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大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた
 [社会・政治・時事]

大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた (幻冬舎新書)  
井上章一/著
出版社名:幻冬舎(幻冬舎新書 い-30-2)
出版年月:2018年11月
ISBNコード:978-4-344-98522-3
税込価格:880円
頁数・縦:242p・18cm
 
 負けるな大阪! 東京によって貶めらた大阪の復権を願い、文化の先進地、真の大阪を紡ぎ出す。現在流布している大阪のイメージは誤りだらけだ!!
 
【目次】
第1章 大阪人はおもしろい?
第2章 阪神ファンがふえた訳
第3章 エロい街だとはやされて
第4章 美しい人は阪急神戸線の沿線に
第5章 音楽の都
第6章 「食いだおれ」と言われても
第7章 アメリカの影
第8章 歴史のなかの大阪像
第9章 大阪と大阪弁の物語
 
【著者】
井上 章一 (イノウエ ショウイチ)
 1955年、京都府生まれ。京都大学人文科学研究所助手、国際日本文化研究センター助教授を経て、同教授。専門の建築史・意匠論のほか、風俗史、美人論、関西文化論など日本文化についてひろい分野にわたる発言で知られる。著書多数。
 
【抜書】
●素人(p34)
 大阪の朝日放送で社長を務めた西村嘉郎(よしお)の「関西番組の特徴は『笑い』――『視聴者参加』と『公開』の三つ」(関西民放クラブ「メディア・ウォッチング」編『民間放送のかがやいていたころ』、2015年)。
 関西では、ラジオの時代から視聴者参加形式の番組があった。「素人も一緒に入れて」番組を作っていた。「東京から……高名な俳優や芸人を呼ぶと制作費が高くつくということもあった」。
 「お金をかけないでどう面白く作るか」。「各局とも変化球を放りながら東京と闘っ」た。
 朝日放送は、「夫婦善哉」「新婚さんいらっしゃい!」「プロポーズ大作戦」など、カップルを起用。
 毎日放送は、クイズ番組で視聴者参加の新機軸を次々に打ち出した。
 スタッフは「出場者の予選会を丹念に」行い、「予選でエピソードをいかにうまく拾うかで番組の成否は決ま」った。
 
●名古屋美人(p68)
 明治・大正期の名古屋は、美人の産地として圧倒的な名声を誇っていた。
 明治初期、西南諸藩の男たちが東京で権力の座に就いたが、江戸っ子たちは彼らを田舎者だと侮っていた。旧幕以来の伝統的な花街である柳橋も同様だった。
 新時代の権勢家たちを受け入れたのが、明治期に勢いをつけた新しい花街、新橋だった。
 新興の新橋は、芸妓たちの供給を、尾張徳川侯の時代に芸所(げいどころ)とされた名古屋に頼った。維新で花柳界がさびれ、芸妓の余った名古屋から女たちを引き抜いた。
 こうして、名古屋が美人の産地としてもてはやされた。
 
●京都大学の楽譜コレクション(p118)
 エマヌエル・メッテル……ロシア革命により、神戸に逃げてきたロシア人指揮者。大阪放送局(のちのNHK大阪)が創設した管弦楽団の指揮を任された。
 メッテルは、京都大学のオーケストラでも指揮棒を振った。ロシアから携えてきた楽譜を、いくつも京大に寄贈している。ロシア帝政時代に出版された、リムスキー・コルサコフなどの総譜。
 京大は、このコレクションを土台にして、しばらくオケ譜を買い続けた。音大でもないのに、ちょっとした音楽記録の宝庫となっている。
 
●桃山(p187)
 安土桃山時代というが、秀吉や家康の時代に「桃山」という地名はない。この名は、廃城となった伏見城跡へ、桃の木を植えたことに由来する。家康没後の地名。
 秀吉が自らの拠点として、その造営に心血を注いだのは大阪城。その周りには一大都市を築き上げ、のちに天下の台所となる大阪という街を一からこしらえた。
 伏見城は、秀吉の営んだ邸宅用の城郭。隠居用の居館。
 伏見城から政局を動かしたのは、秀吉没後に入った家康。秀吉の時代を「桃山」で代表させるのは間違い。安土桃山ではなく、「安土大阪」時代がふさわしい呼び方。
 
●大阪切支丹一件(p206)
 1827年、大阪でキリスト教徒とみなされた者たちが捕縛され、そのうち6人が市中を引き回され、磔刑となった。
 彼らは、キリスト教を論じた漢籍などから信仰心に目覚めていた。宣教師とは全く出会っていない。
 同時代の人々は、彼らを潜伏キリシタンの末裔だと誤解した。大坂夏の陣で大坂城から逃げたキリシタンたちが、信仰を隠して大坂市中に潜んでいる。その子孫が、信心を保った状態で見つかったのだ、と。
 「キリスト教徒とみなされた者には厳罰で臨む」という方針を貫いたのは、大坂町奉行所の与力であった大塩平八郎だった。
 
(2020/3/25)KG
 
〈この本の詳細〉

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