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第三の大国インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」
 [社会・政治・時事]

第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」 (文春新書 1401)
 
笠井亮平/著
出版社名:文藝春秋(文春新書 1401)
出版年月:2023年3月
ISBNコード:978-4-16-661401-1
税込価格:1,100円
頁数・縦:267p・18cm
 
 ついに中国を抜いて、人口世界一となった(と思われる)インドの、大国としての潜在力を探る。
 「一帯一路」の中国と、「自由で開かれたインド太平洋」を支持するインドを対比して叙述を進める。インドがテーマとはいえ、中国に割かれたページもけっこう多い。
 
【目次】
序章 ウクライナ侵攻でインドが与えた衝撃
第1章 複雑な隣人 インドと中国
第2章 増殖する「一帯一路」―中国のユーラシア戦略
第3章 「自由で開かれたインド太平洋」をめぐる日米印の合従連衡
第4章 南アジアでしのぎを削るインドと中国
第5章 海洋、ワクチン開発、そして半導体―日米豪印の対抗策
第6章 ロシアをめぐる駆け引き―接近するインド、反発する米欧、静かに動く中国
 
【著者】
笠井 亮平 (カサイ リョウヘイ)
 1976年愛知県生まれ。岐阜女子大学南アジア研究センター特別客員准教授。中央大学総合政策学部卒業後、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科で修士号取得。専門は日印関係史、南アジアの国際関係、インド・パキスタンの政治。在インド、中国、パキスタンの日本大使館で外務省専門調査員として勤務後、横浜市立大学、駒澤大学などで非常勤講師を務める。
 
【抜書】
●カウティリヤ(p62)
 BC4-3世紀の人物。BC4世紀末、チャンドラグプタ王がナンダ朝を倒し、インド史上初の統一王朝となったマウリヤ王朝を興した際に、宰相として活躍した。チャーナキャ、ヴィシュヌグプタとも。
 『実利論(アルタシャーストラ)』を著した。「インドのマキャベリ」とも呼ばれている。
 マンダラ外交論……自国にとって直接境界を接する隣国は基本的に「敵対者」。その隣国の隣国は友邦になりえる国。その隣国は敵対者……という具合に同心円状に広がっていく。つまり、「敵の敵は味方」。また、「敵対者」以外に、「中間国」と「中立国」が存在する。「中間国」は、自国と敵対的な隣国の双方に接する国。「中立国」は、自国にも隣国にも接しない国。自国が隣国と敵対する状況下では、中間国と中立国との関係を効果的に活用することが重要であるとして、さまざまなケースに分けて対処策が示されている。
 
●グワーダル(p158)
 「中国・パキスタン経済回廊(CPEC)」の重要拠点として、「一帯一路」の中でも旗艦プロジェクトと位置付けられている。
 かつては小さな漁村だった。18世紀末から、オマーン(当時はマスカット・オマーン)が飛び地として領有していた。1958年に、パキスタンが買い戻した。
 
●コバクシン、コビシールド(p213)
 インドが開発・生産した新型コロナ・ワクチン。いずれもmRNAワクチンではない。超低温管理の必要がなく、冷蔵庫での保存が可能。
 コバクシン……不活性化ワクチン。バーラト・バイオテック社とインド医学研究評議会の国立ウイルス学研究所が共同開発した国産ワクチン。
 コビシールド……ウイルス・ベクター・ワクチン。イギリスのアストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したものを、世界最大のワクチンメーカーであるインド血清研究所(セラム・インスティテュート・オブ・インディア)がライセンス生産。
 2021年1月初旬、インド保健当局は、どちらとも緊急使用を許可。1月中旬、まず医療従事者を対象として全国で接種が始まり、順次拡大。
 また、約2年間で100か国以上に提供された。
 さらに、第3のワクチン開発にも成功。鼻から投与できる「経鼻ワクチン」。冷蔵庫での保存が可能。新たな変異株が出現しても、スパイク・タンパク質を置き換えるだけでよく、比較的迅速に更新が可能。
 インドでは、ジェネリック医薬品をはじめ製薬業が盛んで、「世界の薬局」と呼ばれている。
 
(2023/8/31)NM
 
〈この本の詳細〉


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