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16世紀「世界史」のはじまり
 [歴史・地理・民俗]

16世紀「世界史」のはじまり (文春新書 1305)
 
玉木俊明/著
出版社名:文藝春秋(文春新書 1305)
出版年月:2021年4月
ISBNコード:978-4-16-661305-2
税込価格:968円
頁数・縦:235p・18cm
 
 今につながるグローバル化、すなわち世界を一体として論じられるような「世界史」が始まったのは16世紀である、という7つの論考を集めた。
 鍵となるの「軍事革命」「宗教改革」「科学革命」の三つ。これらの三つのキーワードを手掛かりにして論を進める。しかし、もう一つ重要な語は、「主権国家」である。16世紀の大きな転換は、世紀半ばに中世的な帝国に代わって主権国家が台頭してきたことだという。イギリス、ロシア、フランスである。
 
【目次】
序章 「世界史」はいかにしてはじまったのか
第1章 大航海時代―グローバル交易ネットワークの誕生
第2章 世界史からみた「宗教改革」
第3章 宣教集団にして死の商人―イエズス会の世界戦略
第4章 科学革命とキリスト教
第5章 カール5世とスレイマン1世―16世紀前半の世界
第6章 フェリペ2世VS.主権国家―16世紀後半の世界
第7章 世界史に組み入れられた戦国日本
 
【著者】
玉木 俊明 (タマキ トシアキ)
 1964年大阪市生まれ。京都産業大学教授。87年同志社大学文学部文化学科卒。93年同大学院博士後期課程単位取得退学。2009年大阪大学博士(文学)。
 
【抜書】
●三つの革命・改革(p14)
 16世紀の世界史の最大の特徴は、ヨーロッパ人のヨーロッパ外への拡張。
 それにリンクするようにして起きたのが、「軍事革命」「宗教改革」「科学革命」。
 軍事革命……大砲やマスケット銃(火縄銃)などが主要な兵器となり、また、軍艦に装備される舷側砲が発展した。
 
●専門家(p64)
 ドイツの神学者エルンスト・トレルチ(1865-1923)の説。
 ルネサンスでは「万能人」が重視され、宗教改革では「専門家」が創出された。したがって、近代に直接つながったのは宗教改革であり、ルネサンスではない。
 
●コンベルソ(p94)
 ユダヤ教からキリスト教に改宗した人々。
 イエズス会は、コンベルソ商人との結びつきが強かった。パリに滞在して研究中だったロヨラと彼の仲間は、コンベルソ商人から財政的援助を受けていた。
 イエズス会創設時の7名のメンバーのうち、ディエゴ・ライネス、ニコラス・ボバディリャがコンベルソだった。ロドリゲス、サルメロン、ザビエル、そしてロヨラも、コンベルソだった可能性がある。
 
●選帝侯(p150)
 神聖ローマ帝国では、ドイツの有力な7人の領主(選帝侯)の選挙によって皇帝が選ばれていた。
 
●主権国家(p150)
 中世のヨーロッパでは、国王は数多くの領主の一人であって、唯一の絶対的な権力者ではなかった。
 それに対し主権国家では、国王が最上位の支配者。教会ですら、王の支配下に置かれるようになる。国家に属する領土と国民はすべて王が支配し、官僚や常備軍といった中央集権的な体制が整えられていった。
 主権国家を端的に表しているのが税金。国家が税金を集め、その税金で軍隊や行政の費用を賄うようになった。国家の財政規模は拡大し、戦争に費やすことのできる費用も増大した。
 国王の徴税権が及ぶ範囲がその国の領土。
 中世国家においては曖昧だった国境が、主権国家にとっては死活的に重要になってくる。
 
●マニラ(p154)
 1571年、スペインは、アジアにおける拠点を築く目的でフィリピンを襲い、マニラの占領に成功する。これによって、メキシコ西岸のアカプルコからマニラまで、スペインのガレオン船が銀を運ぶようになった。
〔 アジアは、ガレオン船によってメキシコから輸入される銀と日本銀による「銀の時代」を迎えた。日本銀はポルトガル船によって輸送された。地球規模の銀経済を支えたのは、日本、ポルトガル、スペインであった。
 このように、マニラという拠点を築くことで、スペインは重要な銀のルートを押さえることになった。その意味で、フェリペ2世の統治下でのアジア戦略は成功を収めたといっていいだろう。そして、それは世界史的な業績だったといえる。〕
 
●暴風雨(p162)
 1588年、アルマダの海戦で、フェリペ2世のスペインとエリザベス1世のイギリスが英仏海峡で衝突。この海戦で、両国は引き分けた。
 しかし、スペイン艦隊は、その帰途、アイルランドの北回りで帰国しようとしたところ、暴風雨に遭遇し、乗組員の約半数を失った。
〔 このように実際には、スペインの無敵艦隊はイギリスの艦隊に敗れたのではなく、暴風雨に敗れたのである。しかし、ヨーロッパの辺境の小国にすぎなかったイギリスと戦って、甚大なダメージを受けたことは、スペインのみならずフェリペ2世の帝国の軍事的敗北と衰退を象徴するものとして受け取られた。〕
 
●遣明船(p190)
 遣明船は、初期には室町幕府が主体だったが、次第に財政不足の幕府から「勘合」という権利を買い取った大内氏、細川氏、大友氏、島津氏といった有力大名や、京都五山の筆頭である天龍寺や博多の聖福寺といった大寺社が主体となっていく。遣明船は朝貢を受ける明側が運搬費などを負担したので、日本側は巨額の利益を得ることになった。
 
●日明貿易(p194)
 室町時代の日明貿易で、明から輸入されたのは銅銭、生糸、陶磁器など。当時の最先端の文物。
 日本側が輸出したのは、刀剣、扇などに加え、銅、硫黄だった。硫黄は、火薬材料として使われた。
 硫黄輸出で巨利を得たのが大友氏。豊後には硫黄山などの硫黄の産地があり、大友氏が支配下に置いていた。
 
(2021/7/3)NM
 
〈この本の詳細〉


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