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警察の階級
 [社会・政治・時事]

警察の階級 (幻冬舎新書)
 
古野まほろ/著
出版社名:幻冬舎(幻冬舎新書 ふ-17-2)
出版年月:2020年9月
ISBNコード:978-4-344-98601-5
税込価格:946円
頁数・縦:252p・18cm
 
 日本の警察における階級について、懇切丁寧に解説した書。
 
【目次】
序章 警察における階級のあらまし
第1章 巡査
第1章の2 巡査長
第2章 巡査部長
第3章 警部補
第4章 警部
第5章 警視
第6章 警視正
第7章 警視長
第8章 警視監
第9章 警視総監
終章 警察庁長官
 
【著者】
古野 まほろ (フルノ マホロ)
 東京大学法学部卒業。リヨン第三大学法学部修士課程修了。学位授与機構より学士(文学)。警察庁1種警察官として警察署、警察本部、海外、警察庁等で勤務し、警察大学校主任教授にて退官。警察官僚として法学書多数。作家として有栖川有栖・綾辻行人両氏に師事。小説多数。
 
【抜書】
●巡査
 実働と執行の職団[巡査―巡査長―巡査部長]に属する。警察官全体の3割。
 警察学校での教養(きょうよう)は「初任教養」と呼ばれ、高卒の場合は1年9か月、大卒の場合は1年3か月のコースとなる。
 巡査部長の試験を受けるには、高卒の場合は「巡査の階級に4年以上在籍している者」。短大卒は3年以上、大卒の場合は2年以上。
 職名は、一律に「係員」となる。
 巡査というのは、1880年から存在する由緒ある階級。当時は、1等、2等などの等級を付されていた。1891年に等級がなくなった。
 
●巡査長
 実働と執行の職団[巡査―巡査長―巡査部長]。巡査のなかの三分の一。
 階級章はあるが、9ある階級のうちには入らない「呼称」、「名誉称号」。階級としては「巡査」。
 巡査長試験というものはない。学歴要件としては、高卒6年・短大卒4年・大卒2年。
 「巡査長でない巡査」に対して「指導」「調整」はできるが、指揮監督権を行使することはできない。
 
●巡査部長
 実働と執行の職団[巡査―巡査長―巡査部長]の最上位。巡査・巡査長を部下に持つ初級幹部。警察官全体の3割。
 国家公務員試験の一般職試験(旧Ⅱ種)に合格して採用されたものは、最初から巡査部長の階級が与えられる。
 巡査部長試験の合格率は12~15%程度。
 管区警察学校にて、「巡査部長任用科」という6週間の教養を受ける。
 警部補試験を受けるには、高卒4年以上、短大卒3年以上、大卒2年以上の在級期間が必要。
 職名は、「主任」(機動隊では分隊長)。
 警察部内における略称は「部長」。三人称としても二人称としても用いられる。
 
●警部補
 指揮の職団[警部補―警部―警視」に属する。中級幹部、プレイング・マネージャー。警察官全体の3割。
 キャリアの警察官は、最初から警部補の階級が与えられる。警察大学校(初任幹部科)に入校。
 交番の警部補は、「ハコ長」つまり交番のトップ。
 管区警察学校にて、8週間の「警部補任用科」とう全寮制教養が必要。
 職名は、「係長」(機動隊は小隊長)。
 古い統計では、警部補の階級で定年退職する警察官が55%前後、巡査部長が20%前後となっている。
 
●警部
 指揮の職団[警部補―警部―警視」に属する。上級幹部=管理職。警察官全体の6.7%。
 キャリアは、入庁2年目前後で警部となり、7年目前後で警視となる。
 警部補以下と警部以上の間には、目に見えない厳然とした峡谷なり山脈なりが存在する。
 警察大学校において、「警部任用科」なる3か月の全寮制教養を受けなければならない。
 職名は、警察署では「課長」(一般の警察署)、「課長代理」(大規模警察署:300人以上の警察官がいる)。警察本部では「課長補佐」。警視庁本部および警察庁では「係長」。
 
●警視
 指揮の職団[警部補―警部―警視」の最上位。上級幹部=管理職。警察官全体の3.1%。
 役割は、(A) 所属長=警察署長、警察本部の課長。(B) 所蔵長の高級参謀的役割、(C) それ以外の高級参謀的役割(警察本部の参事官)。
 警察庁においては、「課長補佐」となる。
 ノンキャリアは、警視試験に合格する必要あり。推薦組・旧Ⅱ種は年功序列で、入庁15年前後、キャリアは、入庁7年目前後で警視となる。30歳弱。
 
●警視正
 運営と司令の職団[警視正―警視長―警視監]に属する。上級幹部、司令官。全警察官の0.2%程度。
 ノンキャリアも、警視正に昇任すれば国家公務員となる。
 旧Ⅱ種は入庁25年前後(50歳弱)で、キャリアは、入庁17年目前後(40歳弱)で昇任。
 警察本部の部長、大規模警察署長、警察本部の参謀的役割、警察庁室長級・理事官級。
 
●警視長
 運営と司令の職団[警視正―警視長―警視監]に属する。超上級幹部、司令官。全警察官の0.03%程度。
 ノンキャリアが警視長に承認することは、「退職・任警視長」の場合のみ。
 キャリアは、入庁23年目前後(45歳弱)で昇任。旧Ⅱ種・推薦組は不確定。
 役割は、警察本部の部長、警察本部の警察本部長、警察庁課長級。
 
●警視監
 運営と司令の職団[警視正―警視長―警視監]に属する。実質的な最終階級、最上位階級。指定職(民間でいう役員)。約70名。
 任用はキャリアのみ。同期同時期一斉昇任となる最後の階級。入庁31年目(52歳前後)。
 警察本部の警察本部長等(警視庁副総監、大阪府警察本部長、警視庁総務部長、など)、警察庁の指定職。
 
●警視総監
 階級としては最上位。警視総監より階級が上の警察官はいない。ただし、警視庁長官は上官となる。1名。
 警視総監=東京都警察本部長。
 職名であり階級なので、「警視総監 警視総監 内田直行」(職名+階級+名前)となる。
 東京都公安委員会の同意と、内閣総理大臣の承認が必要。
 警察官序列1位:警察庁長官
 警察官序列2位:警視総監
 警察官序列3位:警察庁次長
 警察官序列4位:警察庁官房長等
 警察官序列5位:警察庁生活安全局長等
 
●警察庁長官
 9ある階級には含まれず、11ある階級等の最上位。
 国家公安委員会が任命し、内閣総理大臣の承認が必要。
 日本警察26万警察官の頂点。身分は警察官(警察法第34条第3項)だが、その法律上の地位に鑑み、警察官の階級からは明確に除かれている(同第62条)。
 日本で唯一階級を持たない警察官。階級を持たないので、「警視庁長官 内田直行」のようになる。
 中央省庁の事務次官にあたる。
 長官になるルートは、通常、官房長→次長。序列2位の警視総監は経験しない。
 警視総監は、序列4位刑事・警備局長→警視総監。
 
【ツッコミ処】
・警察署の課(p137)
〔(9) まずAの所属長ですが、これは端的に『警察署長』『警察本部の課長』等を意味します(等、を付したのは室長・隊長がいるからですが、以下適宜省きます)。そもそも警察においては、『警察署』と『警察署の課』のことを所属と呼び、これを組織における最も基本的かつ重要なユニットと位置付けています。ここで、『警察署』については疑問が生じません。新宿警察署、中警察署、浦和警察署、加賀町警察署、下京警察署といった、警察用語でいうPS、一般社会でいう支店のことです。他方で『警察本部の課』等については若干混乱を呼ぶでしょう。課とくれば、警察署にもたくさん置かれているので……ですのでまず、警察署の課と、警察本部の課はまったく違うものととらえてください。警察組織において、課というのは、ともかくも警察本部の課をいうのだととらえてください。ここで、『警察本部の課』というのは、警視庁刑事部捜査第一課、愛知県警察本部組織犯罪対策課、京都府警察本部交通規制課……といった、本社の各課です。そしてこの、本社の課+各警察署が、警察でいう所属になります。その長が所属長。この所属長になれるのが、警視なのです。要は、警察署長になれるのも、警察本部の課長になれるのも警視(以上)です。警部以下は、絶対にこうした所属長にはなれません。警視という階級は、『所属長になる資格を有した警察官』に与えられるものです。それが右の、Aの意味です(大規模県においては警視正の所属長というのもナチュラルにいますし、警視であっても所属長未満の警察官はいますが、説明の本質は変わりません)。〕
  ↓
 2番目の文に『警察署の課』とあるが、説明を読む限り、これは『警察本部の課』の間違いであろう。
 
(2021/5/31)KG
 
〈この本の詳細〉


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