SSブログ

カラスは飼えるか
 [自然科学]

カラスは飼えるか  
松原始/著
出版社名:新潮社
出版年月:2020年3月
ISBNコード:978-4-10-353251-4
税込価格:1,540円
頁数・縦:223p・20cm
 
 「脳内がカラス」という、動物行動学者かつカラス研究者による、カラスおよび鳥類に関するエッセー集。カラスに対する愛情が詰まった一冊である。
 本書を読んでいると、何となく忌み嫌われている(と思われる)カラスが、愛嬌のあるかわいらしい存在に見えてくる。カラスの生態がよく分かる。彼らは、おっちょこちょいで臆病なので、人間社会に入り込んできて生活しているのだろう。多分、自然環境よりも人間の多い場所のほうが安全なのだ。
 
【目次】
脳内がカラスなもので
1章 フィールド武者修行
2章 カラスは食えるか
3章 人気の鳥の取扱説明書
4章 そこにいる鳥、いない鳥
5章 やっぱりカラスでしょ!
付録―カラス情報
 
【著者】
松原 始 (マツバラ ハジメ)
 1969年奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館・特任准教授。研究テーマはカラスの行動と進化。
 
【抜書】
●ズグロモリモズ(p64)
 中国には、「鴆(ちん)」という伝説上の鳥がいる。猛毒の羽毛を持ち、羽を盃に浸すだけで毒酒となり、飲めばたちどころに命を落とすという。
 しかし、現実には毒のある鳥はいないと思われていた。
 1990年、パプアニューギニアで有毒の鳥が見つかった。ズグロモリモズ。筋肉、皮膚、羽毛にホモバトラコトキシンという猛毒を持つ。ヤドクガエルの毒成分に似た神経毒。羽毛25mgから抽出した毒を注射すると、マウスが十数分で死んでしまう。
 脊椎動物はホモバトラコトキシンを生成できないので、餌である無脊椎動物から毒を取り入れている。
 カワリモリモズ、クロモリモズ、カンムリモリモズにも同様の毒がある。
 
●地磁気(p93)
 鳥は、磁場が「見えて」いるらしい。
 鳥の網膜には、視細胞の他に特殊なタンパク質を含んでおり、磁気を感知できるものがあるらしい。
 視細胞内の視物質を構成する分子に地磁気が干渉することによって、うっすらと明暗が生じるのではないか、と想像されている。鳥の見る世界は、規則的な明暗が南北方向の縞模様を描くのではないかという意見もある。
 磁鉄鉱のある鉱床があって局地的に地磁気が異常になっている地域では、鳥が道に迷うことも知られている。
 
●カラス科(p107)
 日本では、カラス属ではないカラス科に、カササギ、カケス、ルリカケス、オナガ、ホシガラスがいる。
 カササギは、日本では佐賀県を中心に、熊本県、長崎県、福岡県の一部にしかいないが、台湾、そしてヨーロッパでも街なかで普通に見られる。
 九州のカササギは、豊臣秀吉が、朝鮮出兵の際に持ち帰ったもの、と言われている。佐賀県ではカササギのことを「カチガラス」と呼んでいる。「勝ちガラス」に通じて縁起がいい。
 
●化石と鳥(p130)
 〔台風が過ぎると、ここぞとばかりに出かけていく人種がいる。一つは化石屋さんで、出水で崖がえぐられると新たな化石が顔を出していることがあるからだ。もう一つが、ディープなバードウォッチャ―である。〕
 台風に巻き込まれてしまった鳥が、目的とは異なる地域に吹き流されてくることがある。
 
●ハシブトガラス(p143)
 ハシブトガラス……日本では、街なかで普通に見かけるカラス。森林を主な棲み処とする。太い声で「カア」と鳴く。サクラやエノキやクスノキなど、派手な色の、柔らかい実を好んで食べる。
 ハシボソガラス……やや小柄で嘴が細い。農地や河川敷など開けた場所でよく見られる。鳴き声は「ガーガー」としゃがれている。地面でチマチマと餌を探す。クルミを落として割る、車に轢かせる、という小技をもつ。
 
●子供のシェマ(p148)
 コンラート・ローレンツが提唱した概念。「シェマ」は、ドイツ語でSchema。英語のスキーマ。
 子どもは大人とプロポーションや顔立ちが異なる。身体の部分ごとの成長の速度が違うため。体の割に大きく丸い頭、頭の下半分に偏った顔、大きな目、短くて丸い突出部(例えば鼻)、短い手足、高い声、など。
 子どもっぽいプロポーションこそが、「かわいい」と感じさせる理由であり、「人間は生まれつき、子供っぽさをかわいいと感じるように進化した」。
 
●サリー・アン課題(p176)
 「サリーとアンが遊んでいる時、サリーはボールをかごに入れた。サリーが外に行っている間にアンがボールを箱に入れた。サリーが帰って来てボールで遊ぼうと思った時、どこを探すでしょう。」
 我々は、「サリーはボールの隠し場所が変わったことを知らないので、かごの中を探す」と分かる。
 だが、一般に4歳児くらいまでは「ボールは箱の中にあるから、箱の中を探す」と結論する。「サリーと自分(あるいはアン)は別人なので視点が違う」という認識がない。
 カラスは、鏡像を認識できないが、サリー・アン課題に近い問題が解ける(ただし、実験の対象となった種類が異なる)。
 ハシブトガラスに鏡を見せると、攻撃を開始する。チンパンジー、カササギ、ハトは、鏡に映った自分の姿を見て汚れに気づき、きれいにしようとする。
 ワタリガラスは、他者が見ている状況では、餌の隠し替え頻度が高くなる。
 
●青い鳥(p190)
 鳥に中には青い羽根のものがいるが、ほとんどは構造色。
 鳥類の羽毛には、わずかな例外を除いて青い色素がない。
 
(2020/8/5)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。