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新書アフリカ史 改訂新版
 [歴史・地理・民俗]

改訂新版 新書アフリカ史 (講談社現代新書)
 
宮本正興/編 松田素二/編
出版社名:講談社(講談社現代新書 2503)
出版年月:2018年11月
ISBNコード:978-4-06-513948-6
税込価格:1,944円
頁数・縦:776p・18cm
 
 
 1997年初版『新書アフリカ史』の改訂新版。全体を見直し、現代の記述を大幅に加筆したという。
  
【目次】
第1部 アフリカと歴史
第2部 川世界の歴史形成
第3部 外世界交渉のダイナミズム
第4部 ヨーロッパ近代とアフリカ
第5部 抵抗と独立
第6部 現代史を生きる
 
【著者】
宮本 正興 (ミヤモト マサオキ)
 1941年生まれ。神戸市外国語大学英米学科卒業、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、中部大学・大阪外国語大学名誉教授。専攻はアフリカ地域研究(言語・文学・歴史)。第9章、第12章1・2節、第13章4・5節、第18節2・3節。
 
松田 素二 (マツダ モトジ)  
 1955年生まれ。京都大学文学部卒業、ナイロビ大学大学院修士課程をへて、京都大学大学院文学研究科博士課程中退。現在、京都大学大学院文学研究科教授。専攻は社会人間学、アフリカ地域研究。第1章、第10章、第11章1節、第13章1・2節、第16章3節、第18章1・3節。
 
諏訪 元 (スワ ゲン)
 1954年生まれ。東京大学総合研究博物館教授。Ph.D。第2章1節。
 
市川 光雄 (イチカワ ミツオ)
 1946年生まれ。京都大学名誉教授。専攻は生態人類学、アフリカ地域研究。第1章1節、第2章2節。
 
杉村 和彦 (スギムラ カズヒコ)
 1958年生まれ。福井県立大学学術教養センター教授。専攻はアフリカ農民論、アフリカ農耕史。第3章。
 
吉國 恒雄 (ヨシクニ ツネオ)
 1947-2008年。専修大学商学部教授。専攻はジンバブエ現代史、アフリカ人都市労働史。第4章。
 
赤阪 賢 (アカサカ マサル)
 1943年生まれ。京都府立大学名誉教授。専攻は文化人類学。第5章。
 
出口 顕 (デグチ アキラ)
 1957年生まれ。島根大学法文学部教授。博士(文学)。専攻は文化人類学。第6章。
 
嶋田 義仁 (シマダ ヨシヒト)
 1949年生まれ。中部大学中部高等学術研究所客員教授。博士(文学)。専攻は民族学、宗教学。第7章、第13章3節。
 
福田 安志 (フクダ サダシ)
 1949年生まれ。日本貿易振興機構アジア経済研究所・新領域研究センター上席主任調査研究員。専攻はイスラム史。第8章。
 
戸田 真紀子 (トダ マキコ)
 1963年生まれ。博士(法学)。京都女子大学現代社会学部教授。専攻は比較政治学(アフリカ地域研究)。第11章2節、第15章3・4節。
 
砂野 幸稔 (スナノ ユキヨシ)
 1954年生まれ。博士(地域研究)。熊本県立大学文学部教授。専攻はカリブ・アフリカ文化。第11章3節、第14章。
 
武内 進一 (タケウチ シンイチ)
 1962年生まれ。東京大学博士(学術)。東京外国語大学教授。専攻はアフリカ地域研究、国際関係論。第11章4節、第16章1節。
 
峯 陽一 (ミネ ヨウイチ)
 1961年生まれ。同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専攻はアフリカ地域研究、人間の安全保障研究。第11章5節、第17章4節。
 
楠瀬 佳子 (クスノセ ケイコ)
 1945年生まれ。京都精華大学名誉教授。専攻はアフリカ文学・文化論。第12章3節。
 
池野 旬 (イケノ ジュン)
 1955年生まれ。京都大学アフリカ地域研究資料センター教授。専攻は東アフリカ農村社会論。第15章1・2節、第16章2節。
 
佐藤 章 (サトウ アキラ)
 1968年生まれ。博士(社会学)。日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員。専攻はアフリカ政治、紛争研究。第17章1節。
 
栗本 英世 (クリモト エイセイ)
 1957年生まれ。修士(文学)。大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門は社会人類学、アフリカ民族誌学。コラム③。
 
髙橋 基樹 (タカハシ モトキ)
 1959年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。第17章2節。
 
富永 智津子 (トミナガ チヅコ)
 1942年生まれ。宮城学院女子大学付属キリスト教文化研究所客員研究員。第17章3節。
 
伊谷 樹一 (イタニ ジュイチ)
 1961年生まれ。博士(農学)。京都大学アフリカ地域研究資料センター教授。第17章5節。
 
【抜書】
●四語族(p34)
 アメリカの言語学者グリーンバーグの分類。
 (1) コンゴ・コルドファン語族……スワヒリ語、リンガラ語、ズールー語、ヨルバ語など、サハラ以南のアフリカの主だった言語がたいてい含まれる。いわゆるバンツー系諸語も含まれる。
 (2) ナイル・サハラ語族
 (3) アフロ・アジア語族
 (4) コイサン語族
 
●バンツー語系諸民族の大移動(p71、p83)
 Bantu……これらの言語に広く共通してみられる語根-ntuからの派生語で、「人々」の意味。
 バンツー語の起源地……ナイジェリアとカメルーンの国境周辺。
 アフリカ大陸の三分の一に分布。
 3000年前頃に、大移動を開始した? 乾燥化によるサバンナ化が進行し、ギニア・サバンナから類似の環境を経由して東方へ広がった。BC5世紀までには東・南アフリカの海岸部へ、BC3世紀までにはビクトリア湖周辺にまで達した。
 熱帯雨林地域に住み着く。アフリカ南部では、先住民であるコイサン語系の狩猟採集民を、より環境の悪い地に追いやり、農耕地を広げる。焼畑農耕。
 湿潤気候に適した作物(アブラヤシ、ヤムイモ、バナナ、キャッサバ)、森林伐採に役立つ鉄器を持っていた。ヤムイモとバナナは東南アジア起源。キャッサバは16世紀に導入されたもの。
 サハラ以南には銅器あるいは青銅器時代に相当するものがない。鉄器は、北アフリカから伝わったか、独自起源(地表面から採集された、加工が簡単な鉱石を利用)。
 西バンツー語系と東バンツー語系の二つに分かれて展開、サハラ以南に広汎に広がる。
 
●バナナ革命(p85)
 5世紀ごろ、コンゴ川水界に東南アジア原産のバナナが入ってきた。瞬く間に熱帯雨林地帯で重要な基幹作物となる。
 料理用のバナナとして知られるプランテンバナナが主流。
 バナナはヤムイモに比べると、乾季の時期がなくてもよく、耕起や整地の作業も簡単で、栽培しやすく、生産性も高かった。
 農耕民は森林のどこにでも定住することができるようになり、この地域での人口の劇的な増大を引き起こした。
 
●キャッサバ革命(p96)
 アメリカ大陸原産。コンゴ川水界には、ヨーロッパからもたらされた。
 バナナよりも土地生産性が高く、低品質の土壌にも耐える生育力を持つ。
 
●西スーダンの王国と民族(p151)
 スーダンとは、地中海沿岸のアラブ人たちが、サハラ砂漠の彼方の土地をビラード・アッ・スーダーン(黒人の土地)と呼んだことに始まる。
 西スーダン……ニジェール川流域。
 中央スーダン……チャド湖近辺。
 東スーダン……ナイル川上流。
 ガーナ王国……ニジェール川中流域。首都は二つの都市に分かれていた。イスラム教徒居住地(12のモスク)と、王の住む森に包まれた都市。人口は1万5千~2万人? 金や銀の交易に課税した。
 マリ王国……マンデ系の民族(西アフリカに広く居住)。ガーナ王国衰退の後に興隆。トンブクトゥ(トンブクツ)、ジェンネが都市として拡大。最盛期は、第9代マンサ・ムーサ王(在位1312-37)の時代。500の奴隷を率い、大量の金を持ってメッカに巡礼、道中のカイロで気前よく金を喜捨した結果、カイロの金相場が下落した。16世紀末にモロッコ勢力との争いに敗れ、17世紀頃に消滅。
 ソンガイ王国……マリ王国の傘下に置かれていたが、マリ王国が衰退した後、勢力を拡大。トンブクツの都市としての発展が頂点に達する。
 ハウサ諸王国……ナイジェリア北部のハウサランド地域で、10世紀ごろから小国が成立。イスラム伝来後、城壁に囲まれた都市を核とした国家に成長。ハウサは、人口2,000万人を超える、西アフリカ最大の民族の一つ。ハウサ語は商業用語として広まり、使用人口は5千万~7千万人。
 ヨルバの諸王国……ヨルバは、ナイジェリア西部に居住し、2,000万人以上の人口を誇る。イフェ、オヨ、エバ、など。
 ベニン王国……ヨルバの一部で、森林に深く入った地点に勢力を張る。15世紀のエウレア王の時代に興隆、城壁が造られる。ポルトガルとの交易が始まり、象牙、胡椒、奴隷などと銃火器を交換。ベニン王国は、銃火器によって奴隷狩りを拡大した。
 
●エジプト第25王朝(p176)
 BC900年頃、ナイル川上流のナパタにヌビア人の王国ができる。カシュタ王、ピカンキ王の時代にエジプト第22・23王朝を滅ぼす。上流の黒人王朝がエジプト全域を支配。
 タハルカ王(在位BC690-BC664)の時代には、エジプト第25王朝を開いた。しかし、アッシリアの軍勢に敗れ、次のタヌアトモン王がナパタに敗走して滅亡。
 
●エチオピア(p183)
 西暦1世紀、北エチオピアにアクスム王国が成立。
 BC4世紀、メロエ王国を滅ぼしたアクスム王国のエザナ王は、キリスト教を公式宗教に採用。これ以降、エチオピアではキリスト教が広く受容されるようになる。
 
●無頭制(p191)
 南スーダンの牧畜民ヌエル人の社会構造。人口90万人。
 ヌエルには、「部族(tribe)」と呼ばれる地域集団としてのまとまりがある。
 部族は、その下にさらにいくつかの小さなまとまり(分節)をもつ。分節同士は、父から父へとたどっていけば、共通の祖先に行きつく、一族の関係。遡る深度が浅ければ(数世代)小さな一族のまとまりとなるし、深くなれば(10世代)かなり大きなまとまりとなる。
 ヌエル社会は、部族ー大分節ー中分節ー小分節というピラミッド型の階層構造を持っている。
〔 まず二人のヌエル人が戦いを始めると、彼らが属している小分節同士の争いへとエスカレートするが、その小分節が同じ中分節に属している限り、それを越えて紛争が拡大することはない。しかし異なった中分節のメンバー同士の争いが始まると、争いは中分節へと拡大する。そのとき争っていた小分節同士は、同じ中分節の構成員として団結してしまう。同様に争う二人が異なった大分節のメンバーであれば、大分節間の争いに、異なった「部族」であれば、「部族」間の争いとなり、内部の争いは即座に中止される。そして最後に異なった民族と争うときは、それまでのすべての争いを中断して、同じヌエル人として団結して敵にあたるのである。〕
 
●緑のサハラ(p205)
 1万2千年前頃から、4,500年前頃まで、サハラは湿潤期に入り、「緑のサハラ」となる。チャド湖は湖面が40m以上も上昇、カスピ海ほどの広さに拡大した。
 4,500年前頃から乾燥化し、現在とほぼ似た姿となった。
 サハラにラクダが登場するのは紀元前後。つまり、4,500年前から2,500年間、サハラ以南のアフリカは旧大陸文明とほとんど没交渉だった。
 
●スワヒリ(p269)
 スワヒリ……海岸地方を意味するアラビア語の「サワーヒル」(単数形はサーヒル)から派生。スワヒリの文化は、アラブ商人などが住んでいた沿岸の島嶼部(ペンバ島、ザンジバル島、等)などにあった港町に生まれた。
 インド洋交渉が、東アフリカ一帯にスワヒリ語を核とするスワヒリ世界を生み出した。
 北からやってきたバンツー語系の言語文化を土台に、アラブ系などの外来文化の影響を受けて、スワヒリ語が生まれ、スワヒリ文化が生成された。都市的、商業的な色彩を持っている。
 イスラム色が強かったが、19世紀末以降、アラビア文字からローマ字への転換もあり、弱まっていった。現在では、ケニア、タンザニアなどで広く話されるようになった。話者3,000万人。
 
●18世紀(p308)
〔 現代世界の精神と制度の基礎を形作った、人類史に燦然と輝く理性と啓蒙の一八世紀は、人類史上最悪の奴隷売買の世紀だった。〕
 セネガルからアンゴラまでの5,000kmに及ぶ海岸沿いに点々と築かれた積出港から、18世紀だけでも560万人以上の奴隷が送り出されたと推定される。
 
●フリータウン(p311)
 イギリスで、1807年、奴隷貿易が法律で禁止される。1815年までに、アメリカ、オランダ、フランスが追随。
 イギリスは、海軍力を駆使して洋上パトロールを行い、奴隷船を拿捕、保護した奴隷をインドのゴアなどでキリスト教徒に改宗させ、解放奴隷としてアフリカに戻した。彼らが造った町が、フリータウンという名称の人工都市。シエラレオネの首都など、無数のフリータウンが出現。
 
●自由な労働者(p312)
 欧米諸国を奴隷貿易禁止に導いたのは、産業資本主義の価値観。人格を丸ごと拘束する不自由な労働力としての奴隷は時代遅れとなり、自らの意思で労働を商品として切り売りする「自由な」賃金労働者が、都合の良い人間像となった。
 
●ヤン・ファン・リーベック(p390)
 ヤン・ファン・リーベック(1619-77)、クレンボルフ生まれの外科医。
 1651年12月19日、新婚の妻や姪など4人の女性を含む約80人を引き連れて、アフリカ南端ケープの地に入植。オランダ人の移民を推進する。南アフリカに奴隷制社会を作り出す。
 
●グレートトレック(p400)
 1830年代後半~40年代前半、イギリスの支配を嫌ってケープ植民地を離れ、自由の天地を求めて北へ向かったオランダ系入植者(ボーア人)。200~300人の一団を組み、幌牛車を連ねてケープを脱出。
 コイコイ人、カラード、奴隷を含めて約1万人前後にのぼった。
 1839年ナタール共和国(-1843年)、1852年トランスバール共和国(南アフリカ共和国)、1854年オレンジ自由共和国を建設。
 
●真実和解委員会(p425)
 1994年4月、南アフリカにて、全人種が参加する制憲議会選挙が実施され、ANC(アフリカ民族会議)が勝利してマンデラ政権が誕生。
 真実和解委員会設立。
 アパルトヘイト期に起きた拷問や暴行・殺害の「加害者」を特定して裁判にかけるのをやめる。真実を公衆の前で明らかにしたうえで、被害者が加害者に「赦しを与え」、和解していく、という方法をとる。
 2万件近い被害の証言が寄せられ、その多くで加害者は被害者からの「赦し」を得ることができた。
 
●フルベの聖戦(p448)
 18-19世紀、西アフリカ内陸世界にて、イスラム化した遊牧民フルベが聖戦を仕掛ける。モロッコによる支配や、ヨーロッパ植民地主義への抵抗運動。
 ソコト帝国(1804年、中央スーダン)などのイスラム神権国家を建設。
 
●ガチャチャ(p684)
 伝統的なコミュニティ法廷。複数の長老が裁く。
 
●超民族語(p701)
 アフリカ各地で発達した「地域共通言語」。スワヒリ語、ハウサ語、ヨルバ語、ソンガイ語、アラビア語、など。
 多くは、植民地支配以前から地域住民の活発な移動と交流(商業活動、イスラムの伝播、通婚、混住など)によって自然発生的に誕生。植民地時代にさらに普及した。
 
(2019/4/10)KG
 
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