SSブログ

彼らはどこにいるのか 地球外知的生命をめぐる最新科学
 [自然科学]

彼らはどこにいるのか: 地球外知的生命をめぐる最新科学
 
キース・クーパー/著 斉藤隆央/訳
出版社名:河出書房新社
出版年月:2021年4月
ISBNコード:978-4-309-25423-4
税込価格:2,970円
頁数・縦:368, 15p・20cm
 
 地球外知的生命は存在するのか。そして、高度な文明を築いている地球外知的生命がいるとしたら、われわれはどのように接触すべきなのか。
 SETI(Search for Extraterrestrial Intelligence:地球外知的生命探査)およびMETI(Messaging Extraterrestrial Intelligence:地球外知的生命へのメッセージ送信)について、研究の最前線と最新状況を広汎に取材して論じる。
 第1章がいきなり「利他行動」を扱っていることに面食らった。SETIと関係するのか? これはつまり、ETIが地球人にシグナルを送ってくる理由を考察しているのである。シグナルを送ることで存在を知られてしまって、侵略されては元も子もない。そんな危険を冒してシグナルを送ってくるのは、善意の行動としか考えられない、というのである。だとしたら、送られてくるメッセージは「銀河百科事典」だろうか?
 しかしながら、ETIが存在するとして、それを探索したり、メッセージを送ったりすることにどれほどの意義があるのだろうか。見つかったとしても数光年以上離れた惑星であろうし、やり取りには途方もない時間がかかる。それに必要なエネルギーも膨大である。無駄なことではないかと思うのである。これも人類の知的好奇心のなせる業か?
 
【目次】
はじめに 「緑の小人」は存在するか
第1章 利他行動の仮定―エイリアンは地球人に親切か
第2章 知能―エイリアンとコミュニケーションができるか
第3章 故郷―地球以外に住みやすい星はあるか
第4章 星間ツイッター―地球外からのメッセージは見つかるか
第5章 銀河帝国―エイリアンは宇宙に進出しているか
第6章 ふたつの時計―宇宙で文明はどれだけ続くか
第7章 地球からのメッセージ―エイリアンとのコンタクトは危険か
第8章 二一世紀のSETI―なぜエイリアンを探すのか
 
【著者】
クーパー,キース (Cooper, Keith)
 科学ジャーナリストおよび編集者。マンチェスター大学で天体物理学の学位を取得。専門は、天体物理学、宇宙論、宇宙生物学、地球外知的生命探査、惑星科学。2006年以降、イギリスの天文学専門誌『Astronomy Now』の編集者を務めている。2017-19年にはオンライン科学誌『Astrobiology Magazine』の編集者も兼任。
 
斉藤 隆央 (サイトウ タカオ)
 翻訳者。東京大学工学部工業化学科卒業。訳書多数。
 
【抜書】
●ティコピア島(p44)
 南太平洋の島。面積5平方キロメートル。人口1,115人が、四つの氏族に分かれて生活。火山活動で生まれ、標高380mのレニア山の山頂付近には水深80mのカルデラ湖がある。
 カヌーで太平洋を西から渡ってきたポリネシア人が、3,000年にわたって自給自足の生活をしている。
 1600年頃、島じゅうのすべての豚を処分した。島の食料資源を節約するため。1kgの豚肉を得るために10kgの野菜が必要。そして、果物と野菜と根菜といった主食を補うため、再び漁をするようになった。
 人口抑制の手段として、独身、妊娠中絶、成功の中断、子殺し、氏族間の戦争、事実上の自殺(太平洋に漕ぎ出して帰ってこない)、などが行われていた。これらは、四つの氏族の首長たちが小屋に集まって、話し合った末に民主的に定められたルールだった。
 
●勝者と敗者(p52)
〔 では、平等主義社会がそんなにうまくいくのなら、なぜわれわれの大半はそれを放棄しているのだろう? ひとつの可能性として、人口過剰がさまざまな障害を生み、全員を養えるように農耕の登場をもたらした結果、余剰が生じたというものが挙げられる。その余剰を管理する人々が必要になり、するとその人々が余剰を自分たちの利益のために利用するようになって、それまで存在しなかった不平等や社会階級が生まれたのである。農耕は資源を消費し、集団にはるか遠くに目を向けさせて拡張させ、近隣の集団との争いをもたらした。勝者と敗者がいるところに、平等はない。〕
 
●テイア(p130)
 44億5000万年前、火星くらいの大きさで、質量は1〜5倍あったテイアという惑星が、秒速4km未満で、45度の角度でかすめるように地球と衝突した。
 テイアはすっかり破壊され、小さな鉄のコアは、衝突によって深さ1,000kmまで溶解した地球に吸収された。
 大量のマントル物質が地球本体からちぎり取られ、テイアのかけらの大部分と一緒になる。切り取られたマントル物質とテイアの破片は燃えるリングとなって地球を取り巻き、地球に溶岩の玉が滴り落ちた。
 数十年と立たずにリングの物質はぶつかりあって溶け合い、新たな天体となった。「月」である。
 月の組成は地球のマントルにある比較的軽い物質に似ている。
 
●タイタン(p149)
 土星の衛星タイタンは、マイナス179℃という極低温の世界。大気がある。メタンをたたえた湖がたくさん見つかっている。「メタンのハビタブルゾーン」かもしれない。
 タイタンの地表では、エタンとアセチレンの量が、太陽の紫外光によって上層大気のメタンが分解されてできると予想される量に比べて少ない。水素も、地表で少なくなっている。メタン生成生物が、水素やアセチレンの分子を取り込み、化学反応でエネルギーを生み出す一方、メタンと二酸化炭素を老廃物として「吐き出している」のかもしれない。
 エタン、アセチレン……いずれも水素原子と炭素原子のみからなる「炭化水素」の分子。
 
●ハビタブル・リング(p157)
 天の川銀河のハビタブルゾーンは、超大質量のブラックホールがある中心から2万2800光年を内端、2万9400光年を外端とする細いリングとなっている。
 地球は、ブラックホールから2万6000光年ほどの距離で、リング内。
 
●ダイソン球(p206)
 数学者・物理学者・宇宙科学者フリーマン・ダイソンにちなむ。
 先進文明が自分たちの恒星の全エネルギー出力を利用しようとしたら、恒星を取り囲むソーラーコレクター(太陽エネルギー収集機:つまり手の込んだ太陽電池パネル)の大群を建造して、恒星の放射エネルギーをすべて吸い取ることができるだろうと考えた。
 エネルギーを吸い上げている装置や物は、溶けてしまわないよう、予熱の一部を宇宙へ放射しなければならない。すると赤外線でほのかに明るく見える。これが、「ダイソン球」。
 
●第一SETIプロトコル(p326)
 電波やレーザーといった地球外からのシグナルや、ダイソン球や太陽系に来たプローブなどのテクノシグネチャーを、たまたま見つけた場合になすべきことを科学者にアドバイスするための9項目のプラン。
 国際宇宙航行アカデミー(IAA)を代表して、マイケル・ミショーがリーダーを務めた、SETIの研究者と関係者のワーキンググループによって考案された。
 項目8「地球外知的生命のシグナルやほかの証拠に対する返答は、しかるべき国際協議が行われるまで送ってはならない」。
 
(2021/8/22)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。