おもしろい石と人の物語 ヒトが鉱物に作用し、鉱物もまたヒトに作用する
[自然科学]
大平悠麻/著
出版社名:総合科学出版
出版年月:2021年5月
ISBNコード:978-4-88181-881-7
税込価格:1,760円
頁数・縦:271p・19cm
■
元来、生物を専門とする高校理科の教師が、生徒のために集めたネタで鉱物と岩石の面白さを語る。
【目次】
第1部 世界史は鉱物でできている―鉱物によって紡がれたヒトの歴史と科学の物語
鉱物って何?
鉱物資源の争奪戦こそが歴史そのもの
人類が最初に魅了された石
ガラスの始まり
シルクロードの本当の目的は?
第2部 鉱物に魅せられた“賢者”たち―なぜ天才たちは鉱物に興味を抱いたのか?
大理石に神を彫る
石の都の物語
鉱石をも愛した知の巨人
鉄に目覚めた日本人
青銅器が文明の中心であった時代
土と水のジレンマ
水晶の砂を手に
賢者の石
第3部 鉱物資源とこれから―ヒトが鉱物に作用し、鉱物もまたヒトに作用する
健康を支える鉱物
宇宙、軍事、原発をつなぐ鉱物
災害を知る鉱物
日本と鉱物
【著者】
大平 悠麻 (オオヒラ ユウマ)
1985年生まれ。埼玉大学教育学部理科専修卒業。埼玉県教育委員会入職後、大宮南高等学校、伊奈学園高等学校で理科教諭として勤務。
【抜書】
●孔雀石(p38)
コンゴ(主にコンゴ民主共和国)が、世界最大の産出量を誇る。
孔雀石は、BC3000年頃、エジプトで化粧品や顔料に使用されていた。王族が目の下にアイシャドウのように塗っていた。眼病予防として使っていたらしい。
BC1400年頃には、火であぶると銅ができることを発見。金属が鉱石から精錬された最初の出来事。
●ラピスラズリ(p56)
最も質のいいラピスラズリが採れる鉱山は、アフガニスタン北東部バダフシャン州にある。BC4000年以上前(ペルシャの時代)に開かれ、現在も続いている鉱山。世界で最も古く、最も長く続いている鉱山。
●カリーニングラード(p110)
ロシアの最西端の州はカリーニングラード州。ポーランドとリトアニアに挟まれた飛び地。
ヤンタルヌイという町は、琥珀の一大産地。リトアニアも、琥珀の一大産地。
琥珀は、高品質のニスになり、製薬や鋳造に使用する琥珀油になり、染料製造に使う琥珀酸となる。重要な工業資源。
●砂漠のバラ(p116)
サハラ砂漠周辺などで売られている。
オアシスの水が干上がり、溶けていた硫酸バリウム(重晶石)が結晶となったもの。胃のレントゲンで使う「バリウム」。
●超高純度鉄(p142)
玉鋼(たまはがね:たたら製鉄でできる鉄の塊)の炭素含有量は0.9~1.8%、ふつうの鋼の含有量は0.04~1.7%。
特殊な方法で開発された超高純度鉄は、炭素などの不純物の割合が0.0001%以下。普通の鉄よりはるかに酸に強く、柔らかく加工しやすく割れにくい。
●化学合成細菌(p148)
炭素を含まない無機物のみを吸収し、それに酸素をくっつけることでエネルギーを生み出し、そのエネルギーを使って栄養(炭素を含んだ有機物)を作ることのできる生物。
硫黄細菌、鉄細菌、など。
たとえば、銅を含む岩石から銅鉱石のみを取り出すには、野外に銅を含む岩石を積み上げて水をまけばよい。岩石表面にふつうに棲んでいる硫黄細菌と鉄細菌が働きだし、両細菌に不要な銅鉱石は水に溶けて垂れ流れてくる。
バクテリアリーチング……生物の力を借りて金属を精錬すること。世界の銅の20%はバクテリアリーチングによって生産されている。
製紙産業では、キノコを使って白い紙を作る技術(バイオメカニカルパルピング)が登場している。
ボトリオコッカス・ブラウニー(緑色をした藻類)は、光合成によって石油に似た油を作り出す。
オーランチオキトリウム(オレンジ色がかった藻類)は、周囲の有機物を吸収しながら、石油に似た油を作り出す。
●アジサイ(p168)
アジサイは、アルミニウム・イオンを一部の葉にため込み、その葉を枯らすことによって、有害なアルミニウムを除去している。
酸性の土壌に咲くアジサイは青く、アルカリ性の土壌に咲くアジサイは赤い。吸収したアルミニウム・イオンが葉にある色素と反応するため。
アルミニウム……地殻に2番目に多く含まれている元素。植物にとっては有害な物質。土壌が酸性化するとアルミニウム・イオンが溶け出してくる。
●本多・藤嶋効果(p204)
二酸化チタンの光触媒効果。本多健一と藤嶋昭が発見した化学反応。二酸化チタンは、太陽光の光エネルギーで水を酸素と水素に分解する。
さらに、二酸化チタンに有害物質の分解能力が見つかった。二酸化チタンが水を分解した際に出す酸素が有害物質を壊す。空気の浄化、水の浄化に利用できる。
二酸化チタンは、超親水性という性質もある。カーブミラーや家の外壁のタイルに二酸化チタンの粉末を塗布しておくと、雨水や水蒸気に溶ける。そこにほこりや汚れ、雑菌が付着しても、二酸化チタンの光触媒効果で分解せれ、水によって浮き上がり、洗い流されてしまう。
二酸化チタンにプラチナを付着させた光触媒は、有機物を分解して水素を発生させる。
(2022/5/19)NM
〈この本の詳細〉
コメント 0