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戦後日本政治史 占領期から「ネオ55年体制」まで
 [社会・政治・時事]

戦後日本政治史-占領期から「ネオ55年体制」まで (中公新書 2752)
 
境家史郎/著
出版社名:中央公論新社(中公新書 2752)
出版年月:2023年5月
ISBNコード:978-4-12-102752-8
税込価格:1,056円
頁数・縦:304p・18cm
 
 戦後から現在(安倍元首相の暗殺にも言及)までの、日本の政治史・政党史をたどる。
 この時期の要諦は、なんといっても「55年体制」である。しかし、その体制は、平成以降に変革されたように見えたが、ここにきて再来しているという。「ネオ55年体制」である。
 生まれてからこれまで、政界でもいろいろな事件が起きたが、曖昧な記憶しかない事柄も多い。それらをある程度整理できた。
 
【目次】
第1章 戦後憲法体制の形成
第2章 55年体制1―高度成長期の政治
第3章 55年体制2―安定成長期の政治
第4章 改革の時代
第5章 「再イデオロギー化」する日本政治
終章 「ネオ55年体制」の完成
 
【著者】
境家 史郎 (サカイヤ シロウ)
 1978年、大阪府生まれ。2002年、東京大学法学部卒業。08年、東京大学博士(法学)取得。専攻は日本政治論、政治過程論。東京大学社会科学研究所准教授、首都大学東京法学部教授などを経て、20年11月より東京大学大学院法学政治学研究科教授。
 
【抜書】
●保守本流(p71)
 池田隼人、佐藤栄作は、意図的な政権運営によって国内の政治的安定を保ち、1950年代に形成された戦後憲法体制を固定させる役割を果たした。
 〔この二つの政権によって定着した、吉田あるいは旧自由党の流れを汲む自民党政権の路線を、しばしば「保守本流」と呼ぶ。保守本流の政治とは、政策的には、いわゆる「吉田ドクトリン」(永井陽之助)、すなわち経済中心主義、軽武装、日米安保機軸を旨とする。憲法問題を未決のままに置くことで、当面の政治的安定を優先する立場とも言えよう。〕
 〔自民党の派閥のうち、特に宏池会(池田派→前尾派→大平派→鈴木派→宮澤派)は保守本流を自認した。しかし、他の派閥の領袖たちも――しばしば「傍流」に位置付けられた三木や中曽根も――政権を担った際には、(レトリックはともかく)池田・佐藤路線を実質的に転換することはなかった。要するに、保守本流の政治は、55年体制を通して自民党政権の基本路線となったのである。〕
 
●自民党派閥の系譜(55年体制期)(p87)
 1955   60   65   70   75   80   85   90
 池田―――――――前尾―――大平―――――鈴木―――宮澤―――――― (宏池会)
 佐藤―――――――――――――田中――――――――――竹下――小渕― (経世会)
                           └二階堂└羽田
      ┌ …
 岸―――――福田――――――――――――――――――安倍――三塚―― (清和会)
   └藤山                        └  …
 河野――――――――中曽根――――――――――――――――渡辺―――
          └ …
 三木・松村―――三木――――――――――――河本―――――――――――
         └松村
 
●1989年―昭和の終わり(p151)
〔 1989年は、55年体制の「終わりの始まり」の年と見なせる。あるいは、本書の用語でいうところの、「実質的意味の55年体制」終焉の年にあたる。同年1月に昭和天皇が崩御したが、奇しくも、改元とともに日本政府は激動の時代に入るのである。7月の参院選における自民党の大敗は、その一つの表れにすぎない。〕
〔 他方で、革新政党の基盤も急速に弱体化しつつあった。1989年6月の天安門事件は社会主義国・中国への信頼感を国民から失わせ、11月にはベルリンの壁崩壊、12月には米ソ首脳の「冷戦終結」宣言(マルタ会談)があり、いよいよ東側陣営の解体が現実化していく。国内では11月に総評がついに解散し、民間労組主導の下、新たなナショナルセンター・日本労働組合総連合会(連合)が発足した。社会党=総評ブロックの、文字通りの終焉であった。社会党にとって、参院選の勝利がいっときの夢にすぎなかったことは、この後まもなく明らかとなる。〕
 
●小沢不出馬(p162)
 1991年10月初旬、海部首相が退陣を表明。自民党総裁選へ。
 竹下派では独自候補擁立の動きがあったが、有力候補の小沢一郎会長代行が健康問題などを理由に辞退したため、頓挫した。
 その結果、候補者は宮澤喜一、渡辺美智雄、三塚博の三者となり、久しぶりに派閥領袖が相争う総裁選となった。
 
●自民党派閥の系譜(ポスト55年体制期)(p220)
    1995   2000    05    10    15    20
           ┌ … ――谷垣┐  
 宮澤――――加藤――       ―古賀――岸田――――――――― (宏池会)
      │    └ … ――古賀┘
      └河野―――――――麻生――――――――――――――――
 河本―――――高村――――――――――――― … ――┘
 小渕――――綿貫―橋本―――津島―――額賀――――――竹下―茂木― (経世会)
 三塚――――森――――――――町村――――――細田―――――安倍― (清和会)
      └亀井┐
         │─   …  ――伊吹――――――二階―――――――――
 渡辺――――村上┘
      └山崎――――――――――――――石原――――――森山―
                            石破―――
 
●ネオ55年体制(p281)
〔 第二次安倍政権発足以降、とりわけ2017年に立憲民主党が結成されて以降の政治状況がいかに55年体制的であるかという点は、すでに前章で述べた。政党間競争の構図という面で新旧55年体制に共通するのは、(1)保守政党が優位政党である、(2)与野党第一党がイデオロギー的に分極的な立場を取っている、という2点であった。言い換えれば、戦後日本では今も昔も、圧倒的に強い右派政党の自民党が政権を取り続け、それと対峙する社会党/立憲民主党が(平均的な有権者から見て極端な)左派路線に傾斜している。
 もっとも、55年体制期と今日の政治のあり方が完全に同質であるわけではもちろんない。一つの明らかな違いは、二つの時代で政治制度が大きく異なっているという点である。新旧55年体制の間には、大規模な政治制度改革が行われた時代が挟まっている。〕
 
【ツッコミ処】
・転じるなるなど(p142)
〔 まず民社党は、春日一幸委員長の指導の下、1970年代後半に入り、反共姿勢を一層露わにし、日米安保条約を評価する方向に転じるなるなど、右傾化の度を強めた。防衛政策では80年に政府提出の防衛関係二法に賛成し、ついには防衛費GNP1%枠撤廃を要求するなど、「自民党より右」とさえ評されるようになる。〕
  ↓
 「転じるなるなど」! 新書としては(しかも老舗の中公新書!)珍しい誤植。
 
(2023/8/24)NM
 
〈この本の詳細〉


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