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戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む
 [歴史・地理・民俗]

戦国日本を見た中国人 海の物語『日本一鑑』を読む (講談社選書メチエ)
 
上田信/著
出版社名:講談社(講談社選書メチエ 788)
出版年月:2023年7月
ISBNコード:978-4-06-532574-2
税込価格:1,870円
頁数・縦:245p・19cm
 
 16世紀に鄭舜功〈ていしゅんこう〉が著した『日本一鑑〈にほんいっかん〉』を紐解き、当時の日本と中国との関係を探る。
 鄭舜功は、「大倭寇」が頂点を極めた1556年に日本に渡り、大友義鎮〈よししげ〉(宗麟)のもとで日本の言語・地理・文物・文化について調査し、帰国後、『日本一鑑』にまとめた。
 
【目次】
はじめに―忘れられた訪日ルポには何が書かれているのか
序章 中世の日本を俯瞰する
第1章 荒ぶる渡海者
第2章 明の侠士、海を渡る
第3章 凶暴なるも秩序あり
第4章 海商と海賊たちの航路
終章 海に終わる戦国時代
 
【著者】
上田 信 (ウエダ マコト)
 1957年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、立教大学文学部特別専任教授。専攻は中国社会史。
 
【抜書】
●日本刀(p15)
 明朝は日本から大量の刀を輸入した。モンゴル高原に追いやった元朝の残党たちの軍事侵攻に対して、日本刀が有効な武器となったのである。
 元寇のとき、モンゴル兵と対峙した日本では、日本刀の改良が行われ、遊牧民が着込む皮革製の防護服を切り裂けるようになっていた。
 
●寄語(p24)
 『日本一鑑』巻五「寄語」は、一種の日本語辞典となっている。日本語の発音を漢字の音で表記。
  ア押 イ易 ウ烏 エ耶 オ堝
  カ佳 キ気 ク固 ケ杰 コ課
  サ腮 シ世 ス自 セ射 ソ梭
  タ太 チ致 ツ茲 テ迭 ト大
  ナ奈 ニ乂 ヌ怒 ネ業 ノ懦
  ハ法 ヒ沸 フ付 ヘ穴 ホ荷
  マ邁 ミ密 ム慕 メ蔑 モ目
  ヤ耀    ユ右    ヨ欲
  ラ剌 リ利 ル路 レ列 ロ六
  ワ歪 ヰ異    ヱ琊 ヲ阿
  ン乂
 
●倭寇(p28)
 「倭寇」という言葉は、もともと名詞ではなかった。13世紀に日本の方面から武装した一群の人びとが朝鮮半島沿岸で襲撃・略奪を繰り返した。これを「倭が寇〈あだ〉する」と記載したことにさかのぼる。
 記録に残る最初の事件は、1223年、朝鮮半島南部の金州(現在の金海)が襲われた出来事。『高麗史』世家、巻22、高宗10年5月甲子条。
 
●閩人三十六姓(p44)
 明朝が建国されると、朱元璋は積極的に周辺国に使節を送り、朝貢するよう求めた。
 沖縄本島の按司たちはその求めに応じた。明朝は、使節を無事に送り出せるよう、造船や航海の技術を持った職人や、外交文書を作成できる人材を琉球に派遣した。彼らは「閩人三十六姓」として伝説化された。交易に関する職能集団の子孫たちは、那覇港近くの久米村〈クニンダ〉に定住し、その後も明清時代を通じて中国との交流を支えた。
 
(2023/10/5)NM
 
〈この本の詳細〉


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