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ダチョウはアホだが役に立つ
 [医学]

ダチョウはアホだが役に立つ (幻冬舎単行本)
 
塚本康浩/著
出版社名:幻冬舎
出版年月:2021年3月
ISBNコード:978-4-344-03766-3
税込価格:1,540円
頁数・縦:191p・19cm
 
 ダチョウはアホだけど、病気や怪我に強く、とても丈夫で長生き。それは、免疫系の働きが優れているから。
 その特性を生かし、ダチョウの卵から取り出した抗体を、人間さまの医療と美容に役立てていこうという研究を紹介する。研究成果だけでなく、著者本人の人生の軌跡を京都弁交じりの軽妙な筆致で描いており、楽しく読ませる。
 ちなみにダチョウ抗体の製品開発の成果は、抗体マスク、アトピー性皮膚炎の治療、ニキビの治療、薄毛の解消、花粉症の緩和、歯周病の予防、などなど。癌の治療薬としても研究を進めている。
 ダチョウ抗体は熱に強く、酸にも強いとのこと。抗生物質として腸まで届き、腸内細菌を殺さずに狙った細菌やウイルスだけをやっつけることもできる。
 
【目次】
第1章 ダチョウってどんな鳥?そのすごさとアホさ
 ダチョウはアホだ
 常に行き当たりばったり、よく遭難する
  ほか
第2章 ダチョウ研究23年、その悲喜こもごも
 泡と消えたダチョウブーム
 世界一でかい鳥を飼ってみたい
  ほか
第3章 ダチョウ抗体が秘める無限の可能性
 普通のマスクではできない「予防」ができるわけ
 「免疫力を高める」とは「抗体を作る能力を高める」こと
  ほか
第4章 鳥少年がダチョウ博士になるまで
 鳥のウ○コは平気でも、人間のことは苦手
 小4になってもひらがなが怪しかった
  ほか
第5章 新型コロナウイルスに立ち向かうダチョウパワー
 発生後すぐに中国から問い合わせが相次ぐ
 ダチョウより先に自分の体で人体実験
  ほか
 
【著者】
塚本 康浩 (ツカモト ヤスヒロ)
 1968年京都府生まれ。京都府立大学学長。獣医師、博士(獣医学)、ダチョウ愛好家。大阪府立大学農学部獣医学科卒業後、博士課程を修了し、同大学の助手に就任。家禽のウイルス感染症の研究に着手する。同大学の講師、准教授を経て、2008年4月に京都府立大学大学院生命環境科学研究科の教授となり、2020年、同大学学長に就任。1998年からプライベートでダチョウ牧場「オーストリッチ神戸」でダチョウの主治医となる。2008年6月にダチョウの卵から抽出した抗体から新型インフルエンザ予防に役立つ“ダチョウマスク”を開発した。マスク以外にもダチョウ抗体をもとにがん予防から美容までさまざまな研究に取り組んでいる。
 
【抜書】
●ダチョウの脳(p35)
 ダチョウの眼球は、直径5cm、重さ60g。
 脳は40g程度しかない。
 
●ダチョウの涙(p39)
 ダチョウの涙はムコ多糖を多く含み、甘い。
 ムコの語源はラテン語のMucusで、粘液を意味する。魚の煮凝りやツバメの巣などにも含まれており、コンドロイチンもムコ多糖の一種。
 
●抗体の作り方(p105)
 ウイルスの遺伝子のなかで、ヒトの細胞に引っ付くタンパク質の遺伝子だけを、大腸菌のプラスミドという遺伝子のなかにドッキング(結合)する。
 大腸菌を培養液のなかで大量に増やす。
 増えた遺伝子を取り出して、哺乳類やカイコの培養細胞の中に入れる。タンパク質ができてくるので、そのタンパク質を培養液や細胞をすりつぶして取り出す。
 こうして作りだした抗原をダチョウに注射する。ダチョウの体内で作り出された抗体が卵に送り込まれる。
 卵を割って黄身と白身に分け、黄身を特殊な液体と混ぜて攪拌し、遠心分離器にかけて抗体が含まれている部分だけを取り出す。
 抗体溶液を濾過し、さらに純度を高める作業をする。
 
●ダチョウの抗体マスク(p108)
 ダチョウの卵から作る抗体は1g10万円程度。卵1個から約4g採取できる。これで抗体マスクを8万枚作れる。
 
(2021/6/2)NM
 
〈この本の詳細〉


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