世界一の巨大生物
[自然科学]
グレイム・D・ラクストン/著 日向やよい/訳 岩見恭子/〔ほか〕監修
出版社名:エクスナレッジ
出版年月:2020年7月
ISBNコード:978-4-7678-2710-0
税込価格:3,520円
頁数・縦:223p・29cm
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恐竜、哺乳類、鳥類、昆虫、植物……。さまざま生物群ごとに、巨大な種を豊富な写真とイラスト(絶滅種も含むため)で紹介し、生物が大きくなるメカニズムを探る。
【目次】
第1章 巨体のもたらすもの
第2章 恐竜
第3章 大型哺乳類
第4章 大洋の巨大生物
第5章 空を飛ぶ巨大生物
第6章 大型昆虫
第7章 巨大な無脊椎動物
第8章 爬虫類と両生類
第9章 最大級の生物 植物
【著者】
ラクストン,グレイム・D. (Ruxton, Graem D.)
スコットランドのセントアンドルーズ大学生物学教授。エジンバラ王立協会会員。
日向 やよい(ヒムカイ ヤヨイ)
翻訳家。東北大学医学部薬学科卒業。
【抜書】
●ゾウの頭(p40)
「アフリカゾウ」は、サバンナゾウとマルミミゾウの2種。200~700万年前に分岐。
サバンナゾウは、最大で肩の高さが4m、体重が10トン超。マルミミゾウは最大6トン、アジアゾウは7トン前後。
ゾウの頭は、体重の25%に達する。大規模なデンタルバッテリーを収めるため。小枝や樹皮といった固いものを食べることができる。
ゾウの歯は、70年の生涯の間に6回も生え変わる。
牙は、食べ物や水を求めて地面を掘るために使われる。
●エスコバル(p53)
コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルが、私設動物園でカバを4頭飼っていた。
彼の死後、引き取る者もなく、世話する者のいなくなった彼の私有地を自由にうろつかせることになった。その結果、40頭に増え、生息範囲を広げ始めた。
●ナマケモノガ(p57)
ナマケモノは、週に1度だけ、排便のために地上に降りる。
掘った穴のなかに排出された糞に、ナマケモノの毛皮からナマケモノガのメスが出てきて卵を産む。孵化したイモムシは、糞を食べながら土の中で成熟すると、飛び立って林冠へと上昇し、ナマケモノを見つけて毛皮に隠れる。
つまり、ナマケモノガのライフサイクルは、ナマケモノをめぐって完結する。
この蛾は、糞や死骸を毛皮に残し、肥沃にする。毛皮に生える藻類の成長を促す。ナマケモノはこの藻類を摘み取って食べる。
ナマケモノと蛾は、奇妙な共利共生関係にある。
●ホッキョクグマ(p59)
ホッキョクグマとヒグマは、遺伝的にきわめて近い関係にある。
異なる点の一つが、人間を獲物と考えるかどうか。ホッキョクグマの好物はアザラシだが、空腹ならば人間も襲う。
●窒素(p79)
極地の海が栄養豊富なのは、窒素のおかげ。
暖かい気候の下では、海の表層と深い層とのあいだにはごくわずかな動きしかない。暖められた表層の海水のほうが密度が低く軽いので、深層に移動しない。
表層では、日光によって光合成が可能で炭水化物を作れるが、タンパク質を作るのに必要な窒素の量が少ない。
生物は死ぬと海底に沈むが、海水の上下の動きがないので、なかなか上層には上ってこないから。
極地では、表層の海水が冷やされ、上下の層が混ざりやすくなる。
冬に表面に窒素が補充され、日光が差すようになる春には光合成が促進され、生命が満ち溢れる。春季プランクトンブルーム。
●4つの胃(p91)
マッコウクジラは、動物中最長の腸を持つ。長いもので300m超。
胃は四つの部屋に分かれる。
最初の部屋は、胃液を分泌しない。内面が極めて丈夫な筋肉で覆われており、丸呑みしたイカなどを押し潰して殺す。
続く三つの部屋で化学的に消化される。消化されないイカの嘴などは二つ目の部屋に残り、定期的に吐き出される。
マッコウクジラは、深層の窒素を表層に運ぶ役割も担っている。深海で餌を取り、排泄した糞は海面に浮き、やがて分解する。
●リヴィアタン・メルヴィレイ(p92)
Livyatan melvillei。推定体長最大17.5m。マッコウクジラの絶滅した祖先。
旧約聖書の海の怪物「リヴァイアサン」と、『白鯨』の作者ハーマン・メルヴィルにちなんで名づけられた。
●カルーセル方式(p95)
ノルウェー沖のシャチは、カルーセル方式と呼ばれる方法でニシンを捕らえる。
1頭または複数のシャチが魚群の周りを気泡を出しながら回り、周囲にカーテンを作る。魚を囲い込んでどんどん密集させると、最後に尾びれ叩きつけて魚を気絶または痛めつけ、食べる。
●胎生(p98)
首長竜(プレシオサウルス類:「トカゲに近い」の意)は、4枚の巨大な鰭を使って泳いだ、水生爬虫類。おそらく内温性で、胎生だった。
現存する多くのウミヘビも胎生。
●コウモリ(p118)
人類がニュージーランドに到達したとき、唯一の哺乳類はコウモリだった。
ニュージーランドとオーストラリアはかつて南極大陸と地続きだった。8,500万年前にニュージーランドが分離した。
●アメリカ大陸間大交差(p122)
250万年前に、それまで海によって隔てられていた南北のアメリカ大陸がパナマ地峡でつながった。
二つの大陸を動物たちが移動し始めた。
クマ科、イヌ科、大型ネコ科の動物たちが北から南へ。そして恐鳥類(フォルスラコス類)を駆逐した。
●五分の一(p139)
アリは、これまでに命名されたものだけで1万2千種を超える。重量では地球の陸生動物全体の五分の一を占める。
●ライフボートメカニズム(p177)
コモドオオトカゲは、単独で飼育され、オスと一度も交尾したことのないメスが卵を産むことがある。生まれるのは常にオス。
絶滅の危機にある個体群を救うための戦略。ライフボートメカニズムと呼ばれる。
●ジョナサン(p183)
ロンサム・ジョージは、ガラパゴス諸島ピンタ島産のピンタゾウガメの最後の1匹だった。2012年に死亡。
ジョナサンは、セーシェルゾウガメで、生存する最高齢の陸生生物と考えられている。
1882年に南大西洋のセント・ヘレナ島に連れてこられ、贈り物として島の英国人総督に献上された。1886年の写真からすでに成熟していたと考えられるので、当時50歳以上。つまり、2018年には少なくとも182歳ということになる。
●オオミヤシ(p210)
オオミヤシ(フタゴヤシ)は、種子の重さが17㎏にもなる世界最大級の種子。
セーシェルの二つの小さな島にしか見られない。風化した花崗岩からなる痩せた土壌に生え、事実上オオミヤシだけで密生した木立になる。
成熟した木は高さ30m。長さ10m、幅4mの扇形の葉を付けるため、実生が十分な日光を浴びて自立するには、かなり成長しなければならない。
そのため、大きく成長できるまでに必要なエネルギーを種子の中に蓄えている。
●アボカド(p213)
アボカドの原産地である南アメリカには、その大きな種子を散布するほどの大型の動物はいない。
かつて、何千年か前まで、南アメリカにはアボカドを丸ごと食べられるほど巨大なナマケモノ(メガテリウム)が生息していた。
絶滅した後も、アボカドは大きな種子を作り続けている。山崩れとか洪水などで種子を散布しているのかもしれない。
(2020/9/26)KG
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