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私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来
 [自然科学]

私たちが、地球に住めなくなる前に: 宇宙物理学者からみた人類の未来  
マーティン・リース/著 塩原通緒/訳
出版社名:作品社
出版年月:2019年11月
ISBNコード:978-4-86182-777-8
税込価格:2,420円
頁数・縦:243p, 10p・19cm
 
 50年後、100年後の人類の未来はどうなるのか。地球は住めなくなるのか、他の惑星への移住は可能なのか、AIと人類の関係はどうなるのか……。
 現代社会に渦巻くこれらの不安に対して、現在の課題と解決法について詳細に解説しながら、テクノロジーで解決していこう、と訴える。そうなってほしいものである。
 
【目次】
第1章 人新世の真っ只中で
 危険と展望
 核の脅威
  ほか
第2章 地球での人類の未来
 バイオテクノロジー
 サイバーテクノロジー、ロボット工学、AI
  ほか
第3章 宇宙から見た人類
 宇宙を背景にした地球
 太陽系の先で
  ほか
第4章 科学の限界と未来
 単純なものから複雑なものへ
 この複雑な世界を理解する
  ほか
第5章 結び
 科学の営み
 社会における科学
  ほか
 
【著者】
リース,マーティン (Rees, Martin)
 1942年生まれ。世界的に著名なイギリスの宇宙物理学者・天文学者。英国王室天文官、元ロンドン王立協会会長、元ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学寮長。
 
塩原 通緒 (シオバラ ミチオ)
 翻訳家。立教大学文学部英米文学科卒業。
 
【抜書】
●アルヒーポフ(p29)
 ヴァシーリー・アルヒーポフ、ソ連の海軍士官。キューバ危機当時、核ミサイルを積んだ潜水艦の副艦長を務めていた。
 潜水艦が米国から爆雷攻撃を受けた時、艦長は米ソが開戦したものと判断して、乗員にミサイルの発射を命じようとした。規定上、発射には乗艦している上位3名の士官の承認が必要だった。
 アルヒーポフ副艦長は、発射に頑として抵抗した。それによって、核戦争の危機は回避された。
 
●ペトロフ(p30)
 1983年、ソ連防空軍士官のスタニスラフ・ペトロフがスクリーンを監視していると、米国がソ連に向けて大陸間弾道ミサイル「ミニットマン」5発を発射したことを示す「警報」が出た。ペトロフの任務は、上官に警報を伝えることだった。それにより、即座に上官が報復核攻撃の動きに入る。
 しかし、ペトロフは、開発初期の警報システムの誤動作ではないかと判断し、上官に報告しなかった。
 雲の上から差し込んだ太陽光線の反射がミサイル発射と誤認されていたのである。
 
●休止状態(p32)
 〔今後の世代はまた新たな「キューバ」に直面するかもしれない――そしてそのときの対処が一九六二年の危機のときほどうまくいかない(あるいは幸運でない)ことだってありうるだろう。存亡に関わりかねない核の脅威は、現在ちょっと休止状態にあるだけなのだ。〕
 
●持続可能な集約化(p35)
 2050年に、人口90億人の世界が訪れたら、農業の「持続的な集約化」が必要となる。
 耕起や給水の必要が少ない作物に、遺伝子組み換え作物を組み合わせ、工学的技術を発展させて廃棄物を減らしたり灌漑設備を向上させたりすること。
 現在、食料生産には全世界のエネルギー産出量の30%、取水量の70%が費やされている。
 
●テクノロジー(p38)
 〔今日の世界の恵まれた社会が享受している生活様式と、それ以外の社会が甘受している生活様式との差が、二〇五〇年までには埋まっていることを誰もが望むはずである。しかし欧州と北米がたどってきた産業化への道を発展途上国がそっくりそのままたどるなら、この未来は実現しない。今日の発展途上国は、もっと効率的で無駄のない生活様式に一足飛びに移行することが必要である。ここでめざすべきは、反テクノロジーではない。逆にテクノロジーをもっと活用することが必要である。ただし、それは適切に方向づけられたテクノロジーでなくてはならない。そうして初めて、必要とされるイノベーションをテクノロジーが下支えすることができるのだ。そして先進国も、同様にこの種の移行を果たさなくてはならない。〕
 
●クルッツェン(p42)
 「人新世」という言葉は、オランダ人化学者パウル・クルッツェンによって世に広まった。
 クルッツェンは、上層大気中のオゾンがフロン(正式にはクロロフルオロカーボン)によって破壊されていることを明らかにした科学者の一人。
 
●地球工学(p67)
 地球工学によって、気候を積極的に制御できる(地球温暖化を食い止める)という考え方もある。
 たとえば、上層大気中にエアロゾルを散布して日光を反射させたり、宇宙空間に広大な「日傘」を作ったりすることで、「地球温暖化」を相殺できるというのである。
 世界の気候を変えられるだけの量の物質を成層圏に投入することは、一国のもしくは一企業の資源の範囲内でできる可能性もある。
 しかし、予想外の副作用が出ないとも限らない。この対抗策をずっと続けられなかった場合、温暖化の激しい揺り戻しが起こり、二酸化炭素濃度の上昇によるその他の影響(特に海洋酸性化の有害な効果)もとめどなく出てくるかもしれない。
 
●無機的知能(p167)
〔 人間の技術的文明の歴史は、始まってから数千年だ(どんなに長く見積もっても)。そして、このあと一〇〇年か二〇〇年もすれば、人間は無機的知能に取って代わられたり超越されたりして、今度はその無機的知能が進化を続け、何十億年と存続していくかもしれない。もし全般に、人間レベルの「有機的」な知能は機械に取って代わられるまでの短い幕間でしかないのなら、いまだ有機的な形態をしている地球外知的生命をそんなわずかな期間のうちに「補足」できる見込みは非常に薄いだろう。もし地球外生命を検出したとしても、それは電子的なものである可能性のほうがはるかに高い。〕
 
●信仰(p208)
〔 私は自分のことを、実践はするが信仰はしていないキリスト教徒だと思っている。似たような概念は、ユダヤ人のあいだによく見られる。金曜日の夜にろうそくを灯したりするなど、伝統的なしきたりを守って暮らしている人はたくさんいる。しかし、だからといって、彼らはその宗教をなにがなんでも第一とするわけではなく、ましてや、その宗教に唯一無二の真実があると主張するわけでもない。むしろ無神論者を自称する人だっているぐらいだ。同じように、私は「文化的キリスト教徒」として素直に英国国教会の儀式に(毎度ではないが)参加する。これは私が子供のころから慣れ親しんできた宗派なのだ。〕
 〔ほとんどの宗教の信奉者は、自分の宗教の共同社会的なところ、儀式的なところに高い重要性を見いだしている。実際、多くの信者にとっては信仰よりも儀式のほうが優先されたりするのかもしれない。世の中を分断するものが数多くあり、変化が不穏なほど急速に進んでいる時代に、そうした共有儀式はコミュニティ内に絆をもたらす。さらに伝統ある宗教は、信奉者を過去の世代に結びつけることで、未来の世代に劣化した世界を残すべきではないという私たちの思いを確実に支えてくれるだろう。〕
 
●ロング・ナウ協会(p234)
 カリフォルニアに本拠があるロング・ナウ協会では、ネバダ州の深い地下の洞窟に、巨大な時計を建設する予定である。
 1万年にわたって非常にゆっくりと時を刻むように設計され、その悠久の時間の間、毎日違う音色で鐘がなるようにプログラムされている。
 
(2020/3/25)KG
 
〈この本の詳細〉


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