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ゼロからつくる科学文明 タイムトラベラーのためのサバイバルガイド
 [自然科学]

ゼロからつくる科学文明 タイムトラベラーのためのサバイバルガイド
 
ライアン・ノース/著 吉田三知世/訳
出版社名:早川書房
出版年月:2020年9月
ISBNコード:978-4-15-209967-9
税込価格:3,080円
頁数・縦:549p・19cm
 
 レンタルタイムマシン「FC3000[トレードマーク]」が過去のある時点に漂着した時、一から文明を作るためのガイドブック、という体裁の科学の雑学蘊蓄集。
 
【目次】
1. あなたがどの時代に閉じ込められたかを判別する方法:便利なフローチャート
2. あなたが紀元前20万年から紀元前50,000年のあいだに閉じ込められたとお考えで、「ここの人間たちはイカれていて、私はもう間違いなく永遠に絶望的だ」と思われている場合に特にお伝えしたいこと
3. あなたの文明のために必要な5つの基本技術
4. 測定単位は何でもいいとはいえ、本書で使われている標準的な測定単位を発明しなおす方法
5. われらは農民なり。世界を貪る者なり
6. 人間は進化したけれど、まだ農業や品種改良は行われていない時代に閉じ込められたとすると、ほかの人間たちは何を食べているのでしょうか?それに、古代人はとんでもなくばかなものを食べているに違いないので、それが毒かどうかどうやって見分ければいいのでしょう?
7. 過去に閉じ込められたタイムトラベラーに役立つ植物
8. 過去に閉じ込められたタイムトラベラーに役立つ動物
9. 基本的な栄養:少しでも長く生きるために何を食べるべきか
10. 技術で解決できる、人間が抱きがちな不満
11. 化学:物とは何か?どうやって物を作ればいいのか?
12. ハイタッチについての小洒落た文章で、哲学の主要学派をまとめて紹介
13. 視覚芸術の基本。あなたに真似できるスタイルもいくつか。
14. 体を癒す:薬とその発明の仕方
15. 基本的な応急(あなたの場合、唯一の)処置
16. 音楽、楽器、音楽理論の作り方。あなたが盗作に使える、すごくいい歌もご紹介。
17. コンピュータ:あなたがあまり一生懸命考えなくても、ハンドルかなにかを回すだけで済むように、頭脳労働を肉体労働に変える方法
 
【著者】
ノース,ライアン (North, Ryan)
 トロント在住の作家。「Dinosaur Comics!」シリーズは漫画のアカデミー賞と呼ばれるアイズゴー賞とハーヴェイ賞を受賞。
 
吉田 三知世 (ヨシダ ミチヨ)
翻訳者、京都大学理学部物理系卒。
 
【抜書】
●フロギストン(p55)
 西暦1700年代には、物が燃えるのは、それがフロギストンでで満たされているからだと考えられていた。
 フロギストンが多く含まれているもの(木など)は素早く燃え、あまり含まれていないものはよく燃えず、灰はすでにフロギストンが完全になくなってしまって全く燃えない。
 フロギストン……目に見えず、触れることもできず、抽出することもできないが、他の物質が燃えるには必要な物質。
 
●マーズ・クライメイト・オービター(p65、注)
 1999年、アメリカの火星探査機。度量衡の単位を間違えて軌道を計算したために、誤って火星に衝突させてしまった。
 
●根粒菌(p79)
 ヒヨコマメ、エンドウマメ、ダイズ、ソラマメ、アルファルファ、クローバー、レンズマメ、ビーナッツなどは、根粒菌を根の中に寄生させて共生しているので、窒素を土壌に戻してくれる。
 これらの植物を根を残したまま収穫すれば、窒素と根粒菌が土壌に残り、他の作物を栽培した時に不足した窒素を補うことができる。
 
●四圃式(p80)
 農地を四つに区切り、次の作物を順番に植える。頻繁に作物が変わるので、害虫も避けられる。
 小麦……人間の食糧。
 カブ……人間と家畜のための食糧。家畜に草を食べさせる。
 大麦……人間と家畜のための食糧。
 クローバー……家畜に食べさせる。家畜の糞が肥やしになる。
 
●ピンク・グレープフルーツ(p86)
 1950年代、米国で行われた「アトムズ・フォー・ピース(原子力平和利用)」の実験で生まれた。
 「ガンマ・ガーデン」にて、庭の中央部に放射性物質が置かれ、その周囲に同心円状に植物が植えられた。中央に近い植物は死に絶え、もっとも外側の植物は影響を受けなかった。その中間の植物に突然変異が起き、その一つとしてピンク・グレープフルーツが誕生した。
 
●サトウキビ(p107)
 サトウキビは、最も効率よく光合成を行う植物。
 
●萌芽更新(p112)
 ヤナギは、セイヨウトネリコと同様、成長が著しい木である。燃料用に最適。
 木が休眠状態にある冬に切っても、切り株を残しておけば死なない。春になると、その根を使って再成長する。萌芽更新。
 ヤナギは、2~5年ごとに萌芽更新を行うことによって、繰り返し収穫することができる。
 
●猫(p124)
 1346~1353年、ヨーロッパでペストが大流行。人間の半分が亡くなった。
 猫がペストを媒介していると考えられ、流行を食い止めるために猫の大量殺処分が行われた。実際には、主要媒介生物はネズミについたノミだった。皮肉なことに、猫がいなくなり、ネズミが爆発的に増殖してペストの被害を拡大した。
 
●カストリウム(p140)
 カストリウム(海狸香)……ビーバーが縄張りのマーキングに使う物質。骨盤と尾の間の皮膚の下にある空洞内の香嚢から分泌される。バニラに似た香り。
 抗炎症薬や、消炎剤として使えるサリシンが含まれている。
 サリシンは、ヤナギの樹皮にも含まれている。
 
●鬘(p144)
 昔の裕福なヨーロッパ人は、大きな鬘(かつら)をかぶっていた。
 当時、シラミが大流行していたため、彼らは自毛を剃っていた。
 
●アカシア(p295)
 古代エジプトの女性は、はちみつ、アカシアの葉、糸くずを混ぜたものを、精子に対する物理的障壁として、セックスの前に挿入した。
 アカシアは、殺精子作用をもつ乳酸を生じるので、ある程度有効だった。
 
●鋼鉄(p311)
 鋼鉄は、炭素を0.2~2.1%含む。
 高炉から出てくる、炭素の含有量が多い(4.5%ほど)鉄は銑鉄(または鋳鉄)と呼ばれ、もろい。融点が低いため、溶かして型に注ぎ、フライパン、パイプなどを鋳造するには便利。
 
●活字合金(p325)
 印刷業者たちは、標準的な合金を使って活字を鋳造することにした。鉛、スズ、アンチモン。「活字合金」と呼ばれ、丈夫で長持ちする活字を作ることができる。
 合金の比率は印刷所ごとに異なるが、鉛54%、アンチモン28%、スズ18%が伝統的に使われていた。より長時間の連続印刷のための活字は、78%、15%、7%。
 
●消石灰(p486)
 炭酸カルシウム(チョーク)……CaCO?。カルサイト(方解石。純粋な炭酸カルシウム)、石灰岩、チョーク(白亜)、大理石、卵の殻(約94%)、貝殻に含まれる。卵の殻を洗浄し、乾燥したのち、砕く。土壌に混ぜると、植物にカルシウムを与えることができる。土の酸性度を下げることができる。
 酸化カルシウム(生石灰)……CaO。炭酸カルシウムを含む物質を窯の中で850℃以上に熱すると、生石灰と二酸化炭素を生じる。生石灰を加熱した時に生じる光がライムライト。劇場の照明に使っていた。
 水酸化カルシウム(消石灰)……Ca(OH)?。酸化カルシウムを水と混ぜる。モルタル、漆喰として使うことができる。カルシウムのサプリメントに使える。水の浄化、下水処理にも。
 
(2021/2/13)KG
 
〈この本の詳細〉


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