わが子をAIの奴隷にしないために
[コンピュータ・情報科学]
竹内薫/著
出版社名:新潮社(新潮新書 842)
出版年月:2019年12月
ISBNコード:978-4-10-610842-6
税込価格:814円
頁数・縦:205p・18cm
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やがてシンギュラリティを迎え、AIが支配する未来社会において、生き残る(必要される)人間とはどういうタイプか。そして、その時に必要とされる人間となるには、今からどのような準備をすればいいのか。
そういったことを、なかば徒然なるままに綴ったエッセー。
本当にシンギュラリティを迎え、意識を持った人工知能が出現するのか? 確かなことは分からないが、AIにあえて「心のモジュール」を植え付けない、AIを外部脳の地位のままにしておく、そういう選択肢もありではないかと提案する。
その通りかもしれないが、私がAIを恐ろしいと思うのは、開発した人間にも、AIがどんな答えを出してくるのか分からない、という点である。つまり、究極のブラックボックスなのだ。AIが複雑になるのに伴なって開発単位が細分化され、多くのエンジニアが自分の専門分野に特化して開発に携わることになる。そうなると、全体を把握できる人間がいなくなる。
悪意のプログラムを仕込むこともできるし、ちょっとしたバグで好ましくない答えを出すこともあり得る。実は、AIを全面的に信頼することは、とても危険なことなのである。
となると、もし「善意の心のモジュール」というものが発明されたら、それを組み込んでおく、という方法もありかもしれない。AIの暴走を防ぐために。
【目次】
第1章 シンギュラリティと「人類」の終焉
プロローグ 「チャップリンの不安」
第一次産業革命とパンドラの筺
ほか
第2章 AIと猫と神
プロローグ AIは最適化する機械だ
AIの世界一簡単な(そして、ちゃんとした)説明
ほか
第3章 会社の消滅とAIノマドの時代
プロローグ 会社員の終焉
会社ってェ奴は
ほか
第4章 残る職業、消える職業
プロローグ プロジェの時代
残る職業、消える職業
第5章 AI時代を生き延びる、たったひとつの冴えたやり方
クラシック指揮者から学んだこと
新たな成功への道
ほか
【著者】
竹内 薫 (タケウチ カオル)
1960(昭和35)年東京都生まれ。サイエンス作家。理学博士。東京大学教養学部、同理学部を卒業。カナダ・マギル大学大学院博士課程修了(高エネルギー物理学専攻)。科学や数学の案内人として活躍。
【抜書】
●数学(p59)
〔真のプログラミング技能は高度な数学技能に裏打ちされたものであり、数学能力なしには、AIに仕える神官になることはできないのです。
未来社会において、シンギュラリティを迎えたAIの神に仕え、なだめる役割は、人類の最高レベルの数学知識とプログラミング技能を持ち合わせた科学者・エンジニアが担うことになるのです。〕
●遊び(p134)
第4次産業革命では、創造力を発揮できる「遊び」が必要になる。
〔 親が子を心配してかける言葉も、「遊んでばかりじゃなくて勉強しないさい!」から「勉強ばかりじゃなくて遊びなさい!」に変わる。そんな時代が到来しつつあるのかもしれません。〕
●心のモジュール(p160)
AIをどこまで進化させるべきか?
「AIを野放図に進化させるべきではない。仮にメカニズムが判明したとしても、あえてAIに心を植え付けず、人間の便利な外部脳として使い続ければいいのではないか」。
〔 あえてAIに心のモジュールを植え付けないという選択。それが、人間とAIが闘わずに共存する最良の方法なのではあるまいか。〕
(2020/8/2)KG
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