江戸のフリーランス図鑑 出商いと町角の芸人たち
[歴史・地理・民俗]
飯田泰子/著
出版社名:芙蓉書房出版
出版年月:2023年6月
ISBNコード:978-4-8295-0863-3
税込価格:2,530円
頁数・縦: 205p・21cm
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江戸時代の出商人〈であきんど〉や振売〈ふりうり〉、出職〈でしょく〉、大道芸人、門付〈かどづけ〉などを、当時の本からとってきた図版をもとに紹介する。江戸初期に刊行された『人倫訓蒙図彙』、後期の風俗誌『守貞謾稿』を中心に選んだ二百余の職種で構成されている。(p.9)
図版は、モノクロで画質が荒いので細部が分かりづらい。イラストを楽しむというより、江戸時代の庶民の生活全般を知るための書というべきか。以後、時代劇などを見る時に役立ちそう。
【目次】
第1章 暮らしを支える出商い
食べ物商売
住まいの道具
装いと小物
健康を保つ
商いの道具
リサイクルの担い手
第2章 楽しみをもたらす町角の人びと
遊びの出商い
盛り場の楽しみ
門付の芸人たち
祈りとお祓い
【著者】
飯田 泰子 (イイダ ヤスコ)
東京生まれ、編集者。企画集団エド代表。江戸時代の庶民の暮らしにかかわる書籍の企画編集に携わる。
【抜書】
●品川東海寺(p26)
沢庵は、品川東海寺の沢庵禅師が初めて作ったのが名前の由来。
●石見銀山( p56)
殺鼠剤の異称。鼠捕〈ねずみとり〉薬。
●臭水(p62)
大昔から、日本にも石油はあった。越の国(越後)で古来、臭水〈くそうず〉と呼ばれ、朝廷に献上していた。石油の産地では風泉水(天然ガス)も出た。
●切絵図(p102)
寺社名、町名、武家屋敷を網羅した、江戸時代の区分地図。
表札など一切なかった武家屋敷の所在を確認するため、商人たちが重用した。
●唐津物(p108)
瀬戸物。西日本では、瀬戸物のことを唐津物と呼んだ。
●献残物(p120)
けんざんや。武家が互いに進物しあったものや、町人からの献上品の残りを買い取って売る商売。
日持ちのする贈答品の熨斗鮑〈のしあわび〉や、干し魚、干し貝、塩鳥、昆布など。
江戸城の周辺にたくさんあった。
●羅宇(p112)
煙管の吸い口と火皿をつなぐ部分。細長い竹の管で作る。
ラオス産の黒斑竹を使ったのが名前の由来。
●浅草紙(p118)
紙屑買いが集めた諸々の紙類は、専門の漉返〈すきかえ〉し屋に売られ、鼻紙や落し紙(ちり紙)に生まれ変わる。
ちり紙は「浅草紙」とも呼ばれた。
●払扇箱売り(p120)
江戸の市民は年始の挨拶に箱か袋入りの扇をお年玉として先方に出す。使用済みの扇箱を買い取って売るのが払扇箱〈はらいおうぎばこ〉売り。
箱は形だけのもので、中は空。竹の串を入れて音だけ出るようにしてある。名付けて「がらがら」。
●猿若(p154)
滑稽な一人狂言(芝居)をする大道芸人。
一説によると、桃山時代の傾奇者〈かぶきもの〉、名古屋山三に猿若なる鈍者〈うつけもの〉の従者がおり、芝居にしたところ受けたのが名前の由来。加賀藩士だった名古屋山三は、出雲阿国とともに歌舞伎の始祖といわれる人物。
●庚申(p190)
ヒトの体内に潜むという三尸〈さんし〉という虫が、庚申の日の夜に天に昇り、宿主の悪行を天帝に告げると信じられていた。そのため、庚申の夜は、虫が天に昇らないように夜通し宴などをして夜明けを待った。
庚申信仰が盛んな大坂では、四天王寺の庚申堂に群衆が参詣に詰めかけた。また、代願を旨とする「願人坊主〈がんにんぼうず〉」が「庚申の代待〈だいまち〉」と称して町を歩いた。
●荒神(p190)
火を防いで竈を守る神。
毎月晦日近くになると、竈に供える松の枝を売り歩く「荒神松売り」が町に出た。
江戸では、「鶏の絵馬」も同時に売った。荒神様に供えればアブラムシが出ないと言い伝えがある。
(2023/8/25)NM
〈この本の詳細〉
2023-08-25 07:32
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