LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義
[医学]
吉森保/著
出版社名:日経BP
出版年月:2020年12月
ISBNコード:978-4-8222-8866-2
税込価格:1,870円
頁数・縦:351p・19cm
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細胞の構造から説き起こして生命科学の基礎を解説し、現在の老化研究の最先端までを紹介する。
【目次】
#001 科学的思考を身につける
「科学的思考」はこれからの時代に欠かせない
病気も専門家任せではダメな理由
ほか
#002 細胞がわかれば生命の基本がわかる
すべての生命の基本は、細胞
オードリー・ヘップバーンもオランウータンも細胞は一緒
ほか
#003 病気について知る
病気のときは、必ず「細胞が悪くなっている」
体が昨日と今日で変わらないのは細胞のおかげ
ほか
#004 細胞の未来であるオートファジーを知ろう
オートファジーは、細胞を「若返らせる」機能
細胞の中のものを分解するのがオートファジー
ほか
#005 寿命を延ばすために何をすればいいか
寿命を延ばす5つの方法
寿命を延長することにはオートファジーの活性化が関わる
ほか
【著者】
吉森 保 (ヨシモリ タモツ)
生命科学者、専門は細胞生物学。医学博士。大阪大学大学院生命機能研究科教授、医学系研究科教授。2017年大阪大学栄養教授。2018年生命機能研究科長。大阪大学理学部生物学科卒業後、同大学医学研究科中退、私大助手、ドイツ留学ののち、1996年オートファジー研究のパイオニア大隅良典先生(2016年ノーベル生理学・医学賞受賞)が国立基礎生物学研究所にラボを立ち上げたときに助教授として参加。国立遺伝学研究所教授として独立後、大阪大学微生物病研究所教授を経て現在に至る。大阪大学総長顕彰(2012~15年4年連続)、文部科学大臣表彰科学技術賞(2013年)。日本生化学会・柿内三郎記念賞(2014年)、Clarivate Analytics社 Highly Cited Researchers(2014年、2015年、2019年、2020年)。上原賞(2015年)。持田記念学術賞(2017年)。紫綬褒章(2019年)。
【抜書】
●ロザリンド・フランクリン(p59)
ジェームズ・ワトソンは、DNA結晶のX線解析の写真から二重螺旋の構造を思いついた。
しかし、この写真はワトソン自身が実験して撮影した写真ではなかった。ノーベル賞を受賞するまで、二重螺旋を思いついたのはこの写真を見たからだ、とも決して言わなかった。
この写真を撮影したのは、ロザリンド・フランクリンという女性研究者。ワトソンがこの写真を許可なく見たとも、フランクリンの共同研究者が見せたとも言われている。
フランクリンは、ノーベル賞を受けることもなく、1958年に37歳で病死した。
●ウィリアム・T・サマーリン(p56)
1974年、サマーリン事件というデータ捏造事件が起きた。
ウィリアム・T・サマーリンは、黒いネズミと白いネズミの間で皮膚移植に成功し、白いネズミの皮膚の一部が黒くなったと発表した。しかし、この時の写真は捏造で、白いネズミの体の一部をマジックで黒く塗っただけだった。
当時、皮膚移植は先進的な技術だった。ヒト(哺乳類)の体には拒絶反応があるので、皮膚を移植しても異物として攻撃され、うまく定着しない。
●サイトカイン(p192)
血液中を流れて情報を知らせる小さなタンパク質の総称。様々な役割があるが、多くが免疫と関係がある。
ホルモンとの違いは、ホルモンが決まった内分泌細胞から分泌されるのに対し、サイトカインは様々な細胞が出すことができ、比較的局所で作用することが多い点。
●ベニクラゲ(p205)
ベニクラゲというクラゲは不死。
直径は最大1cmで、北海道から沖縄まで広く生息している。
●ルビコン(p275)
オートファジーが起こりすぎないよう、ブレーキをかけるタンパク質。2009年、吉森の研究室で見つかった。酵母にはルビコンがない。
ルビコンは、脂肪細胞でだけは歳をとると減少する。ルビコンがなくなると、オートファジーが活性化しすぎて、ホルモンを作るのに必要なタンパク質を分解してしまう。その結果、ホルモンが出なくなる。ルビコンの量の変化は、動物の生殖年齢を超えたくらいで急速に増える。老化を促進するためかもしれない。(p305)
●スペルミジン(p323)
オードファジーを活性化させる食品成分。
豆類や発酵食品に多く含まれる。納豆、味噌、醤油、チーズ、シイタケ、など。
(2021/10/11)NM
〈この本の詳細〉
2021-10-11 13:09
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