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宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ
 [歴史・地理・民俗]

宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ
 
サラ・パーカック/著 熊谷玲美/訳
出版社名:光文社
出版年月:2020年9月
ISBNコード:978-4-334-9244-9
税込価格:2,640円
頁数・縦:478p・19cm
 
 宇宙考古学とは、宇宙に存在する遺跡を探査するのではなく、衛星画像など、先端技術を使って地球上の遺跡を探索すること。その最先端にいる女性エジプト考古学者が、宇宙考古学の現在地を語る。
 
【目次】
第1章 歴史は「積み重なる」
第2章 宇宙考古学とは何か
第3章 宇宙考古学の可能性
第4章 危ない仕事
第5章 間違った場所を掘っている
第6章 世界一周“新”考古学の旅
第7章 巨大王国の崩壊
第8章 首都の発見
第9章 未来の考古学
第10章 乗り越えるべきもの
第11章 盗まれた遺産
第12章 誰でも参加できる宇宙考古学
 
【著者】
パーカック,サラ (Parcak, Sarah)
 アラバマ大学考古学教授。エジプト学者。衛星画像から遺跡を探すクラウドソーシングのプラットフォーム「グローバルエクスプローラー(GlobalXplorer)」を2016年に創設。現在までに約10万人のボランティアが参加し、南米などでの遺構の探索に貢献している。リモートセンシングを考古学研究に応用した活動には世界中のメディアが注目し、英国BBCはエジプト、ローマ、ヴァイキングの古代文明について著者をプレゼンターとして番組を製作した。2016年TED Prizeを受賞。ナショナルジオグラフィック協会のエクスプローラーでもある。
 
熊谷 玲美 (クマガイ レミ)
翻訳家。東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻修士課程修了。訳書多数。
 
【抜書】
●LIDAR(p61)
 ライダー。Light Detection And Ranging(光検出と測距)の略。遺蹟を探すときに使用するレーザーイメージング技術。
 
●クロップマーク(p65)
 作物痕。作物の成長が周囲より早くなったり、遅くなったり、まったく育たなかったりすることを示す痕。
 石壁の基礎部分が土に埋もれていたりすると、その上の植物は根を深く張ることができず、周囲の植物より生育が悪くなる。逆に、水路の跡などは、時間とともに腐敗した植物がたまっていき、肥沃な腐葉土となり、地上に周囲より草丈の高い植物が筋状に育つ。
 2018年夏、英国の降水量が例年より少なかったせいで、国中の畑でクロップマークが大量に出現した。考古学者たちは、クロップマークが消えてしまう前にドローンを飛ばして、短い間だけ現れる遺構の手がかりを撮影しようとした。(p217)
 
●ヴィンランド(p132)
 『赤毛のエイリークのサガ』『グリーンランド人のサガ』には、999年から1017年にかけて5回行われた、ノース人(ヴァイキング)が「ヴィンランド」と名付けた土地への旅について記されている。北米大陸への遠征?
 彼らは、特徴が異なる三つの土地に出会った。
 ヘルランド……「平らな石の土地」の意味。海岸が岩場になっていて、木のない土地。カナダのバフィン島だと考えられる。
 マークランド……「森の土地」の意。ヘルランドの南にあって、現在のラブラドル半島だとされる。
 ヴィンランド……謎。Vinlandは、ノース人のためのブドウを育てるための場所? vineというのは、ブドウの木ではなく、だたのつる草?
 ニューファンドランド島のランス・オ・メドー遺蹟が、ヴィンランドかもしれない?
 
●イースター島(p202)
 ラパ・ヌイ(イースター島)の先住民が絶滅したのは、彼ら自身が文明崩壊の原因を作ったからではない。ヨーロッパ人が病気を持ち込んだせい。
 農業目的で森林を破壊した場所では、ラパ・ヌイの先住民は火山岩を砕いて、腐葉土のように畑にまくことで、土地の生産性を保っていた。
 アフ(複数のモアイを載せられる巨石の土台)を、淡水の水源のそばに建設していた。おそらく、限りある天然資源とつながっている領知を誇示したかったから。
 
●リーキー一族(p207)
 ケニアのトゥルカナ盆地の周辺は、リチャード・リーキーと妻のミーブ・リーキーによる有名な発見の多くの舞台となっている。
 リチャードは、ルイス・リーキーとマリー・リーキー夫婦の息子。
 現在では、リチャードたちの娘であるルイーズが、リーキー家に伝わる仕事を引き継いでいる。
 
●5000万か所(p220)
〔 陸上と水中を合わせた地球全体では、大きな集落から小さな野営地まですべてを合わせると、五〇〇〇万カ所以上の未知の遺跡があると私は考えている。そしてこれは、控えめに計算した結果の数字である。〕
 
●ナイロメーター(p241)
 ナイル川の水位を測るために、古代からナイロメーターが作られていた。
 普段の水位だけでなく、毎年の増水水位が記録されている。
 ちょうどよい水位であれば、農作物の収穫量が増え、魚がたくさん取れるようになり、牧草が十分に育ち、土に水を与えるとともに、泥と一緒に栄養分を運んでくれる。租税は、その水位で決められていた。
 
●4.2kaイベント(p246)
 4200年前。kaはkilo annum(千年)。
 BC2200年頃をピークに、モンスーンパターンや地中海の偏西風の変化が起こり、アフリカやアジアで旱魃や寒冷期につながった。太陽放射の変動によって引き起こされた可能性がある。
 エジプト古王国の終焉の時期。
 
●位相差X線イメージング(p316)
 位相差X線イメージングを使うと、開いて読むことが不可能な、焼けた巻物の中を見ることができる。
 
(2021/2/21)KG
 
〈この本の詳細〉

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