人以上の社会。BC3400年前後に、肥沃三日月地帯に誕生。

●建設的なパラノイア(下、p14)
 〔被害リスクの生起頻度が低い行為であっても、その行為を頻繁におこなうのであれば、リスクを冒して若死にしないように用心すべきなのである。〕
 倒れるおそれのある枯れた木の下で寝ない、地面に突き刺さった木の枝があったら人が近くにいるかもしれないと考える、等。

●宗教の7つの役割(下、p211)
・事象についての超自然的な説明
・儀式によって不安を解消する
・苦悩や死に対する恐怖心を癒す
・制度化された組織
・政治的服従の説示
・同胞の他者への寛容
・異教徒に対する戦闘行為の正当化

●方言の定義(下、p219)
 〔意思の疎通がどの程度可能であるか、そのパーセントで方言と別言語の線引きをする場合、恣意的に七十パーセントが基準にされる場合が多い。つまり、この定義によれば、話者同士の意思疎通度が七十パーセント以上であれば同一言語の異なる方言であり、それ以下であれば、異なる言語ということになる。〕

●コカ・コロニゼーション(下、p329)
 コカ・コロニゼーション……作家アーサー・ケストラーの造語。
 モナシュ大学国際糖尿病研究所のポール・ジメット教授。糖尿病を助長する先進国の生活様式が第三世界にまで拡散する様子を「コカ・コロニゼーション」と表現。

(2013/5/5)KG

〈この本の詳細〉
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