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カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?
 [自然科学]

カラスはずる賢い、ハトは頭が悪い、サメは狂暴、イルカは温厚って本当か?
 
松原始/著
出版社名:山と溪谷社
出版年月:2020年7月
ISBNコード:978-4-635-06294-7
税込価格:1,650円
頁数・縦:285p・19cm
 
 人間の善悪好悪で判断しがちな生物それぞれの行動を、当の生物目線で解き明かす。
 
【目次】
1 見た目の誤解
 「かわいい」と「怖い」―カモメはカラスと同じ、ゴミ漁りの常習犯
 「美しい」と「醜い」―ハゲタカはハゲだから清潔に生きられるのだ
 「きれい」と「汚い」―チョウは花だけじゃなく糞にもとまる
 
2 性格の誤解
 「賢い」と「頭が悪い」―鏡像認知できるハトとできないカラス、賢いのはどっち?
 「やさしい」と「ずるい」―カッコウの托卵は信じられないほどリスキー
 「怠けもの」と「働きもの」―ナマケモノは背中でせっせとコケを育てている
 「強い」と「弱い」―コウモリの飛行能力は戦闘機並みに高い
 
3 生き方の誤解
 「群れる」と「孤独」―一匹狼は孤独を好んでいるわけじゃない
 「亭主関白」と「恐妻家」―ライオンのオスはトロフィー・ハズバンド
 「子煩悩」と「放任主義」―カラスの夫婦だって子育てに苦労する)
 
【著者】
松原 始 (マツバラ ハジメ) 
 1969年奈良県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。東京大学総合研究博物館・特任准教授。研究テーマはカラスの行動と進化。
 
【抜書】
●カロテノイド系(p46)
 鳥の羽毛は、基本的に青い色素を持っていない。メラニン系色素と構造色を組み合わせて青色を表現している。
 これに黄色の色素を加えると緑色になる。
 鮮やかな赤は主にカロテノイド系色素。体内では合成できず、餌から取り入れている。ただし、取り入れたカロテノイドは赤ではなく黄色っぽい。真っ赤な鳥は、これを鮮やかな赤色のケトカロテノイドに変換する酵素を持っている。
 
●ランナウェイ仮説(p57)
 動物において、性選択で好まれる形質は、極端になりがちである。
 例えば七面鳥の肉垂。最初はごく控えめだったが、メスに選ばれるポイントになると、肉垂を持った子孫が増える。みんなが肉垂を持つようになると、より長い個体が選ばれるようになる。このため、肉垂はどんどん長くなっていく。これが「ランナウェイ」。
 
●鳴き声(p58)
 伊豆シャボテン動物公園のクジャクは、よく鳴くオスがメスにもてる。長谷川寿一(東京大学)の観察。
 尾の長さ、目玉模様の数、対称性など、様々な要因と繁殖成功の関連を長年にわたって調べた。その結果、鳴き声が、繁殖成功と最も強い相関を持っていた。
 メスが、雄の選択基準を尾から鳴き声に切り替えたのか? または、「尾が立派なのは当たり前、さらに歌がうまくなきゃイヤ」ということか。
 海外の研究では、対称性や目玉模様の数などが影響する、という結果も出ている。
 
●カワラバト(p105)
 ドバトはもともと、西アジア原産のカワラバトから作られた飼育品種。
 食用、愛玩用、伝書鳩用などとして世界中に広まった後、野生化した。
 故郷がもともと乾燥地帯だったから、営巣場所も岩山の崖などであった。そのため、ベランダなどにほんの10ほどの枝を並べた(見かけは非常に粗雑な)巣を作る。樹木が少ない故郷での巣作りの習慣が残っている。バカなのでも手抜きをしているのでもない。
 
●色覚(p112)
 タコは、皮膚表面の色を器用に変え、テクスチャーまで変化させて、背景に擬態することができる。
 しかし、不思議なのは、タコの目には色覚がなく、色が分からないということ。
 
●ワタリガラス(p128)
 ワタリガラスは、一羽で食べきれないような餌を見つけると、大声で泣き叫び、仲間を呼び集めることがある。餌が少ないとシェアせず、自分だけで食べてしまう。
 ただし、仲間を呼ぶ奴は縄張りをもっていない若い個体。経験豊富で強い縄張り持ちは仲間を呼ばない。
 若造が仲間を呼ぶのは、集団で縄張りに入り込み、追い払われないような状況を作り出すため。
 
●オナガ(p151)
 カッコウは長年、オオヨシキリという鳥に托卵してきた。
 しかし、オオヨシキリが用心深くなり、また、生息に適したヨシ原が少なくなってきて、托卵のチャンスが減った。
 そこで、少し前から長野県あたりではオナガに托卵するようになった、という報告が出始めた。
 いまや埼玉県の郊外、狭山丘陵に近いとはいえまるっきりの住宅街で、カッコウが鳴いているらしい。
 
●マスティング(p199)
 ブナは、数年に一度、大豊作となる。マスティング。
 平年のブナの実は、地面に落ちるとネズミやイノシシに食べられてしまい、また、落ちる前にもゾウムシが産卵して殻のなかで食べられていることもあり、ほとんどすべてが発芽できない。
 しかし、数年に一度、大量に実をつけることによって、食べ残しが生まれ、生き残って発芽するチャンスが生まれる。平年は実の数を少なめにすることで、ネズミの数を制限していると考えられる。
 さらに、林床はササで覆われていて光が届かない。発芽のチャンスはササが一斉開花して一斉枯死し、太陽光が差し込むようになったときだけ。
 
●一夫多妻(p250)
 オオヨシキリは、一夫多妻。しかもオスは、第一メスの子育ては手伝うが、それ以外のメスの子育ては手伝わない。
 オオヨシキリは水辺にあるヨシ原に営巣するので、水没の危険がある。そのため、外敵に襲われにくく、水没の危険がなく、餌が豊富な場所を縄張りにもつオスのもとに、メスが集中する。
 ウグイスも一夫多妻だが、オスは全く子育てを手伝わない。
 タマシギは、一妻多夫。オスが托卵・育児を行う。メスのほうが体が大きく、嘴に赤い婚姻色が出る。縄張りの防衛もメスが行う。
 
(2020/9/22)KG
 
〈この本の詳細〉

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