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世界の不思議な毒をもつ生き物
 [自然科学]

世界の不思議な毒をもつ生き物

マーク・シッダール/著 岩井木綿子/訳
出版社名 :エクスナレッジ
出版年月 :2015年8月
ISBNコード :978-4-7678-1953-2
税込価格 :1,944円
頁数・縦 :142p・19cm


 毒をもつ動物にまつわるエッセー。自身の体験、毒をもつ動物の発見物語などの科学史的事実も盛り込み、興味深く読める。

【目次】
1 触るな、キケン!
 槍をふるうナイトたち―カモノハシ
 青の黙示録―オオマルモンダコ
  ほか
2 食べてはいけない!
 空を渡る厄災―ヨーロッパウズラ
 空腹ウォーズ1:白い魚 センニンフグ
  ほか
3 毒をもつ刺客たち
 痛烈映画評論―アリゾナバークスコーピオン
 ハートを射貫かれて―ヤッコエイ
  ほか
4 歯と牙
 砂漠の無法者―アメリカドクトカゲ
 哺乳類的方法論―ヨーロッパトガリネズミ
  ほか

【著者】
シッダール,マーク (Siddall, Mark)
 動物学博士。アメリカ自然史博物館無脊椎動物学部門のキュレーター。ヒルの進化とその吸血行動を専門に研究している。2013年秋に開幕したアメリカ自然史博物館の『The Power of Poison(毒の力)』展では企画責任者を務めた。

岩井 木綿子 (イワイ ユウコ)
 英語ほんやく工房たてよこ屋幹事。筑波大学比較文化学類卒。第21回BABEL翻訳奨励賞英日部門(1)フィクション最優秀賞受賞。

【抜書】
●確率(p6)
〔 結局のところ、確率は保険業務に関する計算にしか役に立たない。保険会社や、患者の回復の見込みを予測する医師以外の人たちには使い道のない数字なのだ。イギリスの偉大な哲学者、カール・ポッパー(1902~1994)も言っているように、ある日ある場所である個人に降りかかる1つの例外的出来事を確率と関連づけても意味がない。つまり、わざわざ触れようと思わないかぎりは、猛毒を持つヘビやイモガイやフサカサゴや人を刺す虫――毒があってもなくても――について心配しても無駄だということだ。だが、もし触るなら、害を被る蓋然性は必然性へと変わる。〕

●テトロドトキシン(p7)
 神経の働きを破綻させる神経毒(ニューロトキシン)の一種。神経のインパルスが筋肉(心筋以外)に伝わるのを遮断する。
 フグの肝臓、サメハダイモリ(米国オレゴン州)の皮膚、ヒョウモンダコ(太平洋西部~インド洋)の体内に存在する。つまり、タコの場合はそのvenom(トゲや歯によって送り込まれる毒)の中に、フグとイモリの場合はそのpoisonの中にテトロドトキシンが含まれている。

●擬態(p8)
 ミュラー型擬態……有毒な生物がより強い毒をもつ生物の姿にまねる。
 ベイツ型擬態……まったく無毒の生物が有毒な生物のふりをする。

●生物濃縮(p8)
 食物連鎖の上位に位置する動物の身体組織に、より多くの毒素が蓄積される現象(訳注)。
 世界各地のカエルや、パプアニューギニアとアフリカの鳥たちには、食物の成分から取り入れた毒素を体内に蓄積する能力があるらしい。
 テトロドキシンは、水生生物によって産生されたもので、動物たちが自分たちで作り出しているわけではない。

●王様の食べ物(p33)
 王様の食べ物=アフリカ南部、マルーラの木に生る果実。プラムほどの大きさ。落果すると自然にアルコール発酵が始まる。
 ザンベジ川の流域で作られるムクンビ・ビールなど、さまざまなマルーラ酒造りに用いられる。
 マルーラの木は15mほどの高さで、マカデミアナッツに似た種からはオレイン酸をたっぷり含む良質の油が採れる。ねばねばした樹液からはインクの原料が作れる。

●モウドクフキヤガエル(p36)
 モウドクフキヤガエルは、コロンビア・チョコ地域の熱帯雨林に生息。
 地球上、最強の毒をもつ動物。平均的な成体は、バトラコトキシン、ホモバトラコトキシン、バトラコトキシニンAという、3種の致死性毒物をそれぞれ200~500マイクログラムずつ、皮膚に蓄積している。体重68kgの人間の致死量は200マイクログラム未満。
 バトラコトキシンは、ジョウカイモドキ科の甲虫の体内に高濃度で蓄積されている。モウドクフキヤガエルは、おそらくこの甲虫を餌にしているものと思われる。
 ミールワームと呼ばれるゴミムシダマシの幼虫やコオロギ、ミバエばかり与えていると、野性の毒ガエルも無害になる。数年で毒がなくなる。オタマジャクシのうちに飼育を始めると、無毒のカエルに育つ。

●蛛形類(p82)
 蛛形類(ちゅけいるい)、蛛形綱、Arachnid。サソリ、クモ、ダニなどが属する。8本足で、胴体と頭部がはっきり区別できない。昆虫綱と異なり、単眼で、触角はない。

●アナフィラキシー・ショック(p98)
 アナフィラキシー・ショック……身体のごく一部だけで済むはずのヒスタミン放出が、必要もないのに全身で起こる反応。その結果、喉が腫れ、気道が収縮して呼吸困難になる。そして血管が膨張し、中を流れていた成分が周囲に漏れ出す。そのため全身が腫れ上がり、急激に血圧が低下して、最終的にショック状態に陥る。
 アドレナリンを注射すると、血管が収縮して心拍数が上がり、命を脅かす症状を短時間で回復させることができる。

●venomを持つ哺乳類(p112)
 噛んで毒(venom )を送り込む哺乳類は、数種類しかいない。
 トガリネズミ属、ミズトガリネズミ属、ブラリナトガリネズミ属、ハイチソレノドン(大型のジネズミに似た原始的な食虫類)。

(2015/12/6)KG

〈この本の詳細〉


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