SSブログ

デジタル化する新興国 先進国を超えるか、監視社会の到来か
 [経済・ビジネス]

デジタル化する新興国-先進国を超えるか、監視社会の到来か (中公新書)
 
伊藤亜聖/著
出版社名:中央公論新社(中公新書 2612)
出版年月:2020年10月
ISBNコード:978-4-12-102612-5
税込価格:902円
頁数・縦:246p・18cm
 
 いわゆる新興国で進行するデジタル化について、その現状と問題点を論じる。中国だけでなく、東南アジアやアフリカでもデジタル化が先進国(日本!)を追い抜く勢いで進んでいる様子を伝えてくれる。
 
【目次】
序章 想像を超える新興国
第1章 デジタル化と新興国の現在
第2章 課題解決の地殻変動
第3章 飛び越え型発展の論理
第4章 新興国リスクの虚実
第5章 デジタル権威主義とポスト・トゥルース
第6章 共創パートナーとしての日本へ
 
【著者】
伊藤 亜聖 (イトウ アセイ)
 1984年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程満期退学。博士(経済学)。専門は中国経済論。人間文化研究機構研究員などを経て、2017年4月から東京大学社会科学研究所准教授。著書『現代中国の産業集積―「世界の工場」とボトムアップ型経済発展』(名古屋大学出版会、2015年、大平正芳記念賞、清成忠男賞受賞)など。
 
【抜書】
●ラスト・ワンマイル人材(p154)
 今後、デジタル経済で求められる「デジタルな雇用」は、大きく分けて三種類。
 (1)IT人材。高度なデータ分析やプログラミング能力が求められる。
 (2)デジタル・クリエイター人材。ユーチューバーのように、SNSの上で自らの番組やコンテンツを配信し、情報を発信する人材。コミュニケーション能力とクリエイター能力が求められる。
 (3)ラスト・ワンマイル人材。電子商取引が生み出した宅配、タクシー運転手、人工知能の入力データにタグ付けする人材、など。労働集約的。
 雇用の点では、特殊な技能が求められない「ラスト・ワンマイル人材」が当面の中心になる可能性が高い。
 
●道徳的な信用スコア(p177)
〔 中国ではデジタル技術を応用した監視を強化しながら、同時に、人びとの行動を「より良い方向」へと誘導するアプローチも採用されている。中国の一部地域では2019年頃から採用され始めた「道徳的な信用スコア」は、社会信用スコアとは異なって、スコアの運営側、すなわち政府が「望ましい」と考える行動に対してポイントを付与し、「望ましくない」行動ではポイントを減点することで、ゆるやかに人々の行動を誘導するアプローチが取られている。このような誘導は、目的は異なるが、行動経済学の分野で「ナッジ」と呼ばれるような行動変容を促す取り組みによく似ている。
 道徳的な信用スコアの取り組みは、いまだ試行錯誤段階にあり全国的な普及には至っていないが、いずれにしても中国はますます治安が良く「お行儀のよい」社会になりつつある。中国の「道徳的な信用スコア」には、国家による行動介入の「最先端」が示されているのかもしれない。〕
 
●ポスト・トゥルース(p179)
 世論の形成に際して、客観的事実よりも感情や個人の信念への訴えかけが重視される現象。
 
●脆弱国家(p195)
 脆弱国家(fragile state)……国家の統治機構が機能不全に陥っている国家。アフガニスタン、シリア、ソマリア、ナイジェリア、エチオピア、など。より深刻になると「崩壊国家」と呼ばれる。
 
(2021/10/25)KG
 
〈この本の詳細〉


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。