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警視庁科学捜査官 難事件に科学で挑んだ男の極秘ファイル
 [社会・政治・時事]

警視庁科学捜査官 難事件に科学で挑んだ男の極秘ファイル
 
服藤恵三/著
出版社名:文藝春秋
出版年月:2021年3月
ISBNコード:978-4-16-391344-5
税込価格:1,870円
頁数・縦:278p・19cm
 
 積極的に地下鉄サリン事件に関与し、サリンの同定、オウム真理教の施設の解明に実績を残し、警視庁の初代科学捜査官に任命された男の半生記。
 科学捜査の手法や、難事件を解決したいきさつなどが細かく具体的に描かれていて面白い。和歌山カレー事件で、林眞須美が通常、座敷から庭に出入りしていることを見抜き、沓脱石の周りに亜ヒ酸が検出されるのではないかと推理する場面など、まるでシャーロック・ホームズ。オウム真理教第二厚生大臣・土谷正実との面会シーンでは、サリンの合成法やオウムの実験施設に関することなど、化学的な知識をひけらかすことによって観念させ、自供を引き出した。
 その他にも、現場の刑事たちとの心温まる交流が描かれていて、真面目に愚直に捜査に邁進する彼らに対する共感をひしひしと感じる。とても人間的である。一方、科捜研の職員や一部警察官僚の事なかれ主義、役人的体質にも言及し、警察組織の複雑さも垣間見える。そうした一切合切を含めて、一風変わった警察人生の喜怒哀楽を、誇りをもって本書で語りたかったのだと思う。
 
【目次】
第1章 オウムの科学を解明せよ―地下鉄サリン事件
第2章 憧れの科学捜査研究所へ
第3章 真の科学捜査とは何か―和歌山カレー事件
第4章 続発する薬物犯罪―ルーシー・ブラックマン事件
第5章 現場の捜査に科学を生かす―歌舞伎町ビル火災
第6章 犯罪捜査支援室の初代室長となる―東京駅コンビニ店長刺殺事件
第7章 警察庁出向から副署長へ―大阪幼児死体遺棄・殺人事件
第8章 生き甲斐を求めて―名張毒ぶどう酒事件再審請求
 
【著者】
服藤 恵三 (ハラフジ ケイゾウ)
 1957年生まれ。東京理科大学卒業。警視庁科学捜査研究所研究員(1981)。地下鉄サリン事件でサリンを最初に同定。オウム真理教関連事件捜査に特別派遣(1995)。初代科学捜査官(1996)。和歌山毒物混入カレー事件(1998)、長崎・佐賀連続保険金目的父子殺人事件(1992-1998)、国立療養所医局アジ化ナトリウム混入事件(1998)、ルーシー・ブラックマン失踪関連事件(2000)、44人死亡新宿歌舞伎町1丁目多数焼死事件(2001)など、全国で発生した多くの事件捜査に科学的立証の立場から貢献。日本警察で初めて「捜査支援」構想を企画・立案・運営。初代警視庁犯罪捜査支援室長(2003)。数多の捜査支援用資機材・各種解析手法を開発。日本警察における「科学と捜査の融合」を具現化。警視庁捜査第三課理事官・科捜研理事官・刑事部主席鑑定官、警察庁刑事局調査官などを歴任。元警視長。現在、法律事務所の他、複数社にて顧問・技術戦略アドバイザー、官と民による社会安全・安心の仕組み作りに奔走。医学博士。警察庁指定シニア広域技能指導官。
 
【抜書】
●DB-Map(p182)
 Database-Map System。平成14年ごろ、著者が開発した捜査支援のための資機材。
 詳細な住宅地図、データベース、各種解析機器を搭載し、初動捜査から事件の分析を支援する機能を備えている。
 画面の地図上で範囲を指定すればワンクリックで拡大・縮小が可能。即座に印刷できる。貼りあわせて掲示するためにのりしろも付けた。
 
●DAIS(p183)
 Dijital Assisted Investigation System。平成14年ごろ、著者が開発した捜査支援用画像解析システム。
 回収した防犯カメラの映像を取り込むとデジタル化され、毎秒30枚の静止画がたくさん並んだ状態になる。手動でも自動でも動画を再生でき、その中の欲しいカットを指定してボタンを押すだけで切り取れる。ノイズを除去して鮮明化もできる。
 
●FIVe(p206)
 Face Image Verification。平成16年に開発した顔認証システム。
 コンペに参加した7社のうち、個々の機能に優れた4社と警視庁と合わせて五者の共同開発だったので命名。顔の認証に良い成績を残した装置、顔の切り出しに優れた装置、照合に能力を発揮した装置とあったが、設定したハードルを越える製品は一つもなかった。
 
(2021/8/20)NM
 
〈この本の詳細〉

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