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マラソンと日本人
 [スポーツ]

マラソンと日本人 (朝日選書)
 
武田薫/著
出版社名 : 朝日新聞出版(朝日選書 923)
出版年月 : 2014年8月
ISBNコード : 978-4-02-263023-0
税込価格 : 1,728円
頁数・縦 : 313, 19P・19cm


 ランナーに的を絞り、日本人とマラソンの歴史をまとめた好著。

【目次】
走り出した日本人
金栗四三―学生の大志と箱根駅伝
孫基禎―「内鮮一体」の表裏
“ボストンマラソン”と戦後復興
円谷幸吉と東京オリンピック
祭りのあとの空白―ポスト君原健二
瀬古利彦の栄光と挫折
中山竹通のたった独りの反乱
女子マラソンと夏のメダル
ケニア参入と日本の内向化
川内優輝―鈍足のエリートと“東京マラソン”

【著者】
武田 薫 (タケダ カオル)
 1950年宮城県生まれ。スポーツライター。東京外国語大学卒業後、報知新聞記者を経て85年からフリーに。マラソン、テニス、野球などを中心に取材。

【抜書】
●金栗四三(p25)
金栗四三(かなくりしぞう)、1891年8月20日、熊本県玉名郡春富村中林(現・和水〈なごみ〉町)生まれ。
 1912年、第5回オリンピック・ストックホルム大会に日本人初のマラソン参加。途中棄権。
 1920年アントワープ、1924年パリにも参加(16年ベルリンは中止)。

●孫基禎(p68)
 孫基禎(ソンギジョン)、養正高等普通学校出身。養正高普、内地の旧制中学校にあたる。
 1912(大正元)年8月29日、北朝鮮と中国の国境を流れる鴨緑江の町、新義州出身。4人兄弟の末っ子、貧しい雑貨商の生まれ。
 働きながら小学校を卒業したのが15歳。養正高普に入学したのは19歳。卒業後、長野県松本市で4カ月の丁稚奉公も経験。
 ベルリン・オリンピック(1936年)のマラソンで優勝。2時間29分19秒。南昇龍が3位。
 表彰台で二人はうつむいていた。孫は、オリンピックの表彰式で国旗が掲揚され、国歌が演奏されることを知らなかった。

●箱根駅伝(p98)
 戦前戦中、6度の「箱根」駅伝中止。
 1940年の第21回大会、陸軍による中止命令。東海道の軍事利用のため。
 1941年は、「東京-青梅間大学専門学校学徒鍛錬継走大会」として実施。8区間107km、12校参加。
 1942年は、41年11月30日に東京-青梅間で繰り上げ開催。12月8日、真珠湾攻撃。
 1943年、第22回箱根駅伝は、「紀元二千六百三年靖国神社・箱根神社往復 関東学徒鍛錬継走大会」と銘打つことで軍当局の開催許可を得る。
 1944年から46年まで中止。
 2回の東京-青梅間の駅伝は、箱根駅伝の大会数に数えられていない。

●福岡国際マラソン(p177)
 1947年、「金栗賞朝日マラソン」として熊本市でスタート。
 その後、高松市、静岡市、広島市などを転々とし、1954年、第8回からオリンピックやボストンマラソンの上位選手を招待し、国内初の国際大会として生まれ変わる。鎌倉市で開催。
 第9回から「朝日国際マラソン」と名称変更。
 第13回大会から、福岡市の平和台競技場を発着するコースに定着。
 63年のみ、プレオリンピックとして東京で開催。
 ボストン、ウィンザー(英国)、コシチ(チェコ)とともに「世界四大マラソン」と呼ばれ、高いレベルを誇るようになる。
 
●蝦夷ウコギ(p207)
 ロサンゼルス五輪直前、瀬古は村尾慎悦マネージャーと日本に居残って練習。北海道合宿中、血尿が出たので疲労回復のために漢方薬の蝦夷ウコギを服用。
 IOCがドーピングに厳しくなったので、ロスの中村清から電話が入る。東京に戻って違反薬物でないか検査するが、専門家がおらず、分からずじまい。不安を抱えたまま、渡米、マラソンに参加。結果は惨敗。

●女子マラソン(p243)
 女子マラソンの歴史はボストンマラソンに始まる。
 1966年の大会に、23歳のボビー・ギップがエントリーしたが、規定に従い門前払い。ただし、ボストン体育協会は、混雑に紛れてスタートすることを黙認。3時間21分40秒で完走。
 1967年には、キャスリン・スイッツァーという女子大生が性別を伏せてエントリー、「公式参加」。途中で気付いた体協役員がゼッケンをむしり取ろうとしたが、キャスリンの男性同僚が体当たりして阻止、そのまま4時間20分前後でゴールしたが、正式記録には残っていない。同大会でギップは再び非公認で参加、3時間27分17秒。
 その後、72年から公式に女性に門戸開放、66年のギップの記録を公認。

【参考文献】
 青山一郎『栄光と孤独のかなたへ――円谷幸吉物語』ベースボール・マガジン社、1980年

(2014/11/23)KG

〈この本の詳細〉


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